• 作成日 : 2024年6月14日

建設工事に必要な見積依頼書とは?記載すべき項目や書き方を解説

見積依頼書とは、工事やサービスの提供内容を明確にするために作成・提出する書類です。この記事では、建設業界における見積依頼書の役割や作成方法を解説し、見積依頼を行うフローを紹介します。

見積依頼書とは?

見積依頼書とは、工事やサービスの提供を依頼する際に、その内容や費用を明確にするために提出する書類のことを指します。具体的な工事内容、期間、費用などを詳細に記載し、それをもとに業者が見積もりを作成します。これにより、依頼者と業者間での誤解を防ぎ、スムーズな業務進行を可能にします。

見積依頼書の必要性

見積依頼書を作成する必要性は、主に以下の3点が挙げられます。

  • 依頼内容を明確にできる:見積依頼書を作成することで、依頼したい内容や条件を明確に業者に伝えることができます。その結果、業者は正確な見積もりを作成しやすくなります。
  • トラブルを未然に防げる:依頼内容を書面で残しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。口頭のみでの依頼では、内容に食い違いが生じる可能性がありますが、見積依頼書があれば、双方の認識を一致させられます。
  • 複数の業者と比較検討できる:同じ内容の見積依頼書を複数の業者に送れば、適正な価格や条件を比較検討することができます。これにより、自社に最適な業者を選択することが可能となります。

建築業では見積書の作成が義務付けられている

建築業では、見積書の作成が法律で義務付けられています。建設業法第20条第1項では、建設業者は建設工事の請負契約を結ぶ際に、工事内容に応じて材料費労務費などの内訳や、工事の工程ごとに必要な作業と日数を明らかにして、見積りを行うよう努めなければならないと定められています。

さらに、建設業法第20条第2項では、建設業者は建設工事の注文者から請求があった場合、請負契約が成立するまでに見積書を交付しなければならないとされています。

これらの規定は、依頼者と受注者の間で誤解が生じるのを防ぎ、公正で透明な取引を実現するために設けられています。

ただし、見積書に記載すべき項目については、建設業法では具体的に規定されていません。見積書を作成する際の参考としては、各建設業団体が作成している標準見積書などがあります。

見積の依頼から契約、工事までの流れ

見積の依頼から契約、そして工事までの一般的な流れは以下の通りです。

  1. 見積依頼: 発注者は、工事の具体的な内容を示した「見積依頼書」を受注者に提出します。この見積依頼書には、建築業法で定められている項目、例えば工事内容、工事開始時期、完成時期などを明記します。
  2. 見積書の作成: 受注者は、見積依頼書に基づいて見積書を作成します。この見積書には、工事の詳細な内容と、それにかかる費用が記載されます。
  3. 見積書の提出と比較: 受注者から提出された見積書を、発注者は受け取ります。発注者は、複数の受注者から提出された見積書を比較検討し、最適な受注者を選びます。
  4. 契約: 発注者と受注者が合意に達したら、正式な契約を結びます。この契約書には、工事の詳細な内容、費用、工期などが明記されます。
  5. 工事の開始: 契約締結後、工事が開始されます。工事は設計図書に沿って進められ、定期的に進捗状況が確認されます。
  6. 工事の完了と引き渡し: 工事が完了すると、最終検査が行われます。問題がなければ、工事の完成品が発注者に引き渡されます。

見積依頼書に記載すべき項目

見積依頼書は、業者に正確な見積もりを作成してもらうために重要な書類です。必要な情報を漏れなく記載することで、スムーズな見積もり依頼を行うことができます。
工事における見積依頼書で具体的に提示する必要がある項目は以下の通りです。

  • 工事名称: 依頼する工事の名称を明記します。
  • 施工場所: 工事を行う具体的な場所を記載します
  • 設計図書(数量等を含む): 工事に関連する設計図書や数量等の詳細を添付します。
  • 工事の責任施工範囲: 工事の範囲とそれに伴う責任範囲を明記します。
  • 工事の全体工程: 工事の全体的な工程を明記します。
  • 見積条件: 見積もりを作成する際の条件を明記します。
  • 施工環境、施工制約に関する事項: 施工環境や施工制約に関する事項を記載します。

見積依頼書の書式、テンプレート

見積依頼書を作成する際には、「工事の名称」や「施工場所」、「工事の全体工程」など重要な項目を記入し、提示することが求められています。

もし見積依頼書に必要な項目が記載されていない場合、建設業法に違反していると見なされ、罰則の対象となる可能性があります。見積依頼書を作成する際は、記載項目に漏れがないよう注意を払いましょう。

見積依頼書の作成で不明な点がある場合は、国土交通省が公開している「建設業法令遵守ガイドライン」を参考にすると良いでしょう。このガイドラインには、見積依頼書の作成に関する有益な情報が掲載されています。

