• 更新日 : 2020年9月17日

留保金課税で特定同族会社がとるべき対策は?

留保金課税制度は、特定同族会社が利益を留保することによる過剰な租税回避を防止するために制定されました。

本来、会社であれば、利益が出ればそれを配当という形で株主に分配しなければなりません。しかし、オーナー会社など特定の株主に支配されている会社の場合、配当が大きくなると、株主である社長自身に多額の所得税が発生するため、利益が出てもあえて配当金を出さずに、社内に留保される可能性がありました。こういった不当な社内留保がある場合、その会社に対し、通常の法人税に特別税額が追加課税されることとなりました。

特定同族会社とは

同族会社とは、会社の株主等及びその株主と特殊な関係にある者で会社の発行済株式等(議決権)の50%を保有する会社をいいます。中でも、特定同族会社は、同族関係者の1人及び1グループが発行済株式等(議決権)の50%超を保有する会社をいいます。

同族関係者には、親族や内縁関係者のほか、株主から得る金銭によって生計を立てている者も含まれます。

留保金課税について

特定同族会社では、会社に利益が発生しても配当を出すことなく、利益を必要以上に社内留保するということが起こり得ます。これは株主が経営者でもある場合に発生しがちです。所得税は累進課税であり、配当所得が多くなればなるほどオーナー自身の所得税が高くなるため、こういった租税回避行為も見受けられるようになりました。

しかし、これでは特定同族会社かそうでないかによって個人と法人の税負担に差が出てしまいます。そこで、税負担のバランスをとるため、各事業年度に特定同族会社が許容額を超えて利益を社内留保した場合、その利益に対して特別税率による法人税を通常の法人税に加算して課税される制度ができました。この制度を「特定同族会社の留保金課税」と言います。

留保金課税の計算

留保金課税では、「課税留保金額」に「留保金課税の税率」を乗じた金額が課税されます。

「課税留保金額」は許容額を超える利益のことで、「留保金額」から「留保控除額」を差し引いて算定します。

まず「留保金額」から見てみましょう。
「留保金額」=会社の課税所得+課税外収入項目(受取配当金の益金不算入額や繰越欠損金の損金算入額など)-社外流出の金額(剰余金の配当や役員賞与など)-法人税(市町村民税や道府県民税も含む) 

「留保控除額」は、次の基準額のうち最も多い金額を使用します。

(1)所得基準額:所得等の金額の40%相当
(2)定額基準額:2,000万円×当期の月数/12
(3)利益積立金基準額:期末資本金の25%相当-(期首利益積立金額-前期末配当額)

「留保金額」から「留保控除額」を差し引いて求めた「課税留保金額」に「留保金課税の税率」をかけて留保金課税の金額を算定しますが、「留保金課税」は、課税対象となる留保金のうち、3,000万円以下の金額には「10%」、3,000万円を超え1億円以下の金額には「15%」、1億円を超える金額には「20%」を乗じた金額の合計で求めることができます。

留保金課税の対象外の会社

以前はすべての同族会社が留保金課税の対象でしたが、現在では、特定同族会社であっても資本金あるいは出資金が1億円以下である場合には、留保金に課税されないこととなりました。(ただし、期末資本金の額が5億円以上である会社による完全支配関係がある会社については、適用の対象となります。)

特定同族会社にとって留保金課税の対策はあるのか?

会社の設立や減資により、資本金を1億円以下に抑えると、留保金課税の対象会社から外れ、節税対策にもつながります。

留保金課税の対象となる可能性のある会社は、一度、資本金の額を見直し、その余剰金を会社の設備投資や事業などへの再投資に回されることをお勧めします。

関連記事

法人税の資本金には超えられない壁がある?


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事