• 作成日 : 2024年12月27日

一人親方が払う税金とは?経費と控除で節税する方法

一人親方の税金対策のポイントは、適切な経費計上と所得控除を活用することです。この記事では、一人親方が支払う税金の種類や計算方法、効果的な節税戦略について詳しく解説します。

所得税、住民税、個人事業税、消費税といった主要な税金の仕組みを理解し、経費の活用や所得控除の方法を学ぶことで、適切な税金管理と節税が可能になります。

一人親方が払う税金とは?

一人親方は個人事業主として事業を行うため、サラリーマンとは異なる税金の納付義務があります。

一人親方は、主に以下の4種類の税金を支払う必要があります。

所得税

所得税は、一年間の収入から必要経費を引いた利益(所得)に対してかかる税金です。税率は所得の金額によって変わります。一人親方の場合、事業所得として計算され、所得金額に応じて税率が変動する累進課税方式が適用されます。

所得税の計算方法は以下の通りです。

  1. 年間の収入(売上)を計算
  2. 収入から必要経費を差し引く
  3. 所得控除を適用
  4. 課税所得金額を算出
  5. 課税所得に税率を乗じて所得税額を計算

所得税の確定申告は、毎年2月16日から3月15日までに行う必要があります。国税庁のウェブサイトでは、所得税や確定申告に関する詳細な情報が提供されています。

住民税

住民税は、地方自治体が徴収する地方税の一つです。市町村民税と都道府県民税の合計で、通常は所得の10%程度となります。ただし、地域によって税率が異なる場合があります。所得税と同様に前年の所得を基に計算されます。

通常、6月から翌年5月までの12回に分けて納付します。

住民税の計算や納付方法については、各自治体の税務課に確認することをお勧めします。

個人事業税

個人事業税は、事業を行う個人に課される地方税です。建設業を営む一人親方の場合、通常はこの税金の対象となります。ただし、年間の事業所得が290万円以下の場合は課税されません。

個人事業税の税率は、事業の種類によって異なりますが、建設業の場合5%です。

  • 第一種事業(製造業、建設業など):5%
  • 第二種事業(サービス業、小売業など):4%
  • 第三種事業(不動産貸付業など):3%

個人事業税の納付は、通常8月と11月の2回に分けて行います。

例えば、課税対象所得が500万円の場合、個人事業税は約10万円((500万円 – 290万円) × 5%)となります。

消費税

消費税は、商品やサービスの販売、提供に対して課される間接税です。一人親方の場合、年間の課税売上高が1,000万円を超える場合に納税義務が発生します。

ただし、前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合は、免税事業者として消費税の納税が免除されます。

消費税の税率は以下の通りです。

  • 標準税率:10%(国税7.8%、地方消費税2.2%)
  • 軽減税率:8%(国税6.24%、地方消費税1.76%)

消費税の申告は、3月31日までに行います。

一人親方ができる税金対策のポイント

所得に応じて税金は変わる

一人親方の税金は、その年の所得金額によって変動します。所得金額が高くなるほど、適用される税率も上がる仕組みになっています。

例えば、所得税の場合、1,949,000円以下の場合は5%、195万円以上3,299,000円以下の場合は10%といった具合に段階的に税率が上がっていきます。

このため、一人親方が効果的な税金対策を行うためには、自身の所得金額を正確に把握し、それに応じた対策を講じることが重要です。所得金額の把握には、日々の収支管理が欠かせません。

所得は売上から経費を引いたもの

一人親方の所得金額は、事業による売上高から必要経費を差し引いたものとなります。つまり、売上を増やすか、経費を適切に計上することで、所得金額を調整し、結果として税金を抑えることができるのです。

ただし、経費の計上には注意が必要です。事業に直接関係する支出のみを経費として計上しましょう。個人的な支出を経費として計上することは脱税行為とみなされる可能性があります。

所得からさらに引ける控除もある

一人親方が活用できる税金対策として、所得控除も重要です。所得控除とは、所得金額からさらに差し引くことができる金額のことで、これにより課税所得が減少し、結果的に税金を軽減することができます。

