- 作成日 : 2024年9月26日
回収業務とは?手作業を減らして経理の負担を軽減する方法を解説
回収業務は、提供したサービスや商品に対する代金を受け取るために行う業務です。企業の資金繰りを円滑に進めるために重要ですが、同時に多くの課題が生じやすい業務でもあります。正しい回収業務の流れやポイントについて知っておくことが大切です。
本記事では、回収業務の流れとよくある問題、効率化のポイントなどを解説します。
目次
回収業務とは代金を回収する業務のこと
回収業務の目的は、提供したサービスや商品に対する代金を受け取ることです。商材を販売して売上があっても、確実に回収できなければ資金繰りは厳しくなります。
また、回収金額や日時の管理は、キャッシュフローを安定させるためにも重要です。正しい回収業務を行うことで、利益が出ているにもかかわらず、必要資金が不足し、倒産するリスクを防げます。
企業が健全な経営を続けるために、経理担当者が行う回収業務は欠かせない役割です。
回収業務の種類
経理担当者が行う回収業務には、以下の2つの種類があります。
回収業務の種類 | タイミング | 内容 |
---|---|---|
請求書(売掛金)の回収 |
など |
|
債権の回収 |
|
|
請求書(売掛金)の回収は、企業が取引先に商品を納品したあとに行われます。一方で、債権回収は取引先が何らかの理由で支払いを滞納した場合に発生する業務です。
請求書の回収を正しく管理できていないと、債権回収が必要な取引先がわからなくなってしまいます。さらに、債権回収を怠ると企業にとって大きな損失につながります。
経理担当者は、回収業務の流れや適切な方法を理解し、確実な債権管理を行うことが重要です。
回収業務の流れ、フロー
回収業務は、代金を確実に回収するために行う業務です。
本章では、請求書の発行から入金の処理までの基本的な流れについて解説します。
①請求書の発行
取引先に請求書を発行する業務です。請求書には、代金や支払い期限、取引先名など、重要な情報を記載します。
各取引先に送る重要な書類であるため、記載ミスや漏れがないように作成することが重要です。また、ミスがあると支払いトラブルが発生する可能性があります。
スムーズに債権を回収するため、慎重に作成しましょう。
②請求書の送付
発行した請求書を取引先に送付します。郵送や電子メール、Webシステムを使って送る方法が一般的です。
郵送の場合、送付状の作成や封筒の宛名書き、郵便局への手続きなどに時間がかかるため、最近ではメールやWebシステムを利用する企業が増えています。
請求書の送付方法を工夫することで、回収業務を効率化できるでしょう。
③入金の確認
指定の銀行口座やオンライン決済システムを通じて、取引先からの入金を確認します。
入金の確認タイミングは企業ごとに異なりますが、一般的には月末や月初に行われます。取引先が支払期日を過ぎている場合は、早めに連絡を取る必要があるため、入金確認も迅速に行いましょう。
④入金伝票の作成
入金伝票は現金入金が発生した際に作成します。
取引先が銀行振込で入金した場合には、不要な処理です。
入金伝票の作成には、取引の内容や日時、担当者を記録する目的があります。また、仕訳帳と異なり、伝票さえあれば自由なタイミングで取引を記録できるため、業務の効率化や記入漏れの防止に役立ちます。
伝票の記載内容は一般的に、次のような項目です。
- 日付
- 勘定科目
- 摘要(取引内容)
- 金額
- 起票者(係印)
入金伝票は、仕訳帳や総勘定元帳などの会計帳簿にも使用されます。
また、最近では、会計システムを利用してWeb上で管理する企業が増えています。会計システムを利用する場合は、直接入力することで仕訳が自動化されるため、入金伝票の作成は不要です。
⑤入金の消し込み
入金確認ができたら、入金の消し込みを行います。消し込みとは、取引先からの入金を未回収の請求額と照合し、合致すれば帳簿から消す作業です。
たとえば、100万円の請求に対して100万円の入金が確認できた場合、該当項目を帳簿から消して処理を完了させます。
適切に消し込みを行うことで、売掛金の回収漏れや金額の誤差を防ぎ、正確な資金管理を維持できます。
回収業務でよく発生する問題
回収業務でよく見られる問題と対応策について解説します。
取引先と連絡が取れなくなる
回収業務を行う際、支払が遅延している状態で、取引先と連絡が取れなくなるケースがあります。取引先が応答しない場合、回収が滞る原因となります。
とくに、取引先が意図的に連絡を避けている場合、返答を期待できず、請求が進みません。
支払いが遅れたまま連絡が取れない場合、まずは記録が残るメールや郵送で自社の主張を伝えることが重要です。単純に、単に休業の連絡ミスや支払いの失念の場合は、文書でのやり取りで解消されることもあるでしょう。
それでも連絡が取れない場合、法的手段や債権回収会社の利用を検討することが必要です。
支払いを拒否される
取引内容への不満や資金不足などが原因で、取引先が支払いを拒否するケースがあります。
