- 更新日 : 2026年3月12日
【図解】当期純利益とは?求め方や計算方法、損益計算書の仕組みを解説
会社の決算書や経理でよく使われる言葉の1つに「当期純利益」があります。当期純利益とは、簡単にいうと1年間の活動を通して会社に残った最終的な利益のことです。
この記事では、当期純利益について計算方法や意味をわかりやすく解説します。簿記の知識がそれほど無い方でも、経理や経営の分析に役立てることができるでしょう。
なお、当期純利益は一般的に、法人税等が差し引かれる前の「税引前当期純利益」と、法人税等が差し引かれた後の「当期純利益」の2つの意味がありますが、この記事では法人税等が差し引かれた後の当期純利益について記載していきます。
また、この記事では連結財務諸表(親会社や子会社がいる場合の財務諸表)は想定していません。親会社や子会社がない会社を前提としていることにご留意ください。
目次
当期純利益とは?わかりやすく解説
当期純利益とは、一会計期間(通常は1年間)に会社が活動した結果の全収益から、全ての費用や法人税などを差し引いた最終的な利益のことをいいます。
当期純利益の金額がマイナスとなる場合は、当期純損失や赤字といいます。
ただし、当期純損失や赤字が出たからといって「もうかっていない会社」とは断定できません。それは、本業で十分な利益が出ている会社でも、特別な要因によって赤字になることもあるからです。反対に当期純利益がプラスであっても、本業で損失を出していることもあります。
当期純利益を見る場合は、後述する当期純利益の計算過程や、当期純利益と関係のある数値を使った指標などを見ることが大切です。
ここからは、当期純利益の求め方や見方、活用方法について解説します。
当期純利益の求め方と計算式

当期純利益は、「税引前当期純利益」から「法人税等」を差し引き、税効果会計の調整を加えることで算出します。
当期純利益を理解するには、損益計算書(P/L)を知ることが近道ですので、簡単にご説明しましょう。
損益計算書とは、一会計期間の経営成績を表す報告書です。売上高から「売上原価」「販売費及び一般管理費」「営業外収益」「営業外費用」「特別利益」「特別損失」「法人税等」を順に足し引きしていくことで、段階的に利益を計算し、最終的な当期純利益を導き出します。
報告先は株主や銀行、税務署などで、報告内容は一会計期間(通常は1年間)にいくらの利益または損失があったというものです。
それぞれの利益が持つ意味と計算式を確認しましょう。
| 利益の種類 | 計算式 | 意味 |
|---|---|---|
| 1. 売上総利益(粗利) | 売上高 - 売上原価 | 商品・サービスそのものの収益力 |
| 2. 営業利益 | 売上総利益 - 販売費及び一般管理費 | 本業(営業活動)で稼ぐ力 |
| 3. 経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 | 資金運用なども含めた経常的な実力 |
| 4. 税引前当期純利益 | 経常利益 + 特別利益 - 特別損失 | 税金を払う前の、臨時要因を含めた利益 |
| 5. 当期純利益 | 税引前当期純利益 - 法人税等 ± 調整額 | 会社に最終的に残る利益 |
1. 売上総利益(粗利益)
売上総利益(粗利益・あらりえき)は、会社の商品力やサービス力の成績を表す利益です。売上原価とは、売上のために直接的にかかる費用のことをいいます。商品の仕入代金や商品を製造するためにかかる費用、サービス提供に直接要する外注費などが含まれます。
売上総利益(粗利益)の計算式
2. 営業利益
営業利益は、会社の本業の成績を表す利益です。会社の商品力やサービス力を表す粗利益に、商品やサービスを販売・提供するためにかかる費用を計算に含め、本業としての利益を表します。
営業利益の計算式
販売費及び一般管理費には以下のようなものがあります。
3. 経常利益
経常利益は、本業以外の財務活動なども含めた利益です。営業利益に、本業以外で発生した「営業外収益(受取利息など)」を足し、「営業外費用(支払利息など)」を引いて求めます。
経常利益の計算式
一般的な会社だと、営業外収益と費用には以下のものがあります。
4. 税引前当期純利益
税引前当期純利益は、その期に発生した臨時的な要因を含めた利益です。法人税等の税金を差し引く前の会社としての利益を表します。
経常利益に、固定資産の売却益などの「特別利益」を足し、災害損失や固定資産売却損などの「特別損失」を引いて求めます。
税引前当期純利益の計算式
特別利益や損失には、会社の活動上臨時的に発生する以下のようなものがあります。
- 特別利益:土地などの不動産を売却して得た利益、臨時的な補助金の収入など
- 特別損失:不動産を売却して出た損失、災害による損失など
5. 当期純利益
当期純利益は、税引前当期純利益から、法人税等(法人税、住民税、事業税)を差し引き、最終的に会社に残る純粋な利益を表します。
また、「法人税等調整額」を用いて、会計上の利益と税務上の所得のズレを調整し、最終金額を確定させます。
当期純利益の計算式
法人税等には、法人税、住民税及び事業税が含まれます。
法人税等調整額とは、会計と税務の計算のズレを調整するもので、会社によってプラスになったりマイナスになったりします。
当期純利益の仕訳と貸借対照表への影響
当期純利益は、貸借対照表(B/S)の「純資産の部」にある「繰越利益剰余金」へと積み上がります。
また、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)は、この「当期純利益」を通じて密接につながっています。 1年間の活動で生み出された当期純利益は、決算処理によって損益計算書から貸借対照表へ移動し、会社の資産(純資産)の一部となる仕組みです。
決算振替仕訳の流れ
