• 作成日 : 2025年1月30日

一人親方が収入をごまかした場合のリスクは?発覚するケースや罰則、訂正方法を解説

一人親方の収入のごまかしとは、一人親方が自らの収入を意図的に低く見せかける行為を指します。このような行為は、税負担を軽減したり、融資を受けやすくする目的で行われることが多いですが、実際には様々なリスクを伴います。特に、収入のごまかしが原因で税務調査が行われたり、密告により不正が発覚するケースもあります。

この記事では、一人親方がどのようにして収入のごまかしを行うのか、なぜそれがバレてしまうのか、さらには発覚した際の罰則や訂正方法について詳しく解説します。

一人親方の収入のごまかしとは?

一人親方の収入のごまかしとは、確定申告の際に実際の売上や経費を正確に申告せずに、税金を少なくしようとする行為です。このような収入のごまかしは、税務署が特に注視する問題で、税務調査の対象になります。

個人事業主である一人親方は、収入や経費の管理を自己責任で行わなければなりません。中には収入を低く申告したり、経費を水増ししたりして税負担を減らそうと考える方もいるでしょう。しかし、収入を「ごまかす」ことは簡単ではなく、発覚した場合には深刻な結果を招くことになります。

たとえば、売上をごまかすケースでは、取引先から得た収入を一部だけ記帳し、残りを隠すことがあります。こうした売上の過少申告は、他の取引先の申告内容や銀行口座の入出金記録と不一致が生じやすいため、税務署によって容易に検出される可能性が高まります。

なぜ一人親方の収入のごまかしが発覚してしまうのか

一人親方の収入のごまかしがバレる理由は、税務署による多角的な調査体制が確立されているためです。具体的には以下のような理由があります。

一人親方は税務調査が入りやすい

一人親方は経費を自己申告で管理するため、経費の過剰な申告や売上の申告漏れが発生しやすく税務調査の対象になりやすいです。前年と比べて売上や所得が大きく変動している場合や、同業者と比較して売上や所得が著しく低い場合、また生活水準と申告所得に大きな差がある場合などは、税務調査の可能性が高まります。消費税の還付申告をしている場合も、税務署の注目を集めやすくなっています。

税務署は資産やお金の動きを把握している

税務署は一人親方の資産や金銭の動きを様々な情報源から把握しています。銀行口座の入出金記録やクレジットカードの利用履歴はもちろん、不動産取引や自動車の購入記録、高額な美術品や宝飾品の購入記録なども把握対象です。マイナンバー制度による情報連携も進んでおり、2023年10月からのインボイス制度により、取引の透明性はさらに高まっています。

不自然な資産の増加に注意

一人親方が不自然に資産を増やしている場合、税務署はその理由を追求する可能性が高いです。たとえば、以下のような場合には警戒されることがあります。

  • 普通預金口座に多額の現金が突然入金された。
  • 購入した高価な物品(車や不動産など)が収入と見合わない。

このような資産の増加は、税務署の目に留まりやすく、その結果、不正を疑われることになります。

クレジットカードなど電子情報の活用

近年、税務署は電子情報を積極的に活用して調査を行っています。クレジットカードの利用明細やネットバンキング、スマホ決済の記録、フリーランス向けのプラットフォームからの報告など、デジタル化の進展により入手できる情報は年々増えています。

私たちの生活が便利になった分、税務署が取引や収入を追跡する手段も多様化しているのです。そのため、収入の「ごまかし」は電子記録によってすぐに発覚する可能性が高くなっています。

情報提供によりごまかしがバレる

一人親方の収入のごまかしは、第三者からの情報提供、いわゆる「密告」によって発覚することがあります。税務署には、取引先や同業者、さらには元従業員などからの通報を受け付ける仕組みがあり、匿名で提供された情報も調査のきっかけとなります。

たとえば、ある取引先が税務署に取引内容を報告しているにもかかわらず、一人親方がその金額を確定申告に反映していないと、税務署は不正の可能性を疑い調査を始めることになります

一人親方の税務調査で指摘されやすいポイント

税務調査で指摘されやすいポイントは、売上の過少申告と経費の過大計上に関する項目です。税務署は、一人親方の確定申告内容について、以下のような観点から詳細な確認を行います。

