- 更新日 : 2024年8月26日
有償運送許可証とは?必要ケースや取得方法、違反の罰則について解説
有償運送許可証は、有償で貨物や人を運送するために必要な許可証です。黒ナンバーや緑ナンバー、白ナンバーの車両で有償での運送を行う場合、道路運送法に基づき、国土交通大臣の許可を受ける必要があります。
本記事では、有償運送許可証の具体例や取得条件、申請方法、費用、違反した場合の罰則について詳しく解説します。許可証の取得を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
有償運送許可証とは?
有償運送許可証とは、道路運送法に基づき、自家用車や軽貨物車やバイクなどの車両を使用して、有償で運送業を行うために必要な許可証のことを指します。この許可証は、国土交通省から発行され、講習を受けて取得することができます。
具体的な例としては、以下のようなものがあります。
■タクシー業
個人が自家用車を使って、有償で人の送迎を行う場合。例えば、要介護認定や要支援認定を受けている者を対象とした福祉輸送、交通機関が少ない過疎地で友人や知人の依頼を受けて有償で空港まで送迎するなどが該当します。
■引越し業者・引っ越しの手伝い
顧客の家財道具をトラックなどで新居まで有償で運搬する場合や、個人が自家用車を使って、有償で引っ越しの手伝いをする場合。友人や知人の依頼を受けて、荷物の運搬などの作業を有償で行うのが該当します。
■宅配便サービス
個人が軽貨物車を使って、有償で物品の配送を行う場合。例えば、ネットショップで購入した商品を顧客に配送するサービスなどが該当します。
■飲食店の出前
個人がバイクを使って、有償で飲食店の出前を行う場合。近所の飲食店から注文を受けて、料理を届ける出前サービスなどが該当します。
■引っ越しの手伝い
個人が自家用車を使って、有償で引っ越しの手伝いをする場合。友人や知人の依頼を受けて、荷物の運搬などの作業を有償で行うのが該当します。
■故障車の回送
個人が自家用車を使って、有償で故障した車両の回送を行う場合。事故や故障で動けなくなった車を、修理店やディーラーまで運搬するサービスなどが該当します。
■家具の配送
大型の家具を顧客の自宅まで有償で配送するサービスの場合。
有償運送許可証の対象となる車両
有償運送許可証は、道路運送法に基づき、有償で運送業を行う車両に対して必要となります。具体的には、以下のような車両が対象となります。
- 軽貨物:軽貨物車は、黒ナンバーと呼ばれる車両で、最大積載量が2名乗車時に350kg、4名乗車時には200もしくは250kg以下の車両を指します。例えば、小型のトラックやバンなどが該当します。
- バイク:125ccを超えるバイクも有償運送許可証の対象となります。例えば、ピザのデリバリーや宅配便などで使用されるバイクが該当します。
- 白ナンバー:白ナンバーと呼ばれる普通自動車も、有償で運送業を行う場合には、有償運送許可証が必要となります。
これらの車両は、県外への運送も含めて、有償で運送業を行う場合には、国土交通省から有償運送許可証の取得が必要となります。
また、故障車の運搬など、特殊なケースでも有償運送許可証が必要となることがあります。
有償運送許可を取得する条件
有償運送許可証を取得するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 資金の準備:運送業立ち上げ用の資金や当面の運転資金があることを証明する、銀行残高証明書の提出が必須
- 人員の充足:5名以上のドライバーと1名の運行管理者が必要
- 適切な車両の保有:運送の種別に応じた、軽自動車以外のトラックを5台以上保有していること。
- 運行管理責任者の選任:講習の受講等一定の要件を備える運行管理責任者を選任し、運行管理体制を整備していること。
- 営業所の場所や施設の整備:営業所が市街化調整区域ではなく、営業所を建てて良い地域であること。営業所内には、5㎡以上の広さがある休憩室や仮眠室を設置すること。
- 研修の受講:有償運送許可証を申請するためには、研修を受け、研修の受講状況を証明する必要があります。
- 保険の加入:被害者一名あたりの補償額を無制限とする対人賠償保険又は共済(任意保険等)に加入していること。
有償運送許可証の取得方法
有償運送許可証にかかる費用や取得の流れを説明します。
- 講習を受ける:まずは、国土交通省が指定する講習を受ける必要があります。全体の講習時間は約6時間程度となっています。この講習は、制度の趣旨から運転技術、道路交通法や道路運送法などの基本的な知識と実技を学びます。受講料は、およそ5,000円〜10,000円程度と主催者により異なります。
- 申請書を提出する:講習を受けた後は、有償運送許可証の申請書を各地域にある運輸局に提出します。申請書には、運送業を行う車両の情報や運送業の範囲、運送する期間や区域などを詳細に記入します。合わせて、車検証や任意保険の証書も必要です。
- 許可を受ける:国土交通省から許可が下りれば、有償運送許可証の取得は完了です。許可が下りたら、許可証を車両に掲示することを忘れないでください。
有償運送許可証の掲示場所
有償運送許可証は、適切な場所に掲示することが法律で義務付けられています。具体的には、以下のような場所に掲示します。
- 車内の見えやすい場所:有償運送許可証は、乗車する利用者から見えやすい位置に掲示します。運転席から確認できる場所に掲示すると、運転手自身が許可証の有無を常に確認できます。
- 車外の確認可能な場所:車外からも許可証が確認できるよう、車体のダッシュボードなど適切な位置にも掲示します。これにより、警察官や国土交通省の職員が、車外から許可証の有無を確認できます。
これらの掲示場所を守らない場合、行政処分が科せられる可能性があります。そのため、有償運送許可証を取得したら、必ず適切な場所に掲示しましょう。
有償運送許可証の有効期間
有償運送許可証の許可期間は、「許可日から起算して3年以内」となっています。ただし、許可期間の満了の後引き続き許可を受けようとする場合は「許可満了日の翌日から起算して3年以内」となります。
許可証の申請期間については、運送を開始する期間の3ヶ月前から1ヶ月前までに申請を終了するよう求められています。また、許可証が紛失したり、破損したりしてしまった場合、許可を受けた運輸局や支局に再交付を申請することができます。
有償運送許可証の再交付や取り消される場合
有償運送許可証の再交付
有償運送許可証が紛失したり、破損してしまったりした場合、許可を受けた運輸局や支局に再交付を申請することができます。再交付の申請には、再交付申請書の提出と手数料の支払いが必要です。具体的な手続きや費用については、最寄りの国土交通省に問い合わせてみてください。
有償運送許可証の取り消し
一方、有償運送許可証は、運送業者が道路運送法を遵守しない場合、国土交通省によって取り消される可能性があります。例えば、指定された範囲を超えて運送を行ったり、是正勧告に応じなかったりした場合などが該当します。許可証が取り消されると、取り消しから2年経過するまで運送業を行うことはできません。
有償運送許可証を取得しない場合の罰則
有償運送許可証を取得せずに、有償で貨物を運送した場合、道路運送法違反となり、罰則が科せられる場合があります。
道路運送法第78条に違反した場合の罰則について、「1年以下の懲役若しくは150万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と同法97条1項に規定があります。
ただし、違反の内容によっても処分の重みが変わる可能性があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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