• 作成日 : 2024年12月27日

一人親方は雇用保険に加入できる?労災保険の特別加入や安全書類の書き方を解説

一人親方は雇用保険に加入できるのか、疑問に感じている人は多いでしょう。この記事では、一人親方が原則として雇用保険に加入できない理由や、労災保険の特別加入制度について解説します。一人親方が適切な保険を選択し、安心して事業に取り組める手助けになるはずです。

一人親方は雇用保険に加入できない

一人親方は基本的に雇用保険に加入することができません。これは、雇用保険が労働者を保護するための制度であり、一人親方は事業主として扱われるためです。

一人親方の場合、自身が事業主であり労働者でもあるという特殊な立場にあるため、通常の雇用保険制度の適用外となります。これは、一人親方が自営業者として扱われ、雇用関係が存在しないためです。

一人親方が例外的に雇用保険に加入できるケース

ただし、一人親方であっても例外的に雇用保険に加入できるケースがあります。

  • 一人親方が他の会社や事業主に雇用される形で働く場合
  • 一人親方が自身の事業とは別に、パートタイムやアルバイトとして他の会社で働く場合
  • 一人親方が法人を設立し、その法人で通常の労働者としての身分を有して働く場合

これらのケースでは、一人親方としての事業とは別に、労働者としての立場が生じるため、その労働者としての立場において雇用保険に加入することが可能となります。

一人親方は労災保険に特別加入がおすすめ

雇用保険に加入できない一人親方にとって、労災保険の特別加入制度は非常に重要な選択肢となります。労災保険の特別加入制度は、通常の労働者向けの労災保険制度を一人親方などの自営業者にも適用を拡大したものです。

この制度を利用することで、一人親方は業務中の事故や怪我、疾病に対する保障を受けることができます。特に建設業や運送業など、事故のリスクが高い業種で働く一人親方にとっては、労災保険の特別加入は必須と言えるでしょう。

労災保険に特別加入すると、以下のようなメリットがあります。

  • 業務中の怪我や病気に対する医療費の補償
  • 休業補償給付の支給
  • 障害が残った場合の障害補償給付
  • 万が一の死亡時における遺族補償給付

労災保険の特別加入手続きは、一人親方が所属する事業主団体を通じて行います。加入にあたっては一定の条件を満たす必要がありますが、多くの一人親方がこの制度を利用しています。

一人親方として働く際は、雇用保険に加入できないというデメリットを認識しつつ、労災保険の特別加入などを積極的に活用することが重要です。

これにより、事業継続のリスクを軽減し、より安定した事業運営が可能となります。

一人親方が労災保険に特別加入するメリット

一人親方が労災保険に特別加入することで、様々なメリットを享受できます。

業務中や通勤中に発生したケガや病気の治療費が全額カバーされる

通常の医療保険では自己負担が発生しますが、労災保険では治療費の自己負担がゼロになります。予期せぬ医療費の負担から解放され、安心して治療に専念できます。

具体的には以下のような場合に適用されます。

  • 作業現場での転倒や落下によるケガ
  • 工具や機械の操作ミスによる負傷
  • 長時間の同じ姿勢による腰痛や筋肉痛
  • 通勤途中の交通事故によるケガ

業務上の事由や通勤による傷病で働けなくなった場合、休業補償を受けられる

休業補償は、治療のために仕事を休んでいる期間中の収入を保障するもので、生活の安定を維持するのに役立ちます。休業4日目から支給開始され、給付基礎日額の80%が支給されます。最長1年6ヶ月まで受給可能です。

