• 更新日 : 2024年7月24日

粗利・粗利率とは?計算方法や業種別の平均、増やす方法を解説

粗利は売上高から売上原価を引いた金額で、粗利率は売上高に占める粗利の割合を示します。この記事では、粗利や粗利率の計算方法、粗利率が高い場合と低い場合の影響、業種別の平均値、粗利率を上げる方法をわかりやすく解説します。

粗利(あらり)とは?

粗利(あらり)とは、簡単にいうと売上高から売上原価を引いた金額のことです。つまり、商品やサービスを販売して得た収入(売上高)から、その商品やサービスを仕入れるために直接かかった費用(売上原価)を差し引いた金額が粗利になります。

粗利は「売上総利益」とも呼ばれます。売上総利益は、損益計算書などの財務諸表上で使用される正式な用語です。

粗利は事業の基本的な収益力を示す重要な指標として用いられ、経営戦略の立案や財務健全性の評価に役立てられます。

この粗利から、販売費及び一般管理費などの営業費用を差し引いたものが営業利益となります。

粗利の計算方法

粗利を計算することで、企業がどれだけの収益を商品やサービスから得ているか明確に示すことができます。計算式は次のとおりです。

粗利 = 売上高 – 売上原価

売上高は、商品やサービスが販売された額の全額が含まれますが、売上原価は、販売した商品やサービスを仕入れるために直接かかった費用です。

売上原価には、以下のような費用が含まれます。

  • 商品の仕入代金
  • 商品の運送費
  • 商品の保管費
  • 製造業の場合は、原材料費労務費、経費など

粗利の具体例

例えば、あるスーパーマーケットがある1ヶ月間で以下のような実績を上げたとします。

  • 売上高:1,000万円
  • 売上原価:700万円

この場合、粗利は以下のように計算されます。

粗利 = 1,000万円 – 700万円 = 300万円

つまり、このスーパーマーケットは、1ヶ月間で300万円の粗利を上げたことになります。

ここで注意しなければならないのは、売上原価に含まれるのは、商品やサービスを仕入れるために直接かかった費用のみだということです。販売費及び一般管理費などの間接的な費用は、売上原価には含まれません。

粗利が重要とされる理由

粗利は企業の利益率を理解するうえで中核的な要素です。市場での競争が激しい業種では、粗利計算による収益の最適化が重要視されます。

ローコストで高品質の商品を提供することが競争力を高めるためには、粗利を保ちつつコスト削減を図ることが必要です。

粗利率とは?

粗利率とは、売上高に対する粗利の割合を示す指標です。これは、企業が商品やサービスを販売することで得られる利益の割合を示すものです。企業がどれだけ効率的に収益を上げているかを示す指標になります。

粗利率の計算方法

粗利率とは、売上高に対する粗利の割合を示す指標です。粗利を売上高で割ることで算出され、パーセンテージで表されます。

粗利率の計算式は以下の通りです。

粗利率 = 粗利 ÷ 売上高 × 100

例えば、売上高が1,000万円、粗利が300万円の場合、粗利率は以下のように計算されます。

粗利率 = 300万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 30%

この粗利率は、売上高の30%が粗利であることを示しています。

粗利率からわかること

財務的な健全性の指標

粗利率は企業がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す重要な指標です。高い粗利率は、売上に占める原価の割合が低いことを意味し、それが直接的に財務的な健全性と関連しています。

たとえば、粗利率が業界平均を上回っている企業は、同業他社に比べて財政的に安定しており、投資家にとって魅力的な選択肢となり得ます。

価格設定戦略の評価

粗利率は商品の価格設定が市場とどのように競合しているかを評価するのに役立ちます。この指標を利用して、価格設定を見直すことが可能です。

価格が高すぎる場合は売上が低下し、逆に価格が低すぎると利益率が落ちる可能性があるため、粗利率を基に適切な価格策定が求められます。

コスト管理の効果

低い原価で高い売上を達成することができれば、粗利率は向上します。これにより、企業がどれだけ効果的にコスト管理を行っているかが分かります。

効率的なコスト管理は、不必要な支出を削減し、全体的な利益を最大化するために重要です。

業務効率の改善の余地

粗利率を分析することで、企業は業務の効率をどの程度改善できるかを理解し、対策を講じることができます。

たとえば、特定の製品ラインの粗利率が低い場合、その原因を調査し、生産プロセスの改善やコスト削減を図ることが考えられます。

粗利率が高い、粗利率が低いとどうなる?

