• 作成日 : 2025年5月1日

塗装業の一人親方の年収とは?相場や会社員との違い、手取りを増やす方法も解説

塗装業の一人親方の年収は、約655万円と言われています。一人親方は、自らの技術を生かし、クライアントとの直接的なやり取りを通じて収入を得るため、年収の幅が大きいのが特長です。塗装業の平均年収は地域や経歴により異なるものの、安定した収入を得るための工夫や努力が必要です。この記事では、塗装業の一人親方の年収や会社員との違い、手取りの計算方法、手取りを増やすための節税方法も併せて解説します。

塗装業の一人親方の年収はどれくらい?

厚生労働省の職業情報サイトjobtagによると、会社員として働いた場合の建築塗装業の全国平均賃金(年収)は462万円です。また、ハローワークの求人情報では、塗装業の平均賃金(月収)は 27.4万円(令和5年度)となっています。

一方、東京都における一人親方の塗装業の1日あたりの平均賃金は22,366円 で、年収は約601万円です。(建設政策研究所|2023年首都圏4組合 賃金実態調査分析報告書)

一人親方として働くと、会社の雇用と比べて高い収入を得られる可能性があることがわかります。なお、一人親方のその他の職種の例としては、「配管工」で、1日あたり23,533円、「大工」で21,878円、「電気工事士」で22,873円などがあります。

塗装業の年齢別の年収の違い

塗装業における年齢別の年収を見てみると、55~59歳が最も高く、577.27万円 となっています。以下、年代ごとの平均年収です。

  • 20~24歳:368.04万円
  • 25~29歳:367.07万円
  • 30~34歳:410.08万円
  • 35~39歳:492.92万円
  • 40~44歳:483.43万円
  • 45~49歳:486.00万円
  • 50~54歳:551.69万円
  • 55~59歳:577.27万円
  • 60~64歳:348.87万円
  • 65歳以上:349.99万円

このデータから、経験を積むことで収入が増え、50代後半が最も高収入の時期であることがわかります。その後、60歳以降は年収がやや下がる傾向にあります。

参考:職業情報提供サイト jpbtag|厚生労働省
参考:2023年(R5年)賃金調査報告書 |全建総連東京都連合会

上記の平均年収はあくまでも目安です。個人の技術力や営業努力によって、収入を大きく伸ばすことも可能です。一人親方として働く場合は、スキル向上や顧客との信頼関係を丁寧に築いていくことで、リピート受注や紹介案件が増え、将来的により安定した高収入につながっていきます。

塗装業・ペンキ屋の一人親方の主な仕事内容

塗装業やペンキ屋の一人親方は、戸建てやアパート、商業施設の外壁・内装の塗装を手掛けます。業務内容には下地処理、塗料の選定、塗装作業、仕上げまでの一連の工程が含まれます。塗装業の仕事は、建物の外観を良くするだけでなく、紫外線や雨などで汚れたり傷んだりするのを防ぎ、断熱性の高い塗料により建物内の温度調節や防水加工を施し、建物の耐久性や機能性の向上に繋がります。

また、工事の進行管理や顧客との打ち合わせ、必要な資材の発注なども行います。

経営面では、帳簿付けや経費の管理、確定申告といった業務も行います。これらをバランスよくこなすことで、安定した収入と事業の継続が可能となります。

塗装業の一人親方と会社員との違い

塗装業やペンキ屋で働く場合、一人親方として独立するか、会社員として勤務するかで働き方が異なります。

働き方の違い

一人親方は、自分で仕事を獲得し、スケジュールや現場を自由に決められます。自分の技術や営業力が収入に直結するため、成功すれば大きく稼ぐことも可能です。また、経営者として、仕事の単価交渉や顧客対応、経費管理などを自ら行うため、自分の力で事業を成長させるやりがいもあります。仕事を成功させれば、信頼を築き、リピーターや紹介で仕事が広がることもあります。

会社員は、会社の方針に従い、決められた時間に働きます。仕事は会社が用意してくれるため安定していますが、働き方の自由度は低くなります。一方で、社会保険や福利厚生が整っているため、安心して働けます。技術を磨きながら昇進や昇給を目指すこともできます。

給料・賃金の違い

一人親方は、仕事量や単価によって収入が大きく変わります。収入の上限はなく、努力次第で高収入も可能ですが、仕事がない時期は収入がゼロになるリスクもあります。道具や材料費交通費などの経費も自分で負担します。そのため、経費の管理や帳簿付けが重要になり、毎年確定申告を行って所得税を納める必要があります。

