• 作成日 : 2025年1月30日

一人親方の安い労災保険を選ぶポイント!費用や経費計上などをわかりやすく解説

一人親方の労災保険とは、一人親方(個人事業主)が自身の労働による事故や病気に備えて加入する保険のことを指します。一般的に一人親方が労災保険に加入するには、特別加入団体を通じて加入します。

この記事では、一人親方の労災保険について、労災保険の費用や安い加入団体を選ぶポイント、経費計上の方法を詳しく解説します。

一人親方の労災保険とは?

一人親方の労災保険は、個人事業主として建設業に従事する方々を対象とした特別な保険制度です。通常、一人親方は請負関係にあるため、仕事中のケガは基本的に自己責任扱いとなり、事業主や元請が加入している労災保険は一人親方に適用されません。しかし、一人親方が労災保険に特別加入することで、労災事故の補償を受けられるようになります。

具体的な補償内容は、治療費の全額支給や休業補償、さらには後遺障害が残った場合の年金支給など、幅広い保障を行います。

一人親方特別加入制度の対象者

一人親方特別加入制度は、一人親方やその家族従事者が労災保険の適用を受けるための制度です。この制度の対象者は以下の通りです。

この制度の対象となるのは、主に以下の職種で働く個人事業主です。

  • 会社に雇用されずに、個人で仕事を請け負っている一人親方
  • 法人の代表者であるが、正社員の方を採用していない一人親方
  • 建設業を営む一人親方及びその家族従事者

一人親方労災保険の補償内容

一人親方の労災保険は、業務中の事故や疾病に対して幅広い補償を提供します。主な補償内容は以下の通りです。

  • 療養補償給付:業務上の負傷や疾病の治療費
  • 休業補償給付:療養のため働けない期間の所得保障。
  • 介護補償給付:傷病年金または障害年金受給者のうち等級が1級又は2級の方が受け取れる補償。
  • 障害補償給付:後遺障害が残った場合の補償
  • 遺族補償給付:業務上の死亡に対する遺族への補償
  • 葬祭料:葬祭に要した費用の補償
  • 傷病補償年金:長期療養が必要な場合の年金給付

これらの補償により、一人親方は業務上のリスクに対して経済的な保護を受けることができます。

一人親方の労災保険は任意

一人親方の労災保険への加入は、義務ではなく任意です。加入するか否かは一人親方自身の判断によります。保険料を負担したくない、またはすでに民間保険に入っているなどの理由から、特別加入していない一人親方もいます。

一人親方労災保険と民間の傷害保険の違い

一人親方労災保険は、国が行っている保険で、一人親方やその家族従事者が労災保険の適用を受けるための特別な制度です。一方、民間の傷害保険は、さまざまな事故による怪我が対象の保険です。傷害保険は日常生活の中で怪我をした場合でも補償が受けられます。

一人親方労災保険と民間の傷害保険の主な違いをまとめると下記のようになります。

  • 補償金額の違い
    一人親方労災保険は、医師が治癒と認めるまで全額補償されます。一方、民間の傷害保険は掛け金に応じた保険金が給付されます。
  • 補償される治療期間の違い
    一人親方労災保険は、治療が必要な期間全てをカバーします。一方、民間の傷害保険は、入院日数や通院日数に対して給付され、上限が設けられていることが多いです。
  • 治療後の補償の違い
    一人親方労災保険は、治療後も障害が残った場合や死亡した場合にも補償が受けられます。一方、民間の傷害保険では、治療後の補償は限定的で、稀なケースでは死亡時に補償が受けられるものもあります。

一人親方の場合、一人親方労災保険に加入した上で、余裕がある場合は民間の保険にも加入することで、より広範囲な補償を受けることが可能です。

一人親方の労災保険にかかる費用はいくら?

一人親方が労災保険に加入する際に必要となる費用は、大きく分けて2つあります。

労災保険料と組合費が毎月かかる

一人親方の労災保険にかかる費用は、国に支払う労災保険料と組合費で構成されています。

  1. 労災保険料
  2. 団体の組合費

労災保険料は、国が定めた基準に基づいて算出され、給付基礎日額にそれぞれの事業に定められた保険料率を乗じたものになります。

給付基礎日額とは、労働基準法の平均賃金に相当する金額のことです。
通常の労働者の場合、直近の賃金をもとに自動的に計算されますが、一人親方は自営業者であるため、定期的な給与の概念がありません。そのため、自身で「給付基礎日額」を決定する必要があります。

給付基礎日額は、3,500円から25,000円までまでの16段階から選べます。

また組合費は、加入する団体によって異なります。一般的に、月額1,000円から3,000円程度です。

これらの費用は毎月発生し、初回加入時や更新時には別途手続き費用がかかることがあります。

労災保険料の計算方法

労災保険料は、希望する給付基礎日額に事業の種類で定められた保険料率を乗じて計算されます。業種によって保険料率が異なり、建設業や林業など危険度の高い業種では保険料が高くなる傾向があります。

