- 更新日 : 2024年8月8日
国民年金基金の節税効果やデメリットについて
国民年金は、日本に住所がある20歳以上~60歳未満の方全員に加入が義務づけられている公的年金であり、老後の生活を支えるための大切な制度です。万一のための障害基礎年金・遺族基金年金もありますし、保険料の全額が控除の対象となる社会保険料控除もあります。
さまざまなメリットがある国民年金ですが、これに上乗せして厚生年金に加入している会社員等に比べて、国民年金しか加入していない自営業やフリーランスでは、将来の受取額が、自営業やフリーランスで働く人の不安のひとつとなっています。こうした不安を払拭するための存在である「国民年金基金」をご存じでしょうか?「国民年金」と「国民年金基金」は同じもの、あるいは付随するものだと混同されがちですが、別物です。
今回は、国民年金にゆとりをプラスする、自分で加入する公的な個人年金「国民年金基金」のしくみと、節税効果などについて考えてみたいと思います。
国民年金基金とは?
会社員などは、国民年金に上乗せして厚生年金基金と老齢厚生年金に加入しています。これに対して、国民年金だけに加入している自営業者やフリーランスは、将来の受給額に大きな差があることは広く知られています。
この差を解消するために平成3年4月に創られた年金制度が「国民年金基金制度」です。国民年金基金制度は、国民年金法の規定に基づく年金です。つまり、国民年金に上乗せして受け取ることができる公的な年金制度なのです。自営業者など国民年金の第1号被保険者にとっての、老後の所得保障の役割を担います。
国民年金基金に加入することによって、自営業者やフリーランスの公的年金も会社員などと同じように、「2階建て」にすることができます。
・会社員等:国民年金+(厚生年金基金・老齢厚生年金)
・自営業等:国民年金+国民年金基金
加入によるメリット
国民年金基金は任意です。どうしても経済状況が無理だという方に強いるものではありません。そのうえで、少ない掛け金から始めることができますし、加入後にそれぞれの事情に応じて月々の掛金を増やしたり、減したりすることもできます。いろいろな年金のタイプがあり、現在おかれている状況や将来の見通しにあわせて選ぶことができるのです。
国民年金は将来的に支給開始年齢が70歳になるという報道がありますが、国民年金基金に関しては、現在、決められている支給開始年齢を変更することはないと国民年金基金連合会が明言しています。
加入による節税効果
民間で加入する個人年金の場合、平成24年1月以降に契約したものであれば、年額で最大4万円までしか所得控除されませんが、国民年金基金の場合、支払った金額は全て所得控除の対象となります。
よって、所得税や住民税の負担が軽減されます。国民年金基金から受け取る年金は、雑所得の公的年金控除が適用されます。民間の保険会社の年金を使用した場合には、同じ雑所得ですが公的年金等控除は受けられません。年金受給前または保証期間内に、万一死亡した場合は、ご家族に一時金が支払われます。(加入が保証期間付きのタイプに限ります)この一時金は非課税です。
国民年金基金の加入条件
日本に住んでいる20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、開業医や弁護士、芸術家などの自由業、学生などの国民年金の第1号被保険者および60歳以上65歳未満の方で、自主的に国民年金に加入している方々が入ることができます。
国民年金基金に加入できない方
・厚生年金保険や共済組合に加入している方の被扶養配偶者の方(国民年金の第3号被保険者)
・国民年金の第1号被保険者でも国民年金の保険料を免除(一部免除・学生納付特例・若年者納付猶予を含む)している方
・国民年金の第1号被保険者でも農業者年金の被保険者の方
国民年金基金のデメリット
メリットや節税効果の多い国民年金基金ですがデメリットもあります。最大のデメリットは物価スライド制に対応していないことです。将来の受取額は確定しているためもし、年金を受給するまでに物価が上昇してしまった場合、インフレになるわけですからお金の価値が下がります。実質的な年金額が下がってしまうというわけです。逆に、物価が下落すれば実質的な年金額は上がることになります。
また、国民年金基金は任意ですが、一旦加入すると自己都合でやめることは基本的にできません。どうしても年金を支払えない場合には2年間支払いを猶予することができます。後に未納分を支払えば年金は満額受給できます。
まとめ
国民年金基金は、自営業者やフリーランスが任意で加入できる年金制度です。国民年金の支給のみで暮らす老後の不安を解消できるとともに、掛け金は全額損金算入できるので、節税効果もあります。ただ、物価スライド制に対応していないというデメリットがあります。
将来の備えと、現在の節税効果を考慮に入れて、検討してみましょう。手続きなどの詳細は国民年金基金のホームページで確認できます。
(参考:制度について知る|国民年金基金ホームページ)
関連記事
・個人事業主の年金の種類とポイントまとめ
・フリーランスのための保険活用法
・フリーランスの私的年金づくり始めませんか?投資初心者が読んでおくべき本&ブログ10選
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
【解説】2019年度税制改正大綱のポイントは「車と住宅」 仮想通貨にも初めて言及
自民、公明両党が12月14日、2019年度(平成31年度)の税制改正大綱を発表しました。今回の改正は、2019年10月の消費税率10%への引き上げにともなう駆け込み需要と反動減を抑えることが焦点となります。 重点が置かれたのは、増税の影響が…
詳しくみる買い替えの方がお得!?中小企業投資促進税制を使って賢く設備投資!
中小企業にとって、設備投資は大きな負担として両肩にのしかかります。しかし、一方で既存の古い設備のままでは生産性が向上しません。そういったジレンマを抱える方も多いのではないでしょうか。 そんな中、今回紹介する中小企業投資促進税制はうまく活用す…
詳しくみる法人税申告書の別表17とは?見方や書き方、注意点まで解説
法人税申告書を作成する際、必要に応じて添付するのが「別表」です。しかし、どの別表を使ったらいいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は法人税申告書別表17についてご紹介します。 どのような場合に使うのか、そして、書き…
詳しくみる中小企業をサポートするための税制について
わが国の雇用や経済は中小企業によって支えられています。中小企業の活動はさまざまな措置でサポートされており、税法においても法人税法をはじめ租税特別措置法などの支援策が講じられています。 この記事では、日本において企業の99.7%を占める中小企…
詳しくみる法人税申告書の別表3とは?見方や書き方、注意点まで解説
法人税申告書の別表3は、該当する法人が記載・提出する必要のある申告書です。特定同族会社に該当する場合、土地の譲渡利益金額がある場合に作成します。今回は、別表3の種類や書き方を紹介します。 法人税申告書の別表3とは 別表3は、留保金課税や土地…
詳しくみる令和6年度税制改正大綱の概要まとめ
令和7年度税制改正大綱については下記記事をご覧ください。 ※当記事は、令和6年度税制改正大綱の内容です 令和6年度税制改正大綱が12月14日に発表されました。本年の税制改正大綱の大きな改正点は、法人課税に係る賃上げ税制の改正、交際費から除外…
詳しくみる