- 更新日 : 2024年8月8日
不動産取得税の勘定科目は?仕訳方法や取得価額に含めるかを解説
土地や建物を取得する際にかかる不動産取得税の勘定科目は、「租税公課」とするのが妥当です。償却できない土地や、耐用年数が長期となる建物の取得価額に含めて資産計上してしまうと、経費になるまでに長い期間がかかってしまいます。損金算入時期は納税通知書が届き、税額が確定した時点です。消費税の課税対象とはなりません。
目次
不動産取得税とは
不動産取得税とは土地や建物の購入や贈与、建物の建築などで不動産を取得した際にかかる地方税(都道府県民税)です。有償・無償、登記の有無によらず課税されます。ただし、不動産を相続により取得した場合など、一定の場合には課税されません。
計算方法と税率
不動産取得税は実際の購入価格ではなく、固定資産税評価額に対してかかります。計算方法は以下のとおりです。
税率は、基本は「4%」です。ただし、平成20年4月1日から令和6年3月31日までに取得した土地と住宅家屋については、軽減税率「3%」が適用されます。
支払い方法
不動産取得税は都道府県税事務所から送られる納税通知書で、記載される納期限(通知書発送月の月末など)までに支払います。支払う場所は都道府県税事務所・支所が基本です。ただし、自治体により金融機関や郵便局の窓口、コンビニエンスストアなどで、ペイジーやクレジットカード、スマートフォン決済アプリを使用して支払える場合もあります。
なお、土地購入時の仕訳について詳しくは、以下を参照してください。
不動産取得税を仕訳するときの勘定科目
不動産取得税を会計処理するにあたっては、勘定科目は「租税公課」が妥当です。
租税公課とは、国や地方公共団体に納める税金「租税」と、国や地方公共団体へ納める手数料や罰金、その他公共団体へ納める会費などの「公課」をあわせた総称です。
- 租税の対象となるものの例:
不動産取得税、固定資産税、自動車税、登録免許税、税込方式の消費税、印紙税、事業税、都市計画税など - 公課の対象となるものの例:
国や地方公共団体が発行する各種証明書の発行費用、行政サービスの手数料、延滞税・不納付加算税・過怠税などの罰金、交通反則金、商工会・同業者団体などの会費
ただし、租税公課のすべてが損金算入できるわけではありません。まず、租税公課のうち損金算入できるのは、事業を運営するうえで必要なものに限られます。個人事業主の場合には事務所や車を公私兼用しているケースもあるでしょう。その場合には、事業での利用分と個人での利用分で、租税公課を按分する必要があります。
また、以下のものは、租税公課ではあるものの損金算入できません。
- 法人税など税引前の所得から支払われるもの
法人税、地方法人税、法人都道府県民税、法人市町村民税など - 罰則に該当するもの
延滞税(国)、延滞金(地方公共団体)、不納付不課税、過怠税、交通反則金など - 法人税額から控除する所得税
利息にかかる源泉所得税、配当金にかかる源泉所得税など
なお、租税公課については以下の記事でも詳しく解説しています。
不動産取得税の仕訳例
不動産取得税の仕訳例を見てみましょう。
不動産取得税を現金で支払った場合には、仕訳例は以下のようになります。
(例1)土地を取得し、不動産取得税を現金で支払った。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 360,000円 | 現金 | 360,000円 |
不動産取得税をクレジットカードで支払った場合は、まず以下の形で処理します。
(例2-1)土地を取得し、不動産取得税をクレジットカードで支払った。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 360,000円 | 未払金 | 360,000円 |
クレジットカード会社からの請求額が口座から引き落とされたら、以下の形で処理します。
(例2-2)不動産取得税をクレジットカード払いした請求額が口座から引き落とされた。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 未払金 | 360,000円 | 普通預金 | 360,000円 |
不動産取得税は、取得した土地の価額に算入することもできます(後述)。その場合には、仕訳例は以下のようになります。
(例3)不動産取得税を現金で支払い、取得した土地の価額に算入した。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 土地 | 360,000円 | 現金 | 360,000円 |
