• 更新日 : 2024年7月23日

作業員名簿とは? 書き方や記入例、一人親方の場合を解説(テンプレート付き)

作業員名簿とは建設現場で働く作業員の情報を管理する名簿で、作成が義務付けられています。建設現場の安全を確保するための施工管理台帳の一部として下請け会社が作成し元請け会社へ提出されます。

本記事では、作業員名簿の目的や利用されるケース、監査対策なども併せて紹介します。テンプレートの無料ダウンロードリンクもありますので、ぜひ参考にしてください。

作業員名簿とは?目的や利用されるケース

作業員名簿は、建設現場で働くすべての作業員の氏名、年齢、職種などの情報を記載した重要な書類です。

建設業法施行規則第14条の2の4により、建設業者は施工管理台帳を作成し、その一部として作業員名簿を備え付けることが義務付けられています。この規則は、建設現場における適正な労働条件の確保と安全管理の徹底を目的としています。

作業員名簿は、以下のような目的で利用されます。

  • 労働者の適正な労働条件の確保
  • 社会保険の加入状況の確認
  • 事故や災害発生時の作業員の特定
  • 現場における作業員の配置状況の把握

例えば、労働基準監督署が建設現場に立入検査を行う際、作業員名簿により労働者の労働条件や社会保険の加入状況を確認します。

また、万が一事故や災害が発生した場合、作業員名簿を参照することで、被災者の特定や事故原因の究明がスムーズに進められます。

作業員名簿は安全書類の一つ

建設業における安全管理のための書類はグリーンファイル(安全書類)と呼ばれ、書類の種類は多岐にわたります。

作業員名簿はその中でも特に重要な位置づけにあります。作業員名簿がなければ、誰が現場で作業していたのかを正確に把握することができません。これでは、事故や災害の防止はもちろん、適切な労務管理も困難です。

なお、建設現場で作業者の安全を確保するために必要なグリーンファイルには以下のようなものがあります。

  • 作業員名簿:建設現場で働く作業員の名前とその他の情報を記録した書類
  • 新規入場時等教育実施報告書:新たに作業現場に入場する作業員に対して行われる安全教育の内容とその実施状況を記録した書類
  • 高齢者就労報告書:高齢者(65歳以上)が就労する際に、その健康状態や作業内容、作業環境などを記録した書類
  • 年少者就労報告書:満18歳未満の年少者が就労する場合、自社の責任で就労させることを報告する書類
  • 外国人就労に関する誓約書:外国人建設就労者である作業員を自社の責任で就労させることを報告する書類
  • 有資格者一覧(技能講習):工種ごとに保有している資格者をまとめた書類
  • 下請負業者編成表:元請業者に一次下請業者が二次下請け業者以下の業者の名前や作業工種をまとめた書類
  • 再下請通知書:下請企業が請け負った業務の一部を別の下請企業に依頼する場合に提出する書類
  • 工事安全衛生書:工事概要や工事内容に対するリスクをまとめ、リスクに対して労働者の安全と健康を確保するための書類
  • 安全衛生計画書:現場を安全かつ衛生的な環境にするために目標や対策をまとめる書類

これらの書類は建設業法によって作成・管理が義務付けられており、それぞれの書類によって用途・目的が異なるので、それぞれの書類を理解した上で、適切に作成・管理・運用をすることが求められています。

グリーンファイル自体については、下記記事でも詳しく説明しています。

作業員名簿の作成から提出の流れ

作業員名簿の作成は、下請会社もしくは一次下請以降の協力会社が作成します。

ここでは、作業員名簿の作成から提出までの詳細な流れを解説します。

  1. 作業員名簿の作成:作業員名簿は、下請け会社が作成します。作業員の氏名、住所、生年月日、雇用者(元請け会社や下請け会社)の名前など、作業員の基本情報を記載します。これにより、現場で働く全ての作業員が誰であるかを把握することができます。
  2. 作業員名簿の更新:新たに作業員が現場に入場する場合や、既存の作業員が現場から退場する場合は、作業員名簿を更新します。更新は、新たに作業員名簿を作成するか、既存の作業員名簿に追記する形で行います。
  3. 作業員名簿の提出:一次下請け会社は、二次請け会社以下の作業員名簿をまとめて元請け会社に提出します。元請け会社が施工管理台帳とともに保持し、必要に応じて関係者に提示します。

