- 作成日 : 2025年2月26日
建設業の積算に向いている人とは?仕事内容、平均年収、キャリアアップを解説
積算に向いている人とは、建設業や土木工事業において工事にかかる費用を正確に算出するスキルや特性を持つ方を指します。積算業務には、工事にかかる材料費や人件費を細かく拾い出して算出し、工事費用の計算や価格交渉、契約に必要な書類の作成までが含まれます。これらの工程は円滑なプロジェクト進行には欠かせない業務です。この記事では、積算の仕事や見積もりとの違い、積算に向いている人、平均年収、さらにはキャリアアップの道筋について詳しく解説します。
目次
積算とは?どんな仕事?
積算とは、建設や土木工事で必要な費用を正確に計算する業務です。工事に必要な資材や人件費を洗い出し、費用の算出や価格交渉、書類の作成を行うまでを担います。工事全体のコスト管理をになうための重要な役割となります。
拾い出しを行う
拾い出しとは、設計図書や仕様書をもとに工事に必要な材料や作業項目をリストアップする作業です。例えば、住宅の基礎工事では、コンクリートの量、鉄筋の本数、型枠の面積などを計算し、それぞれの数量を正確に割り出します。
この作業が正確でないと、その後の費用算出に誤りが生じ、予算オーバーや資材不足といった問題を招くことがあります。この拾い出しには専用ソフトを活用することで、手作業によるミスを減らすこともできます。
拾い出しの流れ
拾い出しの流れは、以下のステップで進められます。
- 図面の確認: 工事の図面を取り寄せ、最新かどうかを確認します。
- 項目の特定: 図面から必要な工事項目を特定し、それに関連する資材を一覧にします。
- 数量の計算: 各項目に対して、必要な数量を計算します。これには、長さ、面積、体積などの測定が含まれます。
- 詳細確認: 計算した数量が正しいかどうかを再度確認します。ミスが無いように注意が必要です。
工事費用を算出する
工事費用の算出は、拾い出しで得られたデータをもとに、それぞれの材料や作業の単価を掛け合わせて合計金額を出す作業です。建設や土木工事では、材料費、労務費、機械費、諸経費などを詳細に計算します。
例えば、あるリフォーム工事では、フローリングの交換に必要な材料費として1平方メートルあたり5,000円、作業費として同じく1平方メートルあたり3,000円がかかる場合、20平方メートルの施工では16万円がかかる計算になります。このように細かく計算することで、適正価格での提案が可能となります。
工事費用を算出するための要素
工事費用を算出する際には、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。主な要素は次の通りです。
- 材料費:プロジェクトに必要な各種材料の費用を見積もります。
- 労務費:施工にかかる人件費を正確に算出します。
- 経費:現場管理や運搬、機器のレンタル費用などの間接費用も考慮します。
- 利益率:企業の利益を確保するためのマージンを上乗せします。
- 予備費:不測の事態に備えたコストの余裕も重要です。
価格交渉を進める
価格交渉は、算出した工事費用をもとに、発注者や取引先と話し合いを行う工程です。積算担当者は、過去の相場や市場の動向を把握しながら、適正な価格で工事が実現するよう調整します。
例えば、資材費が予想外に高騰した場合、同等品質の代替材料を提案することで、コストを抑える提案を行うこともあります。この工程では、コミュニケーション能力と交渉力が求められます。
成功する価格交渉のポイント
価格交渉を成功させるためのポイントは以下の通りです。
- 事実に基づくデータを使う:数値や実績に基づいた具体的なデータを提示することで、説得力が増します。
- 柔軟性を持つ:交渉の過程で柔軟に対応し、双方が納得できる結果を目指します。
- 冷静さを保つ:感情的にならず、冷静に相手の意見を尊重することで建設的な話し合いが可能になります。
必要書類を作成する
必要書類の作成は、積算業務の仕上げとして行われる作業です。積算内訳書や数量拾い出し表、工事費用書などを整備し、発注者や取引先に提出します。これらの書類は、工事内容と費用の透明性を確保し、スムーズな契約を進めるために欠かせません。