会社員の給料は毎月決まっており、安定した収入が得られます。税金や社会保険料は会社が給与から天引きして納めてくれるため、通常は確定申告の必要がありません。長く勤めることで昇給することがありますが、頑張りが必ずしも直接給与に反映されるわけではありません。

税金・社会保険料の違い

一人親方は、確定申告を行い、所得税や住民税を自分で納めます。売上が1,000万円を超えると消費税の納付義務が発生します。

なお、消費税の納付義務が発生するのは、売上が1,000万円を超えた事業年度の2年後の事業年度においてです。例えば令和6年度において売上が1,000万円を超えた場合、消費税の納付義務が発生するのは令和8年度となります。

ただし、2023年10月よりインボイス制度の導入によって、適格請求書発行事業者へ登録をしている事業者であれば、売上金額に関わらず、適格請求書発行事業者へ登録した事業年度より、消費税の納付義務が発生します。

社会保険は国民健康保険と国民年金に加入します。

会社員は、税金や社会保険料が給与から天引きされ、会社が納めます。社会保険料の約半分は会社が負担し、厚生年金に加入することで将来の年金額が国民年金よりも多くなります。また、労災保険や雇用保険にも自動的に加入し、仕事中の事故や失業時に保障を受けられます。

一人親方(個人事業主会社員(雇用されている)
所得税確定申告で納める給料から天引き
住民税普通徴収の場合、6月末、8月末、10月末、翌年1月末の年4回に納付
消費税売上が年間1,000万円を超えると2年後の事業年度において納税義務あり

※適格請求書発行事業者へ登録している場合には、登録した事業年度より納税義務あり

健康保険国民健康保険

もしくは、建設国保

会社の健康保険(会社が半分負担)
年金国民年金厚生年金(会社が半分負担)
労災保険特別加入制度で加入会社で加入
雇用保険加入不可会社で加入

一人親方は、経営者としての視点も求められ、努力次第で収入を増やせるやりがいのある働き方です。自由度が高い分、責任も大きくなります。仕事が軌道に乗れば、自分のスタイルで安定した収入を得ることも可能です。

会社員は安定した収入と手厚い社会保険が魅力で、仕事を確実に続けることができます。将来的に昇進や昇給のチャンスもあり、長く働くことで安定したキャリアを築くことができます。

どちらの働き方もメリット・デメリットがあるため、自分に合った働き方を選ぶことが大切です。

塗装業の一人親方の売上から手取りを計算

一人親方としての売上が 800万円 の場合、ここから必要経費・税金、社会保険料を差し引いた金額が、手取り額になります。

手取り額の計算式

手取り = 売上 ―(経費+保険料+各種税金+年金)
  • 売上:800万円
  • 必要経費:240万円
  • 課税所得560万円
  • 所得税:約23.3万円
  • 住民税(10%):約56万円
  • 個人事業税(5%):約13万円
  • 国民健康保険料・介護保険料:約40万円
  • 労災保険料:5万円
  • 国民年金料:約20万円
手取り=800万円−(240+23.3+56+13+40+5+20)=約397.3万円

上記の例では、手取り額は年収ベースで約402万円となり、月換算すると約33.5万円となります。

一人親方が支払う税金や社会保険料

所得税:売上から必要経費を引いた所得に対し、5%~45%の累進課税が適用されます。

住民税:地方税で所得に応じて約10%が課税されます。

個人事業税:業種によって異なりますが、建設業の場合は5%の税率がかかります。

消費税:売上が1,000万円超の場合は、2年後の事業年度において消費税の納付が必要になります。ただし、インボイス制度における適格請求書発行事業者に登録している場合には、登録した事業年度において消費税の納付義務が発生します。

国民健康保険料・介護保険料:自治体により異なりますが、所得に応じて年間30~50万円程度の負担が発生。介護保険料は40~64歳の方が対象となります。

労災保険料:一人親方は労災特別加入により労災保険に入ることができ、保険料は自分で設定でき、年間約3〜15万円の範囲になります。

国民年金料:全国一律で年間約20万円(月額約16,500円)の支払いが必要です。

塗装業の一人親方が手取りを増やすには?節税方法など

必要経費を漏れなく計上する

仕事で使うお金(経費)は、売上から引くことができるので、しっかり記録しましょう。

経費には以下のようなものがあります。

  • 塗料や道具代
  • 作業車のガソリン代・修理代・保険料
  • 仕事で使うスマホ・パソコンの通信費
  • 仕事のために使う家の家賃や電気代の一部
  • 資格の勉強費用や講習の費用
  • 取引先との飲食代などの交際費
  • 税理士、司法書士、社労士などの専門家に支払った報酬 など

