• 作成日 : 2025年2月26日

労災年金の受給者が死亡した時の手続きや配偶者が受けられる補償を解説

労災年金の受給者が死亡した場合、遺族は速やかに労働基準監督署に死亡届を提出する必要があります。また、配偶者が遺族年金を受け取れるかどうかは、いくつかの条件によって決まります。この記事では、労災年金受給者が亡くなった際の遺族の対応や遺族補償年金が受けられる条件や遺族の範囲、支給額の計算方法、申請に必要な書類について説明します。

労災年金の受給者が死亡した場合どうすればいい?

労災年金の受給者が死亡した場合、遺族は速やかに、年金の支給決定を受けた労働基準監督署に死亡届を提出する必要があります。労働基準監督署で「年金受給権者死亡届(年金申請様式第6号)」を入手し、必要事項を記入します。この届出には、死亡診断書のコピーか死亡届記載事項証明書、および年金証書の添付が必要です(マイナンバーカードの申請が完了している場合は添付不要)。

書類の提出後、未支給年金がある場合は「未支給年金支給請求書」の提出が、過払いがあれば返還が求められます。

また、遺族補償年金の支給要件に該当する場合には申請を行います。申請方法は「遺族補償年金支給請求書」を記入の上、戸籍謄本や世帯全員の住民票の写しなどの書類を添付します。

労災年金の受給者の死亡後に配偶者は遺族補償年金をもらえるか

労災年金受給者の死亡後、配偶者が遺族補償年金を受け取れるかどうかは、いくつかの条件によって決まります。

遺族補償年金の支給要件

遺族補償年金とは、労災で死亡した労働者の遺族に対して支給される年金です。

遺族補償年金を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 遺族が、亡くなった方の収入によって生計を維持していたこと
  • 被災労働者の配偶者(事実婚関係にある場合を含む)、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であること

また、支給には優先順位が設けられており、最も優先順位の高い遺族のみが年金を受給できます。例えば、配偶者と子供がいる場合は、通常、配偶者が優先的に受給権を得ることになります。

配偶者が妻の場合(亡くなったのが夫)

労災で夫が亡くなり妻が配偶者の場合、遺族補償年金を受け取るための条件に年齢などの要件はなく、夫によって生計維持されていれば受給権者となります。

配偶者が夫の場合(亡くなったのが妻)

労災で妻が亡くなり配偶者が夫の場合、遺族補償年金を受給するには、以下のいずれかを満たす必要があります。

  • 妻の死亡当時、60歳以上であること
  • 一定程度以上の障害があること(障害等級1級から3級に相当する状態)

配偶者を含めた遺族の優先順位

遺族補償年金を受給するには遺族の範囲とその優先順位が定められています。優先順位の考え方は、労災により亡くなった労働者によって最も生計を維持されていた人を優先することです。そのため通常は配偶者や子どもが最優先の受給者となります。

もし、労災年金の受給者が亡くなった後に配偶者がいない場合は、次の優先順位に従って支給が行われます。

具体的な優先順位は以下の通りです。

優先順位遺族の範囲
1位妻・夫(60歳以上、もしくは障害の状態)
2位子(18歳に達する日以後の最初の3月31日まで、もしくは障害の状態)
3位父母(60歳以上、もしくは障害の状態)
4位孫(18歳に達する日以後の最初の3月31日まで、もしくは障害の状態)
5位祖父母(60歳以上、もしくは障害の状態)
6位兄弟姉妹(60歳以上、18歳に達する日以後の最初の3月31日まで、もしくは障害の状態)
7位夫(55歳以上60歳未満)
8位父母(55歳以上60歳未満)
9位祖父母(55歳以上60歳未満)
10位兄弟姉妹(55歳以上60歳未満)

なお、55歳以上の夫、父母、祖父母、兄弟姉妹については60歳になるまでの間は実際の支給を受けることはできません。

そもそも労災年金とは?

