• 作成日 : 2025年1月10日

建設業の一人親方の今後は?偽装一人親方やインボイスの影響、活躍するコツを解説

建設業における一人親方とは、個人で請負業務を行う職人や業者を指し、近年その存在は注目されています。しかし、偽装一人親方の問題やインボイス制度の導入など、業界の動向は厳しさを増しているため、今後の展望が気になるところです。

また、2024年問題に直面する中で、一人親方が活躍するためには、許可取得や実態を伴う契約の締結、労災保険への加入などが求められます。

建設業の一人親方の割合はどのぐらい?

建設業における一人親方の割合は、他の業種と比較しても高い水準にあります。国土交通省や総務省の統計データからも示されるように、日本全体の建設業従事者の中で、約20〜30%が一人親方として働いているとされています。

また、労働力人口が減少する中で、建設業界においても人手不足が深刻化しており、若い世代の労働力を確保することが課題です。この状況は、個人事業主として働く一人親方の数を増やす一因にもなっています。一方で、こうした環境の中で一人親方が安定的に活動するためには、法的な知識や契約上のリスク管理が重要となりつつあります。

建設業の偽装一人親方問題とは?

建設業の偽装一人親方問題は、請負契約を装いながら、実質的には従業員としての働き方を求められるケースを指します。

本来一人親方は、自営業者として自己責任で業務を行う立場です。しかし、企業が一人親方に従業員と同様の管理や指示を行う場合、請負契約ではなく、労働基準法で保護される「労働者」としての権利を持つべきとされ、偽装が指摘される可能性が高まります。

背景には、建設業界の人手不足や企業のコスト削減があり、雇用契約に伴う社会保険・労働保険への負担回避が目的とされています。

しかし、偽装一人親方であると、労働基準法による保護を受けられないため、事故が発生しても労災保険の適用を受けられないなどの問題が生じやすくなります。

厚生労働省や労働基準監督署は、こうした問題の是正を目指し、定期的な現場調査やガイドラインの策定を進めており、一人親方が安心して業務に専念できる環境の整備が求められています。

建設業の一人親方のインボイス制度の影響

2023年10月から導入されたインボイス制度は、建設業の一人親方にも大きな影響を与えています。インボイス制度の導入により、事業者が適格請求書発行事業者として登録しない場合、取引先が消費税の控除を受けられなくなるため、取引先との契約関係が見直されることが増えています。

特に、一人親方にとって、適格請求書発行事業者としての登録が取引の条件となる可能性があり、消費税の申告に関わる負担も増加します。

さらに、未登録の場合、取引先が税負担の軽減を理由に他の登録事業者と契約を結ぶケースも考えられます。こうした状況は、一人親方の経営にとってリスクとなり得るため、今後の事業継続に向けてインボイス制度への対応が不可欠です。

一人親方がインボイス制度に対応するかどうかは、経営にとって重要な決断となります。

建設業の2024年問題とは

2024年4月から、建設業も他業界と同様に年間残業時間が960時間までと定められ、月ごとの上限も厳しく設定されます。この変更により、企業は人員を増やすか、作業効率を上げるなどの対策を講じる必要がありますが、特に建設現場に携わる一人親方にとっては大きな負担となる可能性が高いです。なぜなら、現場での突発的な対応や長時間労働が少なくない建設業においては、厳格な労働時間の管理が難しいケースが多いためです。

一人親方は法律上、労働時間の規制対象外であるため、労働時間の直接的な制約はありません。しかし、働き方改革の影響で全体の作業時間が制限されることにより、企業が一人親方へ依存する傾向が増加する可能性があります。また、労働時間の短縮によって人手不足が一層深刻化することから、現場の人員配置や工期に影響が出やすくなります。このように、2024年問題は建設業全体の労働環境に大きな影響を及ぼし、一人親方の労働形態や業務量にも変化をもたらす可能性が高まっています。

今後一人親方として活躍するには?

建設業許可を取得する

建設業許可は、工事の規模や内容に応じて必要になる場合があります。特に、一定金額以上の工事を受注する場合には、都道府県知事や国土交通大臣からの許可が必要です。たとえば、500万円を超える建築一式工事や、1500万円を超える住宅の建築工事では、建設業許可を取得していることが求められます。許可を持つことで信頼度が上がり、仕事の受注機会も増える傾向があるため、今後の業務を安定させる上で取得を検討することが有益です。

建設業許可の種類

建設業許可には、2つの主要な種類があります。

  • 一般建設業許可: 比較的小規模な工事を行う事業者向けの許可です。
  • 特定建設業許可: 大規模工事や、下請け業者を使うケースがある事業者向けの許可です。

どちらの許可を取得するかは、個々の事業の実態や将来的な計画に応じて選ぶことが必要です。

実態を伴う請負契約を締結する

一人親方としての活動には、実態を伴う請負契約の締結が必要です。請負契約では、労働基準法が適用されないため、労働者としての保護は受けられませんが、その分、業務の内容や成果について独立性が求められます。偽装請負とみなされないためには、業務遂行の指示を企業から受けないことや、自ら作業の方法や手順を決定できる形にすることが重要です。このように、契約内容を明確にし、実態に即した業務内容を維持することで、請負契約としての要件を満たし、法律上のリスクを回避することができます。

労災保険に加入する

一人親方は、労働者としてではなく事業者として働くため、一般的に労災保険が適用されません。しかし、建設業界では、現場での事故リスクが高いため、労災保険への特別加入制度が設けられています。特別加入することで、工事中の事故や怪我に備えた補償を受けることが可能になり、安心して業務に集中できる環境を整えることができます。また、保険加入により取引先からの信頼も高まり、契約上のリスクを減らす一助となります。

交渉スキルを身につける

建設業界において、一人親方として成功するためには、技術や知識だけでなく、交渉スキルも重要です。顧客、下請け業者、仕入れ先との良好な関係を構築し、適切な条件で取引するためには、効果的な交渉が欠かせません。交渉スキルは一朝一夕で身につくものではありませんが、継続的に練習することで確実に向上します。

技術の習得とデジタル化対応を進める

業務効率化やコスト削減のため、建設業界ではデジタル化が急速に進んでいます。具体的には、現場の進捗管理や図面の確認、品質管理などをスマートフォンやタブレットで行うケースが増えています。こうしたデジタルツールを活用することで、業務の効率を上げ、顧客や取引先への信頼を得ることができます。一人親方が技術やデジタル化対応を進めることで、業界の変化に適応し、安定した業務環境を築くことが可能になります。

建設業の一人親方は今後さらに求められるでしょう

建設業における一人親方の役割は、今後ますます重要性を増していくと予想されます。建設業全体の人材不足の補填や、プロジェクトごとに必要な技術や専門性を提供する存在として重視されると考えられます。偽装一人親方問題やインボイス制度、2024年問題といった課題が存在する中で、一人親方が適切な対策を講じることが不可欠です。その対策として、建設業許可の取得や、実態に即した請負契約の結び方、労災保険への加入、そして交渉スキルの向上が挙げられます。これらを実践することで、一人親方としての競争力を高め、将来に向けて安定した業務運営を実現することができるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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