- 更新日 : 2025年4月23日
映画、Suica、ジムは経費になる?税理士が答える「経費にできたかも委員会」
フリーランスや個人事業主の人を悩ませる「どこまでが経費になるのか」問題。2019年5月19日に東京で開催されたイベント「確定申告反省会」で、主催の税理士・高橋創さんと大河内薫さんが、経費の疑問に答える企画を行いました。
その企画の名は「経費にできたかも委員会」。イベントゲストとして登場した漫画家・吉田貴司さんの人気作『やれたかも委員会』(双葉社)になぞらえ、もう一人のゲストであるコスプレイヤーの神崎りのあさんとともに、映画のチケット代やSuica代など、身近な事例をもとに経費にできるかどうか議論しました。本稿ではその様子をご紹介します。
税理士/高橋創税理士事務所
1974生まれ。東京都立大学卒業後、学校法人大原学園の所得税法講師として5年間勤務。その後、会計事務所勤務を経て、高橋創税理士事務所を新宿二丁目に開設。新宿ゴールデン街の酒場「無銘喫茶」のオーナーでもある。
Twitter:@namahagetax
代表取締役/株式会社ArtBiz 代表税理士/ArtBiz税理士事務所
2006年日本大学芸術学部卒。2008年から税理士業務に従事し、2011年に税理士試験に合格。2016年に株式会社ArtBizを設立した。スーツを着ない税理士。税理士業ではアフィリエイトやWEBマーケティング事業を行うクライアントが多い。
Twitter:@k_art_u
漫画家
1980年生まれ、大阪府出身。2006年漫画雑誌にてデビュー。過去の作品には「フィンランド・サガ(性)」「シェアバディ」がある。2016年に読み切り漫画「やれたかも委員会」を発表し、ネット上で話題となった。
Twitter:@yoshidatakashi3
コスプレイヤー
2009年コスプレデビュー。コスプレモデルやローカルタレント、声優、テレビ番組への出演など芸能活動は多岐にわたる。2019年にはライブアイドルグループへ加入。Instagramでは8万人以上のフォロワーを持つ。
Twitter:@Rinoa_Kanzaki
映画チケット代は経費にできる?
吉田貴司さん(以下、吉田):実際に経費として処理した経験があるので、「できた」に一票です。僕は漫画家なので作品の参考にするために映画を観に行ったり、仕事の関係者の舞台を観に行ったりすることもあります。
神崎りのあさん(以下、神崎):私も「できた」に一票です。私はコスプレイヤーなので映画を参考に衣装を作成した経験もあります。そのときのチケット代は経費として扱いました。
高橋創さん(以下、高橋):映画などのチケット代は経費にできます。しかし、事業によってはふさわしくない場合もありますね。例えば農業従事者が映画のチケット代を経費にするのは難しいでしょう。
大河内薫さん(以下、大河内):同じ意見です。Netflixといったサブスクリプションサービスの場合はもっと判断が難しくなります。鑑賞できる作品数も膨大ですし、そのうち何本の映画を参考にしたかなども論点になりますからね。
会社で飼っているペットのペットフード代は経費になる?
神崎:私は「できない」と思います。会社でペットを飼っていても、収益に貢献していなければ経費として扱うことはできないと思いました。私はYouTubeで配信する動画にペットを出演させていますが、ペットフード代は経費として申告していません。
吉田:僕は反対に「できた」と思います。夏目漱石にとっての猫のように、ペットは創作活動や仕事にインスピレーションを与える存在になりますよね。飼育するうえで発生するペットフード代などは経費にできるのではないでしょうか。
高橋:経費として申告していいでしょう。しかし、税務署によっては認められない場合もあるので、そのときはすぐに訂正すべきです。
ペットフード代は消耗品という名目で経費として扱うことができます。しかしペットはその種類によって扱いが変わります。例えば競馬の馬は価格が高いので購入した瞬間に資産になりますが、それに比べると犬はそれほど価格が高くないので消耗品として扱います。
大河内:経費にできると思います。ペット自体を申告するときは、消耗品か備品のどちらかの名目ですね。
フリーランサーのスーツ代は経費になる?
吉田:僕は「できない」と思います。衣類に関わる費用は経費として扱いにくいと聞いたことがあります。個人的な考えですが、衣類に関わる費用がプライベートなものか仕事に必要なものか判断するのが難しいため、経費として認められづらいと思いました。
神崎:スーツを実際に仕事で使うのであれば「できた」と思います。例えば私にとってのコスプレ衣装と同じ分類だと思うので、経費として扱えないなら大変ですよね。
高橋:基本的には経費にできない可能性が高いです。過去にあった裁判では、スーツ代が経費として認められなかった例もあります。私の顧客でスーツ代全額を経費として申告しているのはほとんどがホストの方で、スーツが仕事着であるとわかる場合のみです。
ただ、仕事で使うスーツ代を経費として申告する場合、全額ではなく、一部を申告するという方法があります。例えば平日のみ着用するスーツであれば、価格の2/7を除き、5/7に当たる額を申告するというものです。
コスプレイヤーの神崎さんの衣装については、普段から着ているのか、仕事でのみ着るのかという点で経費にできるかできないかを判断できます。
大河内:仕事で着る衣装を経費として扱うときに、プライベートでは着用していないと証明することが難しいですね。証明できるのであれば、経費として申告できます。
Suicaのチャージ代は経費になる?
吉田:「できない」と思うんですが、実際はどうなるのか気になっています。僕はSuicaで使った費用は交通費だけを申告することにしていて、コンビニなどで個人的な買い物をするときはSuicaを使わないようにしています。
神崎:経験上、私も「できない」と思います。フリーランスとして働いていたときは、Suicaのチャージ代は経費として申告せず、タクシーの領収書など交通費がわかる領収書を提出していました。二重に計上しないように心掛けていましたね。
高橋:Suicaをチャージしたときに発行された領収書ではなく、実際に交通機関を使用して発生した領収書で経費を申告することが一番だと思います。
Suicaを使用する場合は、交通費にのみ使うカードを持つ方法もあります。複数のカードの使い道を分けることで、それぞれの使用用途を説明しやすくなります。
スポーツジム代は経費になる?
吉田:僕は「できた」であってほしいと思っています。しかし、実際にはスポーツジム代を経費として申告しようとしたところ、税理士の方に「できない」と言われました。
神崎:状況によっては「できた」と思います。仕事の性質上、ジム通いが必要な場合はスポーツジム代を経費として扱うことができると考えました。
高橋:私の顧客にプロレスラーの方がおり、以前はその方のスポーツジム代は経費として扱えると考えていました。しかし、今年の4月に自民党の勉強会が提言していた制度で、スポーツジムなどに通う費用を所得税控除の対象にするというものがありました。これを受けて、スポーツジム代は基本的に経費ではないということを改めて思いました。
大河内:仕事に必要かという判断基準で考えることができると思います。プロレスラーやコスプレイヤーといった職業の方にとって仕事に必要な場合、スポーツジム代は経費として扱えると僕は思います。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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