- 作成日 : 2025年1月10日
建設業で個人事業主(一人親方)として開業するには?インボイスや建設業許可の必要性も解説
建設業で個人事業主として開業する場合は、費用もほとんどかからず開業できるのがメリットです。この記事では、個人事業主として建設業を開業する方法や、インボイス制度への対応、建築業許可の取得方法について詳しく解説していきます。
目次
建設業で個人事業主として開業するには?
建設業で独立開業する場合、個人事業主と法人のどちらの形態を選ぶかで、手続きや税金、社会的な信用度などが大きく異なります。一人親方としてスタートするなら個人事業主が一般的ですが、事業規模の拡大や信用力強化を図るなら法人化も視野に入れるべきでしょう。それぞれの違いを理解し、自身に最適な形態を選択することが重要です。
個人事業主として独立する手続き
- 開業届の提出:税務署に開業届を提出します。開業日から1ヶ月以内に提出が必要です。
- 青色申告承認申請書:青色申告を行う場合、開業日から2ヶ月以内に税務署へ申請します。節税メリットが大きいため、おすすめです。
- 事業用の銀行口座開設:事業用とプライベート用の口座を分けることで、会計処理が容易になります。
- 建設業許可(必要な場合):500万円以上の工事を行う場合、建設業許可が必要になります。詳しくは後述します。
- 労災保険の加入:一人親方の労災保険加入は任意ですが、建設業は危険を伴う仕事です。作業中の事故や怪我に対する保険として、一人親方も労災保険の特別加入をおすすめします。
個人事業主が開業する手続きは比較的シンプルで、費用もほとんどかかりません。法人を設立する場合と比べて、初期費用やランニングコストを抑えられるのが大きなメリットです。また、経営の自由度が高く、意思決定が迅速に行える点も魅力です。ただし、事業で発生した債務は個人資産で責任を負う無限責任となるため、リスク管理には注意が必要です。
個人事業主と法人の開業の違い
法人設立の場合は、定款作成、資本金の準備、登記申請など、複雑な手続きが必要となり、費用も数万円から数十万円程度かかります。また、法人税など、法人特有の税金が発生します。一方で、有限責任であるため、万が一事業が失敗した場合でも、個人資産への影響は限定的です。社会的な信用力も高く、取引先からの信頼を得やすいというメリットもあります。事業規模の拡大や従業員の雇用を検討している場合は、法人化を検討する価値があります。
以下に個人事業主と法人の違いをまとめました。
個人事業主(一人親方) | 法人 | |
---|---|---|
手続き | 比較的簡単 | 複雑 |
費用 | 安価 | 高価 |
責任 | 無限責任 | 有限責任 |
信用力 | 低い | 高い |
税金 | 所得税、個人住民税、個人事業税 など | 法人税、法人住民税、事業税、 など |
一人親方として小規模で始める場合は個人事業主、事業を拡大していく予定がある場合は法人化も検討すると良いでしょう。それぞれのメリット・デメリットを比較し、ご自身の状況に合った方を選択しましょう。また、税理士や行政書士などの専門家に相談することで、より適切なアドバイスを受けることができます。
詳細は下記を参考にしてください。
建設業を起業・開業する方法は?独立する準備や失敗を防ぐコツを解説
建設業向けの事業計画書テンプレート(無料)
建設業で開業予定の場合、工具や機材の購入、作業車両の確保など、設備投資が必要となることがあります。また、大規模な工事を請け負う場合、材料費の先払いなど、一時的に多額の資金が必要になることもあります。こういった場面で、自己資金だけでは不足する場合は、日本政策金融公庫からの融資や外部からの資金調達が必要になることもあります。
外部から融資を受ける場合、一般的に事業計画書の提出が求められます。事業計画書は、事業の将来性や収益性を明確に示すことが求められます。
以下より、建設業向けの事業計画書テンプレートを無料でダウンロードできますので、ぜひお役立てください。
建設業の個人事業主もインボイスは必要か
建設業の個人事業主も、2023年10月1日より開始されたインボイス制度の対象となります。インボイス制度とは、取引を行った際に発行される請求書(インボイス)があることで、消費税の控除を受けることができる制度です。
個人事業主でも取引先から適格請求書(インボイス)の発行を求められた場合、対応が必要となります。 免税事業者のままではインボイスを発行できませんので、課税事業者の登録をする必要があります。
もし、インボイスを発行できない場合、取引先から取引を断られる可能性があります。これは、取引先が仕入税額控除を受けられなくなるため、取引コストが増加してしまうからです。そのため、建設業の個人事業主は、インボイス制度への対応を検討する必要があります。
インボイスの詳細は下記をご参考ください。
インボイス制度を図解でわかりやすく解説!制度対応においてのチェックポイントや注意点は?