売上を少なめに計上していないか

売上をごまかす方法として、申告時に売上を実際よりも少なく計上するケースがありますが、税務署はこの点を厳しく監視しています。取引先の支払額報告や銀行口座の入出金履歴などから、実際の売上額と申告額に差異がないかを確認します。

たとえば、取引先が報告した支払金額と、確定申告における売上が一致していない場合、税務署は不正の疑いを抱き、詳細な調査を行う可能性が高まります。売上をごまかすことで一時的に税負担が軽減されると考えられるかもしれませんが、税務署のシステムと調査により不正がバレるリスクは非常に高いため、正確な売上を申告することが求められます。

売上計上の基本

売上計上は、事業が行った取引を正確に記録することが求められます。以下に、売上計上で注意すべきポイントを挙げます。

  • 取引の確認:実際に行った取引が反映されていることを確認します。
  • 契約書の管理:売上を伴う契約書や請求書を適切に保管し、計上漏れがないようにします。
  • 入金の確認:売上に対する入金があるかどうかをしっかりと確認し、記帳に反映させます。

経費を水増ししていないか

経費の水増しは、一人親方の税務調査でしばしば指摘される問題です。経費として計上できる範囲には決まりがあり、たとえば事業に直接関係ない家族の旅行代や、個人的な生活費は経費に含まれません。

しかし、一部の事業者は税負担を減らすために、これらを事業経費として申告することがあります。税務署は一般的な経費の水準や業界平均と比較し、不自然に高額な経費が計上されていれば、調査を行います。特に交際費旅費交通費といった項目は監視対象となりやすいため、正確に経費を申告することが大切です。

給与か外注費扱いかの区分け

給与は、従業員として雇われている人に支払う報酬で、事業者側が税金を源泉徴収したり、社会保険料を負担したりする義務が生じます。これに対して、外注費は、独立した立場で仕事を受ける個人や会社に支払うもので、事業者側は源泉徴収や保険料の負担がかからず、経費として全額が控除されます。そのため、税負担を軽減する目的で、実際には社員としての働き方をしている人を外注扱いにするケースがあります。

税務署は勤務実態を確認し、必要があれば給与と認定することもあります。特に、支払いが継続的で定期的に行われている場合や、指揮命令下での業務が行われている場合は給与とみなされやすいです。

事業と家事部分の基準

一人親方として事業を運営している場合、自宅を仕事場として使用するケースが多く、事業経費と家事(個人的な費用)の区分が曖昧になりがちです。税務上、事業に関連する経費として認められるのは、実際にその事業に必要な支出だけです。そのため、正確な区分けを行う必要があります。たとえば、自宅の家賃や光熱費の一部を事業経費として計上することができますが、適正な割合で分ける必要があります。事業に使っている部屋の広さや、使用頻度に基づいて合理的に計算しないと、過剰に計上された分は不正とみなされる可能性が高まります。

消費税逃れをしていないか

消費税の申告は、年間の課税売上が1,000万円を超えるか、インボイス制度の課税事業者に登録している場合に義務付けられています。しかし、税負担を減らすため、売上を低く申告して免税事業者として扱われようとするケースも見られます。特に年間売上が800万円から900万円の事業者は、売上基準(1,000万円)に近いため、税務調査の対象になる場合もあります。

消費税については適切に理解し、正しい手続きで納税を行うことが大切です。

一人親方が収入をごまかした場合の罰則

無申告加算税が発生する

無申告加算税は、確定申告をしなかった場合に追加で発生する税金です。確定申告は個人事業主にとって必須の義務ですが、収入をごまかすために無申告を選ぶと、税務署はその事実を厳しく取り締まります。無申告加算税の税率は、本来納付すべき税額の15%が基本ですが、50万円を超える部分は20%、300万円を超える部分は30%に増加します。

さらに、過去にも無申告があった場合など、悪質性が高いと判断されると重加算税も加わり、負担はさらに増します。

延滞税が発生する

延滞税は、納税期限までに納付が行われなかった場合に発生する税金です。確定申告を行っても、納付が遅れると延滞税がかかり、これは納税額に応じたペナルティとして追加されます。延滞税の利率は年度によって異なりますが、通常は利息のように毎日加算されるため、支払いが遅れるほど負担が増大します。

