• 作成日 : 2025年1月30日

一人親方は確定申告してないとどうなる?無申告のリスクと確定申告を効率化するコツを解説

一人親方が確定申告をしないままでいると、税金の延滞やローン審査での不利益、収入証明ができないなど多くのリスクが発生します。

この記事では、無申告のリスクやスマホでできる簡単な申告方法、申告を続けるためのコツなどをわかりやすく解説します。

一人親方は確定申告してないとどうなる?

確定申告は、収入や経費を税務署に報告する大切な義務です。確定申告を怠ることで、税金に関するペナルティや、収入証明ができないことによる融資やローンへの影響が考えられます。

未申告を続けることで、どのようなリスクがあるのかを見ていきましょう。

延滞税の発生

一人親方が確定申告を行っていない場合、納付が遅れた税金に対して延滞税が発生します。延滞税とは、納付期限が過ぎた後に税金を支払った場合に課せられる罰則的な税金です。

延滞税は遅れた日数に応じて計算され、長期間放置するほど金額が増える仕組みです。この延滞税は、本来の税額に加えて負担が大きくなるため、経済的にも損失が大きくなります。

延滞税の計算方法

延滞税は、納付すべき税金の金額に対して一定の割合が課されます。具体的には、延滞期間に応じて次のように計算されます。

  • 2ヶ月未満:法定納期限の翌日から2ヶ月間は年2.4%
  • 2ヶ月以上:最初の2ヶ月を超えた部分は年8.7%

これにより、延滞日数が増えるほど、支払う延滞税も増加しますので、早めに対処することが重要です。

延滞税の具体例

実際の計算を例として挙げてみましょう。例えば、納付すべき税金が10万円だった場合の1ヵ月当りの延滞税は次のように計算されます。

期間税率延滞税額
2ヶ月未満年2.4%約203円/月
2ヶ月以上年8.7%約738円/月

このように、延滞の期間が長ければ長いほど、最終的に支払う金額が増えてしまいます。

延滞税を回避するために

延滞税を避けるためには、納税期限を把握し、確定申告を早めに行いましょう。また、もしも申告が遅れそうな場合は、早めに税務署に相談することが重要です。

加算税の発生

加算税とは、確定申告を怠ったことに対する罰則として、税務署から求められる追加的な税金です。加算税には「無申告加算税」というものがあり、申告期限を過ぎてから自主的に申告した場合でも課税されることが多いです。ただし、税務署から指摘を受ける前に自ら申告を行うと、加算税が減額される場合もあるため、なるべく早めに申告することが大切です。加算税は基本的には税額の一定割合が課されるため、特に無申告の期間が長ければ長いほど、金銭的な負担も増加してしまいます。

加算税の種類

  • 無申告加算税: 確定申告を全く行っていない場合に課せられる加算税です。一般的には、納付すべき税額の15%が加算されます。
  • 過少申告加算税: 申告はしたものの、所得を過少申告した場合に課せられます。この場合は、過少申告した税額に対して、10%から15%の加算税が発生します。

加算税の計算方法

加算税の計算は、以下のように行います。

状況基本税額加算税率加算税の計算額
無申告100,000円15%15,000円
過少申告100,000円10%10,000円

このように、無申告や過少申告によって、必要以上の負担が発生する可能性があるため、確定申告はきちんと行うことが重要です。

収入証明ができない

一人親方が確定申告をしていないと、収入を証明することができません。収入証明は、ローンや賃貸の契約、補助金の申請など、さまざまな場面で必要になります。収入証明ができないと、金融機関からの信用が低下し、ローンの審査に通りにくくなります。また、取引先が収入証明を求める場合、提出できないことで契約を結ぶ機会を逃してしまうことがあります。

確定申告が収入証明の唯一の手段ではないものの、税務署が発行する証明書としては信頼性が高いため、取引先や金融機関からの信頼を得るためにも申告が必要です。

収入証明が必要な場面

収入証明は多くの金融機関や取引先、行政機関において必須の書類です。以下のような場面で特に重要視されます。

  • 住宅ローンの申請
  • 生活支援や補助金の申請
  • ビジネスの取引先との契約時
  • 税務調査や監査の際

住宅ローンなどが受けられない

一人親方が確定申告をしていないと、住宅ローンや自動車ローンなどの融資を受ける際に大きな制約が生じます。

特に住宅ローンを検討している場合、金融機関は確定申告書を通じて収入や経済状況を確認します。一人親方のように給与明細が発行されない働き方の場合、確定申告書が収入を証明するための書類になります。もしも長期間申告を行っていないと、収入が不明瞭と判断され、融資審査が通らない可能性があります。

