• 作成日 : 2025年2月20日

工事写真を撮り忘れた場合どうなる?リスクや対応策、撮り方を解説

工事現場の進捗や完成を記録するために撮影すべき写真を、撮り忘れた、もしくは写真が足りない場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。何か問題が生じた場合に取引先などに提出を求められる場合があります。また、公共工事では、工事写真を撮影しておくことが義務化されています 。この記事では、撮影を取り忘れた場合の対応方法や写真の撮り方のポイントなどを詳しく解説していきます。

工事写真を撮り忘れた場合どんな問題がある?

工事現場において、工事写真は非常に重要な役割を果たします。写真を撮り忘れることによって、さまざまな問題が生じる可能性があります。ここでは、工事写真を撮り忘れた場合に起こる具体的な問題について詳しく解説します。

1. 工事の品質や進捗状況を証明できない

工事写真は、工事の進捗を正確に記録する役割を果たします。例えば、着工前の地盤や既存の設備の状態、施工中の重要な工程、完工時の仕上がりなど、各段階で写真を撮ることで、何をどのように施工したかを証明することができます。写真が不足していると、特に後でトラブルが発生した際に、工事内容を証明することができなくなります。これにより、発注者からの信頼が低下したり、契約上の問題が発生する可能性があります。

2. トラブル時の証拠として残らない

工事中に何らかの問題や変更が発生した場合、工事写真はその状況を客観的に記録するための重要な証拠となります。たとえば、地中に予期しない障害物が見つかったり、施工中に悪天候による被害が発生した場合など、その場の状況を工事写真で記録することが後からの証明に役立ちます。特に、発注者との間でトラブルが起きた際、工事写真がなければ正当な主張を立証するのが難しくなります。

3. 発注者への説明が難しい

発注者に工事の進捗状況や内容を伝える際、言葉だけでは伝わりづらい部分を写真で示すことで、双方の理解が深まります。写真があることで、どの時点で何が行われたかを発注者に対して明確に説明でき、信頼関係を築くことができます。また、工事中に発生した変更点や修正箇所についても、写真を基に説明すれば誤解が生じにくくなります。

4. 補助金の交付が認められない

補助金の申請の際は、工事前、工事後の写真の提出が求められることが多く、審査においてこれらの写真の不備があると、補助金の交付が却下される可能性があります。

工事写真の撮影は義務か

工事現場での写真撮影は、公共工事においては必須とされていますが、民間工事では法的な義務ではありません。それでも、報告書の作成や証明、トラブル回避など多くの場面で役立つため、撮影しておくことが望ましいと言えます。

公共工事の場合

公共工事においては、工事の進捗状況や品質を確認するために、法律や契約上の義務として工事写真の撮影が求められています。たとえば、国土交通省が定める「公共工事の品質確保のための施工管理基準」に従い、着工前、施工中、完了後の各段階での写真記録が必要です。これにより、発注者(行政)が工事が適切に行われているかを確認し、問題がないかどうかを判断する材料となります。

もし、こうした写真が不足していると、工事内容の証明ができず、契約違反と見なされる可能性があります。特に施工不良や品質問題が発生した場合、写真がないと責任の所在が不明確になり、後々大きな問題に発展しかねません。

民間工事や小規模工事の場合

民間工事や小規模な工事においては、工事写真の撮影が法律で明確に義務付けられているわけではありません。しかし、工事の記録を残しておくことは非常に重要です。特に、撮り忘れた場合に後悔することが多いため、予め工事写真をしっかり撮影しておくことが推奨されます。

例えば、発注者とのトラブルが発生した際、工事写真がないと工事の内容を証明できず、結果として損害賠償の請求や支払いトラブルに発展することがあります。また、工事後に問題が発生した場合も、着工前や施工中の状況が記録されていないと、どのような工事が行われたかを説明することが難しくなります。

補助金や助成金を受ける場合

補助金や助成金を受ける場合、多くの場合で工事写真の提出が必須となります。特に、省エネリフォームや耐震補強などの工事では、着工前と完了後の工事写真が必要です。これにより、助成金申請が正当に行われているかを確認することができます。工事写真が足りない場合、審査に通らず補助金が受けられない可能性が高くなります。

