- 更新日 : 2025年2月12日
建築コスト管理士とは?メリットや年収、受験資格、難易度について解説
建築コスト管理士は、建築工事のコストを効率的に管理する専門家です。本記事では、建築コスト管理士の資格の概要や仕事内容、取得するメリット、年収の目安、受験資格や試験概要、難易度、合格率、効果的な勉強法まで幅広く網羅しています。また、資格取得に向けた具体的な準備方法や、試験対策のポイントも理解できるでしょう。
目次
建築コスト管理士とは?
建築コスト管理士とは、建築工事の費用を適切に算出し、最適化する専門家です。建築積算士の上位資格にあたる資格になります。
建築コスト管理士は、建築物の企画段階から設計、施工、維持管理に至るまでの全過程において、コストに関する管理や助言を行う重要な役割を担います。
この資格は、「公益社団法人日本建築積算協会」が認定しており、建設業界で高い評価を受けています。
建築コスト管理士に求められる知識やスキル
建築コスト管理士として成功するために必要な知識やスキルは以下のとおりです。
- コスト情報収集・分析
- 広範囲な市場価格
- 発注戦略
- 調達戦略
- フィジビリティースダディー
- 積算技法
- 施工技術・工期算定
- LCC・VE及びFM・PM・CM概要
- 環境配慮
- 建築関連法規
- IT活用
これらのスキルを総合的に活用することで、建築コスト管理士は複雑な建築プロジェクトにおいても、効果的なコスト管理を実現します。特に、最新の建築技術や材料に関する知識を常にアップデートし、コスト削減と品質向上の両立を図ることが求められます。
参照: 建築コスト管理士制度の概要|公益法人 日本建築積算協会
建築積算士との違い
建築積算士とは、工事において依頼する建築会社を比較検討する際や入札に使われる「提示価格の基礎・基盤」を算定することです。公益社団法人日本建築積算協会が資格を認定しています。
建築コスト管理士と建築積算士の主な違いは、建築コスト管理士が全体的なコストを管理する責任者レベルの役割を果たすのに対し、建築積算士は組織内の担当者として特定の工事費を算定するという点にあります。
建築コスト管理士の仕事内容
建築コスト管理士は、建築プロジェクトにおける費用管理の専門家であり、予算策定から工事終了まで、プロジェクト全体のコストを効率的に管理する役割を担います。建築コスト管理士はプロジェクトの進行に不可欠であり、建築コストの適正化や透明性の確保が主な役割です。
主な業務内容は以下の通りです。
- 予算の作成と管理
- コスト削減の提案
- 契約や入札のサポート
- レポート作成とコミュニケーション
建築コスト管理士は、建築プロジェクトの成功を支える重要な職業です。適正な費用管理を通じて、より高品質で経済的な建築を実現する役割を果たします。
建築コスト管理士の資格を持つメリット
専門性の向上と信頼性の獲得
建築コスト管理士の資格を取得することで、建築プロジェクトにおけるコスト管理の専門家としての地位を確立できます。この資格は、建設業界で高く評価されており、クライアントや同僚からの信頼を得やすくなります。専門知識を持つ資格保有者として、プロジェクトの予算管理や原価計算において重要な役割を果たすことができます。
キャリアアップの機会拡大
建築コスト管理士の資格は、キャリアアップの大きな助けとなります。多くの建設会社や設計事務所では、この資格を持つ人材を優遇する傾向があります。昇進や管理職への登用の際に有利に働くだけでなく、フリーランスとして独立する際にも強力な武器となります。また、大規模プロジェクトや公共事業への参加機会が増えることも期待できます。
収入増加の可能性
建築コスト管理士の資格取得は、収入増加につながる可能性が高いです。専門性が認められることで、給与や契約料の交渉力が高まります。特に、フリーランスとして活動する場合、高額な報酬を得られるプロジェクトに参加できる機会が増えます。また、副業や兼業としてコンサルティング業務を行うことで、追加の収入源を確保することも可能です。
プロジェクト管理能力の向上
建築コスト管理士の資格を取得するプロセスで学ぶ知識は、プロジェクト全体の管理能力向上に直結します。コスト面だけでなく、工程管理や品質管理にも精通することで、プロジェクトの成功率を高めることができます。これにより、より複雑で大規模なプロジェクトを任されるチャンスが増え、キャリアの幅が広がります。
リスク管理能力の向上
