- 更新日 : 2025年4月23日
経費精算に使う勘定科目は?仕訳例や注意点を解説
経費精算をする際は、「何に使われたのか」がひと目でわかるように、勘定科目を用いて仕訳を行います。適切な勘定科目を使用するメリットは、経営成績を分析しやすくなることなどです。
この記事では、勘定科目の概要や経費精算で使われるものの例、仕訳例、使用するメリット、注意点を解説していきます。
目次
勘定科目とは
そもそも勘定科目とは、どのような取引をしたのかをわかりやすく分類するために使う簿記の科目のことです。複式簿記の仕訳や財務諸表など、社内報告や分析をするための管理会計業務で使われます。
勘定科目の主な分類は、以下の5つです。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 収益
- 費用
経費はこれらのうちの費用にあたります。また、資産・負債・純資産の3つは「貸借対照表」に表示され、収益・費用の2つは「損益計算書」に表示されます。
資産
資産とは、企業が所有する財産のことです。企業に所有権がなくても、利益を得ている、または将来的に収益をもたらすと予想されるものは該当する企業の資産に含まれます。
現金・売掛金・建物・土地・投資有価証券などが、資産の例です。
資産には、「流動資産」や「固定資産」、「繰延資産」があります。それぞれの違いは、以下のとおりです。
<流動資産>
在庫など営業サイクルの中に含まれる、もしくは1年以内に現金化・費用化できる
<固定資産>
土地や建物、機械装置や、特許権やソフトウェアなど、事業に用いる設備などのこと
<繰延資産>
支出の効果が1年以上におよぶ費用で、数年間にわたって費用計上できる
負債
負債とは、企業などが持つ経済的資源を放棄や引き渡しをする義務のことを指します。負債のうち、基本的に1年以内に返済しなければならないものは「流動負債」、1年を超えた時期に支払うものは「固定負債」に分類されます。
たとえば、買掛金・支払手形・借入金・未払金・退職給付引当金などです。
純資産
純資産とは、原則として返済する義務のない資産のことです。資産から負債を差し引いた額が、その企業の純資産に該当します。
たとえば、資本金・新株予約権・資本剰余金・利益剰余金などです。
収益
収益とは、資本取引以外の取引によって増加した資産を指します。増加した資産には、すでに受け取ったものだけではなく、受け取りが確定した金銭の額も含まれます。
たとえば、売上・受取利息・受取配当金・雑収入・固定資産売却益などが収益です。
収益を分類すると、「売上」「営業外収益」「特別利益」に分けられます。
費用
費用とは、企業の事業活動のために必要となった金銭の額のことを指します。損益計算書では、費用を「売上原価」「販売費及び一般管理費」「営業外費用」「特別損失」の4つに分類します。
費用にあたるものの例は、仕入・地代家賃・広告宣伝費・消耗品費・水道光熱費・給料などです。
経費精算で使われる主な勘定科目
経費精算で使われることの多い勘定科目は、「旅費交通費」「交際費」「会議費」「消耗品費」などがあります。
先述のとおり、損益計算書における費用の区分は、「売上原価」「販売費及び一般管理費」「営業外費用」「特別損失」の4つです。勘定科目は「給料」「地代家賃」など、さらに細かく分類します。
それでは、経費精算で使われる主な勘定科目をご紹介します。
旅費交通費
旅費交通費とは、業務で使用した交通費のことです。
たとえば、取引先への移動で電車を使った場合は旅費交通費に該当します。また、移動のためにかかった費用だけではなく、宿泊代・出張に関する日当・手当の勘定科目も旅費交通費です。
従業員が一時的に立て替えてから経費を申請し、精算されることが多いようです。
交際費
交際費とは、接待・供応・贈答など、取引先との付き合いや交渉を目的として支払われる経費のことを指します。
たとえば、取引先に贈ったお中元や得意先とのゴルフコンペなどが交際費です。
交際費は原則として損金不算入のため、広告宣伝費などのほかの勘定科目にあてはまる内容ならば交際費で仕訳しないほうが税制上有利になる可能性があります。勘定科目を選択する際は間違えないように気をつけるといいでしょう。
