• 更新日 : 2025年10月22日

一人親方の白色申告、帳簿は必要?簡単な付け方から手書き、エクセル、無料アプリでの管理方法まで徹底解説!

一人親方として事業を行ううえで、白色申告をされる場合でも帳簿付け(記帳)は法律で義務付けられています。とはいえ「帳簿の付け方がわからない」「どの方法が自分に合っているのか迷う」という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、白色申告における帳簿の必要性から、手書きやエクセル、無料アプリを使った簡単な始め方、経費の考え方まで、一人親方が知っておくべき帳簿管理の基本を網羅的に解説します。確定申告をスムーズに進めるための第一歩として、ぜひご活用ください。

そもそも一人親方の白色申告に帳簿は必要なのか?

一人親方の白色申告に帳簿は必要です。事業所得があるすべての一人親方(個人事業主)に、帳簿付けと帳簿の保存が義務化されています。これは所得の金額にかかわらず、白色申告を行うすべての方が対象です。

根拠として、2014年1月からの所得税法の改正が挙げられます。以前は「前々年分あるいは前年分の事業所得等の合計額が300万円を超える方」に限定されていましたが、法改正により、事業を行うすべての方に記帳と帳簿類の保存が義務付けられました。

出典:国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」

この義務化の背景には、納税者が自身の所得を正しく計算し、適正な申告を行う体制を整える目的があります。もし帳簿を付けていない場合、税務調査で経費として認められなかったり、正確な所得を証明できずに推計で課税され、過少申告加算税等により結果的に多くの税金を納めることになったりするリスクが生じます。

また、青色申告で受けられるような税制上の優遇措置はありませんが、白色申告であっても、事業の収支を正確に把握するために帳簿は不可欠といえるでしょう。

白色申告の帳簿付け、具体的に何から始めればよいか?

まずは、日々の売上と経費を記録するための「法定帳簿」と、取引の証拠となる「書類」を準備することから始めます。白色申告の帳簿は「単式簿記」という簡易な方法で記録すればよいため、簿記の専門知識がなくても心配ありません。

STEP1:必要なものを準備する

帳簿付けを始めるにあたり、以下のものを手元に用意しましょう。

  • 記録媒体:ノート、ルーズリーフ、エクセル(Excel)ファイル、会計ソフトなど、ご自身が管理しやすいもの。
  • 証拠書類請求書領収書、レシート、銀行の通帳、クレジットカードの利用明細など、取引の事実を証明できるものすべて。
  • その他:筆記用具やパソコンなど。

STEP2:記載すべき基本項目を理解する

帳簿には、誰が見ても取引内容がわかるように、以下の項目を記載するのが基本です。

項目内容記載例
取引年月日取引が発生した日付2025/9/12
勘定科目取引の内容を示す分類名売上、仕入、消耗品費、地代家賃など
取引内容(摘要)具体的な取引の中身A建設 現場作業費、B建材 木材購入代
取引金額売上や経費の金額50,000円
相手方の氏名・名称取引した相手先の名前A建設、B建材

STEP3:帳簿の種類と保存期間を知る

白色申告では、主に以下の帳簿や書類を作成・保存する必要があります。

  • 法定帳簿(作成・保存義務あり)
    • 内容:収入金額や必要経費を記載した帳簿。いわゆる「売上帳」や「経費帳」がこれにあたります。
    • 保存期間:7年
  • 任意帳簿(作成した場合、保存義務あり)
    • 内容現金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳など、事業の状況に応じて作成する帳簿。
    • 保存期間:5年
  • その他の書類
    • 内容:請求書、領収書、納品書、棚卸表など、取引にともなって作成・受領した書類。
    • 保存期間:5年

これらの帳簿や書類は、確定申告が終わった後も、定められた期間は必ず保管しておきましょう。

一人親方の帳簿、どんな付け方が自分に合っているか?

帳簿の付け方には「手書き」「エクセル」「会計ソフト・アプリ」の3つの方法があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の事業規模やPCスキルに合わせて最適な方法を選びましょう。

方法コスト手間専門知識おすすめな人
手書き◎(安い)△(かかる)△(多少必要)取引が非常に少ない、PCが苦手な人
エクセル○(安い)○(普通)△(多少必要)コストを抑えたい、PC操作に慣れている人
会計ソフト△(かかる)◎(簡単)◎(不要)効率化したい、確定申告を楽にしたい全ての人

手書きでの帳簿付け

大学ノートや市販の金銭出納帳などを使い、手作業で記録していく方法です。

パソコンが苦手な方や、取引件数が月に数件程度と非常に少ない場合に適しています。最大のメリットは、ノート代程度しかコストがかからず、思い立ったらすぐに始められる手軽さです。一方で、一件ずつ手で書き写し、電卓で集計する必要があるため、手間と時間がかかります。計算ミスや転記ミスが起こりやすい点にも注意が必要です。