関連:一人親方が払う税金とは?経費と控除で節税する方法

青色申告を活用する

青色申告をすることで、最大65万円の控除を受けられるため、税負担を減らせます。また、赤字を翌年以降3年間繰り越すことができるため、利益が少ない年や経費が多くかかった年でも税負担を抑えられます。一方、白色申告にはこうしたメリットがありません。

ただし、青色申告は白色申告に比べて記帳が少し難しいという点には注意が必要です。青色申告では「複式簿記」という方法で帳簿をつける必要があり、取引ごとに「借方」「貸方」といった仕訳を行わなければなりません。慣れないうちは手間がかかるため、会計ソフトを利用するとスムーズに記帳できるでしょう。

青色申告白色申告
控除(税金が減る額)最大65万円なし
記帳(お金の記録)少しむずかしい(複式簿記により収支を管理)かんたん(Excelなどで収入や経費の合計額を管理)
赤字の繰り越し(来年に持ち越し)3年OKできない

小規模企業共済で所得控除を受ける

一人親方は、「小規模企業共済」という貯金の仕組みを使うと、税金を減らしながら老後のための資金を貯めることができます。注意点として、加入期間が20年未満で任意解約する場合には元本割れのリスクがある点や、解約時に戻ってくる共済金は全額が課税対象となります。

iDeco(イデコ)で所得控除を受ける

iDeCo(イデコ)は、個人型の年金制度で、払った掛金がすべて税金の計算から引ける(所得控除)仕組みです。毎月1,000円から7万円まで積み立てることができ、事業を辞めたときに受け取ることができます。運用益も非課税なので、将来の備えをしながら節税もできる制度です。

ふるさと納税で税負担を軽減する

ふるさと納税を活用することで、住民税の負担を軽減しながら特産品などの返礼品を受け取ることができます。実質負担額は2,000円だけで、お米やお肉などの食品をもらえるため、生活費を抑えることにもつながります。注意点として、所得金額に応じて、ふるさと納税による節税額を享受できる金額が変わるため、自身が最大限に節税メリットを受けることができる金額をシミュレーションなどで計算しておくことをお勧めします。

塗装業の一人親方の確定申告

塗装業の一人親方として仕事をしている場合、一定の所得を超えると確定申告をする義務があります。

確定申告が必要になる基準は、所得(売上から経費を引いた金額)が年間48万円を超える場合です。これは、基礎控除として48万円が認められているため、それ以下であれば課税対象にならず、確定申告をする必要はありません。

また、たとえ売上がゼロであっても、開業届を提出して事業を行っている場合は確定申告をするのが望ましいです。青色申告をしている場合、事業が赤字であれば、その赤字を3年間繰り越すことができ、翌年以降の利益と相殺して節税することができます。つまり、売上がない年でも申告をしておくことで、将来の税負担を減らすメリットがあるのです。

確定申告を行わないと無申告加算税などのペナルティが発生

確定申告を行わないと、税務署から指摘を受け、「無申告加算税」や「延滞税」などのペナルティが発生する可能性があります。申告しなかった場合、本来払うべき税金に加えて、遅れたことによる罰則として15%~30%の無申告加算税が課されることがあります。

また、納税が遅れると最大14.6%の延滞税が発生することもあります。さらに、意図的に申告をせず売上をごまかしていたと判断されると、重いペナルティとして35%~50%の重加算税が科せられることもあります。

適切な申告と節税対策で手取りを増やそう!

塗装業の一人親方として働く場合、確定申告を正しく行い、適切な節税対策をすることが大切です。所得が年間48万円を超えると確定申告が必要になり、たとえ売上がゼロでも、赤字を翌年に繰り越せるため申告をしておくメリットがあります。青色申告を活用すれば最大65万円の控除が受けられ、節税効果が高まりますが、記帳が少し難しいため、会計ソフトを利用するとスムーズです。

また、小規模企業共済やiDeCoを活用することで、税負担を軽減しながら老後の資金を準備できます。さらに、ふるさと納税を利用すれば、住民税の負担を減らしながら返礼品も受け取ることができます。確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税といったペナルティが発生し、余計な負担がかかるため注意が必要です。適切な申告と節税対策を行い、手元に残るお金を増やしていきましょう!


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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