補助金申請への影響

一人親方が補助金を申請する際にも、必要な書類の提出が求められます。補助金の対象となるためには、一定の収入が必要ですが、その収入証明する書類がないと申請も困難になります。特に近年の補助金制度は、小規模な事業者を支援する内容が増えており、一人親方にとっては事業の安定化に役立つものが多いです。

例えば、小規模事業者持続化補助金などは、事業の拡大や改善に役立つ制度ですが、申請には収入証明が必要とされることが多く、確定申告がその証明手段として求められます。確定申告をしていない場合、こうした補助金の申請資格を失う可能性があり、チャンスを逃すことにもつながります。

建設業の許可が受けられない

建設業の一人親方として活動する場合、確定申告を行っていないと建設業の許可が受けられないこともあります。建設業許可の申請には、財務状況や収入を証明する書類が必須です。確定申告を行っていないと、収入の証明ができないため許可を得られないことが一般的です。建設業の許可は、新規案件の受注や業務の幅を広げるために重要な要素となります。

例えば、大型プロジェクトに関わる際や、公共事業の入札に参加する際には許可が必要です。このため、申告を怠るとキャリアの成長が制約されてしまいます。

一人親方の無申告が発覚するケース

無申告の状態を続けていると、意図せず他の関係者や取引により申告漏れが発覚することが少なくありません。税務署は一定期間ごとに事業者の申告状況をチェックしており、一人親方であっても無申告の事実が簡単に見逃されることはありません。

取引先への税務調査が入ったとき

一人親方が確定申告を行っていない場合、取引先に対して税務調査が入ると、無申告が明らかになることがあります。

例えば、工務店や建設業の一人親方が材料の仕入れ先や元請け企業と取引を行っている場合、取引先企業が税務署の調査対象になることがあります。税務署は取引先の帳簿を詳細に調べ、取引内容や金額を確認するため、一人親方との取引情報も調査対象になります。

取引先が適切に申告している場合でも、その過程で無申告の事実が明らかになりやすいのです。取引先から税務署に報告されている取引内容と一人親方の申告内容が一致していない、あるいは申告自体がない場合、無申告が明らかになります。

知人・関係者による情報提供

意外と多いのが、知人や関係者からの情報提供によって無申告が発覚するケースです。税務署は、匿名の通報や密告により調査を行う場合があり、一人親方が無申告を続けていると知人や周囲の関係者からの通報を受けることもあります。例えば、前の従業員や取引先の担当者など、業務内容を知っている関係者からの情報提供が契機となることがあります。

また、特定の取引内容や高額な買い物に関する情報が税務署に伝わり、申告内容の確認が行われることもあります。さらに、税務署は時折、情報提供者からの情報をもとに調査の優先度を決めるため、密告による発覚のリスクは無視できません。確定申告を怠ることで、思いもよらない形で無申告が明らかになる場合もあるため、日々の申告と記録をしっかり行いましょう。

車や不動産を購入したとき

一人親方が車や不動産を購入する際にも、無申告が「ばれる」きっかけとなることがあります。特に、高額な買い物をする際には、購入資金の出所や収入状況の証明が求められることが一般的です。車や不動産の購入時には、金融機関や販売業者が税務署に資産移動の情報を提供することが多いため、税務署は一人親方の購入に際して収入をチェックする場合があります。

例えば、高級車や家を購入する場合、購入金額に見合う収入が申告されていないと、資金の出所が不明瞭と判断され、税務署が調査を開始する可能性が高まります。

さらに、住宅ローンを利用する際にも収入証明が求められるため、確定申告を行っていないとローン審査に通らず、収入が証明できない状況が露呈します。こうした大きな買い物の際に、税務署の確認が入ることを見越して、日頃から正確な申告を行うことが安心につながります。

スマホでできる一人親方の確定申告

スマホで確定申告を行う方法は、税務署が提供する「e-Tax(イータックス)」や会計アプリを活用するのが一般的です。特に、一人親方は外出が多く、手軽に申告できる手段が役立つでしょう。

e-Taxを使って申告する

e-Taxは国税庁が提供するオンラインの申告システムで、スマホからもアクセスできます。確定申告期間中にe-Taxを利用することで、税務署に直接足を運ばずに申告が完了します。e-Taxを利用するには、「マイナンバーカード」と「ICカードリーダー」もしくは「ID・パスワード方式」が必要です。後者は、税務署で事前にID・パスワードを発行してもらう必要がありますが、一度発行すれば以降はスマホで簡単にログインして申告ができます。

