• 作成日 : 2025年2月20日

工事台帳とは?提出すべき工事や書き方、保存方法を解説

工事台帳は、建設業者が行う工事の費用を管理するための文書です。下請契約を締結する場合や公共工事の場合には、工事台帳の作成が義務づけられています。下請け業者が工事台帳を作成し、その写しを発注者に提出します。この記事では、工事台帳の記載すべき項目や書き方、効率的な作成方法、適切な保存・管理方法まで詳しく解説します。工事台帳の重要性を理解し、適切に作成・管理することで、スムーズな工事進行と企業の信頼性向上につながります。

工事台帳とは?

工事台帳は、建設業者が行う工事に関する費用を記録し管理するための文書です。建設業法に基づいて作成が義務付けられており、工事の進捗状況、使用した材料、労働力、費用などの情報を含んでいます。

この台帳は、建設業者の経営状況や工事の実績を把握するための資料となり、行政機関による監督や税務申告の際にも活用されます。また、工事の品質管理や効率化にも活用ができます。

工事台帳の作成が必要な工事

「建設業法等の一部を改正する法律」により、公共工事を受注した建設業者が下請契約を締結する場合には、下請金額にかかわらず、工事台帳の作成が義務づけられています。下請け業者が工事台帳を作成し、その写しを発注者に提出します。

また、公共工事を請け負う場合、経営事項審査に必要な書類のため作成が必要です。経営事項審査とは、建設業者の経営状況や技術力を評価する制度で、公共工事の入札参加資格を得るために必要です。工事台帳は、この審査で過去の工事実績や施工能力を証明する重要な資料となります。

一方、経営事項審査を受けないのであれば、必ず作る必要はありません。ただし、自社の収支管理のためにも、工事台帳は作成しておくことをおすすめします。

工事台帳は何に使われる?目的や活用

工事台帳は建設業において非常に重要な役割を果たしています。その主な用途は以下の通りです。

工事原価の管理のため

工事台帳の最も重要な機能の一つは、工事原価の管理です。材料費労務費、外注費、経費などの詳細な記録により、工事全体のコストを正確に把握することができます。これにより、予算管理や利益率の計算が可能となり、経営判断の基礎資料として活用されます。

工事ごとに必要な費用を管理する

工事台帳には、工事にかかるすべての費用が記録されます。これにより、工事の進行状況と費用の対比を行い、予算超過や遅延がないかを確認することができます。また、工事台帳は、将来の工事の見積もり作成や、過去の工事の振り返りにも役立ちます。

経営事項審査で提出するため

公共工事の入札に参加を希望する建設業者は、原則として経営事項審査を受けなければなりません。経営事項審査は、建設業法に基づいて実施される、建設業者の経営状況や技術力を客観的に評価する制度です。経営事項審査の際に工事台帳の提出が求められます。

税務調査のため

工事台帳は、税務調査の際に提出する資料の一部となります。正確な情報を記録しておくことで、税務調査官にもスムーズに対応できるでしょう。

工事台帳に記載する費用項目

工事台帳には、工事に関連する様々な費用項目を正確に記載することが重要です。

また、工事台帳によって支出を適切に管理しておくことで、見積りを作成する際の原価予測を行うことも可能となります。原価予測を正確に行うことができれば、適切な価格で工事を受注することができ、原価割れを防ぐことができます。

さらに、工事台帳を正確に記載しておくことは、収支計画を立てる際の精度を上げることにもつながります。

工事台帳の主な費用項目は以下の4つに分類されます。

材料費

材料費は工事に使用される全ての資材や部品の費用を指します。これには以下のようなものが含まれます:

  • 建築資材(木材、鉄骨、コンクリートなど)
  • 電気設備部品
  • 配管材料
  • 塗料
  • 接着剤

材料費の記載には、各資材の単価、数量、合計金額を明記することが求められます。また、材料の仕入先や納品日なども併せて記録しておくと、後々の管理に役立ちます。

労務費

労務費は工事に携わる作業員の人件費を指します。労務費の記載には以下の要素が含まれます:

  • 職種別の作業員数
  • 作業時間
  • 時給または日給
  • 残業手当
  • 交通費

労務費の計算は複雑になる場合があるため、正確な記録と計算が求められます。特に、職種によって異なる賃金体系や、休日出勤などの特殊な勤務形態にも注意が必要です。

外注費

外注費は、工事の一部を他の業者に委託した際にかかる費用です。外注費には以下のようなものが含まれます:

  • 専門工事業者への委託費
  • 設計事務所への設計料
  • 測量会社への測量費用
  • 重機やクレーンのリース料

外注費の記載には、委託先の業者名、委託内容、金額を明確に記載することが重要です。また、外注先との契約書や見積書なども併せて保管しておくことが望ましいでしょう。

経費

経費は、直接的な工事費用以外の諸経費を指します。経費には以下のようなものが含まれます:

経費の中には工事期間全体にわたって発生するものと、一時的に発生するものがあります。それぞれの性質を考慮しながら、適切に分類し記載することが求められます。

その他の費用項目

上記の4つの主要な費用項目以外にも、工事の性質や規模によっては以下のような項目を記載する必要があります:

