• 更新日 : 2024年7月13日

グリーンファイルとは?元請け・下請けが作成する書類を種類ごとに解説

この記事では、グリーンファイルとは何か、その目的や作成者、書類の種類、一人親方が提出すべき内容、保管方法、保管期間、そして監査対策について詳しく解説します。

記事を読むことで、グリーンファイルに関する基本知識を身につけ、適切な管理方法や監査に備えるための情報を得ることができます。

グリーンファイルとは?

グリーンファイル(安全書類)とは、建設現場での安全管理のために作成される書類の総称です。建設業法に基づき、工事の施工に際して作成・提出することが義務付けられています。

このファイルの主な目的は、建設現場での安全を確保することです。具体的には、作業員の安全教育、安全管理体制の確立、事故防止策の実施など、現場での安全対策を文書化し、それを管理するためのものです。

この書類は、元請会社や下請会社、一人親方などの立場にかかわらず関係者全員が関与します。

グリーンファイルの役割

労務安全の確保

建設現場での労働者の安全を確保するために、労務安全に関する情報や手続きを体系的に管理する役割があります。例えば、グリーンファイルには安全教育の実施状況や災害防止のための対策リストなどが含まれます。

施工体制の適正管理

工事の進行において、元請会社と下請会社との間で適切な施工体制を築くための情報を整理・管理します。これには、施工計画書、施工体制台帳、施工方法などの詳細な書類が含まれます。

グリーンファイルの作成者

グリーンファイルに含まれる書類は、元請会社や下請会社が作成します。

一部の書類については各下請業者が作成し、元請業者に提出することとなります。これらの会社には、建設現場で働くすべての作業員(一人親方を含む)の安全を確保する責任があります。

元請会社が作成する書類

元請会社は、全体の取りまとめや監督を行い、各種書類の確認と総合的な管理を担当します。具体例として、全体の施工計画書を作成したり、各下請業者から提出された安全管理資料をチェックしたりする役割を担います。

下請会社が作成する書類

下請会社は、元請会社からの指示に基づき、自社が担当する工事に関する情報や安全書類を作成・提出します。例えば、特定の工事部分に関する作業手順書や安全確認書類を作成し、元請会社に提出します。

一人親方が作成する書類

一人親方は、自身が担当する作業に関する情報を提供し、必要な書類を作成・提出します。特に、自身の安全管理や作業計画についての詳細を記載します。例えば、自身の作業手順や安全対策について詳細に記載することで、安全性を確保します。

主に下請け業者が作成するグリーンファイル

労務安全関係のグリーンファイルは、建設現場で働く作業員の安全を確保するための書類です。下請け業者が現場に入る前に作成し、元請け業者に提出します。元請け業者は管理し、必要に応じて内容を確認し、適切な安全対策を講じます。

再下請負通知書

一次請負以下の業者が更に下請けを申請する場合に提出する書類です。これにより、元請業者は下請業者の状況を把握することができます。 ほとんどの工事は一社のみで全ての施工を請け負うということはなく、自社でまかないきれない工事内容を下請負業者へ要請します。その際に 元請業者が安全かつ適切に工事が行われるように、関わる業者すべてを把握するためのグリーンファイルが再下請負通知書です。

下請負業者編成表

下請負業者編成表は、工事に関わる会社名、工事内容、現場責任者名などを明記した書類です。一次下請業者が作成し、元請業者に提出します。元請業者はこれをもとに施工体系図を作成します。

作業員名簿

現場で働く作業員の氏名、住所、雇入れ日などを記載します。これにより、元請会社は作業員の雇用状況を把握することができます。

外国人建設就労者現場入場届出書

技能実習生だった外国人を雇用する際に必要な書類です。現場に従事する外国人を管理するためのものです。

高齢者就労報告書

高齢者就労報告書は、現場で働く60歳以上もしくは65歳以上の作業員の情報を記録した書類です。この報告書を作成・提出することで、高齢作業員の状況を把握し、適切な安全管理を行うことができます。高齢者の体力や健康状態を考慮した配置や、安全教育の実施などが必要になります。

