• 更新日 : 2025年1月30日

建設業法とは?ルールや該当工事をわかりやすく解説

建設業法とは、建設業に関する多くのルールを定めた法律です。この法律は、建設業者の資質向上、請負契約の適正化といった目的を持っています。

この記事では、建設業法の基本的な内容から対象範囲、該当しない工事、主なルールをわかりやすく解説します。また、法令に違反した場合の罰則についても触れています。

建設業法とは?

建設業法は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の適正な施工を確保することを目的として制定された法律です。この法律は、建設業の健全な発展を促進し、発注者の利益を保護するとともに、公共の福祉の増進に寄与することを目指しています。

具体的には、以下のような目的を持っています。

  • 建設業者の資質の向上:建設業の許可制度や、主任技術者・監理技術者の設置義務化などによって、施工能力の確保を目指しています。
  • 建設工事の請負契約の適正化:請負契約に関する規制によって、発注者と受注者の公正な取引関係を実現しようとしています。
  • 建設業者の発注者保護:適切な施工体制の確保や、契約面での発注者保護措置によって、発注者の利益を守ることも重要な目的の1つです。
  • 建設業の健全な発達の促進:これらの取り組みを通じて、建設業界全体の信頼性向上と健全な成長を後押ししています。

建設業法は1949年に制定され、その後も社会情勢の変化に合わせて数度の改正が行われてきました。この法律により、建設業を営むためには国土交通大臣または都道府県知事の許可が必要となり、一定の資格や経験を持つ技術者の配置が義務付けられています。

また、建設業法は建設工事の請負契約に関する規制も設けており、契約の適正化や工事の安全性確保にも寄与しています。これにより、建設業界全体の信頼性向上と、消費者保護が図られています。

建築業法に該当する工事

建設業法における「建設工事」とは、土木建築に関する工事で、建築、土木、電気工事、管工事などが含まれます。具体的には以下のような工事が建設業法の対象となります。

  • 建築一式工事
  • 土木一式工事
  • 大工工事
  • 左官工事
  • とび・土工・コンクリート工事
  • 石工事
  • 屋根工事
  • 電気工事
  • 管工事
  • タイル・れんが・ブロック工事
  • 鋼構造物工事
  • 鉄筋工事
  • 舗装工事
  • しゅんせつ工事
  • 板金工事
  • ガラス工事
  • 塗装工事
  • 防水工事
  • 内装仕上工事
  • 機械器具設置工事
  • 熱絶縁工事
  • 電気通信工事
  • 造園工事
  • さく井工事
  • 建具工事
  • 水道施設工事
  • 消防施設工事
  • 清掃施設工事
  • 解体工事

これらの工事を行う事業者は、建設業法の適用対象となります。ただし、軽微な工事や特定の条件を満たす場合は、一部の規制が適用されない場合もあります。

対象となる工事の規模

建設業法の対象となる工事の規模は、前述の軽微な建設工事の基準を超えるものとなります。つまり、以下の工事が対象となります。

  • 工事1件の請負代金の額が500万円以上の建設工事
  • 建築一式工事の場合、工事1件の請負代金の額が1500万円以上、または延べ面積が150平方メートル以上の木造住宅工事

これらの基準を超える工事を請け負う場合、事業者は建設業の許可を取得する必要があります。また、工事の規模や内容によっては、特定建設業の許可が必要となる場合もあります。

対象となる事業者

建設業法の対象となる事業者は、建設工事を請け負う者全般を指します。具体的には以下のような事業者が含まれます。

  • ゼネラルコントラクター(総合建設業者)
  • 専門工事業者
  • 設備工事業者
  • リフォーム業者
  • 解体業者

これらの事業者は、建設業法に基づいて適切に事業を行う必要があります。ただし、個人が自らの居住用の住宅を建設する場合など、営業として建設工事を行わない場合は対象外となります。

対象となる契約形態

建設業法は、様々な契約形態の建設工事に適用されます。主な対象となる契約形態には以下のようなものがあります。

  • 元請契約:発注者と直接契約を結ぶ形態
  • 下請契約:元請業者から工事の一部を請け負う形態
  • JV(共同企業体)契約:複数の建設業者が共同で工事を請け負う形態
  • CM(コンストラクション・マネジメント)契約:発注者の代理人として工事全体をマネジメントする形態

これらの契約形態において、建設業法の規定が適用され、適切な契約の締結や工事の施工が求められます。

建設業法に該当しない工事

建設業法は多くの建設工事を対象としていますが、すべての工事が法律の適用を受けるわけではありません。以下に、建設業法に該当しない主な工事について詳しく解説します。

軽微な建設工事

工事1件の請負代金の額が500万円未満(建築一式工事の場合は1500万円未満)の工事は、建設業法上の「軽微な建設工事」として扱われ、建設業の許可を必要としません。ただし、これらの工事であっても、建設業法の一部の規定(例:不当な取引制限の禁止)は適用されます。