会議費
会議費とは、株主総会や社内会議、取引先との打ち合わせなどで支払われる費用のことです。会議費と交際費の違いは以下のとおりです。
<会議費>
打ち合わせに使用されるもの
<交際費>
社内の部門同士の会食や取引先の接待に使われるもの
社外との打ち合せでも会議費という勘定科目を使うため、注意しましょう。
消耗品費
消耗品費とは、使用可能期間が1年間未満、もしくは取得価額が10万円未満の備品や什器に使用する費用のことです。固定資産に計上する必要がないものを消耗品費として計上します。
消耗品費にあてはまるものの例は、ボールペンやノートといった文房具、10万円未満のパソコン、机や椅子といったオフィス家具などです。
企業によっては、「事務用品費」や「備品」などの勘定科目を設定し仕訳している場合もあります。
福利厚生費
福利厚生費とは、企業が従業員のために支出した給与以外の費用のことです。社員旅行やレクリエーション、クラブ活動などの費用を精算する際に用いられます。
福利厚生費には、法律で定められた「法定福利費」と、それ以外で従業員に平等に支払う住宅手当などの「法定外福利費」があります。基本的に、経費精算で扱うのは福利厚生費のうちの「法定外福利費」に関するものです。
新聞・図書費
新聞・図書費とは、業務で使用する参考書籍や新聞などにかかった費用のことです。勘定科目名が紙媒体を対象としているような印象を与えそうな名前ですが、紙媒体でなくとも新聞・図書費に含められます。
たとえば、調査に必要となるデータベースの使用料なども新聞・図書費です。
雑費
雑費とは、ほかの勘定科目にあてはまらない少額の支出のことを指します。消耗品費との違いは、以下のとおりです。
<消耗品費>
物品などの購入費用
<雑費>
サービスに伴い一時的に発生する費用
たとえば、ごみの処分料やクリーニング費などが雑費にあてはまります。
経費精算の仕訳例
それでは、実際に旅費・交通費や福利厚生費に関する経費精算の仕訳をした場合の例をご紹介します。
旅費・交通費を従業員が立て替えた場合の仕訳例
出張の際の旅費交通費を精算する場合の仕訳例は、以下のとおりです。なお、従業員が新幹線代として3万円、宿泊代として1万円を立て替えたこととします。
【仕訳例】
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 旅費交通費 | 40,000円 | 現金 | 40,000円 | 新幹線代 | |
このように、借方と貸方それぞれに該当する勘定科目や取引した金額を計上します。
福利厚生費を仮払いし、あとで精算する場合の仕訳例
社内レクリエーションに必要な景品代の仕訳例は以下のとおりです。
なお、仮払金として事前に1万5,000円支給しておき、実際の菓子代は2万円だったのでさらに差額を支給したこととします。
【仕訳例】
- 仮払い時
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 仮払金 | 15,000円 | 現金 | 15,000円 | 社内レクリエーション景品代 | |
- 精算時
| 借方 | 貸方 | 摘要 | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 福利厚生費 | 20,000円 | 仮払金 | 15,000円 | 社内レクリエーション景品代 | |
| 現金 | 5,000円 | ||||
このように、仮払金として事前に支給してからあらためて実際の金額との差額を支給する場合には、2回に分けて仕訳を行います。
経費精算で適切な勘定科目を使用するメリット
経費精算では、適切な勘定科目を使用すべきです。なぜならば、経費精算で適切な勘定科目を使用すると以下のようにさまざまなメリットがあるためです。
- 経営成績を分析しやすくなる
- 税金の計算を正確に行える
- 間接コストを正確に計上できる
以下で、それぞれを詳しく見ていきましょう。
経営成績を分析しやすくなる