作業員名簿の作成時期は、工事着工前または着工後遅滞なくとされています。基本的には、着工前の工事打ち合わせ時には作成しておきましょう。

また、作業員名簿は、施工管理台帳に添付して工事現場に備え置く必要があります。施工管理台帳は、工事現場の事務所など、いつでも確認できる場所に保管しておきます。

監督職員から請求があった場合は、速やかに作業員名簿を提示しなければなりません。監督職員による抜き打ち検査の際にも、作業員名簿の提示を求められる可能性があるため、常に最新の状態で保管しておくことが大切です。

作業員名簿のひな形・テンプレート

作業員名簿の作成を効率化するために、ひな形やテンプレートを活用することをおすすめします。国土交通省のウェブサイトからも作業員名簿のテンプレートをダウンロードすることができますが、以下より無料でダウンロードいただけます。

ひな形やテンプレートを使うことで、必要な項目を漏れなく記入でき、書式の統一性も保てます。

作業員名簿の書き方のポイント

必要事項を漏れなく記入する

再下請負通知書には、建設業法施行規則第14条の2の4に定められた以下の情報を漏れなく記入しなければなりません。

  • 氏名:作業員のフルネームを記入します。
  • 生年月日及び年齢:作業員の生年月日とその時点での年齢を記入します。
  • 職種:作業員が現場で担当する職種を記入します。
  • 社会保険の加入状況:作業員が健康保険、厚生年金雇用保険などの社会保険に加入しているかどうかを記入します。
  • 中退共又は建退共への加入の有無:作業員が中建共済(中小建設業共済)または建設業福祉共済(建設業福祉共済)に加入しているかどうかを記入します。
  • 安全衛生に関する教育を受けているときはその内容:作業員が安全衛生に関する教育を受けている場合、その内容を記入します。
  • 建設工事に係る知識及び技術又は技能に関する資格:作業員が建設工事に関する知識や技術、技能に関する資格を持っている場合、その資格を記入します。ただし、作業員がその情報を公開したくない場合は、記載しなくても良いとされています。

資格や免許のコピーを添付する

作業員名簿を作成する際は、保有する資格や免許の書類のコピーを添付する必要があります。資格やライセンスの種類、取得年月日、有効期限などの情報を確認できるよう、関連書類を一緒に提出することが求められます。

作業員名簿へのハンコは必要なし

作業員名簿にハンコを押す必要は基本的にありません。県の仕様や国交省の仕様にも押印の必要は「無」になっています。

個人情報の記載を拒まれたら

作業員名簿には、作業員の氏名や住所などの個人情報が含まれますが、現場の安全管理や事故対応に必要不可欠な情報を記録する重要な書類です。もし、個人情報の記載を拒まれたら、法令の説明と個人情報の管理方法について説明しましょう。

作業員名簿に記載された情報は、適切に管理され、不適切な利用はされないことを保証する旨と、個人情報の取り扱いに関する法令(個人情報保護法など)を遵守することを説明します。

一人親方の場合の作業員名簿の書き方

一人親方の場合の作業員名簿の書き方は、基本的には法人が作成する場合と大きく変わるところはありません。

一次会社情報には、一次下請けの会社名を入力します。
会社名の欄には、自分が何次下請かの数字を入れ、屋号があれば屋号を、なければ個人名を入力します。

社会保険の欄に関して、健康保険は、国民健康保険になると思いますので「国民健康保険」と記入し、保険番号の下4桁を入力します。また、年金保険は「国民年金」と記入し、隣に年金番号の下4桁を入力します。