建築物の場合

建築物の場合は、公共・民間に限らず建築基準法や消防法により「中間検査」「完了検査」時に工事写真の提出を求められることがあります。あらかじめ管轄の自治体との事前打ち合わせの上、必要な工事写真を撮影しましょう。撮り忘れた場合、「検査済証」が発行されないことがあります。

工事写真を撮り忘れた場合の対応

工事写真を撮り忘れてしまった場合、後悔する前にできる限り迅速かつ適切な対応を行いましょう。工事写真の撮り忘れに対する具体的な対応方法を解説します。

1. 可能な限り早い段階で再撮影する

まず最も基本的な対応は、気付いた時点で可能な限り早く再撮影を行うことです。施工が進んでしまっている場合でも、まだ現場に手を加えられていない部分や工事の一部を記録できる場合があります。たとえば、着工前に撮り忘れた場合、工事が進んだ後でもその時点での状況を写真に残すことが、少なくとも一部の証拠として役立ちます。

再撮影時には、後の証明ができるように、具体的な撮影日時を明確に記録しておくことが重要です。また、工事の段階や進捗が異なる場合は、その違いを説明できるようにしておくと、報告や補助金申請時に役立ちます。

2. 撮り忘れた場所を確認する

どの段階で写真を撮り忘れたか、またどの場所の撮影をし忘れたのかを確認します。撮り忘れた場所を特定できた場合は、再度現場を訪れて写真を撮影します。

3. 撮り忘れた写真の内容を記載する

工事写真を撮り忘れた場合、後からでもわかるように、撮り忘れた写真の内容を詳細に記載しておきます。また、 撮影を忘れた理由や、その補填方法について関係者に報告します。

4. 工事関係者に確認を取る

工事写真の撮り忘れに気付いた場合は、すぐに工事関係者や協力業者に確認を取りましょう。場合によっては、他の業者や現場担当者が写真を撮っていることがあるため、その写真を共有してもらうことができるかもしれません。特に一人親方や小規模工務店の場合、他のスタッフや協力業者と連携して写真を管理することが有効です。

また、発注者にも確認して、現場を訪れた際に撮影した写真があるかどうかを尋ねることも一つの手段です。複数の関係者と写真データを共有することで、工事の進捗記録を補完できる可能性があります。

5. 代替手段を考える

場合によっては、現場の状況や工事が進行してしまった後では再撮影が難しいこともあります。このような場合には、工事写真が足りないことを補うために、他の書類や証拠を用意することが必要です。たとえば、工事前後の施工計画書や図面、作業報告書などの書類を活用することで、撮り忘れた工事の進捗や内容を間接的に説明することができます。

6. トラブルへの対処方法を考える

法律に基づく義務として工事写真が求められている場合、写真の撮り忘れが原因で契約違反や補助金の不承認が発生する可能性があります。このような事態に直面した場合は、専門の法律家に相談することも検討しましょう。特に大規模な工事や公共工事において、工事写真が不足している場合は、後々の法的トラブルに発展することがあります。

工事写真を撮り忘れを防ぐ方法

工事写真を撮り忘れることは、後々のトラブルや問題につながる恐れがあるため、事前に対策を講じておきましょう。工事が進んでから撮り忘れに気づくと、再撮影が困難だったり、記録不足で問題が生じることがあります。撮り忘れを防ぐための具体的な方法をいくつかご紹介します。

事前に撮影計画を立てる

まず、工事開始前に撮影計画を立てることが基本です。着工前、施工中、完了後の各段階でどの箇所を撮影するべきかを事前にリストアップしておきます。たとえば、基礎工事や隠蔽部分の施工は、工事が進んでしまうと確認ができなくなるため、特に重点的に撮影すべきポイントです。リストに基づいて撮影することで、必要な写真が漏れることを防げます。

この計画は、工事の種類や契約内容によっても異なります。たとえば、補助金を受ける工事の場合は、申請に必要な「着工前」と「完了後」の写真が必須です。工事の目的や法律上の要件に応じて計画を柔軟に立てましょう。

撮影用のチェックリストを作成する

撮り忘れを防ぐためには、撮影チェックリストを作成し、現場で随時確認することが効果的です。たとえば、「基礎工事の着工前」「内装工事の完了時」など、工事の進捗に応じて必要な写真をリスト化し、撮影が完了したらチェックを入れていく方法です。このように、システマチックに管理することで撮り忘れのリスクを最小限に抑えることができます。

