- 作成日 : 2024年12月19日
労災保険給付関係請求書の7号様式とは?提出が必要なケースや書き方を紹介
労災保険給付関係請求書の7号様式は、労災保険の給付を受ける際に必要な書類の1つです。労災指定医療機関以外で治療を受けた際にこの様式で申請をすることで、自己負担した療養費用の請求ができます。本記事では、その他の労災申請様式との違いや、各項目の書き方について解説します。
目次
労災保険給付関係請求書の7号様式とは
労災保険給付関係請求書の7号様式は、業務災害による傷病の際に労災指定医療機関以外で治療を受けた場合に、自己負担した療養費用を請求するために使用します。
労働災害(労働者が業務遂行中に業務に起因して受けた業務上の災害)が起こった場合、傷病治療に要した費用の全額が労災保険の療養給付として支給されます。しかし、治療を受けたのが労災指定医療機関ではない場合、その医療機関では療養給付を受けることができません。そのため、窓口では医療費を全額負担した後で、費用の還付を受ける手続きが必要です。その還付請求をするための様式が7号様式です。
医療機関による診察費用以外に、医師の判断によりコルセット、ギプス等の治療用装具が必要となった場合は、治療用装具にかかった費用についても申請ができます。
労災給付を申請するための様式は、事故や給付の種類によって用意されており、状況に合わせて適切な様式を選択する必要があります。
以下では、7号様式と間違えられることの多い書式である5号、8号、16号の5様式と比較し、それぞれの違いを解説します。
様式7号と5号の違い
様式7号が業務災害時に労災指定医療機関以外で治療を受けた際に使用する書類であるのに対して、様式5号は労災指定医療機関で治療を受けた際に使用する書類です。
労災指定医療機関とは、業務に起因する怪我や病気のための治療において、労災保険の適用を受けられる病院を指します。労災の適用を受けられる医療機関であるため、治療を受けた際に窓口で費用を支払う必要はありません。
様式5号で労災の適用を受けるためには、治療を受けた際に医療機関に提出をすることが必要です。
様式7号と8号の違い
様式7号が労災保険の療養費用の給付を受ける際に用いるのに対して、様式8号は休業補償給付を受ける際に使用します。休業補償給付とは、業務災害による怪我または病気により働けない状態となり、その間の賃金を受けていない場合に、所得保障として支給される給付です。
療養の給付は、労働災害に関連した治療を受けたことによって給付を受けることができますが、休業補償給付はそれに加えて業務が不能となり、賃金を受け取れない状況である必要があります。
様式7号と16号の5との違い
様式7号が業務災害に対して使用される書類であるのに対して、様式16号の5は通勤災害による怪我や病気による療養の際に使用します。
労働災害には、怪我や病気の原因によって、業務に起因する「業務災害」と、通勤中の事故に起因する「通勤災害」の2種類があります。7号は業務災害のための様式であり、16号の5は通勤災害のための様式です。記載内容は類似していますが、16号の5には通勤経路や通勤方法などの通勤災害特有の情報を記載する欄があります。
労災保険給付関係請求書の7号様式を提出するケース
次に、実際に第7号様式を使用して申請をするためのタイミングと提出先について解説をします。遅れずに申請をすることで、負担した治療費の還付を速やかに受けられます。
提出タイミング
7号様式を提出するタイミングとしては、医療機関にて治療を受けた後、書類の準備が整い次第迅速に行うことが望ましいです。
様式には労働者の情報、事業主の証明、医師の証明が必要であり、それぞれの欄について確認や記載の依頼をする必要があります。それらの必要事項や証明欄の記入が完了した上で、必要に応じて添付書類を準備すれば提出が可能です。
7号様式は労災指定医療機関以外で治療を受けた際に使用する書類のため、申請するときは治療費の全額を被災労働者が支払っている状態となります。そのため、早期に提出をして迅速な費用の還付を受けることで、労働者の経済的負担を軽減できます。
タイミングとしてはできるだけ早く申請をするのが望ましいですが、申請期限としては療養費用の支出が確定した日の翌日から2年です。
提出先
労災保険給付関係請求書の7号様式は、労働者が勤務している事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。労働者の住所地や法人本体の住所地ではなく、事業所の所在地で管轄が決定していることに注意が必要です。
これは、労災保険の設置が法人ごとではなく原則として事業所単位で行う義務があるためです。
書類の準備ができたら、不足のないように確認をして提出しましょう。提出方法は郵送、または労働基準監督署の窓口への持参のいずれかです。
労災保険給付関係請求書の7号様式の主な項目と書き方
7号様式を含め、労災給付を受ける際の様式は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
参考:主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式) |厚生労働省
次に、7号様式の各項目の書き方を解説します。
労働保険番号
労働保険番号とは、事業所が労災保険に加入した際に割り振られる労災適用事業所としての番号です。一人親方の場合は、加入している一人親方団体の番号を記入します。
年金証書の番号
年金証書とは、障害補償年金など労災年金の受給をする際に交付される証書です。年金証書の番号欄には、年金証書に記載されている番号を記入しますが、該当の労働者が労災年金を受給していない場合は記載不要です。
