- 作成日 : 2025年3月21日
一人親方も再下請負通知書は必要?作成の流れや書き方を解説
一人親方が工事現場で仕事をする場合、「再下請負通知書」の提出が求められます。この書類は、工事の管理体制を明確にし、安全な作業環境を確保するために必要なもので、元請会社や一次下請業者が現場の作業者を把握し、安全管理を徹底する目的で作成されます。この記事では、一人親方が再下請負通知書を準備する際に知っておきたい情報をわかりやすく解説します。
目次
一人親方も再下請負通知書は必要?
再下請負通知書は安全書類(グリーンファイル)の一つで、工事を管理する元請会社や一次下請業者が、作業者を把握するために必要な書類です。
安全書類の1つで工事前に作成・提出が必要
再下請負通知書は、安全書類の一つとして使われ、工事の管理体制や作業をする人の情報を明らかにして、安全な現場づくりに役立ちます。
例えば、一人親方が二次下請や三次下請として現場に入る場合、元請会社は施工体制台帳という書類で現場の管理を行います。再下請負通知書は次のような情報を提供します。
- 工事の内容や契約内容
- 下請業者や一人親方の基本情報
- 健康保険や労災保険の加入状況
この情報がないと、元請会社が現場を正しく管理できず、安全な作業環境が作れないことがあります。そのため、工事が始まる前に再下請負通知書を提出する必要があります。
再下請負通知書と施工体制台帳との違い
再下請負通知書と施工体制台帳は、どちらも建設現場で必要な書類ですが、それぞれの役割は異なります。元請会社が作成する施工体制台帳は、工事全体の施工体制を把握するためのものです。一方、再下請負通知書は下請業者が作成し、元請会社に提出する書類で、下請契約の内容を報告するものです。
再下請負通知書 | 施工体制台帳 | |
---|---|---|
目的 | 下請契約の内容を伝える | 現場全体の施工管理体制をまとめる |
作成する人 | 一次下請以降のすべての下請業者 | 元請会社 |
書類の内容 | 一人親方や下請業者の契約情報や保険の状況 | 工事全体の計画、全下請業者の情報、技術者の配置状況 |
一人親方の再下請負通知書の作成が不要なケース
一人親方でも、すべてのケースで再下請負通知書が必要なわけではありません。例えば、元請会社と直接契約している場合(一次下請)では、再下請負通知書の提出は不要です。
また、請負金額が500万円(税込)未満の軽微な工事では、建設業許可は不要ですが、一次下請業者がさらに下請契約をする場合には、再下請負通知書の提出が求められることがあります。
さらに、一人親方が労務提供のみを行う場合は、請負契約ではなく「労務契約」となるため、再下請負通知書の提出は不要です。ただし、労務契約と請負契約の線引きが曖昧な場合もあるため、契約内容を明確にすることが重要です。
また、元請会社が独自のルールで再下請負通知書の提出を免除するケースもあります。
ただし、元請会社の指示や現場の状況によっては、上記のケースでも提出を求められる場合があるため、事前に確認することが重要です。
一人親方が再下請負通知書を作成する手順
一人親方が再下請負通知書を作成する際は、以下の手順に従って進めましょう。正確な情報を記入し、適切に提出することが重要です。
1. 再下請負通知書フォーマットのダウンロード
再下請負通知書を作成するには、まずフォーマットを用意する必要があります。フォーマットは、元請会社が指定する場合もあれば、インターネットから入手できる場合もあります。
国土交通省の公式ウェブサイトでは、最新の再下請負通知書の様式(2024年2月現在)が公開されています。
参考:国土交通省 建設産業・不動産業:施工体制台帳、施工体系図等
2. 再下請負通知書の作成
フォーマットを準備したら、再下請負通知書に必要な情報を正確に記入します。一人親方が記載すべき主な内容は以下の通りです。
- 自社に関する情報
- 工事に関する情報
- 建設業の許可に関する情報
- 健康保険や労災保険への加入状況
- 担当者の情報
- 外国人作業員の情報
3. 一次下請業者もしくは元請会社に提出
作成した再下請負通知書は、工事が始まる前までに、遅滞なく一次下請業者または元請会社に提出します。一次下請業者を通して提出することが一般的ですが、元請会社が直接受け取る場合もあります。事前に指示を確認してください。
提出方法は、手渡し、郵送、または電子データでの提出が一般的です。元請会社の指定する方法に従いましょう。
一人親方による再下請負通知書の書き方
再下請負通知書は、工事の安全管理と適切な施工体制のために必要な書類です。一人親方の場合でも、必要事項を正確に記入し、元請会社の指示に従って提出することが求められます。以下の項目を適切に記入し、スムーズな現場作業につなげましょう。
1. 自社・工事に関する情報
最初に、自社(個人事業主としての情報)や工事の基本情報を記入します。
- 氏名(屋号があれば屋号も記載)
- 住所・連絡先(電話番号・メールアドレス)
- 工事名称・工事場所
- 発注者名(元請会社名)
- 工期(着工日・完了予定日)