特に、納期が迫ってくると、写真撮影を後回しにしてしまいがちです。チェックリストを利用することで、忙しい状況でも確実に記録を残すことができます。

定期的に現場を確認する

工事現場を定期的に訪れ、進捗を確認しながら撮影することで、撮り忘れを防ぐことができます。たとえば、毎週の進捗確認の際に、工事の重要な工程や変更点を撮影する習慣をつけることが効果的です。また、定期的な確認を通じて、工事がどの段階にあるかを把握し、撮影のタイミングを逃さないようにすることが可能です。

工事中の作業内容が複雑であったり、多くの人が関わる現場では、特にこまめな確認が必要です。進捗状況に応じた写真を撮ることで、後々の証拠としても確実に役立ちます。

写真撮影の担当者を決める

工事現場には多くの業務が存在するため、写真撮影の担当者をあらかじめ決めておくことも一つの手です。そのためには、チームで撮影タスクを把握し、担当者が責任を持って撮影を行います。

スマートフォンや専用アプリを利用する

工事写真の撮影にスマートフォンや専用の工事写真アプリを利用するのも一つの手です。スマートフォンであれば、いつでも手軽に撮影ができ、アプリを活用すれば撮影日時や位置情報を自動で記録できるため、写真の管理も効率的に行えます。これにより、写真の撮り忘れや管理ミスが発生しにくくなります。

また、アプリによっては、工事の各工程に応じた写真をリマインドしてくれる機能や、撮影した写真をクラウド上で自動保存する機能もあるため、より確実に写真を管理できます。こうしたツールを導入することで、日常業務の中でも無理なく撮影作業を行えます。

事前に撮影場所を確認する

工事が始まる前に、どの場所でどのような写真を撮るべきかを確認しておくことも、撮り忘れを防ぐ一つの方法です。着工前に現場を見て、重要な箇所を特定し、どのタイミングで写真を撮るかを明確にしておくことで、現場での混乱や撮影漏れを防ぎます。

たとえば、施工前に撮影するべきポイントをマークしたり、進行中に撮影しやすい角度や位置を確認することで、スムーズに撮影作業を進められます。これにより、後々「撮り忘れた」と後悔するリスクを減らすことができます。

工事写真の撮り方

撮影を行う際には、どのタイミングでどの箇所を記録するかを事前に計画し、効率良く撮影を進めることが求められます。初心者でもわかりやすい工事写真の撮影方法や順序を具体的に説明します。

1. 撮影前の準備

撮影を始める前に、以下のポイントを確認しておきましょう。

機材の確認: カメラやスマートフォンのバッテリーが十分に充電されているか、メモリーカードの残り容量もチェックしておきましょう。 暗い場所でも撮影できるよう、フラッシュ機能や照明器具の準備もしておくと良いでしょう。特に室内や地下などの暗い環境では、光量不足で写真が不鮮明になってしまう可能性があるため、適切な照明を確保することが大切です。

また、事前に工事現場を見て、どの箇所をどのタイミングで撮影するべきかを確認しておくことも重要です。着工前、施工中、完了後といった段階ごとに撮影するポイントをリストアップし、現場でスムーズに作業を進められるように準備を整えましょう。

2. 基本的な撮影の順序

工事写真の撮影は、順序を決めて行うことで、しっかりと記録できます。例えば、以下のような手順で行います。

  • 工事開始前の全体写真
    工事が始まる前に現場全体の写真を撮ります。これで工事前後の比較がしやすくなります。
  • 各工程ごとの写真
    工事の進行に合わせて、重要なポイントを撮影します。例えば、基礎工事、上棟時、内装や外装工事、最終検査など、工程ごとに記録しましょう。
  • 詳細な部分の撮影
    特に注意が必要な部分や、特殊な施工方法を用いた箇所も細かく写真に残します。これによって、後からのトラブルを防ぐことができます。

3. 規定に基づいた写真を撮影する

工事写真の撮影には、契約書や法律で定められた規定に従うことが必要です。特に公共工事や補助金を受ける工事では、指定された箇所やタイミングでの撮影が求められることがあります。これを守らないと、工事完了後に証拠が足りないと指摘され、最悪の場合、補助金が受けられなくなることもあります。

