• 作成日 : 2024年5月2日

労働保険の特別加入制度とは?対象者や申請方法を解説

労働保険の特別加入制度とは、本来、労働保険の適用対象外である個人事業主やフリーランスなどが、特別に労働保険(労災保険および雇用保険)に加入できる制度です。この制度により、これらの働き方をしている人々も労働災害が起きた際の補償や、失業時の給付を受けることが可能になります。

この記事では、特別加入制度の概要から、特別加入できる対象者の種類や申請方法について解説します。

労働保険の特別加入制度とは

労働保険の特別加入制度とは、労働者以外の方のうち、業務の実態や、災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めている制度です。

労災保険は、本来、労働者の負傷、疾病、障害又は死亡に対して保険給付を行う制度ですが、労働者以外の方のうち、その業務の実情、災害の発生状況などからみて、特に労働者に準じて保護することが適当であると認められる一定の方に対して、特別に任意加入を認めているのが、特別加入制度です。

例えば、中小事業の場合、事業主は労働者とともに労働者と同様の業務に従事する場合が多いこと、また、建設の事業などの自営業者は、いわゆる一人親方として、労働者を雇わずに自分自身で業務に従事するため、これらの方の業務の実態は労働者と変わらないことから、労働者に準じて保護することを目的としています。

また、労災保険法の適用については、法律の一般原則として属地主義がとられていますので、海外の事業場に所属し、その事業場の指揮命令に従って業務を行う海外派遣者に関しては、日本の労災保険法の適用はありません。

しかし、諸外国の中には、労災補償制度が整備されていなかったり、仮にこうした労災補償制度があったとしても、日本の労災保険給付の水準より低く、また、給付内容がまちまちで、日本国内で労災を被った場合には当然受けられるような保険給付が受けられないことがありますので、海外での労災に対する補償対策として設けられています。

労働保険に特別加入できる対象者の種類

労働保険に特別加入できる対象者の種類は以下の4つに大別されます。

中小事業主等

中小事業主等の特別加入制度とは、労働者を使用して事業を行うことを常態とする中小事業主等が特別加入できる制度です。中小事業主等とは、別表1に定める数以下の労働者を常時使用する事業主(事業主が法人その他の団体であるときは、その代表者)及び労働者以外で当該事業に従事する方(事業主の家族従事者や、中小事業主が法人その他の団体である場合における代表者以外の役員など)を指します。

具体的には、以下のような人々が対象となります。

  • 常時300人(金融業、保険業、不動産業、小売業は50人、卸売業、サービス業は100人)以下の労働者を使用する事業主
  • 事業主の家族従事者
  • 法人などである場合は代表者以外の役員

また、特別加入制度はあくまでも労働者保護という建前のもと確立された任意保険制度ですので、原則、労働者に準じた業務中の負傷などでなければ補償の対象とはなりません。したがって、事業主としての本来業務、たとえば法人などの執行機関として出席する株主総会、役員会、資金繰りなどを目的とした得意先の接待業務などにおいてのけがなどは、労災保険の対象とはならないことになります。

特別加入の保険料は、選ぶ「給付基礎日額」と「業種」によって変わってきます。給付基礎日額は、支払う保険料を決定する基礎になりますし、休業補償などの給付を受けるときにもこの金額が基礎となり給付額が決定されることになります。

一人親方等

一人親方等の特別加入制度とは、労働者を使用せずに特定の業種の事業を行う一人親方その他の自営業者及びその従事者と特定作業従事者が労災保険に特別に加入できる制度です。この一人親方等の特別加入者のことを第2種特別加入者と言います。

具体的には、以下のような人々が対象となります。

  • 建設業の一人親方
  • 運送業の一人親方
  • 農業の一人親方
  • 漁業の一人親方

例えば、建設業の一人親方の場合、建設現場での作業は危険が伴うため、労災保険の保護が必要となります。しかし、従業員を雇わずに自分一人で業務を行っているため、通常の労災保険の対象外となります。このような一人親方が労災保険に特別加入することで、業務中の事故による負傷や疾病に対する給付を受けることが可能となります。

また、特別加入の保険料は、選ぶ「給付基礎日額」と「業種」によって変わってきます。給付基礎日額は、支払う保険料を決定する基礎になりますし、休業補償などの給付を受けるときにもこの金額が基礎となり給付額が決定されることになります。

特定作業従事者

特定作業従事者として特別加入ができるのは、「特定農作業従事者」、「指定農業機械作業従事者」、「国または地方公共団体が実施する訓練従事者」、「家内労働者及びその補助者」、「労働組合等の常勤役員」、「介護作業従事者」、「芸能関係作業従事者」、「アニメーション制作作業従事者」及び「ITフリーランス」とされています。

例えば、「特定農作業従事者」は、年間農業生産物総販売額300万円以上または経営耕地面積2ヘクタール以上の規模で、土地の耕作若しくは開墾、植物の栽培若しくは採取、または家畜若しくは蚕の飼育の作業を行う自営農業者(労働者以外の家族従事者などを含みます)であって、次の作業に従事する方を指します。

  • 動力により駆動される機械を使用する作業
  • 高さが2メートル以上の箇所における作業
  • サイロ、むろ等の酸素欠乏危険場所における作業
  • 農薬の散布の作業
  • 牛、馬、豚に接触し、または接触するおそれのある作業