たとえば、取引先が「納品された商品に問題がある」と主張して支払いを拒む場合があります。この場合、問題の原因を確認し、誠実に対応することで解決を図ることが大切です。契約書で取引内容や支払い条件を明確にしておくことで、誤解を防ぎ、トラブル防止につながります。
文書での応答もなく、支払い拒否が続く場合には、専門家に相談し、法的手段が必要となることもあるでしょう。
回収業務に負担がかかる原因
回収業務では、代金を確実に回収するため、業務時間や精神的な負担など多くの負担が経理担当者にかかります。
本章では、負担が大きくなる原因と解消法について解説します。
請求漏れの確認が必要
サービスや商品を提供しても、請求漏れがあると代金が回収できず、企業に収入が入らないため、回収業務は企業にとって重要な業務です。
請求先や請求金額が正しいかどうかを慎重に確認する作業は、取引先の数が増えるほど、請求書の確認が複雑になり、経理担当者に大きな負担を与えます。
請求漏れを防ぐには、複数の担当者で確認を行ったり、システムを使って自動的にチェックしたりする方法が効果的です。
メール文面や書面の準備が必要
請求書を送るため、メールや書類を作成する業務は、経理担当者にとって大きな負担です。毎月複数の取引先に請求書を送付する際、それぞれに合わせたメール文面を作成し、誤りがないように注意する必要があります。
また、郵送の場合は、作成後に印刷して封筒に入れる作業も必要になり、さらに負担は増大するでしょう。
請求書の際は、Webシステムを使って送信したり、テンプレートを活用することで業務の効率化を図れたりするでしょう。
取引先との関係を考慮したコミュニケーションが必要
回収業務では、取引先との関係を損なわないように注意しながら、代金の回収を行わなければなりません。とくに、支払いが遅れている取引先に対しては、慎重なコミュニケーションが必要です。
たとえば、支払いの催促をする際は、今後の取引に影響を与えないよう、相手の状況を考慮しながら、適切な言葉で対応するスキルが求められます。
コミュニケーションの負担を減らすためには、事前に取引先とのルールを明確に決めたり、回収業務をアウトソーシングしたりすることもひとつの方法です。
回収業務を効率化する方法
回収業務を効率化することで、経理担当者の負担を減らしたり、コア業務に時間を使えたりするメリットがあります。
本章では、回収業務を効率化するためのポイントを解説します。
請求書のテンプレートを利用する
請求書作成は、テンプレートを活用することで効率化できます。
たとえば、日々の業務で定期的に発行する請求書は、取引先名や金額などの必要項目を入力するだけで済み、記載漏れや誤字脱字のリスクを減らし、確認作業も簡単になります。
請求書のテンプレートが必要な場合は、下記のテンプレート一覧からぜひ、ご活用ください。
文書をテンプレート化する
請求書だけでなく、取引先とのやり取りに使う文書もテンプレート化すると便利です。頻繁に使うメール文面をテンプレート化しておけば、毎回内容を作り直す手間が省けます。
たとえば、支払いが遅れている取引先への催促メールも、テンプレートがあれば短時間で対応可能です。
取引先に失礼のない文書作成には時間や労力がかかりますが、テンプレートを使えばその負担を軽減し、他の業務に集中できる時間を増やせます。
会計ソフト・システムを導入して自動化する
会計ソフトやシステムを導入すれば、請求書の発行や入金確認を自動化でき、手作業によるミスを防げます。
クラウド型の会計システムには、請求書の自動発行や取引先への送付が可能なため、業務の正確さが向上し、効率的に回収業務を進められます。
回収代行業者にアウトソーシングする
回収業務の負担が大きい場合、専門の回収代行業者にアウトソーシングすることも効率化の有効な手段です。専門業者に任せることで、自社のリソースを他の業務に集中させられます。
たとえば、支払いが遅れている取引先への対応や未回収債権の回収は、業者に依頼することで回収率が上がり、経理担当者のストレスを軽減する効果が期待できるでしょう。また、手間や時間の大幅な削減にもつながります。
業務が忙しく、回収作業に手が回らない場合は、アウトソーシングを検討することもひとつの方法です。
回収業務はテンプレートとクラウドシステムを活用して効率化しよう!
本記事では、回収業務のフローやよくある問題、効率化の方法について解説しました。
回収業務は、企業が健全な経営を続けるために欠かせない作業です。適切な管理とスムーズな回収を実現することで、企業の成長や経営の安定に大きく貢献します。
回収業務の確実性と効率化を向上させるため、テンプレートやシステムの導入、アウトソーシングの活用などをぜひ、検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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