  • 諸官庁への申請費用
  • 環境対策費
  • 品質管理費
  • 廃棄物処理費
  • 近隣対策費

これらの費用項目は、工事の種類や規模によって大きく変動する可能性があるため、個々の工事の特性を十分に考慮して記載することが重要です。

消費税は税込みか税抜きか

工事台帳を作成する場合、消費税は税込みと税抜きのどちらでも問題ありませんが、基本的に税抜きで作成しておくと良いでしょう。

なぜなら、税込みで作成している場合には、工期の途中に消費税率に変更があると税込み金額の修正が必要となるためです。

また、会計処理を税抜き金額で行っている場合、工事台帳も税抜きで作成することで金額を一致させることができます。

工事台帳を作成する方法

エクセル(Excel)やGoogleスプレッドシート

工事台帳の作成には、多くの建設業者がMicrosoft ExcelやGoogleスプレッドシートを利用しています。これらのソフトウェアは、多くの建設業者が日常的に使用することが多く、新しいシステムやソフトウェアを導入する必要がないためです。既存のスキルを活かして工事台帳を作成できます。

また、カスタマイズが容易なため、多くの企業が活用しています。

Googleスプレッドシートは、クラウドベースのため、複数の担当者が同時に編集でき、リアルタイムで情報を共有できるメリットがあります。

工事台帳ソフト

専用の工事台帳ソフトを使用することで、より効率的に工事台帳を作成・管理できます。これらのソフトウェアには以下のような特徴があります。

  • テンプレートが豊富で、すぐに使い始められる
  • 法令に準拠した形式で作成できる
  • データの自動計算機能がある
  • 他の業務システムと連携可能
  • クラウド型のものが多く、複数の端末からアクセス可能

代表的な工事台帳ソフトには、「建設奉行」「OBIC7建設」「Gaia」などがあります。これらのソフトは、単に工事台帳の作成だけでなく、見積書や請求書の作成、原価管理、進捗管理など、建設業に特化した多様な機能を備えています。

工事台帳の保存・管理方法

法的な保存期間

工事台帳の保存期間は、法律によって定められています。建設業法施行規則第28条によると、工事台帳は工事完成から5年間保存する必要があります。この期間は、税務上の処理や将来的な紛争解決のために重要です。

保存形式の選択

工事台帳の保存形式には、主に紙媒体と電子データの2種類があります。それぞれに特徴がありますので、自社の状況に応じて適切な形式を選択しましょう。

紙媒体での保存

従来型の保存方法である紙媒体での保存は、直接手に取って確認できる利点があります。ただし、保管スペースの確保や劣化、紛失のリスクに注意が必要です。紙媒体で保存する場合は、以下の点に留意しましょう。

  • 湿気や直射日光を避けた場所で保管する
  • ファイリングシステムを整備し、検索しやすくする
  • 定期的に保管状態を確認する

電子データでの保存

近年主流となっている電子データでの保存は、スペース効率が良く、検索性に優れています。クラウドサービスを利用すれば、遠隔地からのアクセスも可能になります。電子データで保存する際は、以下の点に注意しましょう。

  • 定期的なバックアップを行う
  • セキュリティ対策を徹底する
  • データ形式の互換性を考慮する

工事台帳を作成する際の注意点

正確に情報を記載する

工事台帳の作成において最も重要なのは、正確な情報を記載することです。工事名称、工事場所、工期、発注者情報などの基本情報はもちろん、日々の作業内容や使用材料、労務費などのすべての項目において、誤りのない記録が求められます。特に金額に関する情報は、後の会計処理や税務申告にも影響するため、細心の注意を払う必要があります。

費用の配分を適切に行う

工事台帳における費用の配分は、適切に行われなければなりません。材料費、労務費、外注費、経費などの各項目に対して、実際の支出に基づいた正確な配分が必要です。例えば、一つの資材が複数の工事で使用される場合、その費用を適切に按分して記録することが求められます。不適切な費用配分は、工事原価の誤算や利益率の誤認につながる可能性があります。

タイムリーな更新

工事台帳は、工事の進捗に合わせてタイムリーに更新する必要があります。日々の作業内容や使用材料、発生した費用などを、その都度記録することが望ましいです。更新が遅れると、重要な情報の漏れや誤記入のリスクが高まります。また、リアルタイムの進捗状況や費用管理が難しくなり、適切な工事管理に支障をきたす可能性があります。

セキュリティ対策

工事台帳には機密性の高い情報が含まれるため、適切なセキュリティ対策が必要です。特に電子データで管理する場合は、不正アクセスやデータ漏洩のリスクに注意を払う必要があります。アクセス権限の設定、定期的なバックアップ、暗号化などの対策を講じることが重要です。また、紙媒体で保管する場合も、施錠可能な場所での保管など、適切な管理が求められます。

フォーマットの利用で書式を統一する

工事台帳の記録方法は、一貫性を持って行う必要があります。記載フォーマットや用語の使用、計算方法などを統一することで、誤解や混乱を防ぎ、効率的な管理が可能になります。特に複数の担当者が関わる場合は、記録方法についての共通理解を図り、定期的なチェックを行うことが重要です。

定期的な検証と修正

工事台帳の記載内容は、定期的に検証し、必要に応じて修正を行うことが重要です。特に長期にわたる工事の場合、最初の見積もりと実際の進行状況に乖離が生じる可能性があります。定期的な検証により、早期に問題を発見し、適切な対応を取ることができます。また、この過程で得られた知見を、今後の工事管理の改善に活かすことも可能です。

関連書類との整合性確保

工事台帳は、契約書、設計図面、施工計画書、日報など、他の関連書類と整合性を保つ必要があります。これらの書類間で情報の不一致がある場合、後々のトラブルの原因となる可能性があります。定期的に関連書類との照合を行い、齟齬がある場合は速やかに確認と修正を行うことが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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