• 作成日 : 2022年9月16日

看板の耐用年数と減価償却費計算を初心者向けに解説

看板の耐用年数と減価償却費計算を初心者向けに解説

お店の宣伝や店舗の場所を示すために、スタンド看板や電飾看板、屋外塔屋看板などを設置することもあるかと思います。

看板の製作や、量産型看板の購入をした場合、どのような会計処理が必要になるのでしょうか。

この記事では、看板の取得にかかった費用と減価償却・耐用年数の関係、看板取得や減価償却に関わる仕訳、減価償却の計算について解説していきます。

看板は基本的に減価償却が必要

看板は、一般的に長期にわたる使用を目的に取得されます。この場合、看板の取得費用は消耗品ではなく、固定資産(法人税や所得税においては減価償却資産)に分類されます。また、時の経過で価値が減少していく資産であることから、決算時には減価償却処理(資産を耐用年数に応じて費用計上していくこと)が必要です。

ただし、使用可能期間が1年未満、または取得価額10万円未満の看板については、取得時に資産に計上することなく、全額を費用計上できます。

また、青色申告書を提出する中小企業者等(資本金等1億円以下の法人、または従業員数1,000人以下の個人)は、少額減価償却資産の特例により、看板の取得価額が30万円未満であれば、合計300万円(※合計額にはほかの特例対象になる減価償却資産を含む)を限度に一括して費用計上することも可能です。

減価償却についてはこちらの記事で詳細を解説していますので参照ください。

看板の耐用年数

勘定科目種類耐用年数具体例
器具備品3年スタンド看板など
2年マネキンなど
建物附属設備金属製18年突き出し看板など
それ以外10年
構築物金属製20年野立て看板など
それ以外10年

減価償却する看板は、その種類によって「器具備品」「建物附属設備」「構築物」に区分され、それぞれ法定耐用年数が異なります。

「器具備品」に分類される看板は、設置場所が決まっておらず、簡単に移動できるような看板です。スタンド看板のような店頭に置いてある簡易的な看板や、ネオン管やLEDを利用したネオンサインなどがこれに該当します。器具備品に該当する看板の耐用年数は3年です。なお、看板とは少し異なりますが、店頭などに置くマネキンや模型の耐用年数は2年になります。

「建物附属設備」に分類される看板は、建物に付属するように構築された看板をいいます。建物に固定された袖看板や突き出し看板などが対象です。耐用年数は、金属製のもので18年、それ以外の素材のもので10年とされています。

「構築物」に分類される看板は、屋外に独立して設置された看板です。ビルの屋上に設置される屋上塔屋看板、道路沿いに立てられた野立て看板などが該当します。耐用年数は、金属製のもので20年、それ以外の素材でできたものは10年です。

看板の減価償却費計算と仕訳例

2016年4月1日以後に取得した減価償却資産の法定償却方法は、建物・建物附属設備・構築物は定額法、それ以外の有形減価償却資産は種類ごとに定額法か定率法(選定しないときは法定償却方法である定率法)が選定できます。

看板の種類ごとに、取得したときの仕訳や期末時(※今回は取得年度の期末時についてのみ説明)に法定償却方法に従った減価償却を行うときの仕訳や計算について見ていきましょう。

ケース1(器具備品)

器具備品に分類される看板を購入したときの仕訳、減価償却の計算を、具体例を用いて説明します。

(取得時仕訳例)
2022年6月1日にスタンド看板を現金15万円で購入した。当社の会計期間は4月1日から翌年3月31日で、中小企業者の少額減価償却資産の特例を適用しないものとする。

借方
貸方
器具備品150,000円現金150,000円

上記の仕訳例のように、10万円以上の減価償却資産で、中小企業者の少額減価償却資産の特例を受けないときは、「器具備品」「工具器具備品」(どちらも資産科目)で処理します。

(減価償却仕訳例)
決算日2023年3月31日を迎えたため、当期に15万円で取得したスタンド看板の減価償却を行うこととした。法定償却方法により定率法で、間接法(減価償却累計額または器具備品減価償却累計額の勘定科目を使用)により減価償却費を計算するものとする。
(※償却率は下部の償却率表を参照のこと)

借方
貸方
減価償却費83,375円減価償却累計額83,375円

(減価償却費の計算)
150,000×0.667=100,050円 ≧ 150,000×0.11089=16,633円
100,050円×10/12=83,375円