例えば、地方自治体の公共工事では、書類の整備が発注条件に含まれることが一般的です。記載内容が曖昧だと、修正や追加説明が必要となり、業務全体が遅れる原因になります。そのため、わかりやすいレイアウトと正確な情報を心がけることが大切です。
主な必要書類
積算業務における必要書類は多岐にわたりますが、特に重要なものを以下に示します。
- 見積書:工事にかかる費用を明確に示した書類です。
- 工事仕様書:工事の内容や使用する材料などを詳細に記載した書類です。
- 数量計算書:材料の数量や工事の工程を整理して示した書類です。
- 契約書:請負契約を締結する際に必要な法的文書です。
- 工事工程表:工事の進行スケジュールを示した書類です。
積算と見積もりの違い
積算と見積もりはどちらも工事費用を算出する作業ですが、積算は図面や仕様書をもとに工事にかかるコストを正確に算出し、適正な価格を設定するための業務であるのに対し、見積もりは、積算で算出されたデータを基に、利益やリスクを考慮した金額を提案することです。
積算に向いている人の特徴
積算に向いている人には、建設や土木工事に必要な正確な費用算出を担うため、一定のスキルや性格が適していると言えます。ここでは、積算に向いているとされる特徴について解説します。
建設業の知識がある人
建設業の知識を持つ人は、積算業務に適しています。工事の流れや使用される資材、施工の仕方を理解していることで、設計図書や仕様書を正確に読み解くことができるためです。この知識があれば、必要な資材や作業を適切に見積もることが可能になります。
例えば、土木工事の経験がある人なら、道路工事での基礎部分の施工に必要な砂利やコンクリートの数量をイメージしやすくなります。また、建築分野の知識を持つ人であれば、建物の内装に使う材料や工法を理解した上での費用算出が可能です。知識が不足している場合は、経験を積むことで徐々に補うことができます。
数字を扱うことに抵抗がない人
数字を扱うことに抵抗がない人は、積算に向いています。積算業務では、工事費用の算出や材料費の計算など、日常的に多くの数値を扱います。細かな計算ミスが大きな予算超過につながることもあるため、数字に強いことが求められます。
例えば、建設現場での材料費や人件費を正確に計算し、全体の工事費を算出する作業では、数字への理解が不可欠です。効率よく計算を進めるために積算ソフトを活用することも一般的です。
細かい作業を楽しめる人
積算業務は、細かな作業を伴います。設計図面や仕様書から必要な材料を拾い出し、数量や単価をひとつずつ確認していくため、几帳面な性格や細部に目を向ける力が適しています。
例えば、住宅のリフォーム工事では、部屋ごとの壁紙や床材の面積を正確に測り、それぞれのコストを計算する必要があります。このような作業を楽しめる人は、積算業務でその力を発揮できるでしょう。
分析や工夫をするのが好きな人
分析をしたり、工夫をしたりするのが得意な人は、積算業務に向いています。市場価格や材料費の動向を調査し、最適なコストを計算する能力が求められるからです。また、予算内で最高の結果を出すための工夫をすることも大切です。
例えば、資材の代替案を考えることでコストを抑えつつ、工事の品質を維持する方法を見つけるのは積算業務の醍醐味と言えます。このような分析力や工夫を楽しめる人は、積算をやりがいのある仕事と感じるでしょう。
コミュニケーション力がある人
積算業務は、コミュニケーション力も必要です。設計者や現場監督、クライアントなど、さまざまな人と情報を共有しながら進める場面が多いからです。
例えば、発注者が希望する予算内で工事を収めるためには、設計段階で設計者と相談し、資材や施工内容を調整することもあります。また、積算内容を明確に説明する力があれば、クライアントの信頼を得ることも容易です。
法令を理解し遵守する人
法令に関する知識を持ち、それを守る意識が高い人も積算業務に適しています。積算業務は、建設業法や労働基準法などの関連法令に基づいて行う必要があり、これらを正しく理解することが欠かせません。
例えば、公共工事では建設業法で定められた入札制度や積算基準を遵守する必要があります。また、下請法や労働関連法令を理解していないと、労務費の算出や適正な取引の実施に支障をきたす場合があります。特に一人親方や小規模な工務店では、自らが法令をチェックし、適正な積算を行うことが信用にもつながります。
積算に不向きな人とは?