簿記の実務では、決算時に収益と費用の各勘定を「損益」勘定に集約し、その差額(当期純利益)を「繰越利益剰余金」へ振り替えます。
- 損益の確定 全ての収益と費用を相殺し、差額を算出します。
- 純資産への振替 利益が出た場合、その金額を資本(純資産)の増加として記録します。
(借方)損益 ××× / (貸方)繰越利益剰余金 ×××
この処理により、当期純利益は会社の「内部留保」として蓄積され、自己資本比率の向上や将来の投資資金、あるいは赤字補填の原資となります。
当期純利益を活用した経営分析指標
当期純利益を売上や資本と比較することで、会社の収益性や投資効率を客観的に評価できます。以下に、当期純利益を使った代表的な指標とその活用方法を解説します。
1. 売上高当期純利益率
売上高当期純利益率は、売上高のうちの何パーセントが最終的な利益として残るかを表す指標です。数値が高いほど収益力が高いといえるでしょう。
同じ会社について過去と現在の売上高当期純利益率を比較すると、どの程度成長しているかをおおよそ把握できます。また、各会社の売上高当期純利益率と比較することで、売上に対する利益効率を比較できます。
計算式
2. 総資産利益率(ROA)
総資産利益率は、会社の保有する全ての資産(=総資本)を使って、どれだけ効率よく利益を上げたかを表す指標です。資産規模に対して利益が少なければROAは低くなり、高いほど良好といえます。
さまざまな会社を比較する場合、総資本当期純利益率が高い会社のほうが資本を有効に運用していると分かるでしょう。
計算式
3. 自己資本利益率(ROE)
自己資本利益率は、株主が出資した資金(自己資本)に対して、どれだけの利益を生み出したかを示す指標です。投資家が最も重視する指標の一つであり、ROEが高い企業は「投資価値が高い優良企業」と見なされる傾向があります。
計算式
4. 1株当たり当期純利益(EPS)
1株当たり当期純利益は、1株に対してどの程度の利益が生じたかを表します。数値が高い会社ほど収益力の高い会社であるといえます。
株価収益率(PER)を計算する際の基礎となり、企業の成長性を測る指標としても使われます。
計算式
5. 配当性向
配当性向は、当期純利益のうちどの程度を配当金として株主に支払ったかを表す指標です。配当性向は数値が高ければよいというものではないことに注意が必要です。企業の成長フェーズや業種に応じた健全な水準を見極める必要があります。
配当性向は、その会社の配当姿勢を判断するための目安になります。
配当性向が高い場合は、株主へ積極的に配当していることになります。反対に配当性向が低い場合は、配当に消極的であるといえるでしょう。しかし、配当に消極的である一方で会社の将来の成長のための内部留保が増えるため、今後成長する可能性もあります。
計算式
当期純利益が大きく変動する主な要因
当期純利益は、本業の活動による変動だけでなく、特別損益の発生や税制改正の影響を強く受けます。
前期と比較して当期純利益が急激に増減した場合、その要因を特定し、一過性のものか継続するものかを判断する必要があります。
変動を引き起こす原因には以下の3点が挙げられます。
利益を安定的に確保するためには、こうした変動要因を予測し、決算前に着地点のシミュレーションを行うことがポイントです。
法人税の計算における当期純利益の扱い
当期純利益はあくまで「会計上の利益」であり、「税務上の所得」とは異なります。
中小企業の経営者や経理担当者が特に注意すべき点は、決算書で作った当期純利益の額に、そのまま税率を掛けて法人税の納税額が決まるわけではないということです。
法人税の納税額の計算は「税務上の所得」に税率を掛けて計算します。この計算のもととなる「税務上の所得」は「益金 - 損金」で求めますが、ここには会計と税務の「ズレ」が生じます。 例えば、会計上は「費用」として処理していても、税務上は「損金」として認められないもの(交際費の一部や役員賞与など)があります。逆に、会計上の「収益」であっても、税務上の「益金」にはならないものもあります。
そのため、確定申告書(別表四)において、当期純利益に対してこれらの加算・減算(申告調整)を行い、課税所得を算出して納税額を決定します。「当期純利益は黒字なのに、手元の現金が足りずに納税が苦しい」という事態を避けるためにも、こうした会計上の利益と税務上の所得の違いを理解しておくことが大切です。
当期純利益を正しく理解しよう!
当期純利益は、その会計期間に会社が活動した最終的な成績を表す数値です。当期純利益の計算方法や他の利益との違い、経営分析などへの活用方法を押さえておけば、経理や経営状況の把握に役立てることができるでしょう。当期純利益を分析する場合は、計算過程における各種利益や貸借対照表との関係を確認することが大切です。
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よくある質問
当期純利益とは?
一会計期間(通常は1年間)に会社が活動した結果の全収益から、全ての費用・法人税等を差し引いた利益のことをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
当期純利益の求め方は?
「当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等 ± 法人税等調整額」によって求めます。詳しくはこちらをご覧ください。
当期純利益の活用方法は?
売上高当期純利益率、総資本当期純利益率、自己資本当期純利益率、1株当たり当期純利益、配当性向などで活用できます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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