2007年4月1日以降に取得した資産の定率法の計算は、償却率と保証率の比較からスタートします。償却率を用いて計算した額が保証率を下回らないときは、その額をもって減価償却費とします。今回の具体例で使用する耐用年数は、スタンド看板のため3年です。具体例では、期中に資産を取得していますので、月割りで減価償却費を計算しています。

ケース2(建物附属設備)

建物附属設備に分類される看板を購入したときの仕訳、減価償却の計算を、具体例を用いて説明します。

(取得時仕訳例)
2022年4月1日に、金属製の突き出し看板(デザイン料込)の取得費用40万円を小切手を振り出して支払い、すぐに設置した。当社の会計期間は4月1日から翌年3月31日とする。

借方
貸方
建物附属設備400,000円当座預金400,000円

突き出し看板の設置は建物附属設備の取得となるため、建物附属設備(資産の科目)として処理します。

(減価償却仕訳例)
決算日2023年3月31日を迎えたため、当期に40万円で取得した金属製の突き出し看板の減価償却を行うこととした。間接法(減価償却累計額または建物附属設備減価償却累計額の勘定科目を使用)により減価償却費を計算するものとする。
(※償却率は下部の償却率表を参照のこと)

借方
貸方
減価償却費22,400円減価償却累計額22,400円

(減価償却費の計算)
400,000×0.056×12/12=22,400円

建物附属設備に分類される金属製の突き出し看板の耐用年数は18年です。建物附属設備は定額法で減価償却するため、定額法の耐用年数18年の償却率を用いて減価償却費を計算します。

ケース3(構築物)

構築物に分類される看板を購入したときの仕訳、減価償却の計算を、具体例を用いて説明します。

(取得時仕訳例)
2022年9月1日に、金属製の野立て看板(デザイン料込)の取得費用60万円を小切手を振り出して支払い、すぐに設置した。当社の会計期間は4月1日から翌年3月31日とする。

借方
貸方
構築物600,000円当座預金600,000円

野立て看板は構築物に該当するため、構築物(資産の科目)で処理します。

(減価償却仕訳例)
決算日2023年3月31日を迎えたため、当期に60万円で取得した金属製の野立て看板の減価償却を行うこととした。間接法(減価償却累計額または構築物減価償却累計額の勘定科目を使用)により減価償却費を計算するものとする。
(※償却率は下部の償却率表を参照のこと)

借方
貸方
減価償却費17,500円減価償却累計額17,500円

(減価償却費の計算)
600,000×0.050×7/12=17,500

構築物に分類される金属製の野立て看板の耐用年数は20年です。構築物も建物附属設備と同様に定額法で減価償却するため、定額法の耐用年数20年の償却率を用いて減価償却費を計算します。今回の仕訳例は期中に資産を取得しているため、月割りで減価償却費を計算します。

【2012年4月1日以後取得の減価償却資産 定率法の償却率等表(抜粋)】

耐用年数償却率改定償却率保証率
2年1.000--
3年0.6671.0000.11089

参考:「減価償却資産の償却率等表|国税庁」をもとに作成

【2007年4月1日以後取得の減価償却資産 定額法の償却率等表(抜粋)】

耐用年数償却率
10年0.100
18年0.056
20年0.050

参考:「減価償却資産の償却率等表|国税庁」をもとに作成

看板の種類で減価償却の耐用年数は変わる

看板は、種類や構造によって、器具備品、建物附属設備、構築物に分類され、それぞれ法定耐用年数が異なってきます。一括で費用に計上できない看板については、取得時の資産計上と、各期末に減価償却が必要になりますので、まずは取得した看板がどの資産区分に該当するか確認することから始めましょう。

よくある質問

看板に減価償却は必要?

長年使用を目的に取得した看板は、基本的に資産計上し、その後の減価償却が必要と考えられます。ただし、取得価額10万円未満の看板や少額減価償却資産の特例対象になる看板(取得価額30万円未満のもの)は一括で費用にできます。詳しくはこちらをご覧ください。

看板の耐用年数は?

器具備品に分類されるものは3年、建物附属設備に分類される金属製のものは18年、金属製以外のもので10年、構築物に分類される金属製のものは20年、金属製以外のもので10年です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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