• 作成日 : 2024年12月19日

一人親方として働くメリット・デメリットは?独立時の手続きや成功のコツを解説

一人親方としての独立には、会社員とは異なるメリットやデメリットがあります。本記事ではそれらを解説し、独立時に必要な手続きや成功のコツも紹介します。建設業で独立を考えている方は必見です。

一人親方として働くメリット

雇用されるより単価が高いケースが多い

通常、企業に雇用された場合、役職などによって報酬が決まりますが、一人親方の場合は役職報酬ではなく、実績や信用によって収入が変わります。雇用されるよりも高い単価で仕事を受注できるケースが多いです。

例えば、建設業界では、一人親方の日当は雇用労働者の1.5〜2倍程度になることも珍しくありません。これは、一人親方が自身の技術や経験、専門性を直接価格に反映できるためです。

仕事の量をコントロールできる

一人親方の大きな利点は、自分で仕事量を調整できることです。繁忙期には積極的に仕事を受注し、収入を増やすことができます。一方で、プライベートな予定がある場合や体調管理が必要な時期には、仕事量を減らすことも可能です。

この柔軟性は、ワークライフバランスの向上にもつながります。家族との時間を大切にしたい方や、副業として一人親方を始める方にとって、非常に魅力的な点といえるでしょう。

定年が無い

一般的な企業では60歳や65歳で定年を迎えますが、一人親方には定年がありません。健康で働く意欲がある限り、年齢に関係なく仕事を続けることができます。

長年培った技術や経験を最大限に生かした老後を実現できます。

特に建設業や職人の世界では、年齢を重ねるほど技術が磨かれ、価値が高まることも多いため、一人親方として働き続けることのメリットは大きいといえます。

経費の計上により節税できる

一人親方は個人事業主として扱われるため、事業に関連する経費を収入から差し引くことができます。確定申告時に正確に計上することで、課税対象となる所得を抑え、結果的に節税効果が生まれます。

主な経費として計上できるものには以下があります。

  • 工具や機材の購入費
  • 車両費(ガソリン代、車両保険料、修理費など)
  • 作業着や安全装備の購入費
  • 事務所や倉庫の賃借料
  • 通信費(携帯電話代、インターネット料金など)
  • 広告宣伝費

一人親方として働くデメリット

収入が不安定

一人親方として働く最大のデメリットは、収入の不安定さです。雇用されている場合と異なり、固定給がなく、仕事の受注状況によって収入が大きく変動します。

特に建設業界は季節や景気の影響を受けやすく、閑散期には収入が激減する可能性があります。

また、病気やケガで働けない場合、収入が完全に途絶えてしまうリスクもあります。

社会保険の受給額が低い

一人親方は個人事業主として扱われるため、厚生年金や健康保険などの社会保険に加入できません。代わりに国民年金や国民健康保険に加入することになりますが、これらは一般的に給付額が低くなります。

特に年金については、将来の受給額が雇用されている場合と比べて大幅に少なくなる可能性があります。

ローンや融資の審査が通りづらい

銀行やその他の金融機関は、安定した収入を重視します。一人親方の場合、収入の変動が大きいため、住宅ローンや事業融資の審査が通りにくくなります。生活設計や事業拡大の際に大きな障壁となる可能性があるでしょう。

また、クレジットカードの発行も困難になる場合があります。

下請けでの仕事が増える

一人親方は、直接元請けから仕事を受注することが難しく、多くの場合、下請けとして働くことになります。受注できる仕事の規模や種類が限られ、大型プロジェクトへの参加機会が少なくなります。

一人親方として独立する際に行う主な手続き

開業届の提出

一人親方として独立する際、最初に行うべき手続きは開業届の提出です。これは事業を始める際に税務署に提出する書類で、個人事業の開始を税務署に知らせるためのものです。開業届は事業開始から1ヶ月以内に提出する必要があります。

開業届の提出方法には、直接税務署に持参する方法とe-Taxを利用してオンラインで提出する方法があります。e-Taxを利用する場合は、事前に電子証明書の取得が必要となります。

金融機関の口座開設

事業用の銀行口座を開設することは、個人の財務と事業の財務を分離するために重要です。事業用口座を持つことで、経理処理が容易になり、確定申告の際にも便利です。

口座開設時に必要な書類は以下の通りです。

  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 印鑑(銀行印用)
  • 開業届の控え
  • 屋号付での営業事実確認書類(事務所の賃貸契約書など)