たとえば、売上をごまかして低く申告し、後から税務署の調査で不正が発覚した場合、その不足分に延滞税がかかることになります。

消費税をまとめて払う

消費税を納付すべき一人親方が売上をごまかし、免税事業者として扱われようとした場合、税務署の調査により不正が発覚すると、過去数年分の消費税をまとめて支払う必要があります。通常、消費税は毎年の確定申告で適切に申告されるべきものですが、不正による未納が発覚すると、過去の売上に応じて未納分が請求され、これには加算税や延滞税もかかります。

たとえば、消費税の免税事業者基準を超えていたにもかかわらず、売上をごまかしていた場合、不足分を遡って請求されると多額の出費を強いられることになります。

刑事罰の対象となる可能性もある

税務調査の結果、収入のごまかしが意図的かつ悪質であると判断された場合、刑事罰の対象となることもあります。通常の加算税や延滞税だけでなく、税務署から告発されると、最悪の場合は脱税罪として刑事罰が科され、罰金や懲役が課せられる可能性があります。悪質な事例としては、売上の二重帳簿や意図的な書類の改ざん、虚偽の取引記録などがあります。こうした行為がバレると、社会的な信用も大きく損なわれ、事業の継続が難しくなるだけでなく、取引先からの信頼も失うことになります。

罰則以外で一人親方が収入をごまかすことのデメリット

住宅ローンや公的融資などが受けられない

収入をごまかして申告額を低く設定すると、住宅ローンや公的融資の審査に不利です。住宅ローンや融資は、確定申告書の収入欄を基準に審査されるため、申告収入が低いと、返済能力がないと判断される可能性が高まります。たとえば、実際の年収が500万円であっても、確定申告で300万円とごまかしていれば、銀行や金融機関は年収300万円での審査を行い、融資が受けられなくなるか、限度額が大幅に下がります。

また、公的融資も同様に確定申告の収入額が重要視されるため、事業資金や運転資金の確保が難しくなる可能性があります。収入のごまかしが一時的に税金を軽減するように見えても、長期的には大きな不利益を招くリスクがあるといえます。

給付金や補助金を申請できない

給付金や補助金を申請する際、確定申告書は収入状況の証拠として重要な書類です。しかし、収入をごまかして申告額が実際よりも低くなっていると、これらの給付制度の基準に満たず申請できない、または支給額が少なくなる可能性があります。特にコロナ禍などの緊急時には、収入減を補うための支援制度が設けられますが、実際の収入より低く申告していると、その分給付の対象外と判断されることがあります。

また、補助金は事業の成長を支援する目的で提供されるため、事業規模や実績が低いとみなされると、採択される確率が下がります。正確な申告が給付金や補助金の利用機会を増やし、事業の安定や成長をサポートします。

建築業許可が下りない

建築業では、一定の規模以上の工事を受注するには、建設業の許可が必要です。この許可を取得する際にも、確定申告書が重要な証明書類として用いられます。申告収入が低いと、経営安定性や実績がないとみなされ、許可が下りにくくなる可能性があります。特に、工事内容や取引先からの要望により、許可がなければ大規模な案件を受注できないことも多く、申告収入の低さが事業機会の制約につながります。

たとえば、実際に安定した収益を得ているにもかかわらず、申告で収入をごまかしていた場合、収入基準に満たないと判断され、許可の取得が難しくなります。長期的な事業発展を目指すなら、正確な収入申告が建築業許可の取得と信頼の維持に直結する重要な要素です。

一人親方が収入を誤って申請した場合の訂正方法

収入を誤って申請してしまった場合、適切な手続きを行うことで問題を解決することも可能です。ここでは、一人親方が収入をごまかした場合の訂正方法について、具体的な手順やポイントを解説します。

訂正申告を行う(確定申告の期限内)

確定申告の期限内であれば、収入の申告に誤りがあった場合でも「訂正申告」を行うことができます。訂正申告は、提出済みの申告内容を修正して、正しい収入や経費を申告する手続きです。