雇用保険の欄は、一人親方は雇用保険に加入できませんので、ここは適用除外になります。

作業員名簿の保管方法、保管期間

作業員名簿は、適切な方法で保管し、必要な期間保存しておくことが求められます。

作業員名簿の保管方法

作業員名簿は、紙媒体または電子媒体で保管することができます。保管方法によって注意点が異なりますので、それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

紙媒体での保管方法と注意点

紙媒体で作業員名簿を保管する場合は、以下の点に注意が必要です。

  • 水濡れや汚損、破損を防ぐため、専用のファイルやバインダーに保管しましょう。特に、現場事務所など湿気の多い場所での保管には十分注意が必要です。
  • 施錠可能な書庫やキャビネットに保管し、関係者以外がアクセスできないようにしましょう。個人情報保護の観点から、厳重な管理が求められます。
  • 定期的に内容を確認し、最新の情報に更新しましょう。特に、労働者の入退場があった場合は、速やかに作業員名簿に反映する必要があります。

電子媒体での保管方法と注意点

電子媒体で作業員名簿を保管する場合は、以下の点に注意が必要です。

  • パスワードを設定し、関係者以外がアクセスできないようにしましょう。パスワードは定期的に変更し、セキュリティを強化することが望ましいです。
  • 定期的にバックアップを取り、データの損失を防ぎましょう。バックアップは、外部のハードディスクやクラウドストレージなど、複数の場所に保存することをおすすめします。
  • ファイル名や保存先フォルダを分かりやすく設定し、必要な情報にすぐにアクセスできるようにしましょう。例えば、「○○工事_作業員名簿_YYYYMMDD」といったファイル名にすることで、どの工事の作業員名簿かが一目で分かります。

作業員名簿の保管期間

作業員名簿の保管期間は、労働基準法第109条により、5年間と定められています。この期間は、作業員名簿の作成日から起算します。

作業員名簿は監査の対象?対策と対応

労働基準監督署は、労働者の安全と健康を守るために、建設現場に対して年1回から数回の頻度で定期的な監査を行います。

この監査では、労働安全衛生法や関連法令の遵守状況を確認し、違反があった場合は是正勧告や指導が行われます。作業員名簿は、労働基準監督署や建設業労働災害防止協会(労災協)などの監査の対象となります。

作業員名簿の監査で確認される主な項目

監査官は、作業員名簿の記載内容が適切かどうか、実際の作業員の人数と一致しているかなどを入念に確認します。具体的には以下のような項目がチェックされます。

  • 作業員の氏名、年齢、住所などの記載漏れがないか
  • 下請け会社の作業員も漏れなく記載されているか
  • 一人親方の場合、必要な情報(名称、住所、労災保険加入の有無など)が記載されているか
  • 作業員名簿が適切に保管されているか

元請け会社の責任と監査対策のポイント

元請け会社は、下請け会社から提出された作業員名簿を取りまとめ、労働基準監督署の監査に備える必要があります。監査で不備が指摘された場合、元請け会社は是正措置を講じなければなりません。以下は、元請け会社が行うべき監査対策のポイントです。

下請け会社への指導と確認

  • 下請け会社に対し、作業員名簿の記載方法や提出期限を書面で明示し、周知徹底する
  • 提出された作業員名簿の内容を必ずチェックし、不備があれば修正を求める

適切な保管方法の実施

  • 作業員名簿の保管場所や保管方法を社内規定で定め、確実に実施する
  • 紛失や破損を防ぐため、バックアップデータを作成し、別の場所に保管する

監査での指摘事項の是正と再発防止

  • 監査での指摘事項は速やかに是正し、改善報告書を提出する
  • 指摘事項の原因を分析し、再発防止策を講じる(例:社内教育の実施、チェック体制の強化など)

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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