- 更新日 : 2024年7月12日
給付基礎日額とは?定義や計算方法を解説
給付基礎日額とは1日あたりの平均賃金を指し、労災保険の保険料や支給額などの計算基準となります。この記事では給付基礎日額の定義や算出方法などをわかりやすく解説します。
給付基礎日額を算出する際の期間や、一人親方の場合の計算方法など、細かな注意点まで紹介しますので、社会保険の手続きを正確に進める上でお役立てください。
目次
給付基礎日額の定義とは
給付基礎日額とは、労働者が労災保険制度によって支給される給付の計算基準となる1日あたりの平均賃金です。給付基礎日額は労災保険の支給額を決定する際の基本となる数値です。
給付基礎日額の計算においては、労働者の賃金支払基礎日数が基準となります。具体的には、労災が発生した日、もしくは医師による診断日を基準に、直近3ヶ月の賃金総額を対象として算出されます。
ただし、休業期間などがあった場合はその期間を除外することで公平性が保たれます。
給付基礎日額の計算方法
給付基礎日額の具体的な計算手順
算出期間の設定
給付基礎日額を算出するにはまず、算出期間を設定します。一般的には労災発生日から直近の3ヶ月間が対象となります。この期間を基に給付基礎日額を計算します。
総支給額の計算
次に、設定した算出期間内の総支給額を計算します。総支給額には基本給、残業代、通勤手当、家族手当、住宅手当などが含まれます。ただし、ボーナスや一時金は含まれません。
実労働日数の計算
その後、算出期間内の実際の労働日数を計算します。この際、有給休暇や病欠などの休暇は労働日数に含まれません。
平均賃金の計算
総支給額を実労働日数で割ることで、平均賃金を求めます。この平均賃金が給付基礎日額として使用されます。
例:具体的な計算
例えば、直近3ヶ月間の総支給額が900,000円で、実労働日数が60日の場合、給付基礎日額は以下の計算で求められます。
給付基礎日額 = 900,000円 ÷ 60日 = 15,000円
給付基礎日額に含まれる手当と含まれない手当
給付基礎日額に含まれる手当には、基本給、残業代、通勤手当、家族手当、住宅手当などがあります。一方で、ボーナスや一時金は含まれません。これによって、安定した賃金を基にした計算が行われます。
給付基礎日額に含まれる手当と含まれない手当をまとめると、下記の表のようになります。
給付基礎日額に含まれる手当
手当 | 説明 |
---|---|
基本給 | 従業員の基本的な賃金 |
賞与(ボーナス) | 年2回や年1回支給される特別手当 |
時間外手当 | 残業や休日労働による追加賃金 |
深夜手当 | 深夜勤務に対する追加賃金 |
休日手当 | 休日労働に対する追加賃金 |
通勤手当 | 通勤にかかる交通費を補助する手当 |
職務手当 | 特定の職務や役職に対する追加賃金 |
技能手当 | 特定の技能や資格に対する追加賃金 |
業績手当 | 業績に応じて支給される手当 |
役職手当 | 役職に応じた追加賃金 |
給付基礎日額に含まれない手当
手当 | 説明 |
---|---|
住宅手当 | 住宅にかかる費用を補助する手当 |
家族手当 | 家族に対する補助として支給される手当 |
福利厚生手当 | 福利厚生の一環として支給される手当 |
出張手当 | 出張にかかる費用を補助する手当 |
食事手当 | 食事代を補助する手当 |
保険料 | 社会保険料や厚生年金などの保険料 |
退職金 | 退職時に支給される金銭 |
特定のケースでの計算方法
短時間労働者の場合
短時間労働者やパートタイマーの場合も同様の計算方法が適用されます。しかし、労働時間が一定でない場合、実際の労働時間に応じて計算が調整されます。
非正規雇用の場合
非正規雇用者の場合も、通常の算出期間である直近3ヶ月間の総支給額を基に計算されます。ただし、週ごとの労働時間や契約内容に応じて、給付基礎日額の計算が調整されることがあります。
労働期間が短い場合
労働期間が3ヶ月未満の場合は、その期間全体を算出期間として計算します。この場合も、総支給額を実労働日数で割る方法を使用します。
一人親方は給付基礎日額をどのように算出する?
一般の労働者は給与明細や労働契約書に基づいて給付基礎日額を計算しますが、一人親方の場合、自身の収入から給付基礎日額を算出しなければなりません。
そのため、過去の収入や業種ごとの平均収入などを基準にして計算が行われます。
給付基礎日額の計算方法
収入申告による算出
一人親方は、過去の1年間の売上から経費を差し引いた「実際の所得」を基に給付基礎日額を計算します。この際、正式な確定申告書の控えを基に算出されることが一般的です。所得の正確な申告が重要であり、これに基づいて保険給付金が決まります。
業種ごとの平均収入
もし収入が不規則であったり、申告済みの収入が低すぎる場合は、業種ごとの平均収入を参考にすることもあります。全国平均や地域ごとの業種別の平均値を基準にして、給付基礎日額を決めることができます。これは特に新規開業者や収入が大きく変動する業種で有効です。
新規開業者の場合
新しく事業を始めた一人親方の場合、まだ収入の実績がないため、推定収入を基に給付基礎日額を設定することがあります。業界や地域の平均数値を元に参考数値を設定し、最終的な基礎日額を算出します。そのため、新規開業者は市場情報をよく調べておくことが重要です。
必要書類と手続き
一人親方が給付基礎日額を設定する際には、以下のような書類が必要です。
- 過去1年間の確定申告書
- 事業計画書(新規開業者の場合)
- 収入証明書
- 業務契約書(依頼主との契約内容を証明するもの)
書類が揃ったら、労災保険の申請窓口やオンラインシステムを通じて手続きを行います。適切な書類を提出しない場合、給付基礎日額が低く見積もられる可能性があるため、全ての書類をきちんと準備することが求められます。
計算例
具体的な例を挙げると、過去1年間の所得が500万円であった場合は以下となります。
- 500万円 ÷ 365日 = 約13,698円が基礎日額となります
この基礎日額を基に、保険給付金が算出されます。計算例を確認し、自己申告と差異がないかチェックしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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