- 作成日 : 2025年2月20日
施工体系図の書き方は?作成すべき工事や記入の注意点を解説
施工体系図は、建設工事の施工体制を明確に示すための図表で、特に公共工事では作成が義務づけられています。この記事では、施工体系図が必要な工事の種類や、施工体系図の書き方や記入時の注意点も具体的に説明します。建設業法に基づいた適切な施工体系図を作成し、円滑な工事進行と法令遵守を両立できるようになります。
目次
施工体系図とは?
施工体系図は、建設工事の施工体制を明確に示すための図表です。この図表は、元請業者から下請業者までの階層構造を視覚的に表現し、工事に関わるすべての事業者の関係性を一目で把握できるようにします。
施工体系図の主な目的は、工事の透明性を確保し、適切な施工管理を行うことにあります。また、施工体系図は現場での安全管理や品質管理にも大きく貢献します。
通常、元請業者が作成する
施工体系図は、通常、元請業者が作成する責任を負います。元請業者は、工事全体を統括する立場にあるため、すべての下請業者の情報を把握し、正確な施工体系図を作成することが求められます。
また、施工体系図は、工事現場の見やすい場所に掲示することが求められます。工事の進行に伴い、施工体制に変更が生じた場合は、速やかに施工体系図を更新します。
施工体系図の保管期間
施工体系図は、工事が完了した後も10年間保管する必要があります。
保管期間中は、施工体系図を適切に管理し、必要に応じて閲覧や提出ができるよう準備しておくことが重要です。これは、工事の透明性を確保し、後日の問題解決や検証に役立つ可能性があるためです。
施工体系図の保管方法については、紙媒体での保管だけでなく、電子データでの保存も推奨されています。電子データでの保存は、長期保管や検索の面で利点があり、多くの建設会社で採用されつつあります。
施工体系図を作成すべき工事
公共工事
公共工事においては、施工体系図の作成が義務付けられています。公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)に基づき、発注者から直接工事を請け負った建設業者(元請業者)は、施工体系図を作成し、工事現場の見やすい場所に掲示する必要があります。
公共工事における施工体系図作成の対象となる工事は以下の通りです:
- 国や地方公共団体が発注する建設工事
- 独立行政法人や地方独立行政法人が発注する建設工事
- 国や地方公共団体が資本金の2分の1以上を出資している法人が発注する建設工事
これらの工事では、工事の規模や金額に関わらず、施工体系図の作成が求められます。特に大規模な公共工事では、複雑な下請構造を可視化し、適正な施工管理を行うために施工体系図が重要な役割を果たします。
民間工事
民間工事においては、公共工事のような法的な義務付けはありませんが、一定規模以上の工事では施工体系図の作成が推奨されています。建設業法(令和5年1月1日建設業法施行令が改正)に基づき、特定建設業者が発注者から直接請け負った工事で、下請契約の総額が4500万円以上(建築一式工事の場合は7000万円以上)の場合、施工体系図の作成が求められます。
民間工事で施工体系図を作成すべき主な場合は以下の通りです:
- 大規模な商業施設やオフィスビルの建設工事
- マンションやアパートなどの集合住宅の建設工事
- 工場や倉庫などの産業施設の建設工事
- 複雑な下請構造を持つ改修工事やリノベーション工事
これらの工事では、施工体系図を作成することで、施工管理の透明性が高まり、元請業者と下請業者の責任関係が明確になります。また、万が一の事故や品質問題が発生した際にも、迅速な対応が可能となります。
施工体系図作成の免除条件
一部の工事では、施工体系図の作成が免除される場合があります。主な免除条件は以下の通りです。
- 工事の請負代金の額が小規模な場合(具体的な金額は自治体や発注者によって異なる)
- 災害復旧等の緊急を要する工事で、施工体系図の作成が困難な場合
- 秘密保持が必要な防衛施設工事など、特殊な条件下での工事
ただし、これらの免除条件に該当する場合でも、可能な限り施工体系図を作成することが望ましいとされています。工事の透明性と適正な管理を確保するためには、施工体系図の作成が有効な手段となるからです。
施工体系図の書き方
