• 作成日 : 2025年1月10日

労災の休業特別支給金とは?支給要件やもらえない場合、申請方法、税金を解説

休業特別支給金は、労災保険の一環として休業(補償)給付に上乗せして支給される特別な給付金です。この記事では、労災保険制度における休業特別支給金について、支給の仕組みや金額、休業(補償)給付との違い、申請方法、必要書類、そして受給できないケースまで網羅的に説明します。

休業特別支給金とは?

休業特別支給金は、労働者が業務上の事由、または通勤による負傷や疾病により療養のために休業し、賃金を受けられない場合に支給される労災保険給付の一つです。休業(補償)給付に上乗せして支給される特別な給付金で、労働者の生活保障を目的としています。

この支給金は、労働基準法で定められた休業(補償)給付(平均賃金の60%)に加えて約20%が支給されるため、労働者の収入減少を軽減する重要な役割を果たしています。

休業特別支給金は、休業4日目から支給対象となり、療養のために休業している期間中、継続して受給することができます。

休業特別支給金の支給要件

休業特別支給金の支給要件は、休業(補償)給付と同じで、以下の3つを満たしていれば各給付金を受け取ることができます。

休業特別支給金および休業(補償)給付を受け取るための条件

  • 仕事に従事できない状態であること
  • 業務中や通勤中の労災により被ったケガや病気の療養による休業であること
  • 会社から賃金を受け取っていないこと

これらの条件を満たしている場合、休業開始から3日間の待機期間を経て、4日目から、休業特別支給金および休業(補償)給付を受け取ることができます。

いくら支給されるか

休業特別支給金の支給額は、給付基礎日額の20%相当額です。これに加えて、休業(補償)給付が給付基礎日額の60%が別途支給されます。つまり、休業特別支給金と休業(補償)給付を合わせると、労働者は給付基礎日額の約80%に相当する金額を受け取ることができます。給付基礎日額は、労働者の平均賃金を基に算定されます。

具体的な計算方法は以下の通りです。

  • 休業(補償)給付:平均賃金の60%
  • 休業特別支給金:平均賃金の20%

例えば、休業前の平均賃金が1日あたり10,000円だった場合、休業(補償)給付は6,000円、休業特別支給金は2,000円となり、合計で8,000円が支給されることになります。

ただし、平均賃金によって算定される給付基礎日額は、療養開始から1年6カ月を経過すると年齢ごとに毎年決められた上限額及び下限額が設定されます。

さらに、厚生労働省の統計による給与水準に一定以上の変動があった場合、給付基礎日額も変動に沿って増額又は減額(スライド)されます。

いつまで支給されるか・支給期間

休業特別支給金の支給期間は、原則として休業4日目から開始され、療養による休業が続く限り支給されます。療養の原因が業務災害であった場合、休業3日目までについては、労働基準法で定められた事業主の休業補償義務により、事業主が休業補償(1日あたり平均賃金の60%)を行う必要があります。。

支給期間の終了は、以下のいずれかの条件を満たした時点となります。

  • 休業の原因となる傷病が「治ゆ」した場合(完治、または病状が固定した時など)
  • 療養開始後1年6カ月経過後、傷病(補償)年金の支給に移行した時

なお、休業期間が長期に及ぶ場合でも、労災保険法に基づく休業(補償)給付と休業特別支給金は、療養が必要な限り継続して支給されます。

休業特別支給金は誰が負担するか

休業特別支給金は、事業主や労働者個人ではなく、労災保険から支給されます。

労災保険は、事業主が納付する保険料によって運営されており、休業特別支給金の支給時に事業主が直接負担することはありません。

例えば、小規模な工務店で働く大工さんが業務中に怪我をして休業した場合、休業特別支給金は労災保険から直接支給されます。工務店の経営者が別途費用を負担する必要はありません。

休業特別支給金には税金がかかるか

休業特別支給金は、非課税所得となります。つまり、所得税や住民税の対象外です。したがって、この給付金は、確定申告書の収入金額に含める必要がありません。つまり、年末調整や確定申告の際に、休業特別支給金を収入として申告する必要はないのです。

休業特別支給金と休業(補償)給付の違い

休業特別支給金と休業(補償)給付は、どちらも労働災害による休業時の補償を目的としていますが、その性質や支給基準に違いがあります。

項目休業(補償)給付休業特別支給金
目的休業中の賃金の損失を補償休業(補償)給付を補完
支給要件
  • 業務上の通勤中の労災による療養により休業中であること
  • 賃金を受けられないこと
  • 仕事に従事できない状態であること
支給対象期間休業4日目から支給開始
支給額給付基礎日額の60%給付基礎日額の20%
課税非課税

