- 更新日 : 2026年1月8日
法人が投資信託している場合の仕訳と勘定科目まとめ
投資信託とは、運用の専門家などが投資家から資金を募り、集めた資金を株式や債券などに投資して運用する金融商品です。
投資信託は、法人でも証券口座を開設するなどして取得できます。ただし、法人が取得した投資信託は、会社の資産として認識しなければなりません。この記事では、投資信託を取得したときの勘定科目、分配金の受け取りや投資信託の譲渡で利益が出たときに必要な仕訳について解説していきます。
目次
投資信託の仕訳に使える勘定科目
投資信託は、ファンドが株式や債券などの投資先を選定し、投資家から資金を募って投資資産の運用を行う金融商品です。投資家は投資信託への投資によって、分散投資によるリスク低減効果を得られるのが特徴です。投資信託の運用成績が良く、利益が出たときは、その利益の一部が投資家の所有する投資信託の口数に応じて分配金として支払われます。
法人が取得した投資信託は、投資信託の保有目的に応じて、資産科目である有価証券、または投資有価証券の勘定科目を使った仕訳が行われます。
受け取った分配金は受取配当金(元本の払い戻しに相当する部分は有価証券の減額)、投資信託の譲渡(売却)により得た利益は(投資)有価証券売却益、譲渡による損失は(投資)有価証券売却損の勘定科目を使って仕訳をします。
投資信託を有価証券勘定で仕訳する
取得した投資信託は、有価証券または投資有価証券として資産計上する必要があると説明しました。このうち、有価証券で仕訳を行う投資信託は、売買目的有価証券に該当するときです。
売買目的有価証券とは、時価の変動による利益獲得を目的に短期間で売買を行う有価証券です。主に会社のトレーディング部門が扱う有価証券、譲渡益を目的に短期間で売買するために取得した有価証券が該当します。取得した投資信託が売買目的有価証券にあたるときは、有価証券として仕訳を行い流動資産に計上します。
投資信託の取得時に行う仕訳
売買目的で取得した投資信託は、次のような仕訳を行います。投資信託の取得時に発生した申込手数料などの手数料は、投資信託の取得に要した費用として、投資信託の取得額と合わせて資産計上するのが一般的です。
(例)投資信託10万円分を購入し、代金を証券口座より支払った。投資信託は価格の変動による利益を得る目的で短期に保有するために取得したものである。
仕訳の適用欄には、投資信託の名称やファンド名、購入した口数などを記載するのと同時に、短期売買目的で購入した旨も記載しておくとよいでしょう。
投資信託の期末時評価について
各事業年度の期末時には、期末時点での財政状態を正確に財務諸表(決算書)に反映させる必要があります。
売買目的有価証券については、期末時点で譲渡(売却)が確定していなくても、期末時の時価で有価証券を評価し、差額を当期の損失または利益として認識しなくてはいけません。売買目的有価証券は時価による変動で利益を得ることを目的にしており、投資の成果を当期の損益として認識するのが適切であると会計上は考えるためです。
証券取引所で売買される投資信託については、原則的に事業年度終了時の最終の価格で時価評価を行います。
期末時の評価に関する決算整理仕訳は、以下のとおりです。
(例-評価益が出る場合)当社は、短期売買目的で当期に投資信託20万円分を購入している。決算にあたり、期末時の時価は21万円であった。
上記例の決算整理仕訳の結果、有価証券が1万円増え、投資信託の資産計上額は21万円になります。差額は「有価証券評価損益」で仕訳をします。
(例-評価損が出る場合)当社は、短期売買目的で当期に投資信託20万円分を購入している。決算にあたり、期末時の時価は19万円であった。
評価損が出るときの仕訳も基本的に同じです。差額は有価証券評価損益の勘定科目を使って仕訳します。
投資信託を投資有価証券で仕訳する
分配金の取得や退職金に備えた資産形成を行う目的で保有する投資信託は、有価証券の区分上、その他有価証券に区分されます。その他有価証券に区分される有価証券は、長期にわたる保有が想定されるため、売買目的有価証券とは会計上区別しなくてはなりません。
投資信託を取得したときの仕訳
短期売買目的以外で取得した投資信託は、「投資有価証券」の勘定科目を使って資産計上を行います。投資有価証券は、固定資産に分類される資産科目です。
(例)投資信託10万円分を購入し、代金を証券口座より支払った。投資信託は短期売買による譲渡益を目的に取得したものではない。
適用欄には、売買目的有価証券と同じように、投資信託の名称やファンド名、購入した口数のほか、後で確認したときに購入目的がわかるように、長期保有目的などと記載しておくとよいでしょう。
投資信託の期末時評価について
その他有価証券に分類される投資信託も、企業の財政状態を適切に把握するために、時価評価で資産計上する必要があります。
しかし、その他有価証券は売買目的有価証券のようにすぐに売買する目的で保有していません。また、その他有価証券に含まれる有価証券にはすぐに売買できないものも含まれていることから、直ちに当期の損益として認識するのは望ましくないと考えられます。その他有価証券に分類される投資信託については全部純資産直入法、または一部純資産直入法によって決算整理仕訳をすることとされています。