主な所得控除には、基礎控除社会保険料控除小規模企業共済等掛金控除などがあります。これらの控除を適切に活用することで、一人親方は効果的に税負担を軽減できる可能性があります。

青色申告を活用する

一人親方が税金対策を行う上で、青色申告の活用は非常に効果的です。青色申告を行うことで、以下のようなメリットがあります。

  • 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる
  • 損失の繰越控除や繰戻し還付が可能
  • 専従者給与の必要経費算入が認められる

青色申告を行うためには、事前に税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。また、日々の収支を正確に記帳し、帳簿を保存することが求められます。

消費税の免税事業者制度を理解する

一人親方の年間売上高が1,000万円以下の場合、消費税の納税が免除される「免税事業者」となることができます。この制度を利用することで、消費税の納税負担を軽減できる可能性があります。

ただし、免税事業者となると仕入れにかかった消費税の還付を受けられなくなるため、事業の実態に応じて判断する必要があります。また、取引先によっては課税事業者であることを求められる場合もあるので、ビジネス上のメリット・デメリットを十分に検討しましょう。

一人親方が経費に計上できるもの

一人親方が経費として計上できるのは、事業に直接関係する支出です。個人的な支出は経費として認められません。

具体的な経費項目

事務所の家賃

事務所として使用している場所の家賃は、全額経費として計上できます。自宅の一部を事務所として使用している場合も、その面積に応じて家賃を按分して経費に計上できます。例えば、自宅の総面積が100㎡で、そのうち20㎡を事務所として使用している場合、家賃の20%を経費として計上できます。

水道光熱費

事業に使用した水道、電気、ガスなどの光熱費も経費として認められます。自宅兼事務所の場合は、事務所として使用している面積の割合に応じて按分します。例えば、事務所の面積が自宅全体の30%の場合、光熱費全体の30%を経費として計上できます。

通信費

事業用の固定電話代、スマホ・携帯電話代、インターネット接続料なども経費として認められます。ただし、個人的な使用と事業用の使用を明確に区別する必要があります。例えば、携帯電話を業務用と私用で併用している場合、使用時間や通話記録に基づいて按分する必要があります。

各種手数料

銀行振込手数料、クレジットカード決済手数料、会計ソフトの利用料など、事業に関連する各種手数料も経費として認められます。これらの手数料は、一見小さな金額に思えるかもしれませんが、年間で積み重なると無視できない金額になります。

材料費・仕入れ費

建設業や製造業の一人親方にとって、材料費は最も大きな経費の一つです。工事や製品製作に使用する資材、部品などの購入費用が該当します。国税庁の解説によると、これらは「売上原価」として計上されます。

外注費

一人で対応できない作業を他の事業者に依頼した場合の費用も経費となります。ただし、外注先との契約書や請求書を適切に保管することが重要です。

車両費・ガソリン代・交通費

事業用の車両に関する費用は経費として認められます。具体的には以下のものが含まれます。

  • ガソリン代
  • 車両保険料
  • 車検費用
  • 修理費
  • 駐車場代

ただし、プライベートでも使用する車両の場合は、事業使用割合を適切に算出し、その分のみを経費計上する必要があります。

また、顧客訪問や現場への移動に使用した公共交通機関の運賃は経費として計上できます。タクシー代も含まれますが、利用の必要性を説明できるようにしておくことが重要です。

事務用品費

事業に必要な文具や消耗品の購入費用も経費です。パソコンやプリンターなどの電子機器も含まれますが、高額な場合は減価償却の対象となる可能性があります。例えば、10万円以上の固定資産を購入した場合、一度に経費計上するのではなく、使用年数に応じて費用を分割して計上します。これを減価償却といいます。

接待交際費

取引先との会食代や贈答品代なども、経費として認められます。1人当たりの費用が10,000円以下の場合は(2024年4月の法改正により、5000円から1万円に引き上げ)、接待交際費ではなく「会議費」として計上することができます。

