- 作成日 : 2024年11月5日
債権者とは?債務者との違いや関係性、保持する権利をわかりやすく解説
債権者とは特定の人に対して金銭の支払いや行為を請求できる権利を有する人のことを指します。ビジネスの場や契約の場では債権者という言葉を耳にするケースもあります。
本記事では債権者とはどのような人を指すのかといった基礎知識や債務者との違い、債権者が保有する権利についてご紹介します。
目次
債権者とは?
債権者とはその名の通り債権、つまり特定の人に対して金銭の支払いやなんらかの行為をすることを請求できる権利を保有する人のことを指します。
お金を貸す人のことを債権者と言うケースが多いです。AさんがBさんに利息付きでお金を貸すという消費者金銭貸借契約を結んだ場合、Aさんには期日までにBさんから貸したお金に利息を付けて返済してもらう権利が生じます。
他にもAさんが品物を渡す代わりにBさんから代金を受け取る売買契約を締結した場合、Aさんは代金を受け取るという債権が生じます。
債権者には「一般債権者」「担保債権者」「差押債権者」の3種類があります。
一般債権者とは
一般債権者とは担保権や優先権をもたない債権者のことを指します。担保とは債権が回収できなかった場合、その損害を補うための物品のことを指します。たとえばAさんがBさんにお金を貸し、Bさんが自宅を担保にしたとしましょう。仮にBさんがお金を返せなくなった場合、AさんはBさんの自宅を手に入れられる権利が生じます。
しかし、一般債権者はこうした担保権を保有していないため、債権の回収が不能になった場合、担保による弁済は一般債権者の後ということになります。しかし、債務者が破産した場合は債務者の財産を換金したものを配当という形で受け取ることができます。
担保債権者とは
担保債権者とはその名の通り担保権を有する債権者のことを指します。前述の通り担保権を保有していれば、債権を回収できなくなった場合に担保をもって弁済を受けることができます。
差押債権者とは
差押債権者とは債権者に対して債権を差し押さえた状態にある債権者のことを指します。債務者の銀行預金や給与、売掛金などが差し押さえの対象となり、債権者はそれらをもって弁済を受けることが可能です。なお、債務が履行された場合、これらの差し押さえは解除となります。
債務者とは?
債務者とは債務を負う人のことを指します。債務とは特定の人に金銭の支払いや一定の行為をする義務のことを指します。先ほどの例で、AさんがBさんに利息付きでお金を貸すという消費者金銭貸借契約を結んだ場合、Bさんは債権者であるAさんに対して期日までに借りた元金と利息を支払わなければならないという債務が発生します。
債務者と連帯債務者の違い
債務者とは債務を履行しなければならない人のことを指します。連帯債務者とは連帯して債務を負う人のことを指します。たとえばAさんがBさんに利息付きでお金を貸すという消費者金銭貸借契約を結び、Bさんの配偶者であるCさんを連帯債務者とした場合、BさんとCさんに債務の履行義務が発生します。主債務者であるBさんが債務を履行した場合、連帯債務者であるCさんの債務もなくなります。仮にBさんが債務を履行できない場合、AさんはCさんに直接債務の履行を求めることができます。
債務者と連帯保証人の違い
連帯保証人とは債務者が債務を履行できなくなった場合に、代わりに債務の履行義務を負う人のことを指します。通常債務の履行は債務者が負うのですが、連帯保証人に関しても債務者と同様の履行義務を負うことになります。たとえばAさんがBさんにお金を貸して、Bさんの親であるDさんが連帯保証人になったとしましょう。Bさんが債務をしっかりと履行すれば、Dさんは債務を履行する必要はありません。しかし、Bさんが債務を履行できないとなると、連帯保証人であるDさんが債務を履行しなければならないということになります。
債務者と第三債務者の違い
第三債務者とは債務者に対してさらに債務を負っている人のことを指します。債権者は債務者に対する債務がある第三債務者に対しても債務を回収することが可能です。たとえばAさんが債権者、Bさんが債務者、CさんがBさんに対する債務がある債務者の場合、Aさんは第三債務者にあたるCさんにBさんの債務を履行させることが可能になるのです。
債権者と債務者の関係性は?
債権者と債務者はまったく逆の関係になります。債権者は債務者に対し、債務を履行してもらう権利を有し、債務者は債権者に対して債務を履行しなければならないという立場となります。
たとえば借金をした場合、債務者は債権者に対して元金を返済し、利子を支払うという義務が生じます。逆に債権者は債務者から元金の返済と利息を受け取る権利が発生します。
なお、債務者が債権者に、債権者が債務者になるケースもあります。たとえば売買契約を締結した場合、売り手は代金を受け取るという債権を保有するとともに商品を納入するという債務を負い、買い手は商品を受け取るという債権を保有すると同時に代金を支払うという債務を負うことになります。
債権者の債務者に対する権利は?