積算業務は、建設や土木工事の基盤を支える仕事ですが、特定の性格やスキルの不足が原因で不向きとされる場合もあります。ここでは、積算に不向きな人の特徴を具体的に解説します。
計算ミスが多い
計算ミスが多い人は、積算業務に向いているとは言えません。積算では、正確な数値を基に工事費用を算出することが求められ、ミスが発生すると予算超過や資材不足など、プロジェクト全体に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、コンクリートの必要量を計算する際に、1桁間違えてしまうと、現場で資材が足りなくなり、追加発注が必要になります。これにより工事の進行が遅れ、無駄なコストが発生する可能性があります。
また、計算ミスを防ぐためには、ダブルチェックを行うことや積算ソフトを活用するのが一般的です。ただし、ツールに頼りすぎると根本的な計算スキルの向上につながらないため、基礎的な計算力を磨くことも大切です。
せっかちな人
せっかちな性格の人も、積算業務には適していない場合があります。積算では、設計図面や仕様書を丁寧に確認し、材料の種類や数量を正確に拾い出す細かい作業が求められます。この工程を急いで進めてしまうと、見落としや誤りが生じる可能性が高まります。
例えば、住宅リフォームの積算において、床材の種類を確認せずに一般的な材料費を適用すると、実際の施工段階で予算が足りなくなることがあります。このようなミスは、クライアントとの信頼関係にも悪影響を及ぼします。
積算の仕事は、短時間で結果を出すことよりも、正確性と緻密さが求められるため、落ち着いて物事を進められる性格が向いています。
積算に向いている人も向いていない人も成長するには?
職場では、積算に向いている人も向いていない人も、お互いの得意分野を活かして協力し合うことで、チーム全体の成果を高めることができます。
積算に向いている人は、正確な計算や分析力を活かし、向いていない人を支えることでチーム全体をリードできます。計算が得意な人は、ミスを減らすチェック方法や便利なツールの使い方を教えることで、周囲の成長をサポートできます。
積算に向いていないと感じる人も、自分の得意分野を活かして積極的にチームに貢献できます。例えば、コミュニケーション力を活かしてクライアントとのやり取りや、資料作成を担当することで、チームにとって欠かせない存在となります。また、細かい作業が苦手でも、ルーティンワークやサポート業務を進んで引き受けることで、周囲からの信頼を得られるでしょう。
分からないことがあれば積算に詳しい人に相談し、一緒に取り組むことで自分のスキルを向上させることができます。
お互いを尊重し、協力し合う姿勢があれば、積算業務の精度だけでなく、チーム全体の活気やモチベーションが高まります。このような環境では、誰もが成長し、やりがいを感じながら働くことができるでしょう。
積算の平均年収
積算の平均年収は、職場や経験年数、業務の範囲によって異なりますが、モデル年収によると、積算の平均年収は、513万円です。
また、大手ゼネコンや大規模な建設会社などは、一般的に給与水準が高い傾向があります。
※参考:2024年版 職種別 モデル年収平均ランキング|マイナビ転職
積算に役立つ資格
積算の業務を行うために資格の取得は必要ありませんが、キャリアアップを目指す場合、関連資格を取得することでスキルの証明や仕事の信頼を高めます。
建築積算士
建築積算士は、建物や工事の費用を正確に算出するための専門家です。設計図や仕様書を基に正確な工事費用を算出する能力が証明されます。特に、公共工事の積算や大規模プロジェクトに携わる場合に役立ちます。
建築コスト管理士
建築コスト管理士は、工事のコスト管理に関する専門的な知識を持つことを証明する資格です。材料費や人件費などのコストを効率的に管理し、プロジェクトの予算内での進行を支える役割を担います。
この資格を取得することで、積算だけでなく、予算管理やプロジェクト全体の調整業務にも携わることが可能になります。
施工管理技士
施工管理技士は、工事現場の管理業務を担うための資格ですが、積算業務にも関連性があります。特に、現場で得た知識を積算に活かすことで、より現実的で実用的なコスト計算が可能になります。
この資格は、建設や土木工事に関する幅広い知識を持つことを証明するものです。現場経験を持つ人が積算の仕事に進む際にも役立ちます。
積算は女性でもできる?