自家用の建設工事

個人や法人が自己の居住や事業のために行う建設工事は、建設業法の適用対象外となります。例えば、自宅の増築や店舗の改装などが該当します。ただし、この場合でも建築基準法などの他の法令は遵守する必要があります。

災害復旧工事

地震や台風などの自然災害後に行われる緊急の復旧工事については、一時的に建設業法の適用が緩和されることがあります。これは被災地の迅速な復旧を優先するためですが、具体的な適用範囲は災害の規模や状況によって異なります。

農業・林業に関連する工事

農業や林業に直接関連する一部の工事は、建設業法の適用を受けません。例えば、耕作のための畑の整地や、林道の簡易な補修などが該当します。ただし、大規模な農業施設の建設や本格的な林道開設工事などは建設業法の対象となる場合があります。

鉱業に関連する工事

鉱山の坑道掘削や採掘現場での作業など、鉱業法に基づいて行われる一部の工事は建設業法の適用外となります。ただし、鉱山の事務所や選鉱施設の建設などの一般的な建築工事は、建設業法の対象となります。

製造業に付随する工事

工場内での機械設備の据付けや、生産ラインの改造など、製造業に直接関連する一部の工事は建設業法の適用を受けないことがあります。ただし、工場建屋の建設や大規模な設備工事は建設業法の対象となります。

電気・ガス・熱供給・水道事業者が行う工事

電気事業法、ガス事業法、熱供給事業法、水道法などの特別法に基づいて、各事業者が自ら行う工事の一部は建設業法の適用外となります。例えば、電力会社が行う送電線の敷設工事や、水道局が行う水道管の補修工事などが該当します。

鉄道事業者が行う工事

鉄道事業法に基づいて鉄道事業者が自ら行う一部の工事は、建設業法の適用を受けません。例えば、線路の保守や信号設備の更新などが該当します。ただし、新駅舎の建設や大規模な改修工事などは建設業法の対象となる場合があります。

以上のように、建設業法に該当しない工事は多岐にわたります。ただし、これらの工事であっても、安全性の確保や品質の維持は重要です。また、工事の規模や内容によっては建設業法の適用を受ける場合もあるため、具体的な状況に応じて適切に判断することが求められます。

建設業法の主なルール

建設業の許可制

建設業法では、一定規模以上の建設工事を請け負う事業者に対して、国土交通大臣または都道府県知事の許可を義務付けています。この許可制度は、建設業を営む者の資質の向上や不良不適格業者の排除を目的としています。

許可には、一般建設業許可と特定建設業許可の2種類があります。一般建設業許可は、比較的小規模な工事を請け負う事業者向けで、特定建設業許可は大規模な工事や下請け総額が3,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の工事を請け負う事業者向けです。

許可を受けるためには、経営業務の管理責任者や専任技術者の設置、一定の資本金や財産的基礎などの要件を満たす必要があります。許可の有効期間は5年間で、更新時には改めて審査を受けることになります。

建設工事の請負契約に関する規制

建設業法は、建設工事の請負契約に関する様々な規制を設けています。これらの規制は、発注者と受注者の間の公正な取引を確保し、建設工事の適正な施工を確保することを目的としています。

主な規制内容には以下のようなものがあります:

  • 契約の原則:建設工事の請負契約は、対等な立場における合意に基づいて公正に締結されなければならない
  • 書面による契約:請負契約は必ず書面で行わなければならない
  • 契約内容の明示:工事内容、請負代金の額、工期などの重要事項を明示しなければならない
  • 不当に低い請負代金の禁止:通常必要と認められる原価に満たない請負代金での契約を禁止
  • 不当な使用資材等の購入強制の禁止:発注者が受注者に対して、不当に特定の資材や機械器具の購入や指定先の強制することを禁止

これらの規制により、建設工事における公正な取引環境の確保と、品質の高い建設工事の実現を目指しています。

主任技術者・監理技術者の設置

建設業法では、建設工事の適正な施工を確保するため、工事現場における技術上の管理をつかさどる技術者の設置を義務付けています。この技術者には、主任技術者と監理技術者の2種類があります。

主任技術者は、すべての建設工事現場に設置が必要です。一方、監理技術者は、発注者から直接請け負った建設工事で、その下請契約の総額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)となる特定建設業の場合に設置が必要となります。

主任技術者と監理技術者の主な役割は以下の通りです:

  • 工事の施工計画の作成
  • 工程管理、品質管理、安全管理等の技術上の管理
  • 当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督

これらの技術者を設置することで、建設工事の品質確保や安全性の向上を図っています。また、技術者の資格要件も定められており、一定の実務経験や国家資格の保有が必要となります。

施工体制台帳の作成と備え付け

建設業法では、特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事で、その下請契約の総額が4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の場合、施工体制台帳の作成と工事現場への備え付けを義務付けています。

施工体制台帳には、以下のような情報を記載する必要があります:

