- 作成日 : 2025年2月12日
内装業の一人親方の年収とは?平均相場や手取りを増やす方法も解説
内装業の一人親方の年収は、約452.6万円と言われています。一人親方は、自らの技術を生かし、クライアントとの直接的なやり取りを通じて収入を得るため、年収の幅が大きいのが特長です。内装業の平均年収は地域や経歴により異なるものの、安定した収入を得るための工夫や努力が必要です。この記事では、内装業の一人親方の年収について年収や必要な資格、手取りを増やすための方法も併せて解説します。
目次
内装業の一人親方の年収はどれくらい?
厚生労働省の職業情報サイトjobtagによると、内装業の全国平均年収は452.6万円です。これは、国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」で報告されている会社員の年間平均給与の460万円とほぼ同水準となっており、一般的な水準にあることがわかります。
内装業の年齢別の賃金分布を詳しく見ると、最も高い年収を示しているのは55~59歳の年齢層で、540.88万円となっています。年齢別の詳細は以下の通りです。
- 20~24歳:329.9万円
- 25~29歳:384.95万円
- 30~34歳:429.68万円
- 35~39歳:439.84万円
- 40~44歳:515.16万円
- 45~49歳:506.26万円
- 50~54歳:508.29万円
- 55~59歳:540.88万円
- 60~64歳:426.51万円
- 65~69歳:395.24万円
- 70歳~:337.22万円
これらの統計から、内装業では経験を積むにつれて収入が増加し、50代後半でピークを迎える傾向が見られます。また、業界の平均年齢は44.5歳となっており、中堅からベテランの従事者が多く、長期的なキャリア形成が可能な仕事であることがうかがえます。
上記の平均年収はあくまでも目安であり、個人の技術力や営業努力次第で収入を大きく伸ばすこともできます。
例えば、リフォーム需要が高まる2月~4月、9月~11月にあわせて、積極的に営業活動を展開することで、通常よりも多くの仕事を獲得し、収入を大幅に増やせる可能性があります。
仕事を通じて顧客との信頼関係を丁寧に築いていくことで、リピート受注や紹介案件が増え、将来的により安定した高収入につながっていきます。
建設業全体の平均給与
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、建設業(建築技術者)の年間の平均給与は、会社の従業員が10人以上の場合で416.4円、1000人以上の大規模企業の場合では457.3万円となっています。
参考:令和5年賃金構造基本統計調査・表番号 1・職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|厚生労働省
内装業の一人親方の売上から手取りを計算
内装業の一人親方の売上から手取りを計算する具体例をあげて解説します。ここでは、年間売上高600万円のケースを想定し、手取り額を算出していきましょう。まず、手取り額を算出するには、売上から経費や国民健康保険料、国民年金保険料、各種税金を差し引く必要があります。
- 売上:600万円
- 経費:材料費や工具代、車両維持費などの経費がかかります。一般的に売上の20〜30%程度が経費となることが多いです。ここでは20%と仮定します。
- 国民健康保険料:収入から経費を引いた額(所得)に基づいて計算されます。
保険料率は自治体によって異なりますが、ここでは10%と仮定します。
- 国民年金保険料:2023年度の国民年金保険料は月額16,520円です。
- 税金:所得税と住民税があります。
所得税:累進課税制度により、所得480万円の場合は20%。
住民税:一般的に所得の10%程度。
これらを元に手取り額を計算すると、
つまり、年間売上600万円の内装業の一人親方の場合、手取り額はおおよそ268万円、月額にすると約22.3万円となります。
ただし、この計算はあくまで概算であり、個人の状況によって変動します。例えば、扶養家族の有無や、その年の経費の金額によって、納税額が変わってきます。
内装業の一人親方の主な仕事内容
内装業の仕事は、建物の内部を美しく機能的に仕上げる幅広い工事を含みます。床や壁、天井はもちろん、建具や造作家具まで、建物の内側全体を対象とする専門的な職種です。
また、一人親方は個人事業主として、これらの工程を一手に引き受けます。仕事の獲得から顧客との細かな打ち合わせ、正確な見積もりの作成、必要な材料の調達、そして実際の施工作業、最後の納品に至るまで、全てを自身で管理し遂行します。
内装工事・内装仕上工事の種類
- 床仕上げ工事:建物の床面を仕上げる作業全般を指します。フローリング、カーペット、ビニール床タイル、畳など、様々な床材を使用して施工します。耐久性、デザイン、使用目的に応じて適切な床材を選択し、正確に敷設することが求められます。
- 壁仕上げ工事:壁面の美観と機能性を向上させる作業です。主にクロス(壁紙)貼り、塗装、タイル貼りなどがあります。壁の素材や部屋の用途に合わせて適切な仕上げ方法を選びます。