また、e-Taxでは収入や経費の入力も簡単に行えます。例えば、収入金額や必要経費を入力し、あとは画面の指示に従って操作するだけです。確定申告に不安がある方も、システムの案内に従えば、税額が自動計算されるので、複雑な計算を意識せずに済みます。

確定申告サービスで記帳と申告を行う

近年では、スマホで使える確定申告サービスも充実しています。たとえば「マネーフォワード クラウド確定申告」では経費の自動仕分け機能や収入の記録機能が備わっており、日々の取引をスマホで記帳できます。

確定申告サービスを使うと、1年分の収入や経費がデータとして蓄積されるため、確定申告時に一括してデータを提出できます。

マネーフォワード クラウド確定申告はe-Taxと連携しており、アプリ内で申告書を作成し、そのまま送信することが可能です。スマホさえあれば日常的に記帳ができ、申告期間にあわてずに済むため、申告もれのリスクを大幅に減らせます。

スマホを使った確定申告の流れ

スマホでの確定申告は、次のステップで進められます。

  1. 必要書類の準備
  2. 申告書類の作成
  3. 電子申告の利用
  4. 申告の確認と提出

まず、収入や経費に関する確定申告に必要な書類を準備します。以下の書類が揃っていると、スムーズに申告が進められます。

  • 収入の証明書(請求書や売上帳など)
  • 経費の領収書
  • マイナンバー関連書類

次に、スマホ上のアプリやe-Taxを利用して申告書類を作成します。会計アプリを使用すれば、収入や経費の入力が手軽に行え、計算も自動化されているため安心です。

書類が完成したら、電子申告を利用して税務署へ提出します。スマホから簡単に申告書を送信できるため、郵送に比べて手間がかかりません。電子申告を行うためには、事前に以下の準備が必要です。

  • 電子申告用のIDを取得
  • 必要な証明書類を用意

送信前に申告内容を確認し、不備がないか確認します。すべての確認が終わったら、電子申告を通じて正式に申告を完了します。この手順で、スマホを活用した簡単な確定申告が可能です。

一人親方が確定申告を続けるためのコツ

確定申告を続けるためには、日常的な収支の管理と、無理なくできるやり方を見つけましょう。特に、一人親方は外出が多く、申告の書類作成にかけられる時間が限られるため、隙間時間にできる工夫が役立ちます。ここでは、確定申告をスムーズに行うためのポイントやコツをご紹介します。

日常の記帳を習慣にする

確定申告を無理なく続けるためには、日常的に記帳を行うことが最も効果的です。収入や経費が発生するたびにスマホやパソコンで記録しておけば、年度末に慌てることがなく、申告時に必要な情報が整い、スムーズに申告書が作成できます。

多くの一人親方が記帳を手間に感じるのは、「日々の業務の中でつい忘れてしまう」という理由です。そのため、記帳は仕事の終了後や休憩時間など、習慣として続けやすいタイミングを見つけると良いでしょう。また、スマホを使えば、その場で簡単に記帳が完了し、記録の書き方に迷うことも少なくなります。

例えば、以下の方法で記帳を習慣化するのはいかがでしょうか。

  • 収入や支出はその都度記録する
  • レシートや請求書は整理して保管する
  • 定期的に帳簿を見直す

専門家のアドバイスを受ける

税務に関する不安や疑問がある場合は、専門家に相談することも一つの手です。税理士に依頼することで、最新の税法について情報収集でき、正確な申告を行うことができます。

確定申告のスケジュールを管理する

確定申告の締め切りを逃すと、無申告扱いとなり、延滞税や加算税が発生する可能性があります。そのため、申告期間をあらかじめ把握し、スケジュールに入れておくことが大切です。確定申告の期限は通常、翌年3月15日までですが、準備が整っていれば、期間が始まる2月中に提出してしまうのが理想的です。

レシートや領収書を整理する

確定申告の締め切りを逃すと、無申告扱いとなり、延滞税や加算税が発生する可能性があります。そのため、申告期間をあらかじめ把握し、スケジュールに入れておくことが大切です。確定申告の期限は通常、翌年3月15日までですが、準備が整っていれば、期間が始まる2月中に提出してしまうのが理想的です。

一人親方は確定申告を怠らず、リスクを回避しよう

一人親方が確定申告を怠ると、延滞税や加算税が発生するだけでなく、収入証明ができないことで住宅ローンや補助金申請に支障が出るリスクがあります。また、税務調査やインボイス提出、知人からの情報提供により無申告が「ばれる」ことも少なくありません。スマホや会計アプリを活用することで、申告の記帳・管理が手軽に行え、白色・青色申告の選択も可能です。日常的な記帳やスケジュール管理を習慣にし、無申告のリスクを回避しながら税制のメリットを活用しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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