  • 工事名称、発注者名、工期
  • 建設業者の商号、名称、許可番号、許可(更新)年月日
  • 監理技術者や専門技術者の氏名、資格
  • 下請負人の商号、名称、許可番号、許可(更新)年月日
  • 各下請負人が請け負った工事の内容、工期
  • 元請、下請とも健康保険等の加入状況

施工体制台帳の作成と備え付けにより、工事現場における重層下請構造の把握や、適切な施工体制の確保が可能となります。また、発注者や監督官庁による現場確認の際にも活用されます。

建設業退職金共済制度への加入

中小企業退職金共済法では、建設業者に対して建設業退職金共済制度を設けています。この制度は、建設労働者の福祉の増進と雇用の安定を目的としています。

建設業退職金共済制度の主な特徴は以下の通りです:

  • 事業主が労働者の働いた日数に応じて掛金を納付
  • 労働者が建設業界から離職する際に退職金を受け取ることができる
  • 複数の事業主のもとで働いた場合でも、通算して退職金を受け取ることができる

この制度への加入を促進することで、建設業界全体の労働環境の改善を図っています。

建設業の経営に関する助言及び勧告

建設業法では、国土交通大臣や都道府県知事に対して、建設業者の経営に関する助言や勧告を行う権限を与えています。これは、建設業者の経営の健全性を確保し、建設工事の適正な施工を確保することを目的としています。

助言や勧告の対象となる主な事項には以下のようなものがあります。

  • 経営管理の方法
  • 技術的能力の向上
  • 財務の改善
  • 労働安全衛生対策

これらの助言や勧告を通じて、建設業者の経営基盤の強化や、建設工事の品質向上、安全性の確保を促進しています。また、必要に応じて立入検査や報告徴収を行うことで、建設業者の適正な業務遂行を確保しています。

建設業法に違反した場合の罰則は?

建設業法に違反した場合、その内容や程度によって様々な罰則が設けられています。これらの罰則は、建設業の適正な運営と建設工事の適正な施工を確保するために重要な役割を果たしています。

行政処分

建設業法違反に対する行政処分には、主に以下のようなものがあります:

  • 営業停止命令
  • 指示処分
  • 許可取消し

営業停止命令は、一定期間の営業停止を命じるもので、違反の程度に応じて期間が決定されます。指示処分は、是正すべき事項を具体的に示して改善を求めるものです。許可取消しは最も重い処分で、建設業を営む資格そのものを失うことになります。

刑事罰

建設業法違反に対する刑事罰には、懲役刑と罰金刑があります。主な刑事罰の例としては:

  • 無許可営業:3年以下の懲役または300万円以下の罰金
  • 虚偽申請:6ヵ月以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 技術者不設置:100万円以下の罰金

これらの刑事罰は、違反行為の重大性を反映しており、特に無許可営業や虚偽申請などの悪質な違反に対しては厳しい罰則が設けられています。

民事上の責任

建設業法違反が原因で取引相手や第三者に損害を与えた場合、民事上の損害賠償責任が生じる可能性があります。例えば、無資格者が施工した工事に欠陥があり、建物に損害が生じた場合などが該当します。

社会的制裁

法的な罰則以外にも、建設業法違反による社会的制裁も見逃せません。違反企業は信用を失い、取引先からの信頼を失うことで、業務に深刻な影響を受ける可能性があります。また、公共工事の入札参加資格を失うなど、ビジネスチャンスの喪失にもつながります。

罰則の適用例

具体的な罰則の適用例として、以下のようなケースが挙げられます。

  • 無許可で大規模な建設工事を請け負った場合:営業停止命令
  • 技術者を適切に配置せずに工事を行った場合:営業停止処分
  • 虚偽の経営事項審査申請を行った場合:許可取消し

これらの例からも分かるように、違反の内容や程度に応じて、複数の罰則が組み合わせて適用されることがあります。

罰則強化の動き

近年、建設業における安全性や品質の確保がより重要視されるようになり、建設業法違反に対する罰則を強化する動きが見られます。特に、重大な事故につながる可能性のある粗雑工事のような消費者の利益を著しく損なう行為に対しては、より厳しい罰則が設けられています。

違反を防ぐための取り組み

建設業者は、これらの厳しい罰則を避けるため、法令遵守の体制を整備することが重要です。具体的には、以下のような取り組みが効果的です。

  • 定期的な社内研修の実施
  • コンプライアンス部門の設置
  • 内部通報制度の整備
  • 外部専門家によるチェック体制の構築

これらの取り組みを通じて、従業員一人ひとりが建設業法の重要性を理解し、日々の業務の中で適切に法令を遵守することが求められます。

建設業法違反に対する罰則は、単に違反者を罰するだけでなく、建設業界全体の健全な発展を促進する役割も果たしています。適切な法令遵守は、企業の持続的な成長と、安全で信頼性の高い建設サービスの提供につながるのです。


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