- 天井仕上げ工事:天井面を仕上げる作業で、クロス貼り、塗装、吊り天井の設置などがあります。照明器具の取り付けや空調設備との調和も考慮します。
- 建具取付工事:ドア、窓、ふすま、障子など、建物の開口部に関わる部材を取り付ける作業です。建具の種類や機能に応じて、正確な寸法調整と取付作業が必要です。防音性や断熱性にも配慮します。
- 造作家具工事:オーダーメイドの収納棚、本棚、キッチン家具などを製作し取り付ける作業です。空間を効率的に活用しつつ、顧客の要望に沿ったデザインと機能性を実現します。木工技術と設計能力が要求されます。
- 断熱・防音工事:建物の快適性を高めるための作業です。壁、天井、床に断熱材や防音材を施工し、エネルギー効率の向上や騒音の軽減を図ります。建築基準法や省エネ基準に適合した施工が求められます。
営業や事務、施工管理
- 営業活動:仕事の獲得と安定した収入確保のための活動です。新規顧客開拓、見積もり作成、プレゼンテーション、アフターフォローが主な内容です。最近では、SNSを使った情報発信が、新しい仕事を見つけるのに大切な役割を果たすようになってきました。Instagram や Facebook などのプラットフォームを活用して、施工事例や作業風景を視覚的に魅力的に発信することで、潜在顧客へのアプローチが可能になっています。また、SNSを通じた顧客とのコミュニケーションにより、信頼関係の構築や口コミの獲得にもつながっています。これに加えて、適切な価格設定、分かりやすい提案説明、継続的な顧客関係維持が重要です。
- 事務作業:事業の円滑な運営を支える裏方の仕事です。主に経理処理、確定申告の準備、各種保険や年金の手続き、重要書類の管理を行います。適切な事務処理により、税金や社会保険料の最適化を図り、事業の健全性を保ちます。
- 施工管理:実際の工事を効率的に進めるための管理業務です。工程管理や品質管理、安全管理、材料・道具の調達、協力業者との連携が主な内容です。効率的な施工管理により、利益率を向上させ、高収入実現の可能性を広げます。
一人親方として内装仕上工事業を営む場合、これらの技術を幅広く習得し、顧客のニーズに合わせて適切な材料と施工方法を提案できる能力が求められます。同時に、各材料の特性や最新の施工技術についての知識を常にアップデートしていくことも大切です。
内装業の一人親方として働くメリット・デメリット
内装業の一人親方として働くことには、多くの魅力がありますが、それと同時に一定のリスクやデメリットも存在します。ここでは、内装業の一人親方として活動することのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
メリット
まずは、内装業の一人親方として働く際の主なメリットをいくつかご紹介します。
- 自由な働き方: 一人親方として働く場合、自分のスケジュールに合わせて仕事を調整できます。繁忙期には多くの仕事を受けることができ、閑散期には休むことも可能です。
- 高い収入の可能性: 一人親方は契約単価が高く設定できるため、実力次第では一般の雇われ職よりも高い年収を得ることができます。
- 仕事の満足感: 自分の手で仕上げた仕事を直接お客様から評価されることで、やりがいを感じやすいです。
- スキルアップの機会: 多様な現場を経験しながら技術を磨くことができ、資格取得や専門性の向上にもつながります。
デメリット
次に、デメリットについても確認していきましょう。
- 不安定な収入: 繁閑の波が大きいため、仕事が少ない時期は収入が不安定になることがあります。
- 営業活動の必要性: 一人親方として仕事を得るためには、自ら営業を行う必要があります。これが苦手な方には厳しいかもしれません。
- 保険や年金の負担: 一人親方は個人事業主として扱われるため、社会保険や年金の手続きを自分で行う必要があります。
- 責任の重さ: 一人で全ての業務をこなすため、責任が非常に重くなることがあります。ミスが多いと直接的な影響が出てしまいます。
こうしたメリットやデメリットを理解することで、一人親方として働く際の選択肢や覚悟をしっかりと持つことができるでしょう。
内装業の一人親方が取得すると有利な資格
内装業の一人親方が取得すると有利な資格として、内装仕上技能士と建築施工管理技士があげられます。内装業の一人親方として成功するためには、専門技術や知識を高めることが不可欠です。資格を取得することで、顧客からの信頼を獲得し、収入向上にも繋がります。
1. 建設業許可
建設業許可とは、建設業法に基づいて国土交通大臣または都道府県知事が与える許可です。一定規模以上の建設工事を請け負う場合に必要となります。多くの公共工事では、建設業許可が入札の要件となっています。また、建設業許可を持つことで、500万円以上(建築一式工事の場合は1500万円以上)の工事を請け負うことが可能になります。これにより、大規模なリフォーム案件や商業施設の内装工事など、高額案件の受注機会が広がります。
加えて、建設業許可は、一定の技術力と経営力を有していることの証明になります。これにより、顧客や協力業者からの信頼が高まり、より良質な仕事の依頼につながる可能性が高まります。