年少者就労報告書

年少者就労報告書は、18歳未満の作業員の情報を記録した書類です。年少者がいない場合は作成する必要はありません。

工事安全衛生計画書

工事の安全管理に関する具体的な方針や対策を定めた計画書です。関係者全員が共有し、安全な工事遂行に向けて活用されます。

安全ミーティング報告書

現場の安全管理に関する情報共有や意見交換を行う安全ミーティングの議事録です。安全対策の実施状況を確認できます。

新規入場時等教育実施報告書

新たに現場に入場する作業員に対して行った、安全教育の内容と実施状況を報告します。これにより、新規に入場する作業員が適切な安全衛生教育を受けたことが証明されます。

工事・通勤用車両届

現場に持ち込む車両(クレーン車、ダンプ車など)の情報を記載した書類です。車両の安全性を確認するために提出が必要です。

持込機械等(移動式クレーン・車両系建設機械 等)使用届

移動式クレーンや建設機械などの大型機械を現場に持ち込む際に提出する書類です。機械の安全性を確認するために必要です。

火気使用届

溶接や研磨などの火気作業を行う際に提出する書類です。火災防止対策を確認するために提出が義務付けられています。

持込機械等(電気工具・電気溶接機等)使用届

電気工具や溶接機などの電気機械を現場に持ち込む際に提出する書類です。電気設備の安全性を確認するために提出が必要です。

有機溶剤・特定化学物質等持込使用届

塗料や接着剤などの化学物質を現場に持ち込む際に提出する書類です。有害な物質が含まれる建築資材の使用方法や管理方法を記録します。

そのほかの労務安全関係書類

上記の書類のほかにも、「労働基準監督署提出書類報告書」や「有資格者情報」「安全帯使用状況報告書」などがあります。

主に元請会社が作成するグリーンファイル

施工体制台帳とは、建設業法に基づいて元請会社が作成する書類です。施工現場における体制や周囲環境の管理を記録するためのもので、工事の安全性と品質を確保する目的があります。この台帳は、現場の運営が適切であることを証明するためにも活用されます。

施工体制台帳

現場での施工体制を示すための書類です。元請会社や一次下請会社の組織体制、作業員の配置状況、施工計画など、現場での施工体制に関する情報が記載されています。

元請業者が作成し、この書面を現場事務所内の打ち合わせ室など工事関係者の目に付きやすい場所に掲示する必要があります。

施工体系図

作成された施工体制台帳や再下請負通知書に基づいて各下請負人の施工分担関係が一目でわかるようにした図です。 これは、元請業者が作成します。

主に以下の3点を目的として作成されています。

  • 下請業者も含めた全ての工事関係者が建設工事の施工体制を把握するため
  • 建設工事の施工に対する責任と工事現場における役割分担を明確にするため
  • 技術者の適正な配置の確認のため

一人親方が提出すべきグリーンファイル

建設現場で一人親方として活動されている方も、グリーンファイルの書類作成・提出が求められます。基本的には他の事業者で書く場合と大きく変わるところはありません。一人親方が提出を求められることの多いグリーンファイルは以下の通りです。

  • 再下請負通知書
  • 契約書または約款付き注文書・請書
  • 一人親方労災保険特別加入証明書
  • 建設業退職金共済証紙交付辞退届
  • 作業員名簿

グリーンファイルとあわせて提出する場合もある書類

発注者の要求により異なりますが、作業員の経歴や資格、安全性、適法性を確認するために、グリーンファイルとあわせて提出します。

元請会社は、これらの書類を通じて、現場の人員配置や安全管理体制を適切に把握することができます。

資格証明書(免許証、受講修了証)

建設現場では専門的な資格や技能が求められるため、作業員の保有資格を確認するための書類です。クレーン技術者や電気工事士などの免許証や、安全教育の受講修了証などを提出します。

社会保険加入状況

建設業界では労働者の社会保険加入が義務付けられています。作業員の健康保険・年金・労災保険への加入状況を確認するための書類を提出します。

パスポートや在留カード

外国人技能実習生や特定技能労働者など、外国人作業員の場合は、パスポートや在留カードなどの書類を提出する必要があります。入国管理や雇用状況の確認のために必要となります。

グリーンファイルにハンコは必要?

グリーンファイルにハンコ(印鑑)が必要かどうかですが、県や国交省の仕様では押印の必要は「無」になっています。書式によって異なりますが、「印」があるところは必要で、それ以外は必要ないとされています。

したがって、具体的な状況に応じて適切な対応を行うことが重要です。なお、確認のためには元請け業者や関連する機関に問い合わせることをお勧めします。

グリーンファイルの保管方法、保管期間

グリーンファイルは適切に保管し、常に最新情報であることが必要です。

グリーンファイルの保管方法は、紙ベースの保管と電子的な保管の2つが主に考えられます。

グリーンファイルの保管方法

紙ベースの保管は、書類を物理的にファイルや書類箱に保管する方法です。この方法は、手軽に始められる一方で、大量の書類を管理する場合にはスペースを取るというデメリットがあります。

グリーンファイルの電子的な保管方法

デジタルデータとしてグリーンファイルを保管することも可能です。電子的な保管は、書類をスキャンまたはデジタル化してコンピューターやクラウド上に保存する方法です。

この方法は、大量の書類をコンパクトに保管でき、検索や共有が容易であるというメリットがあります。ただし、データのバックアップやセキュリティ対策が必要となります。

電子的な保管方法の場合、以下の点に留意しましょう。

  • 定期的にバックアップをとること
  • アクセス権限を設定し、不正アクセスから守ること
  • 資料の改ざんを防止するために、適切な認証手段を用いること
  • データの暗号化を行い、外部からのセキュリティ攻撃に備えること
  • 信頼性の高いクラウドサービスを利用すること

グリーンファイルの保管期間

保管期間は一般的に5年とされていますが、プロジェクトの規模や内容によって異なる場合があります。元請会社の指示に従い、適切な期間保管することが重要です。

グリーンファイルは監査の対象?対策と対応

グリーンファイルは、労務安全関係や施工体制台帳関係などの書類を含むため、監査の対象となることがあります。監査では、これらの書類が適切に作成されているか、正確に保管されているか、法令に準拠しているかがチェックされます。

そのため、グリーンファイルを正確に管理し、いつでも提出できる状態にしておくことが重要です。

必要な場合はデジタル化して、迅速に検索できるようにしておくことも効果的です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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