粗利率は、会社がどれだけ効率よく利益を上げられているかを表す指標でもあります。粗利率が高いほど、売上に対して原価が少なく、利益が高いことを意味します。逆に、低い場合は原価が売上に占める割合が大きく、利益率が低いことを示しています。

粗利率が高い場合

粗利率が高いということは、商品やサービスの値段が適切に設定されていて、それによって十分な利益を上げることができているということを示しています。

また、粗利率が高い会社は、競争相手と比べて価格競争力を持つことができ、市場での優位性を保つことができます。

粗利率が低い場合

粗利率が低いということは、商品やサービスの販売による収入(売上高)のうち、仕入れ原価を差し引いた金額(粗利)の割合が低いということです。

これは、市場が競争的で、製品やサービスの価格を高く設定することが難しい場合や原材料費や労働費が高いなどの理由があげられます。価格競争に巻き込まれると利益が大きく圧迫されるため、価格競争力が弱くなります。競合他社との価格競争に対抗することが難しくなり、市場でのシェアを維持・拡大することが困難になります。

このように、粗利率からは会社の収益性や効率性、値段設定、競争力といった大切な情報を得ることができます。これらの情報は、会社の経営戦略を立てる上でとても重要な役割を果たします。

業種別の粗利率の平均

中小企業庁による「中小企業実態基本調査(令和2年確報)」によると、各業種の平均粗利率は下記のようになっています。

業種平均粗利率
建設業24.4%
製造業22.1%
情報通信業43.2%
運輸業、郵便業24.0%
卸売業15.2%
小売業31.2%
不動産業、物品賃貸業43.3%
学術研究、専門・技術サービス業59.4%
宿泊業、飲食サービス業66.2%
生活関連サービス業、娯楽業38.0%
サービス業(他に分類されないもの)41.4%

粗利率を上げるには?

企業にとって、粗利率を上げることは収益性の向上につながります。ここでは、粗利率を上げるための具体的な方法を見ていきましょう。

仕入れ価格の交渉

仕入れ価格の交渉を行います。仕入れ先との関係を強化し、大口発注や長期契約などを活用して、仕入れコストを削減しましょう。仕入れ先を複数確保することで、価格交渉力を高めることもできます。

販売価格の見直し

商品やサービスの販売価格を見直すことが重要です。市場動向や競合他社の価格を分析し、適切な価格設定を行いましょう。値上げが可能な場合は、慎重に検討します。

ただし、値上げによる売上減少のリスクも考慮する必要があります。

商品構成の見直し

商品構成を見直すことも重要です。粗利率の高い商品の販売比率を高め、全体の粗利率を引き上げましょう。不採算商品は思い切って削減し、高付加価値商品の開発・導入を検討します。

生産効率の向上

製造業の場合、生産効率を向上させることで、製造コストを削減し、粗利率を改善することができます。生産工程の見直しや自動化などを進め、効率化を図りましょう。

在庫管理の徹底

在庫管理を徹底することも粗利率の改善につながります。適正な在庫量を維持し、在庫コストを削減しましょう。需要予測の精度を高め、過剰在庫や欠品を防ぐことが重要です。

粗利率を理解し、経営に活かしましょう

粗利率は、企業の本業における収益性を示す重要な指標です。売上高から売上原価を差し引いて算出し、製品やサービスの収益性を直接的に表します。粗利率は価格設定や仕入れ先選定に活用でき、業種別の平均値と比較することで自社の収益性の位置づけを理解できます。

粗利率を上げるには、販売価格の見直し、仕入れ価格の交渉、商品構成の見直し、生産効率の向上、在庫管理の徹底など、様々な角度からのアプローチが必要です。また、粗利率は他の利益率(営業利益率、経常利益率、当期純利益率)と併せて分析することが重要です。

粗利率を理解し、自社の経営に活かすことで、収益性の向上と企業の成長につなげることができます。


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