全部純資産直入法は、期末時の評価差額を費用または収益ではなく、すべて純資産で処理する方法をいいます。期末時には、次のような仕訳を行います。
(例-評価益が出る場合)当社は、長期保有を目的に当期に投資信託20万円分を購入している。決算にあたり、期末時の時価は21万円であった。
※説明上、税効果会計の会計処理は考慮していません。
その他有価証券の期末時評価は、純資産科目である「その他有価証券評価差額金」を使って仕訳をします。
(例-評価損が出る場合)当社は、長期保有を目的に当期に投資信託20万円分を購入している。決算にあたり、期末時の時価は19万円であった。
※説明上、税効果会計の会計処理は考慮していません。
評価損が出たときに使用する勘定科目も同じです。純資産科目の「その他有価証券評価差額金」で差額を仕訳します。一部純資産直入法を採用して仕訳をするときは、「その他有価証券評価差額金」ではなく、「投資有価証券評価損」などの勘定科目を使い、損失に限り当期に認識を行います。
なお、「その他有価証券評価差額金」を使って仕訳をした投資有価証券については、翌期首に洗替処理が必要です。翌期首に決算整理仕訳の逆仕訳を行って、「その他有価証券評価差額金」の額をゼロに、投資有価証券の額を取得時の額に戻します。
投資信託で利益が出た場合の仕訳
投資信託で利益を得るケースは、分配金の受け取り時と投資信託の譲渡(売却)時の2パターンが考えられます。それぞれのパターンの仕訳について詳しく見ていきましょう。
分配金を受け取ったときの仕訳例
投資信託の分配金は、基本的に、投資対象金融商品からの配当金、金融商品の売却益などが原資となっています。この場合は、収益の一部が投資家に分配されるため、次のような仕訳を行います。
(例)所有している投資信託の分配金として1万円が支払われた。証券口座には源泉徴収された所得税など(20.315%)を差し引いた残額が入金されている。なお、特別分配にあたるものは分配金にはない。
全額が運用収益から分配されるときは上記例の仕訳で問題ありませんが、毎月分配型の投資信託など、投資信託によっては元本の払い戻しに相当する額が特別分配されることがあります。
特別分配金の場合は、元本の払い戻しを受けたものとして、次のように投資信託を減額する仕訳を行います。
(例)長期保有目的で保有する投資信託について、証券口座に1万円の特別分配を受けた。
特別分配金は収益からの分配と違い、課税の対象にはなりません。源泉徴収は行われないため、特別分配分をすべて有価証券(投資有価証券)の価額から減額する処理を行います。通常の分配と特別分配を両方受け取るなら、それぞれの分配金を分けて仕訳を行います。分配金の詳細については証券会社などから明細が送られてきますので、明細書を確認して会計処理を行いましょう。
投資信託を譲渡したときの仕訳例
所有する投資信託を譲渡して売却益を得るケースもあります。売却益を得たときは、次のような仕訳を行います。
(例)長期保有目的で保有する投資信託30万円(帳簿上の価額)を売却した。譲渡時の価額は35万円で、対価は証券口座に入金された。
例では投資有価証券売却益の勘定科目を使用していますが、売買目的有価証券の譲渡で利益が出たときは有価証券売却益の勘定科目を使用します。
税務上の取扱い
投資信託の税務上の取扱いについては、受取配当等の益金不算入、所得税の源泉徴収の2点について注意しておく必要があります。
まず、法人が受け取る配当金のうち、一定のものについては、法人税の課税に適さないとして受取配当等の益金不算入の対象になります。
投資信託は基本的に益金不算入の対象にはなりませんが、外国株価指数連動型を除く特定株式投資信託については対象になります。特定株式投資信託とは、株式のみで構成された投資信託のうち、ETFなどの上場企業株式を対象とした投資信託のことです。特定株式投資信託の保有時は、非支配目的株式と同様、配当金などの益金の20%相当を益金不算入とします。
次に、所得税の源泉徴収額についてです。投資信託の分配金配当時には所得税が源泉徴収されますが、源泉徴収された所得税は法人税の先払いと考えます。そのため、法人税の計算上、源泉徴収を受けた所得税額分は所得税額控除できます。
投資信託は保有目的で勘定科目を使い分けよう
投資信託の取得時の勘定科目は、保有の目的で変わります。まずは保有の目的を明らかにし、正しい勘定科目で仕訳できるようにポイントを押さえておきましょう。また、投資信託の分配金は、分配金の原資によって仕訳が異なります。分配金の詳細は、証券会社などから発行される明細書で確認できますので、必ず内容を確認してから会計処理を行いましょう。
よくある質問
投資信託購入時の仕訳に使う勘定科目は?
売買目的で購入した投資信託は有価証券、長期保有などそのほかの目的で購入した投資信託は投資有価証券の勘定科目を使って仕訳します。詳しくはこちらをご覧ください。
投資信託で利益が出た場合の仕訳はどうする?
分配金の受領で利益が出たときは受取配当金、投資信託の譲渡で利益が出たときは有価証券売却益(または投資有価証券売却益)の勘定科目を使って仕訳をします。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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