- 作成日 : 2025年3月27日
一人親方は月収50万を稼いでいる?収入や手取りを増やすコツを解説
一人親方として働く中で、「月収50万円」という数字を現実的な目標として考える方も多いのではないでしょうか。一人親方の平均年収は591万円(月収約49万円)とされていますが、収入には業種や地域、経験による差があります。この記事では、月収50万円の手取りや節税方法、安定して稼ぐためのポイントを解説します。
目次
一人親方は月収50万を稼いでいる?
一人親方の平均年収は2022年の調査によると591万円(材料持ち)とされています。この年収を月収に換算すると約49万円となり、平均的な一人親方であれば月収50万円に近い水準で働いていることがわかります。ただし、実際の収入は業種や地域、年齢、経験によって大きく異なります。
年代別にみる一人親方の収入
一人親方の収入は年齢によって変わり、特に30代後半から50代が月収50万円を稼ぎやすい年代といえます。
- 20代~30代前半
若手の一人親方の年収は388万円~534万円で、月収にすると約32万円~44万円になります。この年代はまだ経験が少ないため、案件の単価が低めになることが多いようです。しかし、スキルを磨きながら実績を積むことで、高単価の案件を受注し、収入を伸ばしていけるチャンスがあります。 - 30代後半~40代
30代後半~40代の一人親方の平均年収は、年収534万円~612万円、月収にすると44万円~51万円と収入が増加します。多くの一人親方が月収50万円を達成する時期といえます。高単価の案件を請け負うことも増え、収入が安定しやすい時期といえます。 - 50代前半
50代前半の一人親方の平均年収は584万円で、月収にすると約48万円~50万円に相当します。体力の変化や案件の選び方によって収入に多少の差が出ることもありますが、長年培った経験と信頼を武器に、高単価案件を安定して受注できる状況が続いています。 - 55歳以降
55歳以降の一人親方の年収は591万円前後で、月収にすると約49万円になります。体力や働き方に変化が出るため、月収50万円を超えるケースは減る傾向にありますが、豊富な経験を活かして専門性の高い案件を選ぶことで、安定した高収入を得ている方も少なくありません。
現場別にみる一人親方の収入
一人親方の収入は、働く現場の種類によって大きく変わります。
「地元(中小)ゼネコン(建築)」で働く一人親方は年収が平均698万円で、月収にするとおよそ58万円と高い水準です。
「地元の大工・工務店」で働く場合は、年収が平均543万円で、月収に換算すると約45万円ほどになります。これは、案件の単価や規模の違いが収入に影響しているものと考えられます。
また、「施設および直接請負」の場合は年収586万円で、月収にすると約49万円になります。
現場ごとに収入の差はありますが、自分のスキルや目指す働き方に合った環境を選ぶことで、収入アップを実現するチャンスが広がると言えるでしょう。
20代の一人親方では年収が388万円程度で、月収にすると約32万円ほどです。30代前半でも平均年収は464万円程度で、月収約38万円~40万円程度に留まります。一方で、30代後半になると年収534万円(月収約45万円)に達し、経験が積み重なることで月収50万円に届く人も増えてきます。
参照元:2023年(R5年)賃金調査報告書|全建総連東京都連合会
一人親方が月収50万円を達成する働き方
一人親方が月収50万円を達成するには、日当や労働日数をしっかり考える必要があります。
日当が2万円の場合
一人親方の日当が2万円の場合、25日間働けば月収は50万円になります。この場合はほぼフル稼働が求められ、体力的な負担が大きくなるため、無理のないスケジュールを計画することが大切です。
例えば、地方の住宅新築現場で月曜から土曜まで働き、日曜日を休みに充てるようなスケジュールが考えられます。現場によっては、朝早くから夕方までの長時間作業になることもあるため、週1日の休みで体力を回復させることが大切です。
また、工期が短いリフォーム案件を掛け持ちすることで、仕事の空白期間を減らし、収入を安定させる方法もあります。さらに、地元の工務店と定期的に契約を結ぶことで、継続的に案件を確保しやすくする工夫も考えられます。
日当が2.5万円の場合
日当が2.5万円になると、20日間の稼働で同じ50万円を稼ぐことができます。労働日数を抑えながら収入を維持できるため、体力や時間に余裕を持つことができます。
例えば、都心部の内装工事現場で平日のみ稼働し、土日を休みに充てるスケジュールが考えられます。
資格を持つ一人親方であれば、専門性の高い案件に参入しやすく、単価の上昇が期待できます。特に、技術力を活かしてオフィスビルの改修工事や配管工事といった案件に取り組むことで、高単価の案件を安定的に受注することができます。さらに、取引先との信頼関係を築くことで、定期的に仕事を確保しやすくなり、収入の安定にもつながります。
日当が3万円の場合
日当が3万円の場合、一人親方は17日間働くことで月収50万円を達成できます。
例えば、都心部の大規模土木工事や特殊技術を要する現場で、週3~4日程度の稼働を想定したスケジュールが考えられます。こうした現場では、大型プロジェクトに関わる案件が多く、特殊な技術やリーダーシップが求められることが特徴です。たとえば、足場組みの指導や土木工事のリーダー業務がその例に挙げられます。
高単価案件を確保するには、専門的な技術力に加え、元請け業者との信頼関係を築くことが重要です。さらに、資格の取得やリーダー経験があれば、仕事の幅が広がり、収入アップにもつながります。
一人親方の月収50万の手取りはいくら?