広告宣伝費

チラシやウェブサイトの制作費、広告掲載料なども経費として認められます。自身のスキルアップのための書籍購入や、セミナー参加費用も含まれる可能性があります。

保険料

事業に関連する保険の掛け金は経費となります。具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 労災保険(特別加入)
  • 事業主健康保険
  • 工事保険

経費計上をする際の注意点

領収書の保管

すべての経費に対して領収書を保管することが極めて重要です。税務調査の際に証拠として求められる可能性があります。領収書は原則7年間保管する必要があります。ただし、前々年の所得が300万円以下の場合は5年間の保存となります。

按分の必要性

家賃や光熱費、通信費など、私生活と事業で共用しているものは、適切に按分して経費計上する必要があります。使用実態に基づいた合理的な按分方法を選択し、その根拠を説明できるようにしておきましょう。

経費の適切な計上時期

経費は原則として、実際に支払いが発生した年度に計上します。ただし、前払いや後払いの場合は、その取引の帰属する年度に適切に計上する必要があります。

一人親方の税金対策:所得控除

所得控除は、一人親方の課税所得を減らすための重要な手段です。適切に活用することで、納税額を大幅に抑えることができます。

主な所得控除の種類

基礎控除

基礎控除は、すべての納税者に適用される基本的な控除です。2024年の基礎控除額は48万円となっています。ただし、合計所得金額が2,400万円を超える場合、控除額が逓減し、2,500万円を超えると適用されません。

青色申告特別控除

青色申告を行う一人親方は、最大65万円の特別控除を受けることができます。ただし、e-Taxによる電子申告や電子帳簿保存を行う必要があります。

社会保険料控除

一人親方が支払った健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料は、全額控除の対象となります。この控除を適用することで、社会保障費用の負担を軽減できます。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済や中小企業退職金共済に加入している一人親方は、支払った掛金の全額を所得から控除できます。これは、将来の生活保障と税制優遇を同時に受けられる効果的な方法です。

配偶者控除

配偶者控除は、配偶者の年間所得が48万円以下である場合に受けられる控除です。控除額は、納税者の所得に応じて異なり、最大38万円です。また、配偶者の所得が48万円を超えた場合でも、一定の条件を満たせば「配偶者特別控除」を受けることができます。

扶養控除

扶養控除は、16歳以上の扶養親族がいる場合に受けられる控除です。控除額は、扶養親族の年齢や学生であるかどうかによって異なります。例えば、16歳から18歳までの扶養親族の場合、控除額は38万円です。一方、特定扶養親族(19歳から22歳までの学生)の場合、控除額は63万円となります。

専従者控除

一人親方の事業に家族が専従者として働いている場合、専従者給与を経費として計上できます。ただし、適正な給与額の設定が必要で、不適切な金額設定は税務調査の対象となる可能性があります。

生命保険料控除

生命保険料控除には、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除があります。それぞれの種類ごとに最大4万円、合計で最大12万円まで控除を受けられます。

ふるさと納税

ふるさと納税は、寄付金額のうち2,000円を超える部分について、所得税および個人住民税から控除が受けられます。

例えば、10,000円をふるさと納税した場合、2,000円を差し引いた8,000円が控除対象となります。この8,000円に対して所得税と住民税の控除が適用されます。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後の資金を積み立てるための制度で、掛金の全額が所得控除の対象となります。これにより、課税所得が減少し、所得税と住民税の負担が軽減されます。

iDeCoの掛金には、職業によって異なる上限額が設定されています。

一人親方(自営業者)の場合の掛け金の上限額は月額68,000円(年額816,000円)です。これは、他の職業に比べて高めに設定されています。理由としては、自営業者が厚生年金に加入していないため、自身で老後資金を積極的に準備する必要があるからです。

例えば、毎月68,000円をiDeCoに拠出する場合、年間で816,000円が所得控除の対象となります。これにより、課税所得が減少し、所得税と住民税の負担が軽減されます。