債権者は債務者に対して以下のような権利を保有しています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
給付保持力
給付保持力とは債務者の債務履行によって受け取った給付を、法律に反していない限り自分の財産として保持できる権利のことを指します。たとえばAさんがBさんに対して1,000万円の土地を売却するという土地売買契約を締結した場合、Aさんは土地の代金として受け取った1,000万円を、Bさんは購入した土地を保持する権利が発生します。
なお、債権者は給付を受けた後は、財産を不当利得した事実がない限り相手に返却しなくてもいいということになります。たとえばAさんが「やっぱり土地を返してほしい」と言ってきたとしても、代金を支払っているのであればBさんは返還に応じる義務はないのです。
訴求力
訴求力とは債権者が債務者からの給付が受けられず、自身が給付した財産の返還にも応じない場合に、裁判所に訴えを起こして権利関係を確認できる権利を指します。「請求力」ともいいます。裁判によって権利を明らかにし強制執行などの法的措置を取ることで、債権の回収の確実性が高まります。
貫徹力
貫徹力(かんてつりょく)は債務者からの給付が受けられない場合に、給付を強制的に実現させる権利のことを指します。たとえばAさんがBさんにお金を貸すという消費者金銭貸借契約を締結したのにもかかわらず、Bさんが借金を返済しなかった場合で、Aさんが訴求力を行使して裁判による返還命令が出たにもかかわらず、それでも債務を履行しなかった場合、判決にもとづき「強制執行」を申請することでBさんに対して強制的に債務を履行させることが可能です。
掴取力
掴取力(かくしゅりょく)とは債務者からの給付が受けられない場合に、債務者の財産を差し押さえることができる権利のことを際します。債務者は財産を差し押さえて債権の弁済を受けることができます。
執行力
執行力とは債権者が差し押さえた債務者の財産の差し押さえを強制的に執行できる権利のことを指します。なお、財産の差し押さえや強制執行は裁判所に申し立てを行い、執行官が代理で行います。
債務者が債務を履行しないときの対処法は?
債務者が債務を履行しなかった場合、具体的に債権者は以下のような請求を債務者に対して行うことができます。
損害賠償請求
債務者の債務不履行によって債権者が損害を被った場合、その損害を賠償することを債務者に請求することが可能です。たとえば商品の引渡しがなされずに事業に損失が出た場合、その損失の補填を求めることができます。
契約解除請求
契約解除とはその契約をなかったことにすることです。商品が期日までに納入されなかった場合、契約解除をすれば代金を支払う義務が債権者に発生しないということになります。
追完請求
追完請求(ついかんせいきゅう)とは債務の履行が不完全な場合に、完遂させることを指します。追完請求は特に売買契約が履行されなかった場合に行われます。たとえば納入された商品の数量が不足していた場合は不足分の納入を、商品が故障していた場合は修理や代替品の引渡しなどを求めることが可能です。
代金の減額請求
減額請求とは債務が完全に履行されなかった場合に代金を安くしてもらうよう請求することです。たとえば、商品に傷があったり欠損があったりした場合などに、代金の減額を請求することができます。
強制執行
債務を履行するよう督促しても履行されない場合、上記のような措置をとっても応じてくれない場合、債権者は裁判所に申し立てて債務者の財産を強制的に差し押さえ、差し押さえや競売による売却益などをもって弁済を受けることができます。
債権回収を行う際に注意すべきポイントは?
債務者から債権を回収する際には以下のようなことを意識しましょう。
債務が履行できない理由を把握する
まずはなぜ債務者が債務を履行できないのか、その理由を聞きましょう。単にお金が足りないときはタイミングを見計らえば回収できる可能性があります。
一方で、債権者側に問題がある場合、たとえば引渡した商品に不具合があった、契約違反行為があったなどの理由で債務が履行されない場合、対応方法を変えなければならない場合もあります。
債務者の資産状況を確認する
債務が履行されなかった場合、前述のように資産を差し押さえて弁済を受けることになります。しかし、相手側に資産がない場合はそれも叶いません。不動産や自動車などの有無や名義の状況、収入などをチェックしておき、差し押さえる財産で債務不履行によって生じた損害を補えるかどうかを確認しておきましょう。
タイミングを見計らって回収する
債権を回収するタイミングも非常に重要です。相手が会社員であれば給料日の直後、法人であれば売掛金の入金を見計らって差し押さえを行うことで、回収できる可能性が高まります。
早いうちに弁護士に相談する
裁判所への申し立てや訴訟などの手続きの際には弁護士の力が必須になります。また、その前段階でも可能であれば早めに弁護士に相談しましょう。たとえば債権者が督促に行って当事者同士が話し合ってもお互いに感情的になってしまってまとまらない、あるいは法律的な知識がないために不利な状況に陥ってしまうといったケースもあります。第三者であり法律の専門家でもある弁護士が介入することで、話し合いがスムーズにいく可能性もあります。弁護士名義で内容証明郵便を送ることで、相手にプレッシャーを与えられるといった効果も期待できます。
また、万が一訴訟になったとしても、早期から弁護士が状況を把握し証拠を収集していれば、スムーズな手続きにつながります。
会社分割における債権者保護手続きとは?
債権者保護手続きとは、不利益を被らないよう債権者が債務者に対して異議を申し立てることができる制度です。会社を清算する際に会社分割を行うことがあります。債務者が法人である場合、会社を分割することで債権者に不利益が生じることがあります。不利な状況に陥ると予想される場合、債権者は債務者が会社分割を行うことに対して異議を申し立てることが可能です。債権者保護手続きは当該会社が分割契約と締結し、分割計画の事前開示を行うタイミングで行います。特に企業との取引を行う場合は、こうした制度もあるということを念頭に置いておきましょう。
債権回収を行う際には債権者の権利について理解しておくべし
借金や商品・サービスの代金など、債権を回収する際には、まず債権者にどのような権利があるのか、どのような手段が取れるのかを把握しておくことが大切です。そのうえでしっかりと債務者の状況を確認し、適切な方法とタイミングで回収を行いましょう。また、必要に応じて弁護士などの専門家の手を借りることも検討されることをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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