• 作成日 : 2025年2月26日

建築工事の工程表の種類と違い!テンプレート、書き方のポイント

建築工事の工程表には複数の種類があり、それぞれに特徴があります。この記事では、バーチャート、ガントチャート、斜線式、ネットワーク、曲線式の5種類の工程表について、その特徴や選び方を解説します。また、工程表の書き方のポイントや、作成に役立つテンプレート、管理上の注意点も紹介します。これにより、建築プロジェクトの進行状況を効果的に可視化し、スムーズな工程管理を実現できるようになります。工程表の適切な選択と活用が、建築工事の成功につながることがわかるでしょう。

工程表は複数の種類を使い分ける

工程表には、管理したい情報や目的によって、様々な種類があります。工事や業務の工程を効果的に管理するためには、状況に合わせて適切な工程表を選択・使い分けることが大切です。

工程表の役割

工程表を作成することで、建築工事の進行状況を可視化し、作業の順序や期間、人員の配分を明確にすることができます。

  • 工事スケジュールの把握
    工程表を使うことで、プロジェクトの全体や各工程の開始・完了時期を一目で把握できるようになります。これにより、全体の工程管理がしやすくなります。
  • 各工程の進捗管理
    工程表には、進捗状況を記録・管理できる機能があります。進捗率の把握や遅延の早期発見が可能になり、適切な対応を立てやすくなります。
  • 人員の効率的な配分
    工程表を使うことで、人員の最適な配分を検討し、工程を円滑に進めることができます。
  • 遅延のリスク管理と早期対応
    工程間の依存関係を工程表に反映させることができます。どの工程が遅延すると他の工程にどのような影響があるかを予測することができ、リスク管理につながります。
  • プロジェクトの共有と課題の早期発見
    プロジェクトメンバーや関係者間の情報共有に役立ちます。プロジェクトの全体像を共有し、課題の早期発見と解決につなげることができます。

工程表の種類と選び方

建築工事にはプロジェクトに応じて、複数の工程表の管理が必要です。目的に応じて適切な工程表を選択することで、工事の進行を管理し、工期の遅延やコストの増加を防ぐことができます。ここでは、主な工程表の種類とその特徴、選び方について解説します。

バーチャート工程表|スケジュール把握

バーチャート工程表は、最も一般的に使用される工程表です。横軸に時間、縦軸に作業項目を配置し、棒グラフで作業期間を表します。この工程表の特徴は以下の通りです。

  • 視覚的に分かりやすく、全体のスケジュールを把握しやすい
  • 作業の開始日と終了日が明確に表示される
  • 作業間の関係性や順序が理解しやすい

バーチャート工程表は、比較的小規模な建築プロジェクトや、全体の流れを関係者に共有する際に適しています。ただし、作業の詳細な依存関係や進捗率の把握には向いていないため、他の工程表と併用することが多いです。

ガントチャート工程表|進捗率の把握

ガントチャート工程表は、バーチャート工程表を発展させたもので、進捗率の把握に優れています。各作業項目の棒グラフ内に、実際の進捗状況を示す線や色を追加することで、計画と実績の差異を視覚化します。ガントチャート工程表の利点は以下の通りです。

  • リアルタイムの進捗状況を確認できる
  • 遅延や前倒しの発生を早期に発見できる
  • リソースの配分状況を把握しやすい

ガントチャート工程表は、中規模から大規模の建築プロジェクトで活用されることが多く、定期的な進捗会議での使用に適しています。ただし、作成と更新に手間がかかるため、適切な管理体制が必要です。

斜線式(座標式)工程表|同時進行の工事を可視化

斜線式工程表は、同時進行の工事を可視化するのに適しています。縦軸に作業項目、横軸に時間を取り、作業の進行を斜線で表現します。この工程表の特徴は以下の通りです。

  • 複数の作業の並行関係が一目で分かる
  • 作業の進捗速度を斜線の傾きで表現できる
  • 工期の重複や干渉を容易に確認できる

斜線式工程表は、特に高層ビルや大規模マンションなど、同種の作業が繰り返し行われる建築プロジェクトで有効です。しかし、作業項目が多くなると複雑化するため、主要な工程のみを表示するなどの工夫が必要です。

ネットワーク工程表|複数工事の順序の可視化

ネットワーク工程表は、複数の工事の順序と依存関係を可視化するのに適しています。作業をノードとし、矢印で作業間の関係性を表現します。主な特徴は以下の通りです。

  • クリティカルパス(最も時間がかかる作業の連鎖)を特定できる
  • 作業の前後関係や依存関係が明確に分かる
  • 工期短縮の可能性を検討しやすい

ネットワーク工程表は、複雑な工程管理が必要な大規模建築プロジェクトや、工期短縮が求められる場合に有効です。ただし、作成に専門知識が必要で、頻繁な更新が難しいため、他の工程表と併用することが一般的です。

曲線式(出来高累計曲線)工程表|全体の進捗を把握

曲線式工程表は、プロジェクト全体の進捗を金額や比率で表現します。横軸に時間、縦軸に累計出来高を取り、S字カーブで進捗を表現します。この工程表の特徴は以下の通りです。