労災保険料 = 給付基礎日額 × 365(日) × 保険料率

建設業の場合の例(保険料率17/1000)

給付基礎日額3,500円の場合

3,500円×365×0.017= 21,709円

※千円未満の端数が生じるときは端数切り捨て

給付基礎日額年間算定基礎額建設事業の場合
年間保険料(保険料率17/1000)
3,500円1,277,500円21,709円
4,000円1,460,000円24,820円
5,000円1,825,000円31,025円
6,000円2,190,000円37,230円
7,000円2,555,000円43,435円
8,000円2,920,000円49,640円
9,000円3,285,000円55,845円
10,000円3,650,000円62,050円
12,000円4,380,000円74,460円
14,000円5,110,000円86,870円
16,000円5,840,000円99,280円
18,000円6,570,000円111,690円
20,000円7,300,000円124,100円
22,000円8,030,000円136,510円
24,000円8,760,000円148,920円
25,000円9,125,000円155,125円

参照:令和6年度の労災保険率について|厚生労働省

その他の手続き費用

労災保険に加入する際には、初回のみ発生する費用があります。これらの費用は組合によって異なりますが、主に以下のようなものが挙げられます:

  • 加入手数料:1,000円~5,000円程度
  • 健康診断料:3,000円~10,000円程度
  • 書類作成費:1,000円~3,000円程度

また、一部の組合では入会金を設定している場合があり、これは5,000円~20,000円程度が一般的です。これらの初期費用は一度きりの支払いですが、加入時の予算に含めておく必要があります。

年間でかかる総費用の目安

一人親方の労災保険にかかる年間の総費用を概算すると、以下のようになります。

  • 労災保険料:21,709円~155,125円
  • 組合費:3,000円~25,500円
  • 初年度の追加費用(手続き費用等):10,000円~38,000円

この金額は業種や希望する給付基礎日額、加入する組合によって大きく変動します。特に初年度は手続き費用が加わるため、余裕を持った予算計画が必要です。

一人親方が自分に適した労災保険を選ぶポイント

一人親方が労災保険に加入する際には、特別加入団体の組合費や特徴を考慮すると良いでしょう。

組合費の安さ

労災保険料は全国一律ですが、組合費は特別加入団体によって異なります。組合費が安い団体を選ぶことで、費用を抑えることが可能です。

例えば、「一人親方労災保険組合」は、月額組合費が500円と業界最安値で、加入手続きもたったの3分で完了します。

給付基礎日額の種類の多さ

給付基礎日額は3,500円から25,000円までの16段階から選べますが、団体によっては選択できる日額が限定されることがあります。自分の収入やリスクに応じて適切な給付基礎日額を選ぶことが重要です。

支払い方法の種類の多さ

保険料や組合費などの支払い方法は、特別加入団体によって異なります。主な支払い方法は銀行振込、口座振替(銀行口座からの引き落とし)、クレジットカード払い、コンビニ払いなどがあります。

加入までにかかる時間

特別加入団体によって、加入申込した翌日から保険加入できる場合や、加入まで数日かかる場合があります。急ぎの場合は、即日発行してくれる団体がおすすめです。

契約更新の条件

一度加入した後の契約更新の条件も確認しておくべきポイントです。自動更新が可能か、更新時に保険料が大幅に上がる可能性はないか、などを事前に把握しておくことで、長期的な視点で安い保険を選ぶことができます。

オンライン手続き

近年は、オンラインで加入手続きや契約管理ができる保険も増えています。これらのサービスがあれば、時間や手間を節約でき、結果的にコスト削減にもつながります。特に、保険内容の変更や契約更新をオンラインで行えるかどうかは、重要なチェックポイントです。

サポート体制

労災事故が発生した際の対応の迅速さや、日常的な問い合わせへの対応など、サポート体制も重要な選択ポイントです。また、保険料の計算方法や手続き方法など、不明な点があったときに問い合わせや相談ができる団体を選ぶと安心です。

加入団体の信頼性

長く運営されている団体や、多くの一人親方が加入している団体は信頼性が高いと言えます。また、団体が提供する情報が明確で、透明性があるかどうかも重要なポイントです。

口コミや評判

実際にその団体に加入している一人親方や建設業の口コミや評判をチェックすると、団体のサービスの質や信頼性をより具体的に知ることができます。

一人親方が労災保険を選ぶ際の注意点

一人親方が労災保険に加入する際、加入団体の選び方の注意点を解説します。

コストだけで判断しない

安い保険を選ぶ際、ついコストだけに注目しがちですが、この団体が提供するサービスが限定的で、労災発生時のサポートが不十分だった場合、結果的に損失を被る可能性があります。サポート等の内容をよく確認しましょう。