労働者の個人情報
氏名・性別・生年月日・年齢・住所・職種をそれぞれ記載する欄があります。漏れなく正確に記載をしましょう。
負傷又は発病年月日
負傷又は発病年月日欄には、労働者が業務中に怪我を負い、もしくは発病した年月日を記入します。 発病による申請で年月日が明確でない場合は、医療機関の初診日を記入します。
振込を希望する金融機関の名称・口座名義人・預金の種類・口座番号
請求人本人が名義となっている口座の情報を記入します。
事業主の証明欄
請求書に記載された内容について事業主が確認をしたことの証明として、事業所の名称・住所・事業主氏名等を記入します。一人親方団体の場合は一人親方団体の情報を記入します。
看護料・移送費・上記以外の療養費
看護料は付添看護人(療養の補助や介助ために雇う看護人)が必要になった場合の費用、移送費は労災指定医療機関が遠くにあるために移動に要した費用です。
看護料と移送費などを申請するためには、費用の請求書や領収書などの添付が必要になります。
療養の給付を受けなかった理由
「療養の給付」とは、労働災害により負傷、または発病した従業員が労災指定医療機関で受診して現物給付を受けることを指します。
様式7号は労災指定医療機関等以外で受診した際に、費用の還付を受けるために申請をする書類です。そのため、なぜ労災指定医療機関等を受診しなかったのかを記入する必要があります。
療養に要した費用の額
申請をする費用の合計額を記載します。コルセット、ギプス等の医療用装具の費用を請求する際も費用の額に含めます。
医師の証明
医師から治療の証明として診察の概要や医療機関の情報を記載してもらいます。医療機関によっては依頼当日に証明が貰えない場合もあるため、余裕をもって依頼することが必要です。
所属事業場の情報
労働者が所属する事業場の名称・所在地を記載します。(事業主の証明欄で記載した事業場と異なる場合のみ記載します。)
災害発生の事実を確認した者の職名・氏名
現認者と言われる、労災事故を確認した人や報告を受けた人を記載します。一人親方の場合には元請けの責任者等を記載します。
負傷又は発病の時刻・災害の原因及び発生状況
災害が発生した時刻と、下記の内容を漏れなく記載します。
- どのような場所で発生したか
- どのような作業をしているときに発生したか
- どのようなもの、または環境に関係していたか
- どのような不安全な、または有害な状態があったか
- どのようにして災害が発生したか
その他就業先の有無
労働者が、副業を行っているなど申請を行う事業所以外の就業先がある場合に記載します。一人親方も対象です。
派遣先事業主証明欄
労働者が派遣事業者である場合、派遣先事業主の証明を貰う必要があります。
労災保険給付関係請求書の7号様式を提出する際の注意点
労災申請の審査が、修正もなく一度で通るためには、適切な様式の選択と正確な記入が必要です。手続きをスムーズに進めるために以下の点に注意しましょう。
様式の種類と条件を正確に把握する
7号様式は、業務災害が起こった際に、労災指定医療機関以外で受診をし、実費負担をした療養費を請求する際に使用する書類です。労災保険給付には複数の様式があり、それぞれ使用する際の目的や条件が異なります。申請を行う災害や給付の種類を正確に理解して様式を選択することが重要です。
療養に関する申請であっても、労災指定医療機関で受診した場合には7号様式は使用しません。業務災害ではなく、通勤災害の場合も別の様式を使用します。
申請する様式を誤った場合、再申請が必要であったり、給付が遅れたりする可能性があるため注意が必要です。
書類などの準備は早めに対応する
労災保険給付の請求には、医師の証明や事業場の証明など、複数人が記載する必要があります。そのため、申請書作成に着手してから申請までにある程度の時間がかかります。被災労働者が療養費用の還付を迅速に受け取るためには、できるだけ早く準備を進めることが重要です。
申請の時効は費用の支出が確定した日から2年以内ですが、被災労働者の経済的な負担を減らすためにも、迅速に対応をしましょう。
通院費も請求できる可能性がある
労災保険では、通院のために公共交通機関やタクシー等を使用した費用についても、一定の条件を満たす場合に保険給付をすることとしています。
保険給付を受けるために必要な条件としては、被災労働者が医療機関に通院するまでの距離が、原則として片道2km以上であることです。労働者の傷病等の状況によっては、2kmの要件を満たさなくても支給が認められる場合もあるため、申請の際は労働基準監督署に確認をする必要があります。
また、タクシーの利用分が認められるためには、一定の条件を満たした上で領収書の添付が必要です。
労災の給付申請は7号様式で正確・迅速に
労災保険給付関係請求書の7号様式は、業務災害による傷病について自己負担した治療費や装具購入費用の還付を受けるための書類です。
労災の給付申請にはさまざまな様式があり、給付の種類や災害の種類によって使用するものが異なります。誤った様式を使用すると手続きが遅れてしまうため、それぞれの様式の役割や書き方を理解して作成を進めることが重要です。
適切に記入し早期に提出することで、負担した療養費用が還付されて経済的な負担を減らすことができます。本記事の内容を参考に、正確に給付を申請してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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