• 作成日 : 2024年6月7日

建設キャリアアップシステム義務化はいつから?準備や申請方法を解説

建設業界で話題の建設キャリアアップシステム義務化がいつから始まるのか、その背景や影響、そして申請方法についてわかりやすく解説します。この記事を読んで、企業や労働者が直面する変化を理解し、義務化に向けた準備をどのように進めるか把握しましょう。

建設キャリアアップシステム(CCUS)義務化はいつから?

建設キャリアアップシステム(CCUS)の義務化は、2023年度から始まりました。この制度は、建設技能者の就業実績や資格、保険加入状況などを登録し、技術・経験の適切な評価、工事品質向上につなげることを目指しています。

CCUSとは何か?

CCUSは、「Construction Career Up System」の頭文字を取り、「建設キャリアアップシステム」とも呼ばれます。国土交通省が主導し、建設業振興基金が主体となって2019年4月に運用が開始され、2023年度から義務化されました。現在、全国の建設業技能者数約300万人のうち、約4割の136万人以上がCCUSに登録しています。

CCUSの目的は、技能者のキャリアを「見える化」し、将来の技能者確保を促進し、事業者の業務負担を軽減することです。これにより、建設業が他の産業と比べても「生涯を通じて魅力的な職業である」ことを示すことが期待されています。

CCUSの義務化の流れ

2020年から建退共の電子申請試行が始まり、2021年から本格実施されました。2023年度内に、民間工事も含めて電子申請への完全移行が計画されています。また、2020年10月の建設業法改正により、施工体制台帳への作業員名簿の添付が義務付けられました。

作業員名簿の義務化に併せて、労働者が現場に入場する際の社会保険加入状況の確認では、建設キャリアアップシステムを用いることが原則化されました。

建設キャリアアップシステム義務化の背景

建設業界が抱えている課題の中でも特に深刻なのが、技能労働者の高齢化と後継者不足です。これらの問題に対処するために、政府は建設業界の持続可能な発展を支援し、労働者のスキル向上とキャリアアップを図るための制度として、「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の導入を決定しました。

CCUSの最大の特徴は、建設労働者がこれまでの経験や技能を正式に認定してもらい、その評価をもとにキャリアアップが見込める点にあります。

また、労働者の能力や経験を可視化することで、企業間での人材の流動性も高まり、業界全体の活性化が期待されています。

また、建設業界では非正規雇用が多く、労働条件の不安定さが指摘されてきました。CCUSにより、労働者が自らの技能を高め、キャリアアップを図ることができれば、それが最終的に雇用条件の改善につながると考えられています。

このように、CCUSは、単に労働者個人の技能向上だけではなく、建設業界全体の質の向上、労働環境の改善、そして社会全体の持続可能な発展に貢献する重要なステップとされています。

建設キャリアアップシステムのメリットと影響

建設キャリアアップシステム(CCUS)は、建設業界に大きな影響を与えることが期待されています。その主なメリットと影響について詳しく解説します。

事業者にとってのメリット

  • 公共工事の加点:公共工事では、施工体制、施工状況、出来栄えなどを発注者が採点する「工事成績評定」の制度があります。建設キャリアアップシステムへの登録は、工事成績評定に加点され、入札時に有利になる制度です。
  • 効率的な人材管理:従業員のスキルと経験を明確に把握することで、適切なプロジェクトへの配置が容易になります。
  • 生産性の向上:スキルに応じた業務割り当てにより、プロジェクトの効率と品質が向上します。
  • 人材育成の促進:従業員のキャリアパスを明確にし、必要な研修や教育を計画的に提供することが可能です。

技能者にとってのメリット

  • 正当な処遇: 技能者が自身のキャリアをベースに適正な評価が受けられるため、スキルに応じた賃金や処遇も期待できます。
  • 自身の技能やキャリアを証明: 建設キャリアアップシステムでは技能者が今まで積み上げてきた経歴や保有資格・能力について、事業者が閲覧できるため、技術者のキャリアやスキルを客観的に判断して適正に評価してもらえます。
  • モチベーションのアップ:建設キャリアアップシステムは、「ホワイト、ブルー、シルバー、ゴールド」の4段階の技能レベルに区分され、カードで色分けされます。若い技能者のモチベーションアップが期待されます。

建設業界全体への影響

建設キャリアアップシステムの導入により、技能者のスキル向上が促進され、高度な技術力を持つ人材が増加する見込みです。これにより、建設現場の品質向上と効率化が進み、業界全体の競争力が向上します。

建設キャリアアップシステム義務化に向けた準備

建設キャリアアップシステム(CCUS)の義務化に伴い、建設業に携わる企業は具体的な準備を進める必要があります。義務化の適用を受けるにあたり、事業者はシステムの理解を深め、適切な手続きを行うための準備をしなければなりません。ここでは、義務化に向けた主要な準備手順を解説します。