一人親方が月収50万円を稼いだ場合、手取り額はおよそ35万円から40万円程度になるのが一般的です。この手取り額は、税金や社会保険料、必要経費などを差し引いた後の金額です。一人親方は自営業者として控除や経費を計上できるメリットがある一方で、社会保険や税金の負担は会社員とは異なる仕組みになっています。
所得税と住民税
月収50万円の場合、年間収入は約600万円となります。この金額に対して所得税が課され、さらに住民税が加わります。税額は控除後の課税所得に応じて決まりますが、所得税率は10%~20%、住民税率は一律10%が基本です。控除を適用すると、年間で60万円~80万円程度が税金として引かれることになります。
国民健康保険料
所得に基づいて算出され、月収50万円の場合は月額2万円~3万円程度の負担となります。地域によって保険料率が異なるため、正確な額は自治体の計算によります。
国民年金保険料
一人親方として国民年金に加入する場合、2023年度では月額16,520円が固定で課されます。この金額は収入にかかわらず一定です。
必要経費の差し引き
一人親方は、収入の中から仕事にかかった経費(例:材料費、交通費、通信費など)を差し引くことができます。経費が多い場合は課税所得が減り、手取り額にプラスの影響を与えることがあります。
一人親方の月収50万の手取りを増やす方法
一人親方の月収50万の手取り額を増やすには、節税や経費管理が欠かせません。しかし、適切な節税対策を講じることで、手取りを増やすことが可能です。ここでは、一人親方が活用できる主な節税方法についてわかりやすく説明します。
- 青色事業専従者給与を支給する
配偶者や親族などに仕事を手伝ってもらい、その対価として給与を支給すると、課税所得を減らすことができ、節税につながります。
注意すべき点として、「青色事業専従者給与に関する届出書」を管轄税務署へ事前に提出をしておく必要があるので、検討している方はこの届出書を提出するのを忘れないようにしましょう。
青色申告を活用して控除を受ける
青色申告をすることで、最大65万円の所得控除を受けることができます。この控除は課税所得を減らす効果があり、結果的に所得税や住民税の負担を軽くします。
青色申告を行うには、帳簿を正確に記録し、申告時に提出する必要があります。例えば、経費を詳細に記録した会計ソフトを活用すれば、手間を軽減しつつ正確な申告が可能です。これにより、手元に残る金額を増やすことができます。
必要経費をしっかり計上する
一人親方としての仕事で発生する経費は、課税所得を減らすために計上することができます。例えば以下のような経費が対象となります。
これらを正確に記録し、必要経費として申告することで、課税対象額を減らし、手取り額を増やすことができます。
ふるさと納税で税負担を軽減する
ふるさと納税は、所得税や住民税の控除を受けることができる仕組みです。一人親方として一定以上の収入がある場合、ふるさと納税を活用することで税負担を軽減しつつ、返礼品も受け取れるというメリットがあります。
例えば、年収600万円の一人親方がふるさと納税で7万円を寄付した場合、ほぼ同額が税金から控除され、負担が軽くなります。
小規模企業共済で所得控除を受ける
一人親方は、小規模企業共済に加入することで、掛け金を全額所得控除として申告することができます。例えば、毎月3万円を掛け金として積み立てた場合、年間で36万円の所得控除が適用されます。これにより、税金負担を減らしながら将来の資金を準備することが可能です。
iDeco(イデコ)で所得控除を受ける
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、所得税の負担を軽くしながら老後資金を準備できる便利な仕組みです。iDeCoに毎月掛け金を積み立てると、その金額が全額所得控除の対象となり、課税所得を減らすことができます。