また、「指定農業機械作業従事者」は、自営農業者(労働者以外の家族従事者などを含みます)であって、次の機械を使用し、土地の耕作または開墾または植物の栽培若しくは採取の作業を行う方を指します。

  • 動力耕うん機その他の農業用トラクター
  • 動力溝掘機
  • 自走式田植機
  • 自走式スピードスプレーヤーその他の自走式防除用機械
  • 自走式動力刈取機、コンバインその他の自走式収穫用機械
  • トラックその他の自走式運搬用機械
  • 定置式または携帯式の動力揚水機、動力草刈機等の機械

以上のように、特定作業従事者の特別加入制度は、特定作業従事者が労働災害に遭った際に、適切な保護を受けられるようにするための重要な制度です。

海外派遣者

海外派遣者の特別加入制度とは、日本国内の事業から海外の事業所に派遣される労働者や、日本国内の事業所から海外の中小規模の事業所に、労働者ではない立場で派遣される事業主等が労災保険に特別に加入できる制度です。

具体的には、以下のような人々が対象となります。

  • 国際協力機構等開発途上地域に対する技術協力の実施の事業を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人
  • 日本国内で行われる事業から派遣されて海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業など海外で行われる事業に従事する労働者
  • 日本国内で行われる事業から派遣されて海外支店、工場、現場、現地法人、海外の提携先企業など海外で行われる300人(金融業、保険業、不動産業、小売業は50人、卸売業、サービス業は100人)以下の労働者を使用する事業に従事する事業主その他労働者以外の人

例えば、あるIT企業が海外の子会社にエンジニアを派遣する場合、そのエンジニアは海外派遣者となり、特別加入制度の対象となります。このように、海外派遣者の特別加入制度は、海外で働く日本人労働者が労働災害に遭った際に、適切な保護を受けられるようにするための重要な制度です。

また、特別加入の保険料は、選ぶ「給付基礎日額」と「業種」によって変わってきます。給付基礎日額は、支払う保険料を決定する基礎になりますし、休業補償などの給付を受けるときにもこの金額が基礎となり給付額が決定されることになります。

労働保険への特別加入を検討すべきケース

労働保険への特別加入を検討すべきケースは、以下のような状況が考えられます。

中小事業主等

常時300人(金融業、保険業、不動産業、小売業は50人、卸売業、サービス業は100人)以下の労働者を使用する事業主や、事業主の家族従事者、法人などである場合は代表者以外の役員が対象となります。これらの人々は、労働災害に遭った際に、適切な保護を受けられるようにするために特別加入を検討すべきです。

一人親方等

建設業、運送業、農業、漁業などの一人親方が対象となります。これらの人々は、労働者を雇わずに自分一人で業務を行っているため、通常の労災保険の対象外となります。しかし、これらの業種は危険が伴うため、労災保険の保護が必要となります。

特定作業従事者

特定の業種の事業を行う一人親方その他の自営業者及びその従事者と特定作業従事者が対象となります。これらの人々は、労働災害に遭った際に、適切な保護を受けられるようにするために特別加入を検討すべきです。

海外派遣者

日本国内の事業から海外の事業所に派遣される労働者や、日本国内の事業所から海外の中小規模の事業所に、労働者ではない立場で派遣される事業主等が対象となります。これらの人々は、海外で働く日本人労働者が労働災害に遭った際に、適切な保護を受けられるようにするために特別加入を検討すべきです。

特別加入申請書に必要な書類

労働保険への特別加入を申請する際には、以下の書類が必要となります。

  • 特別加入申請書: 特別加入を申請するための書類で、申請者の基本情報や事業内容、労働者数などを記入します。
  • 誓約書: 特別加入者が労災保険の規定を遵守することを誓約する書類です。
  • 謄本の写しまたは公共料金等の領収書: 申請者の住所や事業所の所在地を証明するための書類で、おおむね1年以内のものを提出します。
  • 預金口座振替依頼書: 保険料の支払い方法を設定するための書類です。

以上の書類を揃えて、最寄りの労働局に提出します。提出後、審査が行われ、承認されれば特別加入者として労災保険の保護を受けることができます。

特別加入の適用範囲

労働保険の特別加入制度は、労働者以外の方のうち、業務の実態や、災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人に、一定の要件の下に労災保険に特別に加入することを認めている制度です。特別加入できる方の範囲は、中小事業主等・一人親方等・特定作業従事者・海外派遣者の4種に大別されます。

例えば、一人親方等の特別加入制度は、労働者を使用せずに特定の業種の事業を行う一人親方その他の自営業者及びその従事者と特定作業従事者が対象となります。これらの人々は、労働災害に遭った際に、適切な保護を受けられるようにするために特別加入を検討すべきです。

また、海外派遣者の特別加入制度は、日本国内の事業から海外の事業所に派遣される労働者や、日本国内の事業所から海外の中小規模の事業所に、労働者ではない立場で派遣される事業主等が対象となります。これらの人々は、海外で働く日本人労働者が労働災害に遭った際に、適切な保護を受けられるようにするために特別加入を検討すべきです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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