CCUSを正確に把握する

まずは、CCUSに関する知識を深め、システムの概要、目的、利用方法などを理解することが重要です。これにより、システムの義務化が自社にどのような影響を与えるかを把握し、準備を進める上での基盤を築くことができます。

内部体制の整備

CCUSの義務化に伴い、システムの導入および運用に必要な内部体制の整備が必要になります。これには、担当者の選定、業務フローの確立、必要な研修の実施などが含まれます。特に、CCUSを円滑に運用するためには、システムに精通した担当者を配置することが望ましいです。

システム導入の計画

CCUS義務化の時期に合わせて、システムの導入計画を立てることが必要です。計画には、導入スケジュール、必要な設備やソフトウェアの選定、費用の見積もりなどが含まれます。計画を立てることにより、導入過程での問題を未然に防ぐことが可能になります。

建設キャリアアップシステムの申請方法と費用

申請必要書類

建設キャリアアップシステム申請には、企業が事前に準備をする必要があります。

具体的には、事業者登録申請書、労働者の名簿、各労働者の職種や資格を証明する書類、企業が実施した教育訓練の記録などが必要となります。これらの書類が申請の基礎となり、申請の受理及び審査の過程で重要な役割を果たします。

申請の手順

建設キャリアアップシステム(CCUS)の申請方法は、主に「インターネット申請」と「認定登録機関での申請」の2つです。

インターネット申請

建設キャリアアップシステムの公式サイトから申請が可能です。申請書の取り寄せや郵送などの手間がかからず、また他の申請方法と比べて申請手数料が安いため、一般的にはこちらの方法が推奨されます。

申請は建設キャリアアップシステムの公式HPから申請ページにログインし、必要情報を入力します。

申請フォームから登録者情報の送信が完了し、内容に問題がなければ、運営側から登録料の請求書が登録したメールアドレスに送られてきます。その請求書に従って登録料を支払います。

支払いが完了すると、事業者IDが事業者の登録責任者宛てに送られます。その際に、システムにログインするためのID、および初期パスワードも一緒に通知されます。

認定登録機関での申請

認定登録機関という国が認定した全国の窓口に行けば、対面式での申請内容の審査および登録までが行えます。

建設キャリアアップシステム(CCUS)の認定登録機関での申請に必要な書類は以下の通りです。

  • 本人確認書類: 顔写真、氏名、現住所、生年月日を確認できる公的書類が必要です。日本国籍の方と外国籍の方とで必要な書類が異なります。
  • 顔写真: ICカード用の顔写真が必要です。インターネット申請の場合は、jpgファイルで保存したデータを申請画面で添付します。
  • 社会保険等の加入証明書類: 社会保険等(健康保険、年金保険、雇用保険、建退共、中退共、労災保険特別加入など)に加入している場合には、それぞれ確認書類が必要となります。
  • 各種資格の証明書類: 技能者が保有する資格や経歴を証明するための書類が必要です。
  • 同意書(代行申請の場合): 代行申請を行う場合には、申請者本人の同意書が必要となります。

なお、申請に関する相談は「認定登録機関」で乗ってもらえます。技能者の方は「代行申請」を利用して所属事業者に代行してもらえます。全てを丸投げしたい方は行政書士に申請を代行してもらうことも可能です。

建設キャリアアップシステムの利用料金

技能者登録料

技能者本人の氏名で登録する技能者登録は、建設キャリアアップカードの発行のために必要な手続きです。登録の有効期限はおよそ10年(カードの発行日から発行9年経過後の、最初の誕生日まで)となります。技能者登録料は以下の通りです。

  • インターネット申請の場合:2,500円
  • 郵送申請の場合:3,500円

なお、カードの紛失・破損・券面書き換えが必要な場合は、再発行費用として1,000円が必要です。

事業者登録料

会社名で登録する事業者登録は、建設キャリアアップシステムを利用するために必要です。登録の有効期間は5年間で、登録完了日から5年後の登録月末まで有効です。事業者登録料は、事業者の資本金額によって異なります。

資本金額登録料
一人親方0円
500万円未満(個人事業主含む)6,000円
500万円以上1,000万円未満12,000円
1,000万円以上2,000万円未満24,000円
2,000万円以上5,000万円未満48,000円
5,000万円以上1億円未満60,000円
1億円以上3億円未満120,000円
3億円以上10億円未満240,000円
10億円以上50億円未満480,000円
50億円以上100億円未満600,000円
100億円以上500億円未満1,200,000円
500億円以上2,400,000円

管理者ID利用料

事業者が建設キャリアアップシステムで情報を管理する際には、利用料を支払ってIDを発行する必要があります。1つのIDあたりの利用料は1万1,400円(税込)となり、有効期間は1年です。一人親方の場合は、2,400円(税込)です。

現場利用料

建設キャリアアップシステムでは、現場情報の登録は元請け会社が行います。元請け会社が登録した現場情報に、技能者の就業データが蓄積すると発生する費用が現場利用料です。現場利用料は、タッチ1回につき10円がかかります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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