掛け金は毎月一定額を積み立てる形式で、一人親方の場合、年間で最大81万6,000円(月額6万8,000円)の掛け金を設定することが可能です。たとえば、年収600万円の一人親方が年間60万円をiDeCoに拠出した場合、その全額が所得控除として扱われます。この結果、所得税と住民税が軽減され、手元に残る金額が増える仕組みです。
一人親方が月収50万円以上を稼ぐために必要なスキル
一人親方が月収50万円以上を安定して稼ぐには、経験や努力だけでなく、特定のスキルを身につけることが求められます。以下では、月収50万円以上を稼ぐために役立つスキルについて解説します。
- 人脈を広げる
他の職人とのネットワークを広げたり、地域交流会などに積極的に参加することで、人脈を広げることができます。
人脈を広げておくことによって、高単価の仕事を紹介してくれたりする可能性もあります。
したがって、一人親方が月収50万円以上稼ぐために、人脈を広げておくことも重要な要素となります。
専門技術を磨く
高単価案件を受注するためには、他の人にはできない専門性の高い技術を持つことが必要です。たとえば、建築業界では以下のようなスキルが高く評価されます。
- 配管工の専門技術:水道設備や空調配管の設置・修理技術
- 内装工の高度な仕上げ技術:クロス貼りや特殊な塗装などの仕上げスキル
- 特殊機械の操作技術:重機オペレーターや足場の設計スキル
建設キャリアアップシステムに登録する
建設キャリアアップシステムへの登録は、一人親方としての評価を向上させるために有効です。このシステムは、経験やスキルを可視化し、元請け業者や取引先から信頼を得るための仕組みです。
登録することで、自身の実績やスキルがデータベースに蓄積され、資格や技術力を証明できます。結果として、単価が高い案件を受注しやすくなり、日当の上昇や仕事の安定化が期待できます。
資格を取得する
専門資格は信頼の証であり、高単価案件を獲得するために非常に有効です。一人親方として役立つ代表的な資格には以下があります。
- 建築施工管理技士:工事の計画や管理業務を担当する資格
- 配管技能士:配管工事の専門性を証明する国家資格
- 足場の組立て等作業主任者:安全に作業を行うための資格
営業力を高める
収入を安定させるためには、継続的に仕事を受注することが大切です。そのためには営業力を高め、自分の技術やサービスを売り込む能力が必要です。たとえば、以下のような方法で営業力を強化できます。
- ネットワーク作り:取引先や元請け業者との信頼関係を築く
- SNS活用:インスタグラムやフェイスブックで施工事例を公開し、顧客や業者の目に留まるようにする
- 口コミの利用:過去の顧客からの紹介を増やす
時間管理と効率化をはかる
月収50万円以上を稼ぐには、効率よく作業を進め、無駄な時間を減らすことが欠かせません。特に、一人親方として複数の案件を掛け持ちする場合、時間管理が収入に直結します。スケジュール管理やタスクの優先順位をしっかり設定することで、限られた時間を最大限に活用しましょう。
- スケジュール管理:複数の案件を並行して進める場合、専用アプリを活用して効率的に管理する
- 作業効率の向上:新しい工具や技術を導入して作業時間を短縮する
- 会計ソフトの利用:経費の記録や請求書の発行、税金計算まで自動化でき、事務作業の負担を軽減する
月収50万円を目指して行動しよう
一人親方が月収50万円を安定して稼ぐためには、スキルの向上、効率的な働き方、そして節税を意識した収入管理が大切です。年代や業種によって収入には差がありますが、自分の経験や技術を活かし、働く環境を工夫することで収入を伸ばせます。
日当や労働日数を調整したり、資格を取得して高単価の案件を目指すなど、行動次第で収入アップの可能性は広がります。さらに、青色申告や経費管理、iDeCoなどを活用すれば、手取り額を増やすことも可能です。
一つひとつ実践しながら、安定した高収入を実現していきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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