建築コスト管理士の資格を持つことで、プロジェクトにおけるリスク管理能力が向上します。コスト面でのリスクを事前に特定し、適切な対策を講じることができるようになります。これは、プロジェクトの成功率を高めるだけでなく、企業の経営リスクの軽減にも貢献します。結果として、より責任のある立場での仕事を任されることにつながります。
建築コスト管理士の年収の目安
建築コスト管理士の年収は、地域や会社の規模、経験などにもよりますが、500万円〜800万円ほどが年収の相場です。
建築コスト管理士の受験資格や試験概要
建築コスト管理士の受験資格
建築コスト管理士の受験資格は、建築業界での実務経験や関連資格の保有状況によって異なります。主な受験資格は以下の通りです。
- 建築積算士の称号を取得後、更新登録を1回以上行った方
- 建築関連業務を5年以上経験した方
- 一級建築士に合格し登録した方
建築コスト管理士の試験概要
建築コスト管理士の試験は、公益社団法人日本建築積算協会が主催しており、年に1回実施されています。例年10月下旬頃に試験が行われ、受験の申込期間は6月~9月初旬頃です。
- 試験の時期:毎年度10月下旬頃(申し込み期間6月~9月初旬)
- 試験地:札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・鹿児島・沖縄
- 試験の形式:学科試験が4肢択一、短文記述試験が200字以内の記述
- 試験時間:学科試験が150分、短文記述試験が120分
- 出題範囲:「新☆建築コスト管理士ガイドブック」の第1章~第4章、「建築積算士ガイドブック」のうち第6章~第8章、第10章
建築コスト管理士の合格発表と資格登録
試験結果の発表は、通常、試験実施から2ヶ月後の12月頃に行われます。合格者には合格通知書と登録申請書が送付されます。合格後は、以下の手続が必要です。
- 登録申請書類に記入し、期限内に日本建築積算協会へ提出
- 登録料・会費の支払い
新規登録料: 15,400円(税込)
入会金: 2,000円(非課税)
年会費: 9,000円(非課税)
資格の有効期間は5年間で、更新時には所定の講習を受講する必要があります。この更新制度により、建築コスト管理士は常に最新の知識とスキルを維持することが求められています。
建築コスト管理士の試験の難易度や合格率
建築コスト管理士試験の合格率は、年によって変動がありますが、概ね50%から70%の間で推移しています。
過去5年間の合格率の推移は以下の通りです。
- 2022年:47.9%(受験者数288人・合格者数138人)
- 2021年:63.3%(受験者数221人・合格者数140人)
- 2020年:67%(受験者数182人・合格者数122人)
- 2019年:82.6%(受験者数155人・合格者数128人)
- 2018年:74.2%(受験者数159人・合格者数118人)
過去5年間の合格率の推移をみると、合格率が低下傾向で難易度は年々上昇していると考えられます。これは、試験の内容が年々複雑になっているとみることもできますが、受験者数が増えていることに着目すると、経験が浅い人の受験が増えた可能性も考えられます。
建築コスト管理士試験の勉強法
教科書やガイドブックをしっかりと理解する
「新☆建築コスト管理士ガイドブック」や「建築積算士ガイドブック」などの教科書や参考書を使って、試験範囲の知識をしっかりと理解しましょう。また、過去問題集を使って、実際の試験形式に慣れることも重要です。
過去問題の徹底分析する
過去問題の解析は、試験対策の要となります。過去5年分程度の問題を繰り返し解くことで、出題傾向や頻出テーマを把握できます。また、解答の解説を丁寧に読み込むことで、自分の弱点を明確にし、効率的な学習計画を立てることができます。
実務経験を活かす
建築コスト管理士試験は、実務に即した内容が多く出題されます。そのため、日々の業務で得られる経験や知識を試験対策に活かすことが重要です。実際のプロジェクトでのコスト管理手法や、直面した課題とその解決策などを整理し、理論と実践を結びつけて理解を深めましょう。
専門の講座や塾を利用する
自分で勉強するのが難しい場合は、専門の講座や塾を利用するのも一つの方法です。プロの指導を受けることで、効率的に学習することができます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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