不動産取得税を取得価額に算入する必要はない
不動産取得税は、土地や建物の取得価額に算入する必要はありません。
土地や建物を取得する際に発生するさまざまな費用は、法人税法において取得価額に算入して資産計上しなければならないものと、支払い時に経費計上できるものとに分けられます。
取得価額に算入すると、土地の場合は償却がないため、売却時まで経費になりません。建物の場合は減価償却により経費にはなるものの、耐用年数が最長50年と長いため、全額が経費になるまでには長期を要します。
取得価額に算入する必要がある経費は以下のとおりです。
- 仲介手数料
- 未経過固定資産税
- 立ち退き料
- 土地に付いてきた建物の取り壊し費用
- 建物の設計料
- 地鎮祭・上棟式 など
それに対して不動産取得税は以下の法令により、固定資産・減価償却資産の取得価額に算入しないことが可能です。
■法人税基本通達 7-3-3の2
次に掲げるような費用の額は、たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても、これを固定資産の取得価額に算入しないことができる。
(1) 次に掲げるような租税公課等の額
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるもの
ハ 新増設に係る事業所税
ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
そのため、不動産取得税を取得価額から外すことで、早期に経費化することが可能です。
不動産取得税を経費にする際の注意点
不動産取得税を経費にする際の注意点は以下のとおりです。
損金算入時期は納税通知書が届いた時点
固定資産税のように分割での納付が認められている税金は、損金算入時期を以下のようにすることも可能です。
- 納期の開始日が属する年分
- 実際の納付日の属する年分
しかし、不動産取得税は分割での納付が原則として認められていないため、損金算入時期は納税通知書が届いた時点となります。
概算で見積もっての損金算入は認められない
不動産取得税が、納税通知書が届いていない時点で概算できるケースもあるでしょう。しかし、概算で見積もって先に経費計上するのは原則として認められません。
不動産取得税は納税通知書の交付があって初めて税額が確定します。そのため、損金算入時期は原則として、納税通知書が交付された日の属する事業年度でなくてはなりません。
不動産販売業者は売上原価への見積計上が認められる
上述のように不動産取得税の損金算入時期は、原則として納税通知書が届き、税額が確定した時点です。ただし、売上原価への見積計上は認められます。
不動産販売業者が分譲住宅を販売するなどの場合には、不動産取得税は売上原価の一部となります。一般に売上と売上原価は明確な対応関係があるため、仮に売上原価が事業年度終了の日までに確定していなくても、見積もりでの計上が可能です。
不動産取得税が売上原価に含まれる場合も同様に、事業年度終了までに納税通知書が届かなくても見積計上が認められます。ただし、不動産取得税を売上原価に含めるかどうかは、法人の任意とされています。
不動産取得税は消費税の課税対象ではない
不動産の取得に際しては、消費税がかかる場合とかからない場合とがあります。不動産会社などの事業者から取得した場合には消費税がかかる一方、事業者ではない個人から取得すれば、消費税はかかりません。
消費税がかかる場合も、不動産取得税は消費税の課税対象ではありません。なぜならば、不動産取得税自体が税金であり、モノやサービスの対価としての支払いではないからです。
不動産取得税の会計処理は、勘定科目や経費計上の注意点の把握が必要
不動産取得税は、土地や建物などの不動産を取得する際にかかります。勘定科目は「租税公課」とするのが良いでしょう。土地や建物の取得価額に含めてしまうと、経費計上までに長い期間を要するからです。
不動産取得税の損金算入時期は、納税通知書が届いて税額が確定した時点となります。ただし、売上原価への見積計上は可能です。
よくある質問
不動産取得税を仕訳するときの勘定科目は?
不動産取得税の勘定科目は「租税公課」とするのが妥当です。詳しくはこちらをご覧ください。
不動産取得税は取得価額に算入しなければなりませんか?
不動産取得税は、経費計上まで長期となる土地や建物の取得価額に算入の必要はありません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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