インボイスを発行する手続き
インボイスを発行するには、事前に「適格請求書発行事業者」として登録する必要があります。登録手続きは、以下の流れで行います。
- 申請書の作成: インボイス発行のための申請書を作成します。
- 税務署への提出: 必要書類を添えて、管轄の税務署に提出します。
- 登録番号の取得: 登録が受理されると、適格請求書発行事業者番号が与えられます。
インボイス制度に対応した請求書テンプレート
「マネーフォワード クラウド請求書」では、インボイス制度に対応したエクセル形式のテンプレートを提供しています。下記リンクから無料でダウンロードできるので、ぜひご活用ください。
建設業の個人事業主でも建設業許可は必要か
建設業許可は、特定の種類の工事を行う際に法律で義務付けられています。どのような工事が建設業許可の対象となるのか、具体的な内容を見ていきます。
建設業許可が必要な工事・不要な工事
建設業許可が必要な工事は、以下のように分類されます。
- 土木工事: 道路、トンネル、橋などの公共インフラを対象とする工事。
- 建築工事: 住宅や商業施設などの建物を新築、改築、修繕する工事。
- 大工工事: 木造建築物の構造部分を作る工事。
- 左官工事: 壁や床に塗装やモルタルを施す工事。
- 配管工事: 水道やガス、空調などの配管を設置する工事。
- 電気工事: 電気設備の設置や配線を行う工事。
- 塗装工事: 建物や構造物の表面を塗装する工事。
上記以外にも特定建設工事は存在しますので、国土交通省のウェブサイトなどで最新の情報を確認することをお勧めします。また、自分が請け負う工事が特定建設工事に該当するかどうか不明な場合は、最寄りの建設業許可行政庁(都道府県庁など)に相談することをお勧めします。
許可が不要な工事の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。(ただし、自治体によって異なる場合があります)
- 小規模な住宅リフォーム(500万円未満)
- 軽微な修繕工事
- 家具の組み立て
- 庭木の剪定
これらの工事であっても、複数組み合わせて請け負う場合や、繰り返し請け負う場合など、実質的に建設業を営んでいると判断される場合には、許可が必要となるケースもあります。許可の要否については、状況に応じて慎重に判断する必要があります。
建設業許可となる工事の規模と要件
建設業許可が必要な工事の中でも、特に工事の規模が重要です。工事費が一定の金額を超える場合には許可が必須となります。
建設業許可が必要となる工事費は、
- 建築一式工事:1,500万円以上
- その他の工事:500万円以上
これらの基準を満たす工事を行う場合には、必ず事前に許可を取得する必要があります。無許可で行った場合、法的な制裁が科されることもありますので注意が必要です。
建設業許可やインボイスの必要性を十分に理解しよう
建設業で個人事業主として開業する際には、建設業許可やインボイスの必要性を十分に理解しておくことが重要です。特に、許可が必要な工事と不要な工事を明確に把握することで、法的トラブルを回避し、円滑な業務運営が可能となります。許可を取得することで信頼性が向上し、顧客からの依頼が増える可能性も高まります。これらの知識を基に、自身の事業を健全に成長させるための準備を整えていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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