たとえば、売上を低く申告していたことに気づいた場合、期限内であれば訂正申告により正しい金額に変更できるため、加算税などの罰則を避けることが可能です。訂正申告は税務署への書類提出が必要ですが、期限内に訂正することで余分な負担を防げます。正確な申告は信頼にもつながるため、少しでも不備があれば、早めの訂正申告が安心です。

修正申告を行う(確定申告の期限後)

確定申告期限を過ぎてしまった場合、申告内容を変更したいときには「修正申告」を行います。修正申告は、期限内の訂正申告と異なり、期限後に誤りを訂正するため、申告漏れや不足分の税金に対して加算税や延滞税が発生することがあります。

たとえば、収入をごまかしたことで売上が少なく申告され、税額が不足していた場合には、修正申告を行い、不足分を支払うとともに、加算税や延滞税も納付しなければなりません。税務署から指摘を受ける前に自主的に修正申告を行えば、ペナルティが軽減される場合もあります。

訂正申告や過去の経費の見直しには期限が設けられています。どのような場合でも、誤りに気付いた場合はできるだけ早く申告を行うことが重要です。期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税が発生する可能性がありますので、早めに手続きを行いましょう。

専門家に相談する

収入のごまかしがある場合、専門的な知識が必要なことも多く、税理士や会計士に相談することをおすすめします。専門家に相談することで、適切な手続きや書類作成をサポートしてもらうことができます。収入のごまかしが法律問題に発展する可能性もあるため、法律の専門家に相談することも考慮に入れましょう。

一人親方の収入ごまかしを防ぐための記帳のポイント

一人親方として働く際、収入のごまかしを避けるためには正確な記帳が不可欠です。適切な記帳方法を理解することにより、不正行為を未然に防ぎ、安心して事業を運営することが可能となります。この章では、一人親方が収入をごまかすことを防ぐための具体的な記帳のポイントを解説します。

1.日々の取引を正確に記録する

正確な記帳を行うためには、日々の取引を抜け漏れなく記録することが基本です。次のポイントを意識しましょう。取引内容の明確化:収入や支出の内容を具体的に記録します。たとえば、どの仕事でいくら貰ったのか、どの材料をいくらで購入したのかを詳細に残します。日付の記入:取引の日付を必ず記入しましょう。これにより、取引の時系列が明確になります。

2.請求書と領収書の管理

請求書や領収書を適切に管理することも、収入ごまかし防止の根幹です。以下の点を確認してください。請求書の発行:仕事をした際は必ず請求書を発行し、保管しておきます。これにより、収入が正当であることを証明できます。領収書の保管:経費として支出した場合は、必ず領収書を受け取り、保存します。特に金額が大きい支出については注意が必要です。

3.定期的な記帳の習慣化

記帳を習慣化することで、取りこぼしや誤りを減らすことができます。以下の方法が効果的です。毎日の記帳:取引があったその日のうちに記帳することを心がけます。時間が経つと忘れがちになるため、毎日のルーチンに組み込みましょう。月次での確認:毎月の終わりには、記帳内容を確認し、収入と支出のバランスをチェックします。

4.専門家のアドバイスを受ける

記帳や税務の仕組みに不安がある方は、専門家に相談することも有効です。以下のように活用しましょう。税理士の活用:定期的に税理士と相談し、記帳の方法についてアドバイスを受けることができます。専門家の知見を活かすことで、より正確な記帳が可能になります。セミナー参加:収入管理や記帳に関するセミナーや講座に参加し、最新の情報や流行を学ぶことも一つの手段です。これらのポイントを意識して記帳を行うことで、一人親方は収入ごまかしを防ぎ、事業をより健全に運営することができるでしょう。

一人親方の収入のごまかしを防ぐために正確に記帳しよう

一人親方が収入をごまかすことには、さまざまなリスクが伴います。税務調査の対象となりやすく、違反が発覚した際には罰則やデメリットが待ち受けています。特に、無申告加算税や延滞税、場合によっては刑事罰が科されることもあります。そのため、正確な収入申告を行うことは、将来的なトラブルを避け、安定した事業運営に繋がります。また、適正な申告によって、住宅ローンや公的融資、給付金などの申請もスムーズになります。しっかりとした記帳を心がけ、信頼される一人親方を目指しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

バックオフィス業務の知識をさらに深めるなら

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事