見積依頼書は必ずしも書面で行う必要はありませんが、国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインでは、書面により見積り内容を示すことが推奨されています。

参考:公共建築工事見積標準書式【建築工事編】|国土交通省公共建築工事見積標準書式【設備工事編】|国土交通省

見積依頼書の作成するポイント

具体的かつ明確に記載する

見積依頼書には、工事内容や要望事項を具体的かつ明確に記載しましょう。曖昧な表現は避け、数値や仕様を明示することが大切です。これにより、業者は正確な見積もりを作成することができます。

必要な情報を漏れなく記載する

見積もりを作成するために必要な情報を、漏れなく記載することが重要です。工事の目的、規模、期間、予算など、業者が見積もりを作成する上で不可欠な情報を提供しましょう。

優先順位をつける

複数の要望がある場合は、優先順位をつけて記載することをおすすめします。業者は優先順位を考慮して、最適な提案を行うことができます。

問い合わせ先を明記する

見積依頼書には、問い合わせ先を明記しておくことが重要です。業者から質問や提案があった際に、速やかに対応できるようにしましょう。

見積依頼から見積書発行までに設ける期間

見積依頼から見積書発行までに設ける期間は、建設業法により定められています。この期間は、下請け業者が発注者や元請け業者から見積もりを依頼されてから、見積書を提出するまでの猶予期間のことを指します。

見積書の発行までに必要な期間は、工事1件あたりの請負金額によって異なります。

  • 工事請負金額が500万円未満の場合: 1日以上
  • 工事請負金額が500万円以上、5000万円未満の場合: 10日以上(やむを得ない場合は5日以上)
  • 工事請負金額が5000万円以上の場合: 15日以上(やむを得ない場合は10日以上)

この期間は下請け業者に対する契約内容の提示から契約締結の日までの間に設けなければならない最短期間です。ただし、土日祝日も見積期間に含めても構いません。

上記最短期間よりも短い見積期間を設定したり、「出来るだけ早く」など曖昧な見積期間を設定したりすると、建設業法違反になる恐れがあるため注意が必要です。

見積書の送付を依頼する方法

見積書の送付を依頼する方法として、郵送とメールの2つの方法を紹介します。

見積依頼書を郵送する

見積依頼書の郵送での送付は、書面でのやり取りを重視する業者に適しています。また、見積依頼書に図面や仕様書などの添付資料がある場合は、郵送での送付が便利です。
見積依頼書を郵送する際は、以下の手順で行います。

  1. 見積依頼書を印刷し、必要事項を記入します。
  2. 見積依頼書に社印または代表者印を押印します。印鑑は、法人の場合は角印、個人事業主の場合は認印を使用します。
  3. 見積依頼書を封筒に入れ、業者の宛先を記載します。
  4. 郵便局から見積依頼書を送付します。送付方法は、簡易書留や特定記録郵便など、記録が残る方法を選択することをおすすめします。

見積依頼書に印鑑を押す必要があるのは、依頼内容の正当性を示すためです。印鑑を押すことで、依頼者の意思が明確になり、トラブルを防ぐことができます。

ただし、郵送での送付は時間がかかるため、見積もりの提出期限に余裕を持って送付することが大切です。また、送付した見積依頼書が確実に業者に届いたか、電話などで確認することをおすすめします。

見積書の送付依頼メールを送る

メールでの送付は、迅速性が求められる場合に適しています。また、電子ファイルでの見積依頼書の送付は、業者が見積もりを作成する際に便利です。

見積書の送付依頼メールを送る場合は、以下の手順で行います。

  1. 見積依頼書をExcelやWordで作成し、PDF形式にします。
  2. 新規メールを作成し、メールの件名に「見積依頼」などと明記し、本文に見積書の送付依頼の内容を記入します。
  3. 作成した見積依頼書をメールに添付します。
  4. 宛先を確認し、メールを送信します。

見積書の送付依頼メールの例文

以下に、見積書の送付依頼メールの例文を示します。

件名:【見積依頼】○○工事の見積もりについて

○○建設株式会社 ××様

いつもお世話になっております。
○○株式会社の△△と申します。

この度は、○○工事の見積もりをお願いしたく、メールをお送りいたしました。

詳細は添付の見積依頼書をご確認ください。

ご多忙とは存じますが、見積書の提出を○月○日までにお願いできれば幸いです。

ご不明な点がございましたら、ご連絡ください。

どうぞよろしくお願いいたします。

———————–
○○株式会社 △△
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見積書の送付を依頼する際は、業者の状況や自社の要望に合わせて、適切な方法を選択することが大切です。また、依頼内容を明確に伝え、円滑なコミュニケーションを図ることが重要です。

発注者は、不明確な工事内容の提示や曖昧な受注条件によって受注予定者に見積りを依頼した場合、建設業法違反となるおそれがあるので注意が必要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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