  • プロジェクト全体の進捗状況を一目で把握できる
  • 計画と実績の差異を金額ベースで確認できる
  • 資金計画との連動が容易

曲線式工程表は、施主や経営者向けの報告資料として適しており、プロジェクトの財務的側面を重視する場合に有効です。ただし、個別の作業の詳細は表現できないため、他の工程表と併用する必要があります。

工程表の書き方のポイント

作業項目を明確にする

工程表作成の第一歩は、プロジェクトに含まれるすべての作業項目を洗い出すことです。建築工事の場合、基礎工事、躯体工事、設備工事、内装工事などの大きな区分から始め、それぞれの詳細な作業まで落とし込みます。例えば、内装工事であれば、壁塗装、床施工、天井仕上げなどの具体的な作業を列挙します。これにより、工事全体の流れが把握しやすくなります。

作業の順序と関連を考慮する

建築工事では、多くの作業が互いに関連し合っています。例えば、電気配線工事は壁の下地工事が完了してから行う必要があります。このような作業間の依存関係を正確に把握し、工程表に反映させることが重要です。適切な順序で作業を配置することで、工事の遅延を防ぎ、効率的な進行を実現できます。

余裕を持たせた計画を立てる

建築工事では、天候の影響や資材の納入遅延など、予期せぬ事態が発生する可能性があります。そのため、工程表には適度な余裕を持たせることが重要です。一般的には、全体工期の5~10%程度の余裕を見込むことが推奨されています。過去の類似プロジェクトのデータや、経験豊富な職人の意見を参考にしながら、適切な計画を立てましょう。

リソースの配分を考慮する

工程表作成時には、利用可能な人員や機材などのリソースを考慮することが重要です。特に、専門性の高い作業や特殊な機材を必要とする工程については、リソースの制約を踏まえた計画立案が不可欠です。例えば、クレーン車の使用が必要な大型部材の搬入作業は、クレーン車の確保状況に合わせて日程を調整する必要があります。

色分けなどで視覚的に工夫する

工程表は、多くの情報を含む複雑な文書になりがちです。そのため、色分けやアイコンの使用など、視覚的な工夫を凝らすことで、情報の理解しやすさを向上させることができます。例えば、工種ごとに異なる色を割り当てたり、重要度の高い作業に特別なマークを付けたりすることで、一目で全体の状況が把握しやすくなります。

工程表作成に役立つテンプレート

複数の工程表を効率的に作成するには、テンプレートを活用すると便利です。

以下より、工程表作成に役立つテンプレートを無料でダウンロードいただけます。自社に合わせてカスタマイズしながらお役立てください。

工程表を管理する上での注意点

定期的に進捗を確認し更新する

工程表は作成して終わりではありません。プロジェクトの進行に合わせて定期的に更新し、実際の進捗と比較することが重要です。週次や月次など、プロジェクトの規模に応じて適切な頻度で更新しましょう。進捗が予定より遅れている場合は、原因を分析し、必要に応じて工程を見直す必要があります。

関係者との情報共有する

工程表は、プロジェクトに関わるすべての関係者が閲覧できるようにしましょう。施工業者、設計者、発注者などとの情報共有を円滑に行うことで、工程の遅れや問題点を早期に発見し、対策を講じることができます。クラウド型の工程管理ツールを使用すると、リアルタイムでの情報共有が可能になります。

予期せぬ事態に備える

建築工事には様々なリスクが伴います。天候不順、資材の納期遅れ、労働力不足など、予期せぬ事態に備えて余裕を持った工程設定が必要です。特に屋外作業が多い建築工事では、雨天時の代替作業計画を用意するなど、柔軟な対応が求められます。

変更や追加工事の管理を徹底する

建築工事では、設計変更や追加工事が発生することがあります。これらの変更が工程に与える影響を適切に評価し、必要に応じて工程表を修正することが重要です。変更管理を怠ると、工期の遅延や予算超過につながる可能性があります。

各工程に品質管理を組み込む

工程管理と品質管理は密接に関連しています。工期を優先するあまり、品質を犠牲にしてはいけません。各工程で必要な品質チェックポイントを工程表に組み込み、適切なタイミングで検査を実施することで、手戻りを防ぎ、高品質な建築物を実現できます。

コストへの影響を考慮する

工程管理はコスト管理とも深く関わっています。工程の遅れは追加の労務費や機材レンタル費用の発生につながります。逆に、無理な工程短縮は残業代や休日出勤費用の増加を招く可能性があります。工程表の管理においては、常にコストへの影響を考慮しながら意思決定を行うことが大切です。

継続的な改善を心がける

工程管理のノウハウは、一朝一夕には身につきません。プロジェクト終了後には必ず振り返りを行い、工程管理上の課題や改善点を洗い出しましょう。これらの知見を次のプロジェクトに活かすことで、組織全体の工程管理能力を向上させることができます。PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを意識し、継続的な改善を心がけることが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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