所得控除適用時の注意点

適切な記録管理

所得控除を適用するためには、適切な記録管理が不可欠です。領収書や契約書などの証拠書類を整理し、必要に応じて提示できるようにしておくことが重要です。

控除限度額の確認

各控除には限度額が設定されています。自身の所得状況に応じて、適用可能な控除額を正確に把握することが必要です。国税庁の確定申告の手引きを参考にすると良いでしょう。

法改正への対応

税法は毎年のように改正されます。最新の控除制度や適用条件を常に確認し、自身の状況に最適な控除を選択することが重要です。

一人親方が税金対策として確定申告を行う際の注意点

確定申告は一人親方の皆さんにとって、効果的な税金対策の機会でもあります。

確定申告の期限を厳守する

一人親方にとって、確定申告の期限を守ることは非常に重要です。通常、確定申告の期限は毎年3月15日までとなっています。期限を過ぎると延滞税や加算税が課される可能性があるため、余裕を持って準備を進めることが賢明です。特に、初めて確定申告を行う場合は、手続きに不慣れなため、早めの準備が必要です。

適切な帳簿の記録と保管

確定申告を正確に行うためには、日々の収入と支出を適切に記録し、帳簿をつけることが不可欠です。国税庁の指針によると、帳簿や領収書は原則として7年間保存する必要があります。以下の点に注意しましょう:

  • 収入と支出を明確に区分して記録する
  • 領収書や請求書は日付順に整理して保管する
  • 現金の出入りだけでなく、クレジットカードや電子決済の利用も記録する
  • 私用と仕事用の経費を明確に区別する

経費の適切な計上

一人親方が確定申告を行う際、経費の適切な計上は税金を適正に抑える上で重要です。ただし、過度な経費計上は税務調査のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。以下は経費計上の際の注意点です。

  • 仕事に直接関係する経費のみを計上する
  • 固定資産の減価償却を適切に行う
  • 交際費や接待費は、業務との関連性を明確にできるものに限定する
  • 自宅の一部を事務所として使用している場合、その按分計算を適切に行う

青色申告の活用

一人親方が税金対策を効果的に行うには、青色申告の活用を検討すべきです。青色申告を行うことで、以下のようなメリットがあります。

  • 最大65万円の青色申告特別控除が受けられる(電子申告を利用した場合
  • 赤字の繰越控除が3年間可能になる
  • 専従者給与の必要経費算入が認められる

ただし、青色申告を行うには事前に届出が必要であり、より詳細な帳簿の記帳が求められます。これらの要件を満たせるかどうか、慎重に検討する必要があります。

消費税の納税義務の確認

一人親方の年間売上が1000万円を超える場合、原則として消費税の納税義務が生じます。ただし、国税庁の説明によると、特定の条件を満たせば免税事業者となることができます。消費税の納税義務について、以下の点に注意しましょう:

  • 売上が1000万円を超える可能性がある場合は、早めに対策を検討する
  • 消費税の課税事業者となる場合、適切な価格設定と経理処理が必要になる
  • 簡易課税制度の適用可否を検討し、有利な方法を選択する

マイナンバーの適切な管理

確定申告を行う際、マイナンバーの記載が必要です。一人親方は個人事業主として、自身のマイナンバーを適切に管理し、確定申告書に正確に記載する必要があります。また、取引先の個人事業主のマイナンバーを取り扱う場合は、以下の点に注意が必要です。

  • マイナンバーの利用目的を明確にし、必要以上の情報収集を避ける
  • マイナンバーを含む個人情報の漏洩防止対策を講じる
  • 不要になったマイナンバー情報は適切に廃棄する

電子申告(e-Tax)の利用

確定申告を行う際、電子申告システム「e-Tax」の利用を検討することをお勧めします。e-Taxを利用することで、以下のようなメリットがあります。

  • 青色申告特別控除額が最大65万円に増額される
  • 申告書の提出や納税を24時間365日行うことができる
  • 申告書の作成ミスを軽減できる
  • 添付書類の提出を省略できる場合がある

ただし、e-Taxを利用するには事前の準備が必要です。e-Taxの公式サイトで利用方法や必要な準備について確認しましょう。

税金や税法は複雑で頻繁に改正されるため、一人親方が全てを把握するのは困難です。特に初めて確定申告を行う場合や、事業規模が拡大した場合には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

バックオフィス業務の知識をさらに深めるなら

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事