適切な勘定科目を使用していれば、費用を体系的に分類・記録できるため、財務の明瞭性が向上します。財務諸表などから企業の経営状況を分析する際に、お金を何に使ったのかの理解がスムーズになり、経費の使い過ぎなどが判断しやすくなるでしょう。
また、財務状況が明確になって 経営成績などを分析しやすくなることで、「効果的にリソースを分配するにはどうすればいいのか」といった経営判断の正確性を上げることにもつながります。
税金の計算を正確に行える
適切な勘定科目を使用すれば、税金の計算を正確に行えることもメリットです。
勘定科目ごとに経費を日々仕訳した内容は、財務諸表に反映されます。財務諸表とは、会計期間の末尾に作成する貸借対照表や損益計算書などのことです。
財務諸表の勘定科目別の総額は、決算書の表示科目の材料になります。法人税や消費税の確定申告の材料としても使われ、企業が支払う税金に影響するため注意しなくてはなりません。勘定科目を適切に使用することで、税金の計算を正確に行うことにもつながります。
間接コストを正確に計上できる
適切な勘定科目の使用は、コスト計算にも役立ちます。製品を作るために必要な金額は、販売する商品の仕入や製造にかかった費用だけではありません。直接コストだけではなく、間接コストまで正確に計上できるようになるため、事業継続のために本当に必要な金額がわかりやすくなるのです。
直接コストと間接コストの違いは、以下のとおりです。
<直接コスト>
売上原価(仕入原価)。販売する商品の仕入や製造にかかった費用
<間接コスト>
経費。事業にかかった費用全般
経費精算で勘定科目を設定する際の注意点
経費精算では、会社ごとに勘定科目を設定できます。とはいえ、もしも設定した勘定科目の数が多すぎれば管理が困難になってしまいます。一方で、勘定科目の数が少なすぎれば大まかな分類のみしかできなくなってしまい、何にお金を使ったのかがわかりにくくなってしまうでしょう。
何の経費かわからなくなったり、他社との比較がしにくくなったりしないように注意して、適切な勘定科目を使用することが大切です。
社外の会計担当者や税理士が理解しやすい勘定科目を使用する
勘定科目を設定する際は、社外の会計担当者や税理士などが理解しやすい勘定科目を使用するようにしましょう。とくに財務諸表は外部に提示することが多いです。相手が理解しにくい勘定科目を設定していると、銀行などで自社の経営状況を説明する際にも伝わりにくくなってしまいます。
業界用語や略称などのわかりにくい言葉を使わず、第三者でも理解しやすいような勘定科目を設定するといいでしょう。
設定した勘定科目は、継続的に利用する
設定した勘定科目を継続的に利用することも大切です。同一の会計期間内に同じ処理に対して何度も勘定科目を変更すると、帳簿の信頼性が低下してしまいかねません。また、同じように処理しないと、財務の流れが分かりにくくなってしまうでしょう。
もしも勘定科目が判別できない場合には、その経費の用途を振り返ると判別しやすくなることがあります。重要な取引はとくに、過去の仕訳を参照しながら勘定科目を設定するといいでしょう。
決算書と帳簿管理用の勘定項目は統一する
決算書と帳簿管理用の勘定項目を統一することも大切なポイントです。勘定項目が統一されていると、帳簿と決算書を照らし合わせた際にスムーズに進められます。
一方で、勘定項目が統一されていないと「どのような用途で経費を使ったのか」がわかりにくくなり、照らし合わせる際の負担となってしまうでしょう。
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勘定科目を理解してスムーズに経費精算しよう
経費精算では、適切な勘定科目を使用することが重要なポイントです。会社ごとに勘定科目を設定できるとはいっても、適切に使用しなければ財務の流れが分かりにくくなってしまうなどの不都合がある可能性が高まります。
よく用いられている勘定科目や仕訳例、設定する際の注意点などを確認し、理解を深めてスムーズに経費精算できるようになりましょう。経費精算を楽にしたい方には、マネーフォワード クラウド経費がおすすめです。
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