労災年金とは、労災保険に加入している労働者が仕事中や通勤途中に事故や病気で障害を負ったり、死亡した場合に支給される年金のことです。具体的には、障害補償年金、傷病補償年金、遺族補償年金の3種類の年金のことをいいます。

労災年金は、治療開始後1年6ヶ月以上経っても治っていない場合や障害を負った場合、不幸にも命を落とした場合に適用されます。

労災年金の種類と主な内容は下記の通りです。

  1. 障害補償年金
    • 業務上の事由による負傷や疾病が治った後も障害が残る場合に支給されます。
    • 障害等級1級から7級までが対象
    • 給付基礎日額の131日分から313日分を年金として支給
  2. 傷病補償年金
    • 業務上の事由による負傷や疾病が、療養開始後1年6ヶ月を経過しても治らず、一定程度の傷病等級にある場合に支給されます。
    • 傷病等級1級から3級までが対象
    • 給付基礎日額の245日分から313日分を年金として支給
  3. 遺族補償年金
    • 労働者が業務上の事由で死亡した場合、その遺族に支給されます。
    • 遺族の範囲:配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(一定の要件あり)
    • 遺族の人数に応じて給付基礎日額の153日分から245日分を年金として支給

配偶者は遺族補償年金をいつから、いつまでもらえるか

配偶者は遺族補償年金をいつからもらえるか

配偶者は遺族補償年金を、支給要件に該当した月の翌月分より受け取ることができます。毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月の6期に、それぞれの前2か月分が支払われます。

配偶者は遺族補償年金をいつまでもらえるか

配偶者は遺族補償年金を死亡または再婚する(事実婚を含む)まで受け取ることができます。

また、配偶者以外の場合、受給する遺族によって以下のように異なります。

  • 子どもの場合:18歳に達した日以後の最初の3月31日まで(障害がある場合は20歳まで)
  • その他の遺族:死亡するまで

その他、直系血族または直系姻族以外の者の養子となった場合や、離縁により死亡労働者との親族関係が終了したときは遺族補償年金を受けることはできなくなります。この際、次順位者がいる場合は次順位者が受け取ることになります。これを転給といいます。

配偶者は労災遺族年金をいくらもらえるか

労災遺族年金の金額は、亡くなった方の平均賃金や遺族の人数によって異なります。一般的な目安として:

  • 遺族1人の場合:給付基礎日額の153日分(年額)
  • 遺族2人の場合:給付基礎日額の201日分(年額)
  • 遺族3人の場合:給付基礎日額の223日分(年額)
  • 遺族4人以上の場合:給付基礎日額の245日分(年額)

給付基礎日額とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額で、事故発生日以前3ヶ月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った金額のことです。

実際の金額は個々の状況によって異なるため、労働基準監督署に確認することをお勧めします。

労災遺族年金の申請手続き

労災遺族年金の申請手続きは以下の流れで行います。

  1. 必要書類の準備
    • 遺族補償年金支給請求書
    • 戸籍謄本
    • 世帯全員の住民票の写し
    • 亡くなった方との生計維持関係を証明する書類
    • 障害がある場合は医師の診断書
  2. 労働基準監督署への提出
    • 準備した書類を、亡くなった方の勤務先を管轄する労働基準監督署に提出します。
  3. 審査と決定
    • 労働基準監督署が書類を審査し、支給の可否を決定します。決定までに数週間から数ヶ月かかる場合があります。
  4. 支給開始
    • 支給が決定すれば、労災年金受給者が死亡した翌月分から年金が支給されます。

遺族補償年金を受けることができない場合は?

遺族補償年金を受けることができない場合の給付として以下の給付があります。

  1. 遺族補償一時金
    • 遺族補償年金の受給権者がいない場合に支給されます。
    • 給付基礎日額の1000日分が上限です

    なお、遺族補償一時金は遺族補償年金を受け取ることのできた遺族が全員権利を失い(失権し)、その合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たない場合はその差額が支給されることがあります。

  2. 葬祭料
    • 葬祭を行った者に対して支給されます。
    • 給付基礎日額の30日分と315,000円のいずれか高い方の額が支給されます。

    葬祭料は一般的に、遺族補償年金を受けることができる遺族がいない場合に支給されますが、支給は葬祭を行う者に対して支給されます。例としては、死亡した者に親族等がおらず、会社が社葬を行った場合などは会社に対して支給されることがあります。

これらの給付を受けるには、それぞれ専用の請求書を労働基準監督署に提出する必要があります。

労災年金受給者の死亡に関する手続きは複雑で、状況に応じて必要な対応が異なります。不明な点がある場合は、最寄りの労働基準監督署に相談することをお勧めします。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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