定額法の償却率は耐用年数がポイント|国税庁の質疑応答事例を用いて解説

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定額法とは減価償却における償却方法の1つであり、減価償却によって購入した減価償却資産を費用化することで節税効果を期待することが可能となります。

減価償却方法を定額法とした場合は原則として、耐用年数表から「耐用年数」を割り出し、耐用年数に対応した「償却率」で毎年同額の償却額を費用計上していきます。

そこで問題になるのが、「購入した減価償却資産の耐用年数が何年になるのか」という点です。今回は国税庁の質疑応答事例と国税不服審判所の裁決事例を元に、耐用年数や償却率をどのように判断すべきかを解説していきます。

建物が「鉄骨鉄筋コンクリート造」と「金属造」とで混在している場合における定額法の償却率

一般的な建物の減価償却は、建物の用途と建物そのものの材質によって耐用年数が決定しますが、高層ビルを区分所有した場合などでは建物の材質が低層部と高層部とで異なることがあります。

国税庁の質疑応答事例では、
・1階から4階までは鉄骨鉄筋コンクリート造
・5階から29階までは金属造
という高層ビルを、
・1階から9階までをA法人が所有
・10階から29階までをB法人が所有
とした場合、A法人はどのように減価償却を行なえばよいかという内容となっています。

建物が「鉄骨鉄筋コンクリート造」と「金属造」とで混在している場合における定額法の償却率

(出典:高層ビルを区分所有した場合の耐用年数|国税庁)

一般的な減価償却の方法を用いれば、材質に応じた償却率や耐用年数を用いるべきですが、一つの建物として減価償却する場合は「鉄骨鉄筋コンクリート造」と「金属造」のどちらかを選択することになります。

どちらかを選択するかは、「どの材質が全体の大部分を占めているか」が判断基準となり、A法人は1階から9階すべてを金属造として減価償却するのが相当であると判定されています。

金属造であったとしても骨格材の厚さによって償却率が異なります。
[事務所用とした場合の金属造の耐用年数と償却率一覧表]

骨格材の厚さ4ミリ以上3ミリ以上4ミリ以下3ミリ以下
耐用年数38年30年22年
定額法による償却率0.0270.0340.046

(出典:減価償却資産の耐用年数等に関する省令

今回は骨格材の厚さが4ミリ以上の耐用年数38年(償却率0.027)を用いて、A法人が所有する1階から9階までの建物(取得価額10億円)の減価償却費を定額法によって計算した結果は、以下の通りとなります。(※)取得日は平成19年4月1日以降とする。

初年度の減価償却費:2,700万円(=10億円×0.027)
2年目から37年目の減価償却費:2,700万円(=10億円×0.027)
38年目の減価償却費:999,999円
残存価額 :1円

初年度から37年目までは毎年2,700万円を減価償却費として計上し、最終年度は残存価額が1円となるように償却費を調整し、建物の帳簿価額を1円とすることによって減価償却が終了します。

建物が「鉄筋コンクリート造」と「木造」の折衷様式である場合における定額法の償却率

先ほどの高層ビルは階数によって材質が異なりましたが、建物の構造そのものが折衷している場合における定額法の償却率はどのように判定されるのでしょうか。

実際に国税不服審判所の裁決事例を元に確認していきましょう。

参考URL:国税不服審判所(平11.8.27裁決、裁決事例集No.58 161頁)

建物の構造そのものが折衷している建物とは、事案の基礎事実によると、

・主要構造体である耐力壁は「鉄筋コンクリート造」であるが、床や室内階段といった内部構造は「木造」であるため、総鉄筋ではない
・不動産登記簿では「鉄筋コンクリート造、瓦葺、2階建、共同住宅」として登録されている

という状況であることがわかります。

そのため本件請求人が、鉄筋コンクリート造の耐用年数60年(※平成10年税制改正前の法定耐用年数)ではなく木造部分を加味した「耐用年数の短縮の承認申請書」を以て40年の短縮を主張しましたが国税局長に却下されたため、国税不服審判所へ判断を委ねたものです。

最終的に国税不服審判所は「建物の主要構造体や主要構造部に着目して判定するのが相当である」として、今回の建物に関しては「鉄筋コンクリート造」の耐用年数を適用すべきであると裁決しました。

国税不服審判所が判定した「鉄筋コンクリート造」60年と、請求人が主張した40年とではどれくらい減価償却費に違いが出るのか、実際に計算して比較してみましょう。

今回はそれぞれの償却率を、減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第八(平成十九年四月一日以後に取得をされた減価償却資産の定額法の償却率表)を用いて計算しました。

[取得価額1億円事務所用として購入した場合の減価償却費比較表]

耐用年数60年40年
償却率0.0170.025
1年目170万円(=1億円×0.017)250万円(=1億円×0.025)
2年目~39年目170万円(=1億円×0.017)250万円(=1億円×0.025)
40年目170万円(=1億円×0.017)2,499,999円
59年目1,399,999円残存価額 1円
60年目残存価額 1円

※耐用年数59年から62年までの償却率が0.017であるため、59年目で償却終了となります。

建物の用途を年度途中で変更した場合における定額法の償却率

減価償却の耐用年数と償却率は使用用途によっても異なりますが、年度途中で使用用途を変更した場合、原則として転用の前後に分けて減価償却費を計算することされていますが、個人事業主の場合には1月1日から変更後の用途にて減価償却すること認められています。

また、法人の場合には事業年度開始の日から変更後の用途にて償却限度額の計算をすることが認められています。

たとえば、個人事業主が、過年度までに事務所用として使用していた建物を、その年の11月から店舗用として使用することになった場合、耐用年数を事務所用の24年から店舗用の22年に変更して減価償却を行ないます。

つまり、その年の1月1日から店舗用として使用していたこととして変更後の耐用年数で減価償却を行なってもよい、ということになります。

事務所用として平成19年4月1日以降に購入した耐用年数24年(償却率0.042)の建物5,000万円の初年度の減価償却費を定額法で計算すると、
・5,000万円×0.042=210万円
となります。

仮に2年目の11月に事務所用から店舗用へ用途変更したとしても11月の前後で減価償却計算をわけることなく、1月1日から店舗用(耐用年数22年、償却率0.046)として使用していたこととして減価償却することが可能です。
・5,000万円×0.046=230万円

[用途変更有無による減価償却費比較表]

 用途変更があった場合用途変更がなかった場合
初年度210万円(=5,000万円×0.042)210万円(=5,000万円×0.042)
2年目230万円(=5,000万円×0.046)210万円(=5,000万円×0.042)
3年目~21年目230万円(=5,000万円×0.046)210万円(=5,000万円×0.042)
22年目1,899,999円210万円(=5,000万円×0.042)
23年目-210万円(=5,000万円×0.042)
24年目-1,699,999円
残存価額1円1円

まとめ

減価償却費の計算方法そのものはそれほど難しいものではありませんが、計算を行なうまでに決定しなければならない耐用年数や資産の種類や用途などによって判断することが難しい場合があります。

判断に迷ったときは、是非これらの事例を参考にしてみてください。

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※掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:加地 延行 (公認会計士 / 税理士)

税理士法人ゆびすい
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