一般的な個人口座とは別に、事業用の口座を開設することをお勧めします。多くの金融機関では、個人事業主向けの専用口座サービスを提供しています。

国民年金・国民健康保険・一人親方労災保険の加入

一人親方として独立すると、社会保険の加入状況が変わります。雇用されていた時とは異なり、自ら手続きを行う必要があります。

国民年金の加入

会社員時代に厚生年金に加入していた場合、独立後は国民年金に切り替える必要があります。手続きは居住地の市区町村役場で行います。国民年金は原則として20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です。

国民健康保険の加入

会社の健康保険から脱退し、国民健康保険に加入します。手続きは居住地の市区町村役場で行います。国民健康保険は、病気やけがをしたときの医療費の負担を軽減する制度です。

一人親方労災保険の加入

一人親方として建設業に従事する場合、労災保険に特別加入することができます。これは、仕事中の事故や通勤途中の事故などによる怪我や病気に対する保障を受けられる制度です。加入手続きは、特別加入団体へ申込み、そこから所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長へ申請されます。

一人親方として成功するコツ

事務や経理をアウトソーシングする

一人親方として成功するためには、自身の専門スキルに集中することが重要です。事務作業や経理業務に時間を取られすぎると、本来の仕事に支障をきたす可能性があります。

以下のような業務はアウトソーシングすることで、効率的に事業を運営できます。

  • 確定申告の準備と申告書の作成
  • 日々の帳簿付けや経理処理
  • 請求書の発行と管理
  • 給与計算(従業員を雇用している場合)
  • 各種書類の作成と提出

税理士や社会保険労務士などの専門家に依頼することで、ミスを減らし、コンプライアンスを維持しつつ、自身の本業に専念できます。

また、専門家のアドバイスを受けることで、税制や法律の変更にも適切に対応できます。

インターネットやアプリで元請業者を探す

一人親方として成功するためには、安定した仕事の確保が不可欠です。

デジタル化が進む現代では、インターネットやスマートフォンアプリを活用して、効率的に仕事を獲得することが可能です。

クラウドソーシングサイトへの登録や建設業界特化型のマッチングアプリの利用により、新たな元請業者や顧客と繋がることが可能です。

オンライン上の建設業界コミュニティへの参加もおすすめです。

デジタルツールを活用することで、地理的な制約を超えて仕事を獲得できる可能性が広がります。また、オンライン上での評価システムを通じて、自身の実績や信頼性を効果的にアピールすることができます。

従業員を雇ってリソースを増やす

一人親方として事業が軌道に乗ってきたら、次のステップとして従業員を雇用し、事業規模を拡大することを検討しましょう。

従業員を雇用することで、以下のようなメリットがあります。

  • より大規模な案件を受注できる
  • 複数の現場を同時に管理できる
  • 専門性の異なる人材を確保し、サービスの幅を広げられる
  • 休暇を取りやすくなり、ワークライフバランスが改善される
  • 将来的な事業継承の可能性が生まれる

ただし、従業員を雇用する際には、労働法規の遵守や社会保険の加入など、新たな責任も生じますので慎重に検討しましょう。

一人親方問題が知っておきたい国の動き

国土交通省の検討会

国土交通省は、令和2年6月より「建設業の一人親方問題に関する検討会」を継続的に開催しています。この検討会では、建設業における一人親方の増加に伴う様々な課題について議論が行われています。

主な論点としては、一人親方の労働環境や社会保障、安全衛生管理、適正な請負関係の確保などが挙げられます。

偽装一人親方問題

一人親方と発注者との関係が、実質的には雇用関係に近い「偽装請負」となっているケースがあります。これにより、労働法制の適用逃れや社会保険料の負担回避といった問題が生じています。

適正な請負関係を確保し、安全責任の所在を明確にしていく必要があります。

消費税とインボイス制度の影響

2023年10月から導入されたインボイス制度により、一人親方は、以下の2つからどちらかを選ばなければいけません。

  1. 消費税の納付義務を負う課税事業者となり、適格請求書(インボイス)が発行できる手続きを行う
  2. 取引先が減るリスクを負うかわりに、インボイスを発行できない免税事業者として納税義務を免れる(免税事業者の場合のみ)

適格請求書発行事業者への登録は強制ではなく任意ですので、免税事業者のままでも仕事は可能です。自身の事業規模や取引内容を吟味して検討しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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