エクセルでの帳簿付け

パソコンの表計算ソフト「エクセル(Microsoft Excel)」を使って帳簿を作成する方法です。

手書きよりも効率的で、コストも抑えたい方に向いています。国税庁のウェブサイトや、会計関連の情報サイトで無料のテンプレートが配布されているため、それらを活用すれば比較的簡単に始められます。自動計算機能を使えるため集計作業は楽になりますが、勘定科目の設定や数式の管理など、ある程度の簿記知識とエクセルのスキルが求められます。入力ミスや誤って数式を消してしまうリスクも考慮する必要があるでしょう。

参照:帳簿の様式(PDF)|国税庁

会計ソフト・アプリでの帳簿付け

簿記の知識がない方でも、簡単かつ正確に帳簿を作成したい場合に最もおすすめの方法です。月額または年額の利用料はかかりますが、その費用に見合う多くのメリットがあります。銀行口座やクレジットカードと連携すれば、取引データを自動で取り込み、勘定科目も自動で提案してくれます。

日々の入力の手間が大幅に削減されるだけでなく、グラフで経営状況を可視化できたり、確定申告書類まで自動で作成できたりと、経理業務全体を効率化できます。無料プランや無料お試し期間を設けているサービスも多いので、一度試してみるのがよいでしょう。

帳簿付けでよくある疑問と注意点は何か?

一人親方が帳簿を付ける際、特に判断に迷いやすいのが経費の扱いです。正しい知識を身につけ、適切に処理することが節税に繋がります。

どこまでが経費になる?

事業を運営するために直接かかった費用が経費として認められます。一人親方(建設業)の場合、具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 材料費、仕入:現場で使用する木材、塗料、部品など
  • 外注費:他の職人や下請け業者に支払った費用
  • 消耗品費:工具、作業着、軍手、事務用品など
  • 車両関連費:仕事で使う車のガソリン代、高速代、駐車場代、車検代など
  • 通信費:仕事用の携帯電話料金、インターネット回線費用など
  • 地代家賃:事務所や資材置き場の家賃
  • 水道光熱費:事務所の電気代、水道代など
  • 各種保険料:一人親方労災保険の保険料、自動車保険料など
  • 接待交際費:元請けや取引先との打ち合わせでの飲食代など

一方で、事業主自身の生活費(食費やプライベートな支出)や、事業と直接関係ないものは経費にできません。

プライベート兼用の費用(家事按分)はどうする?

自宅を事務所として使っている場合の家賃や、プライベートでも使用する自動車のガソリン代などは、事業で使用した割合分だけを経費として計上できます。これを「家事按分(かじあんぶん)」といいます。

例えば、家賃10万円の自宅のうち、20%を事業用スペースとして使用している場合、「10万円 × 20% = 2万円」を「地代家賃」として経費にできます。この割合は、使用時間や面積など、実態に即した合理的な基準で設定する必要があります。

領収書がない場合はどうすればよいか?

ご祝儀や自動販売機での購入など、領収書がもらえない場合でも、諦める必要はありません。その場合は「出金伝票」を自分で作成しましょう。「支払日」「支払先」「支払金額」「支払内容」を記録しておくことで、領収書の代わりとして経費の証拠になります。

ただし、必ずしも「領収書の代わり」として認められるとは限らず、他の証拠書類と併せて記録しておくことが望ましいです。クレジットカードの利用明細や銀行の振込記録も、取引を証明する有効な書類となります。

青色申告への移行も検討すべきか?

帳簿付けに慣れてきて、事業の売上が安定してきたら、「青色申告」への切り替えを検討することをおすすめします。白色申告に比べて「正規の簿記の原則」に基づき複式簿記で記帳することや、損益計算書貸借対照表の提出が必要であること等、手間は増えますが、最大65万円の特別控除を受けられるなど、非常に大きな節税メリットがあります(電子申告や電子帳簿保存などの条件あり)。

会計ソフトを使えば、複式簿記の帳簿も比較的簡単に作成が可能です。将来的な事業拡大を見据え、選択肢の一つとして考えておくとよいでしょう。

複雑な帳簿付けから解放され、本業に集中するために

この記事で解説した通り、一人親方の白色申告では、簡易な方法(単式簿記)での帳簿付けが法律で義務付けられています。帳簿の付け方には手書き、エクセル、会計ソフトなど様々な選択肢がありますが、日々の作業を効率化し、年に一度の確定申告をスムーズに終えるためには、会計ソフトやアプリの活用が最もおすすめです。

経理作業にかかる時間と手間を最小限に抑えることは、事業の生産性を高めることに直結します。ご自身に合った方法で正しく帳簿を管理し、安心して本業に専念できる環境を整えていきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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