契約条件や免責事項を細かくチェック

安い保険には、契約条件や免責事項に制限が多い場合があります。以下の点に特に注意を払いましょう。

  • 保険の適用範囲(作業内容や場所の制限)
  • 免責期間の有無と長さ
  • 年齢制限や健康状態による加入制限
  • 保険金請求時の必要書類や手続きの複雑さ

これらの条件を事前に把握することで、実際に保険を利用する際のトラブルを防ぐことができます。

保険料の変動可能性を考慮する

初年度は安い保険料でも、翌年以降に大幅に上昇する可能性があります。長期的な視点で以下の点を確認しましょう:

  • 保険料の改定頻度と基準
  • 過去の保険料推移
  • 年齢や業務内容の変更に伴う保険料変動
  • 無事故割引や長期契約割引の有無

これらの情報を元に、将来的な保険料負担を予測し、長期的に安定した保険選びをすることが重要です。

サービス内容と利便性を比較する

保険料だけでなく、付帯するサービスや利便性も重要な選択基準です。以下の点を考慮しましょう。

  • 24時間対応のサポート体制
  • オンラインでの契約や保険金請求の可否
  • 相談窓口の充実度
  • 保険証券や契約内容の確認のしやすさ

これらのサービスが充実していることで、緊急時の対応や日常的な保険管理が円滑になります。

一人親方の労災保険は経費にできるか

一人親方の労災保険料は、一人親方の場合は自分の保険料として支払うものであるため、事業を行う上での必要な経費としては認められていません。ただし、確定申告の際に、社会保険料控除の対象とすることは可能です。

尚、一人親方の労災保険料は経費計上はできませんが、入会費や組合費・事務手数料などの費用は経費とすることができます。

経費計上の方法と注意点

労災保険料を経費として計上する際は、以下の点に注意が必要です。

  • 支払った保険料の金額を正確に記録すること
  • 保険料の支払い証明書を保管すること
  • 事業用と私用の区別を明確にすること

経費計上の際は、「保険料」または「労働保険料」の項目に計上します。確定申告書の「青色申告決算書」または「収支内訳書」の必要経費の欄に記入します。

組合費の経費計上について

労災保険に加入する際に支払う組合費についても、事業に関連する支出として経費計上が可能です。ただし、組合費の中に含まれる福利厚生的な要素がある場合は、その部分を除いて計上する必要があります。

他の保険料との違い

一人親方の労災保険料は、他の個人向け保険料とは扱いが異なります。例えば、生命保険料や個人で加入する傷害保険料は原則として経費計上できません。労災保険料が経費として認められるのは、事業主としての立場で加入する保険だからです。

経費計上に関する誤解と注意点

労災保険料の経費計上に関しては、以下のような誤解や注意点があります:

  • 全額が無条件に経費になるわけではない
  • 個人的な用途で使用した部分は経費にできない
  • 経費計上の際は、適切な書類や領収書の保管が必要

これらの点に注意し、適切に経費計上を行うことで、税務調査などの際にも問題が生じにくくなります。

経費計上のタイミング

労災保険料の経費計上は、実際に支払いを行った年度で行います。例えば、2024年度分の保険料を2024年中に支払った場合、2024年分の確定申告で経費として計上します。前払いや後払いの場合は、実際の支払い時期に基づいて経費計上を行います。

一人親方の労災保険の加入方法

加入資格の確認

一人親方として労災保険に加入するためには、まず加入資格を確認する必要があります。一般的に、以下の条件を満たす方が加入対象となります。

  • 建設業を営む個人事業主であること
  • 従業員を雇用していないこと
  • 請負契約に基づいて仕事を行っていること

加入手続きの流れ

加入資格が確認できたら、以下の手順で加入手続きを進めていきます。

一人親方が労災保険に加入する際の手続きは、特別加入団体を通じて行います。一般的な流れは以下の通りです。

  1. 特別加入団体の選択:
    まずは、自身の業種や条件に合った特別加入団体を選びます。特別加入団体は、一人親方の団体(組合や共済会など)を指します。
  2. 申込書の提出:選んだ特別加入団体に対して、申込書を提出します。申込書は、特別加入団体のウェブサイト等を参照ください。
  3. 保険料の支払い:申込書の提出と保険料を支払います。保険料は、給付基礎日額と業種による保険料率に基づいて計算されます。
  4. 加入証明書の受け取り:手続きが完了すると、特別加入団体から加入証明書が発行されます。この証明書は、労災保険に加入していることを証明するもので、必要に応じて提出します。

提出先によって必要な書類や手続きが若干異なる場合があるため、事前に確認することをおすすめします。

一人親方の労災保険は、万が一の際の補償のために、適切な加入手続きを行うことが重要です。不明な点がある場合は、専門家や関係機関に相談しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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