この補償により、一人親方は安心して療養に専念でき、回復後の円滑な職場復帰を目指すことができます。

業務中や通勤中に死亡した場合、一時金や遺族年金が支払われる

死亡事故が発生した場合、労災保険の特別加入によって遺族の生活を支える補償が用意されていて、家族の将来に対する不安を和らげる役割を果たします。

遺族補償の内容は以下のとおりです。

  • 遺族補償年金:遺族の生活を長期的に支援
  • 遺族補償一時金:緊急の出費に対応
  • 葬祭料:葬儀費用の負担を軽減

その他の労災保険特別加入のメリット

労災保険の特別加入には以下のような利点もあります。

  • 障害補償:後遺障害が残った場合の生活保障
  • 介護補償:常時介護が必要になった場合の支援

労災保険の特別加入により様々なリスクに対して包括的な保護を受けることができ、一人親方の事業の継続性を高める効果も期待できます。

加入手続きと注意点

労災保険に特別加入するためには、所定の手続きが必要です。主な流れは以下の通りです。

  1. 特別加入団体への加入
  2. 特別加入申請書の提出(特別加入団体を経由)
  3. 労働基準監督署での審査と承認
  4. 保険料の納付

加入に際しては、業務の範囲や保険料の算定基礎となる給付基礎日額の設定に注意が必要です。適切な保護を受けるためには、実態に即した設定を行わなければいけません。

一人親方の安全書類の書き方のポイント

全建統一様式を利用する

一人親方が安全書類を作成する際は全建統一様式を利用しましょう。

全建統一様式とは、一般社団法人全国建設業協会が提供している標準的な書式のことを指します。作業計画書、安全衛生管理計画書、リスクアセスメント実施報告書などが含まれます。

全建統一様式は、一人親方向けに特化した書類も用意されています。

この様式を使用することで、書類作成の手間が省け、必要な情報が漏れなく記載できます。発注者や元請けとのコミュニケーションがスムーズになるでしょう。

再下請通知書の雇用保険欄は適用除外を選択する

再下請通知書は、下請工事を他の業者に再発注する際に作成する書類です。一人親方の場合、雇用保険欄の記入の際は以下の点に留意しましょう。

  • 雇用保険欄には「適用除外」を選択する
  • 適用除外の理由として「一人親方」と記載する
  • 事業主である旨を明記する

これらの記載により、一人親方であることが明確になり、雇用保険に加入していないことが適切に伝わります。

一人親方が従業員を雇用する場合の雇用保険の手続き

同居の親族を被雇用者とする場合

一人親方が同居の親族(以下、家族)を雇用する場合、雇用保険の加入は原則として不要です。これは、家族従業員が労働基準法上の労働者として認められにくいためです。ただし、以下の条件を満たす場合は例外的に雇用保険に加入できることがあります。

  • 事業主と家族従業員の間に使用従属関係が明確に存在する
  • 賃金が他の従業員と同等に支払われている
  • 勤務時間や休暇などの労働条件が明確に定められている

これらの条件を満たす場合、ハローワークに相談の上、雇用保険の加入手続きを行うことができます。

家族以外の常用労働者が4人以下の場合

一人親方が家族以外の従業員を雇用し、その人数が4人以下の場合、雇用保険の加入は任意となります。ただし、従業員の福利厚生や事業の信頼性向上のために加入することをおすすめします。

加入を希望する場合は、以下の手順で手続きを行います。

  1. ハローワークで「労働保険関係成立届」を入手し、必要事項を記入
  2. 従業員の雇用保険被保険者資格取得届を作成
  3. 上記書類をハローワークに提出
  4. 保険料を納付

なお、雇用保険料は労使折半となるため、従業員の給与から一定額を控除することになります。

家族以外の常用労働者が5人以上の場合

一人親方が家族以外の従業員を5人以上雇用する場合、雇用保険への加入が義務付けられます。この場合、以下の手順で手続きを行う必要があります。

  1. 労働保険番号の取得:事業所の所在地を管轄するハローワークで労働保険番号を取得します。
  2. 労働保険関係成立届の提出:事業開始から10日以内に提出が必要です。
  3. 雇用保険適用事業所設置届の提出:労働保険関係成立届と同時に提出します。
  4. 雇用保険被保険者資格取得届の提出:従業員ごとに作成し、雇入れ日から10日以内に提出します。

これらの手続きを行うことで、従業員が失業した際に失業給付を受けられるようになります。また、事業主も雇用継続給付や雇用安定事業などの各種サービスを利用できるようになります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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