積算業務は、建設や土木工事の現場作業とは異なり、主にデスクワークを中心に進めるため、体力的な負担が少ない点が特徴です。
近年では、女性の社会進出が進む中で、さまざまな業界で女性がリーダーシップを発揮する場面が増えています。積算業務においても、女性ならではの視点や柔軟な発想が求められる場面が多く、以下のように多くの女性が成功しています。また、正確な計算や情報整理能力が求められるため、女性特有の細やかさや丁寧さが活かせる場面も多くあります。
近年、建設業界全体で女性の進出が目立ち、積算業務においてもその傾向が見られます。建設会社やゼネコンでは、女性が積算担当として活躍する事例が増えており、育児や家庭との両立を考える人にとって、柔軟な働き方が可能な職場も多く、働きやすい環境が整いつつあります。
積算業務に必要なスキルは、計算力や分析力、コミュニケーション能力などであり、性別による制約は一切ありません。例えば、設計図を基に材料の数量を計算する際、丁寧に確認する姿勢が評価されることが多いです。さらに、クライアントや他部署とのやり取りでは、相手の意図を正確に汲み取り、適切な対応を行う力が求められます。こうした場面では、女性が持つコミュニケーションスキルが活きることもあります。
積算業務のやりがいの一つに、自分が算出したデータがプロジェクト全体を支える基盤になる点があります。この達成感は、性別に関係なく多くの人にとって大きなモチベーションとなります。
積算業務の活躍場所、キャリアアップ
積算業務は、ゼネコン、建設会社、建築事務所など、さまざまな組織で活躍の場があります。
ゼネコン
ゼネコン(ゼネラルコントラクター)は、大規模な建設プロジェクトを総合的に請け負う企業です。積算担当者は、設計図や仕様書を基に、必要な材料や工数を算出し、工事費用を見積もります。この見積もりは、プロジェクトの予算策定や入札に直結するため、正確さと迅速さが求められます。ゼネコンでの積算業務は、プロジェクトの規模が大きく、多様な工種に対応するため、幅広い知識と経験が培われます。
建設会社
中小規模の建設会社では、積算担当者が複数の役割を兼任することが一般的です。例えば、現場管理や営業活動と並行して積算業務を行うケースもあります。このような環境では、柔軟な対応力と多角的な視点が求められます。一人親方や小規模な工務店では、経営者自らが積算を担当することも多く、コスト管理のスキルが直接的に企業の利益に影響します。
建築事務所
建築事務所では、設計段階から積算業務が始まります。設計者と連携し、デザインとコストのバランスを考慮しながら、最適な材料や工法を選定します。このプロセスでは、創造性と経済性の両立が求められ、積算担当者の提案がプロジェクトの方向性を左右することもあります。建築事務所での積算業務は、設計意図を理解し、コストに反映させる高度な調整力が必要とされます。
積算業務のやりがいと適性を知ろう
建設や土木工事の積算業務は、工事費用を正確に算出し、プロジェクトを成功に導く重要な役割を担います。設計図や仕様書を基に必要な資材や人件費を洗い出し、費用算出や価格交渉、必要書類の作成を行います。プロジェクトの基盤を支える重要な業務であり、自分の計算が工事全体の成否を左右する点にやりがいを感じる人も多いです。
積算に向いている人は、建設業の知識があり、数字に強く、分析や工夫が得意で、コミュニケーション力が高い傾向があります。ただし、向いている人の特徴は幅広いため、全ての特性が揃っていなくても問題ありません。チームでの相互フォローが重要で、得意な人が計算やツールの活用をサポートし、不得意な人がクライアント対応や交渉を担当することで、チーム全体の成果が向上します。積算業務はデスクワークが中心で体力的な負担が少なく、女性も活躍しやすい分野であり、細やかさや丁寧さを活かしてやりがいを実感できる仕事です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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