休業(補償)給付・休業特別支給金の申請の流れ

休業特別支給金の申請手続きは、労災保険の休業補償の請求手続きと同時に行います。以下に申請の流れを簡単に説明します。

①事故発生から医療機関での診察まで

労働災害が発生した場合、速やかに医療機関を受診しましょう。この際、労働災害である旨を医療機関に伝えることが重要です。医師の診断結果や治療方針によって、休業の必要性が判断されます。

②事業主への報告

医療機関での診察後、速やかに事業主に労働災害の発生と診察結果を報告します。事業主は労働者死傷病報告書を作成し、所轄の労働基準監督署に提出する義務があります。

③休業(補償)給付・休業特別支給金の申請

休業(補償)給付の申請をします。休業(補償)給付の申請用紙に特別給与に関する記載項目があるので、そこに記入をすることで休業特別支給金の申請もあわせて行われます。

以下の申請用紙に記入します。

  • 業務災害の場合:休業(補償)給付支給請求書(様式第8号)
  • 通勤災害場合:休業給付支給請求書(様式第16号の6)

添付書類として、申請内容の確認のために賃金台帳や出勤簿の写しの提出を求められることがあります。

申請書に必要事項を記入し、医師の証明を受けた後、労働基準監督署に提出します。

各申請書は、厚生労働省のホームページよりダウンロードいただけます。

参考:主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)|厚生労働省

④労働基準監督署への提出

作成した申請書類一式を、管轄の労働基準監督署に提出します。提出方法は、窓口への直接持参や郵送が一般的です。提出前に書類の不備や記入漏れがないか、十分に確認することが大切です。

⑤審査と支給決定

労働基準監督署で申請書類の審査が行われます。審査期間は案件の複雑さによって異なりますが、通常は数週間から1ヶ月程度かかります。審査が完了すると、支給・不支給の決定通知が送付されます。

⑥支給金の受取

支給が決定した場合、指定した銀行口座に休業特別支給金が振り込まれます。支給金額や振込日は、決定通知書に記載されていますので、確認しておきましょう。

⑦継続的に申請

休業が長期に及ぶ場合は、申請を一括で行うか複数回に分けて行うかは自由に選択することができますが、1ヶ月ごとに申請を行うのが一般的です。継続的な申請では、前回の申請以降の休業状況や治療経過を報告することになります。

なお、申請手続きに不安がある場合は、労働基準監督署や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

休業特別支給金の注意点

提出期限に注意する

休業補償や休業特別支給金の請求期限は、休業により賃金を受けない日ごとに、翌日から2年以内です。2年以内に申請書の提出をする必要があります。

申請書類のコピーを保管する

申請書類のコピーは必ず手元に保管しておきましょう。保管期間は定められていませんが、申請後の問い合わせや追加書類の提出に備えて、少なくとも3年間は保管することが推奨されます。また、個人情報保護の観点から、書類は鍵のかかる場所で管理するなど、適切な取り扱いが求められます。

休業特別支給金がもらえないケース

労災認定されない場合

休業特別支給金は労災保険の給付の一つであるため、業務上の事由または通勤による負傷や疾病と認定されない場合は支給されません。業務外の事故や私的な病気による休業は対象外となります。

賃金の支払いがある場合

休業期間中に事業主から賃金が支払われている場合、その額によっては休業特別支給金が減額されたり、支給されないことがあります。賃金が支払われている場合、支給金は「給付基礎日額△支払われた賃金額×20%」の金額となります。

申請期限を過ぎた場合

休業特別支給金の請求権には2年間の時効があります。休業により賃金を受けなかった日の翌日から2年を経過すると、請求権が消滅し支給を受けられなくなります。適切な期間内に申請することが重要です。

虚偽申請や不正受給の場合

故意に虚偽の申請を行ったり、不正に給付金を受給しようとした場合、休業特別支給金の支給が拒否されるだけでなく、罰則の対象となる可能性があります。正直かつ適切な申請手続きを行うことが求められます。

他の補償との重複受給の場合

休業特別支給金と他の社会保障給付が重複する場合、調整が行われることがあります。例えば、傷病手当金との併給調整や、年金との調整などが該当します。複数の給付を受ける可能性がある場合は、事前に労働基準監督署に相談することをおすすめします。

治癒または症状固定した場合

負傷や疾病が治癒した場合、または症状が固定して治療の効果が期待できなくなった場合(症状固定)、休業特別支給金の支給は終了します。この場合、障害が残存するようであれば障害補償給付の申請を検討します。

就労可能と判断された場合

医師によって就労可能と判断された場合、休業の必要性がなくなったとみなされ、休業特別支給金の支給は終了します。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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