たとえば、国土交通省が定める施工基準に基づく公共工事では、着工前、施工中、完了後の写真を必ず撮影することが義務付けられています。こうした基準に従い、撮影ポイントを押さえることが不可欠です。

4. 撮影後の写真を確認する

撮影が終わったら、写真の構図やピントがしっかり合っているか、必要な情報がきちんと記録されているかを確認します。もし不明瞭な写真があれば、すぐに再撮影しておくことが重要です。

次に、デジタル管理を忘れずに行います。撮影後はすぐにデータをバックアップし、日付や用途ごとに整理して保存します。これにより、必要な写真をすぐに見つけやすくなり、管理がしやすくなります。

工事写真の管理方法

工事写真は、万が一データが失われないよう迅速に保管し管理しましょう。また、すぐに検索できるようにフォルダごとに日付や工事名、各工程などを細かく分類しておくことが重要です。

写真を整理して保存する

まず、撮影した工事写真はすぐに整理して保存することが基本です。工事の進行に合わせて写真を撮るだけではなく、それを体系的に整理することで、後から必要な写真をすぐに見つけ出すことができます。たとえば、「着工前」「基礎工事」「外装工事」「完了後」といったカテゴリに分けて保存することで、どの段階の写真が必要かが明確になります。

デジタル管理を行う場合は、ファイル名に撮影日や内容を反映させると便利です。たとえば、「2024-10-21_基礎工事_鉄筋配置」といった具体的な名前を付けることで、後で検索しやすくなります。これにより、補助金申請や法律に基づく書類提出の際にも、迅速に対応できるでしょう。

定期的にバックアップする

工事写真は、誤って消去したりデータが破損したりするリスクがあります。そのため、バックアップを取ることが不可欠です。

Google DriveやDropboxなどのクラウドストレージに保管すると、万が一パソコンが壊れた場合でもデータをすぐに復元することができます。クラウドストレージは、自動でデータを同期させる機能もあり、現場で撮影した写真をリアルタイムでバックアップできるため、管理が効率的です。また、クラウドに保存することで、複数の関係者が同時に写真にアクセスできるため、情報共有がスムーズになります。クラウドに加えて、外付けハードディスクやUSBメモリにも定期的にバックアップを取ると、さらに安全性が高まります。

写真と工事報告書をリンクさせる

撮影した写真は単なる画像データではなく、工事の進捗や品質を示す重要な証拠です。そのため、工事報告書や施工記録書に、関連する写真をリンクさせると、より効率的な管理ができます。具体的には、工事報告書の各項目に対応する写真を添付し、施工内容が視覚的に確認できるようにしておくと、発注者や監査担当者とのやり取りがスムーズになります。

また、写真の管理と報告書の整合性を保つことで、補助金申請時や法律上の手続きにも役立ちます。補助金を受けるために必要な写真を報告書と共に提出することで、スムーズな審査を期待できるでしょう。

法律や契約の要件を確認する

工事写真の管理には、契約書や法律で定められた要件に従うことが大切です。たとえば、公共工事や特定の補助金を利用した工事では、着工前、施工中、完了後の各段階で写真を提出する義務がある場合があります。こうした要件に沿って写真を管理し、漏れなく保存することで、法的トラブルや契約違反を防ぐことができます。

工事写真が足りない場合、後から追跡するのは難しく、法律上の問題や補助金の不承認につながるリスクもあります。事前にしっかりと契約内容や法律の要件を確認し、対応するための管理体制を整えておくことが必要です。

工事写真を撮り忘れないよう事前に計画を立てよう

工事写真の撮影と管理は、工事現場での品質証明やトラブル回避のために欠かせません。写真を撮り忘れたり、データを紛失したりすると、発注者との信頼関係に支障が出たり、補助金申請が却下される可能性があります。まず、工事の進捗に応じてどの段階でどの部分を撮影する必要があるかをリストアップし、具体的な撮影箇所とタイミングを明確にしておきましょう。たとえば、着工前、基礎工事、内装・外装工事、完了後など、各段階で撮影するポイントを決めておくと、撮り忘れが防げます。撮影後は、すぐにデジタル管理を行い、定期的にバックアップを取ることで、データの損失リスクを回避しましょう。写真を工事報告書とリンクさせることで、より効率的な管理ができ、法的な要件にも対応できます。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

バックオフィス業務の知識をさらに深めるなら

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事