- 請負金額
請負金額が500万円(税込)未満(建築一式工事は1,500万円未満)の場合、建設業許可は不要ですが、元請会社のルールによっては通知書の提出が求められることがあります。
2. 建設業の許可に関する情報
建設業の許可を取得しているかどうかを記入します。
- 建設業許可の有無(許可がない場合は「なし」と記載)
- 許可番号(許可を取得している場合)
- 許可業種(例:土木工事業、建築工事業 など)
- 許可の有効期限
軽微な工事(請負金額500万円未満など)では許可は不要ですが、元請会社が許可の有無を確認するため、記載が求められることがあります。
3. 健康保険等の加入状況
建設現場での安全確保のために、健康保険や労災保険の加入状況を記入します。
一人親方は通常の労災保険の適用外のため、「特別加入」の手続きを行うことで労災補償を受けられます。元請会社から労災特別加入の証明を求められる場合があります。
4. 担当者の情報
元請会社や一次下請業者との連絡を円滑にするため、担当者情報を記入します。
- 再下請負通知書の作成者(通常は一人親方本人)
- 連絡先(携帯電話・メールアドレス など)
- 元請会社や一次下請業者の担当者名(必要な場合)
また、緊急時の対応や工事の指示伝達をスムーズにするために、正確な連絡先を記入することが重要です。 連絡先に誤りがあると、工事の進行や安全管理に支障をきたす可能性があるため、最新の情報を記載しましょう。
5. 外国人作業員の情報
外国人技能実習生や特定技能の作業員がいる場合は、追加の情報が必要です。
- 在留資格(技能実習・特定技能・永住者 など)
- 雇用契約の内容(派遣・直接雇用など)
- 技能実習の管理団体情報(該当する場合)
外国人労働者を使用する場合、建設業法や入管法に基づいた適切な管理が求められます。特に在留資格の確認が必須です。
再下請負通知書は、工事の安全管理と契約内容の透明性を確保するために不可欠な書類です。一人親方であっても、必要事項を正確に記入し、元請会社の指示に従って提出しましょう。
一人親方が再下請負通知書以外に必要な書類
一人親方が工事現場で作業を行う際、再下請負通知書のほか、各種証明書や安全管理書類の提出が求められることがあります。
主に必要とされるのは、労災保険特別加入証明書、健康保険の加入証明書、身分証明書(運転免許証など)、作業員名簿、安全誓約書、資格証明書などです。また、建設業許可を取得している場合は許可証のコピー、外国人作業員を雇用する場合は在留カードや雇用契約書の提出が必要になります。
元請会社の指示に従い、事前に必要書類を確認・準備することで、スムーズな現場作業につながります。
一人親方の再下請負通知書に関するよくある質問
一人親方が再下請負通知書を作成する際、よくある質問を解説します。
建設業許可なしで再下請負通知書を作成できる?
建設業許可がなくても、再下請負通知書を作成することは可能です。
一人親方を含む個人事業主は、建設業許可が必要な規模の工事でなければ許可がなくても作業を請け負うことができます。その場合でも、再下請負通知書は元請会社や一次下請業者が施工体制台帳を作成するために必要となる場合があります。
健康保険や労災保険の加入は必要?
健康保険や労災保険への加入は現場で求められることが多いです。
特に労災保険は、工事現場での安全を考慮して加入が推奨されています。一人親方は通常の労災保険の対象外ですが、「特別加入」という制度を利用することで労災保険に加入できます。なお、健康保険については、国民健康保険や建設国保などに加入していることが一般的です。
再下請通知書に印鑑・ハンコは必要?
一人親方が再下請負通知書を作成する際、必ずしも印鑑が必要とは限りません。ただし、元請会社や自治体のルールによっては、押印が求められる場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
再下請負通知書が未提出だとどうなる?
再下請負通知書を提出しないと、工事現場での作業が許可されない場合があります。
元請会社は施工体制台帳を基に現場の安全管理を行うため、再下請負通知書は重要な情報源となります。この書類がないと、以下のような影響が出ることがあります。
再下請通知書を作成してスムーズな現場作業をしよう
一人親方が工事現場での作業を円滑に進めるためには、再下請負通知書の作成・提出を含めた必要書類の準備が欠かせません。再下請負通知書は、安全管理や作業環境の整備に役立つ大切な書類です。また、健康保険や労災保険への加入状況の記載、印鑑・ハンコの有無など、細かな確認事項も事前に把握しておくことが安心につながります。
書類の不備や提出遅れがトラブルを招く可能性もあるため、元請会社の指示をよく確認し、早めの準備を心がけましょう。しっかりと準備を整えて、安全でスムーズな現場作業に取り組みましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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