- 更新日 : 2020年6月10日
租税回避行為とは
租税回避行為とは、本来課税されるべき取引に対して偽装または合理性のない法形式を選択し、通常適用される法形式による課税要件の充足を免れ、税負担を軽減・回避する行為である。
租税回避行為の考え方
租税回避行為は基本的に「課税要件の充足を避けることによって課税の発生を未然に防ぐ行為」であり、租税回避行為そのものは課税要件の充足という事実を隠ぺいする「脱税」のような税法の規定に違反する行為にはあたらない。ただし、課税要件の充足を避ける段階で何らかの事実を隠ぺいしなくては租税回避を成立させることは困難であり、隠蔽された事実が後にあきらかになり、課税要件が充足される(課税が発生する)こともしばしば発生する(これを租税回避行為の否認という)。
節税と租税回避行為の違い
いわゆる節税と租税回避行為の違いについて明確な規定はないが、一般に「節税」とは合法的かつ一般的な範囲において税負担を軽減するための行為であり、「税の過払い」などを防ぐことを目的としている。これに対し、租税回避行為とは税法の想定を超える「一般的ではない方法」によって課税額を減額させようという点が異なる。ただし税法の「否認規定」等に抵触しない租税回避行為と節税との間に明確な差はなく、「意図的な仮装・隠ぺいが行われたのか、悪意はあったのか」を判断する基準もない。このため特定の租税回避行為が罰金や重加算税の対象となるかどうかは税務当局の裁量によるところが大きく、国税当局と納税企業との間に見解の相違から係争が生じる場合もある。
なお、法人税法には「偽りその他不正の行為により法人税を免れ、違反行為をした者」に対して懲役または罰金による司法上の刑事罰が定められている。このような刑事罰が適用されるような行為は一般に「脱税」と呼ばれ、租税回避行為や節税とは一線を画する。
否認規定について
日本における否認規定には、ドイツ租税通則法42条に該当するような「租税回避行為の否認を一般的に認めた規定」はない。ただし「やや一般的な否認規定」として、「同族会社の行為又は計算の否認規定(所得税法157条、法人税法132条、相続税法64条等)」が存在し、またかなりの数の個別的否認規定が存在する。(国士舘大学法学部教授:酒井克彦 税大ジャーナル9 2008.10)
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