2. 内装仕上げ施工技能士
内装仕上げ施工技能士とは、内装仕上げ工事の専門技能を証明する国家資格です。壁装、床仕上げ、鋼製下地工事などの分野があり、高度な技術力を示すことができます。この資格を持つことで、技術的な信頼性が高まり、より質の高い仕事の受注につながる可能性があります。
3. 建築施工管理技士(1級・2級)
建築施工管理技士は、建設現場の施工管理を行う専門家として認められる国家資格です。1級と2級があり、建築工事の工程管理、品質管理、安全管理などの能力を証明します。この資格は大規模工事や公共工事の受注に有利で、より高額な案件を獲得する可能性を広げます。
4. 建築士(1級・2級)
建築士は、建築物の設計や工事監理を行う専門家として認められる国家資格です。1級、2級、木造建築士があります。内装業においても、建築全体の知識を持つことで、より総合的な提案や高度な施工が可能になります。特に改修工事などで建築構造に関わる作業を行う際に有利です。
5. 家具製作技能士
家具製作技能士は、家具の製作技術を証明する国家資格です。造作家具や特注家具の製作能力を示すことができ、内装工事と組み合わせた高付加価値のサービス提供が可能になります。顧客のニーズに合わせた独自の空間づくりを提案できる点で、競争力の向上につながります。
6. インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターは、顧客の要望を聞き、適切な内装設計を提案する専門家として認められる民間資格です。色彩やデザイン、家具の配置など、空間全体のコーディネートに関する知識と技能を持つことを証明します。この資格により、単なる施工だけでなく、デザイン提案から施工までの一貫したサービスを提供できるようになります。
内装業の一人親方が年収を増やすには?
内装業の一人親方が年収を増やすためには、いくつかの戦略や取り組みが必要です。ここでは具体的な方法について詳しく解説します。
技術や専門性の向上
一人親方として成功するためには、技術や知識の向上が欠かせません。技術力を高めることで、高単価の仕事の獲得につながります。例えば、特殊な内装技術や最新の施工方法を習得することで、他の業者との差別化が図れます。定期的に研修や講習会に参加したり、新しい材料や工法について自主的に学んだりすることが大切です。
効率的な工程管理
複数の現場を同時に進行させることで、月あたりの案件数を増やせます。ただし、品質を落とさないよう注意が必要です。例えば、スケジュール管理アプリを使用して、効率的に工程を管理することができます。
付加価値サービスの提供
単なる施工だけでなく、デザイン提案やアフターフォローなど、付加価値の高いサービスを提供することで、単価を上げられます。インテリアコーディネーターの資格を取得すれば、より総合的なサービスが提供できるようになります。
営業力の強化
SNSやウェブサイトを活用して、自身の技術や実績を効果的にアピールしましょう。例えば、施工事例の写真をInstagramに定期的に投稿したり、顧客の声をウェブサイトに掲載したりすることで、新規顧客の獲得につながります。
顧客満足度の向上
高品質な仕事を提供し、顧客の期待以上の結果を出すことで、リピート受注や紹介案件が増えます。例えば、期限より早く仕上げたり、細部まで丁寧に仕上げたりすることで、顧客の満足度を高められます。
コスト管理の徹底
材料の仕入れ先の見直しや、効率的な工具の使用など、コスト削減にも注力しましょう。例えば、複数の仕入れ先を比較して、品質を落とさずにより安価な材料を見つけることができれば、利益率の向上につながります。
経費の見直しや最適化
収入を増やすだけでなく、経費を適切に管理することで、実質的な手取り額を増やすことができます。
まず、定期的に全ての経費を見直し、不要なものを削減することから始めましょう。例えば、使用頻度の低い工具はレンタルに切り替えたり、携帯電話のプランを見直したりすることで、固定費を抑えられます。
次に、確定申告の際には適切に経費を計上することが大切です。作業車の燃料費や工具の購入費、事務所の家賃など、事業に関わる全ての経費を漏れなく計上することで、課税所得を減らすことができます。さらに、青色申告を選択すれば、最大65万円の特別控除を受けられるほか、損失の繰越控除なども可能になり、税負担を軽減できます。
経理ソフトの活用
クラウド型の経理ソフトを使用することで、領収書の管理や経費の分類を効率化できます。これにより、確定申告の準備も容易になります。
内装業の一人親方の年収アップは技術向上と効率化が鍵
内装業の一人親方の平均年収は約452.6万円ですが、さらなる高収入も可能です。この仕事は自由度が高く、やりがいもある反面、責任も重大です。常に技術を向上させ、成長する姿勢を持ち、顧客満足を第一に考えることで、安定した高収入を得られる可能性が広がります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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