施工体系図の書き方には、法令で定められている様式はありません。法令上、記載しなければならない事項が網羅されていれば十分です。
施工体系図に記載する項目は、以下の通りです。
- 発注者名
- 工事名称
- 工期
- 元請名・事業者ID
- 監督者名
- 監理(主任)技術者名
- 監理技術者補佐名
- 専門技術者名と担当工事内容
- 元方安全衛生管理者
- 会長(統括安全衛生責任者)
- 書記
- 副会長の所属会社名・氏名
- 施工体制台帳に記載した工事名称
- 企業名・事業者ID
- 代表者の氏名
- 建設業許可番号
- 安全衛生責任者
- 主任技術者(特定専門工事の該当)
- 専門技術者(担当工事内容)
- 工期
施工体系図のテンプレートダウンロード
施工体系図は、国土交通省のウェブサイトや建設業向けサイトで各種テンプレートが提供されています。
施工体系図の書く際の注意点
正確な階層構造を記載する
施工体系図の主要な目的は、元請業者から各下請業者までの契約関係を明確に示すことです。そのため、各業者の階層関係を正確に表現することが必要です。例えば、元請業者の直下に一次下請業者を配置し、その下に二次下請業者を記載するといった具合です。各業者間の関係性を明確に示すことで、工事全体の体制が一目で把握できるようになります。
全ての関係業者を漏れなく記載する
工事に関わる全ての業者を漏れなく記載することが求められます。これには、直接工事を行う業者だけでなく、資材供給業者や専門工事業者なども含まれます。小規模な工事であっても、関わる全ての業者を正確に把握し、記載することが重要です。
各業者の具体的な工事内容を明記する
各業者が担当する工事内容を具体的に記載することが重要です。単に「土木工事」や「設備工事」といった大まかな表現ではなく、「基礎工事」「配管工事」などより具体的な表現を用いましょう。これにより、各業者の役割と責任範囲が明確になります。
最新の情報に基づいて更新する
工事の進行に伴い、下請業者の追加や変更が発生することがあります。そのため、施工体系図は常に最新の情報に基づいて更新する必要があります。定期的な見直しと更新を行うことで、現場の実態と施工体系図の内容が乖離しないようにします。
法令遵守を意識する
建設業法や労働安全衛生法などの関連法令を遵守していることを示すため、必要に応じて監理技術者や安全衛生責任者などの配置状況も記載します。これにより、法令遵守の姿勢を明確に示すことができます。
個人情報の取り扱いに配慮する
施工体系図には多くの個人情報や企業情報が含まれます。これらの情報の取り扱いには十分な注意が必要です。特に以下の点に留意しましょう。
- 必要最小限の情報のみを記載する
- 施工体系図の保管場所を適切に管理する
- 閲覧者を限定し、不要な情報流出を防ぐ
- 工事完了後の適切な廃棄または保管方法を定める
これらの配慮により、情報セキュリティを維持しつつ、必要な情報共有を実現することができます。
デジタル化への対応を検討する
近年、建設業界でもデジタル化が進んでおり、施工体系図の作成・管理においてもデジタルツールの活用が増えています。デジタル化に対応する際は、以下の点に注意が必要です。
- 専用のソフトウェアやクラウドサービスの活用
- データのバックアップと安全な保管
- アクセス権限の適切な設定
- デジタル署名の導入検討
- 紙媒体との併用と整合性の確保
デジタル化により、施工体系図の作成・更新の効率化や、関係者間での迅速な情報共有が可能になります。ただし、セキュリティ面での配慮も忘れずに行いましょう。
関連書類との整合性を確保する
施工体系図は単独で存在するものではなく、他の工事関連書類と密接に関連しています。特に以下の書類との整合性確保が重要です。
- 施工体制台帳
- 下請負人通知書
- 工事請負契約書
- 施工計画書
- 安全衛生計画書
これらの書類と施工体系図の内容が一致していることを確認し、不整合がある場合は速やかに修正を行いましょう。整合性の確保により、工事全体の管理精度が向上し、トラブルの防止にもつながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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