• 作成日 : 2016年6月2日

天引きされた税金や保険料はどのように取り扱われているのか詳しく解説

毎月の給与から天引きされるものとして、
・健康保険料
介護保険料
厚生年金保険
雇用保険
・所得税
住民税
などがあり、これらは「保険料」と「税金」の2つに大別されます。ここでは天引きされた税金と保険料がどのように取り扱われているのかを、詳しく解説します。

天引きされた保険料のゆくえ

給与明細で天引きされている項目のうち健康保険料や介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料は、社会保険料として天引きされます。
健康保険料と介護保険料は、勤務している会社が加入している健康保険組合の健康保険事業運営費の財源となっています。
事業主である会社と、そこに勤務する従業員とで保険料を折半し、健康保険組合に保険料を納付することになっており、法的根拠は

健康保険法第161条「被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。ただし、任意継続被保険者は、その全額を負担する。」

にあります。
任意継続保険者は、退職後も勤務していた会社の健康保険組合に引き続き加入する保険者となり、事業主を経由せず直接健康保険組合へ保険料を納付するため、全額負担となります。
健康保険制度を営む健康保険組合に納められた保険料を財源に、

・被保険者証を提示することによって診療を受ける現物給付(いわゆる1~3割負担)
傷病手当
出産手当金
・高額療養費

といった保険給付が行われます。
天引きされる健康保険料と介護保険料の金額は、「保険料額表」によって決定します。加入する健康保険組合や都道府県によって多少の違いはありますが、それほど大きく異なるものではありません。
全国健康保険組合協会管掌 健康保険料額表(東京都の場合)

全国健康保険組合協会管掌 健康保険料額表(東京都の場合)

(出典:平成27年9月分(10月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
一方、厚生年金保険料は公的年金の給付財源となります。
適用事業所に該当する企業に勤務している従業員は、70歳未満であれば全員強制加入となり、非正規社員は、労働時間や労働日数が正規社員の3/4以上あれば原則として加入することになります。
ただし上記の非正規社員の加入要件はあくまでも目安であるため、該当しない場合であったとしても厚生年金保険に加入する場合があります。
天引きされる厚生年金保険料の金額は、健康保険料や介護保険料同様に「保険料額表」を元に決定されます。

厚生年金保険料額表

(出典:平成27年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表
雇用保険料は、失業への備えや雇用安定のために支払う保険料であり、雇用保険法に即した徴収方法が採られています。
雇用保険料は保険料額表ではなく「保険料率表」を使用し、雇用保険料の計算を行います。雇用保険料の計算方法は、毎月の給与総支給額に下記の雇用保険料率を乗じることによって求めることとなります。

平成27年度の雇用保険料率

(出典:平成27年度の雇用保険料率

天引きされた税金のゆくえ

給与から天引きされる税金には、「所得税」と「住民税」があります。所得税は国税であるため国家予算となり、歳入総額における所得税の割合は平成27年度当初予算では17.1%を占めています。

国の一般会計歳入額 内訳(平成27年度当初予算)

(出典:財政のしくみと役割|国税庁HP
天引きされた所得税は国家予算として歳入されたのち、例えば、

・社会保険関係費
・公共事業関係費
・文教及び科学振興費
・防衛関係費
・経済協力費
・地方交付税交付金

として、わたしたちの暮らしに大きく寄与しています。

国の一般会計歳出額 内訳(平成27年度当初予算)

(出典:財政のしくみと役割|国税庁HP
次に給与から天引きされる「住民税」ですが、地方税法に基づいて徴収され、地方自治体を運営するための「地方財源」となります。
なお、地方財源は個人の住民税だけでなく、法人が納める「法人住民税」や「法人事業税」も含まれており、人も会社も都市部に集中すると法人住民税や法人事業税等によって構成される地方財源が枯渇し、社会福祉分野などにおいて一定のサービスを享受できなくなる地方自治体が出てきてしまいます。
住む地域によって行政サービスが異なる格差を是正するために、国税として徴収した所得税を含む国家歳入額のうち約16%を「地方交付税交付金」として地方財源に振り分け、不均衡を抑制する役割を担っているのです。
ところで、天引きされる住民税で注意したい点として、「タイムラグ」が挙げられます。住民税は前年度の所得金額をもとに税額が決定するため、徴収開始時期がリアルタイムではなく、半年後の6月から天引きされます。
たとえば平成28年度の住民税額は、平成27年1月1日から同年12月31日までの所得金額をもとに計算されます。
つまり毎年6月以降の給与から天引きされているのは、昨年住んでいた地方自治体への住民税であって、1月から12月に発生した所得金額についての住民税は来年度の6月以降12か月間支払うことになります。
そのため退職後に住民税の支払督促が来ることになり、収入の有無を問わず支払いに応じなければなりません。
住民税の督促は、納期限後20日以内に督促状を発行する旨が、地方税法第329条「市町村税に係る督促」によって定められています。
また滞納処分は地方税法第331条が、

「督促状を発行した日から10日後に住民税が完納されていない場合、市町村の徴税吏員は直ちにその財産を差し押さえることができる」

と定めています。

まとめ

自分の給与から天引きされた保険料や税金がどのように取り扱われているのかを知ることで、毎日を安心して過ごすことができます。
給与から天引きされて支給額が減ってしまうのは意向に沿わないことかもしれませんが、国民の義務を果たさずに脱税や滞納で罰則を受ける心配がないのだと前向きに捉えるようにしましょう。

関連記事

住民税の普通徴収と特別徴収、あなたはどちらの方法が適用される?
【法人税まとめ】法人事業税と法人住民税の違いを正しく理解していますか?
所得割額と均等割額との合計で算出される住民税 その意味や計算方法を解説


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事