- 更新日 : 2024年10月25日
総資産とは?種類や決算書の記載場所、分析方法などをわかりやすく解説
総資産とは、決算日時点で会社が持っているすべての資産を合計したもののことです。総資産は、流動資産・固定資産・繰延資産の3つの種類の資産に分けられます。総資産からわかることや純資産との違いについてわかりやすく解説します。
目次
総資産とは
総資産とは、決算日時点で会社が保有しているすべての資産を合計したものです。貸借対照表の左側の「資産の部」はすべて総資産に含まれ、最下部にある「資産の部合計」は総資産の金額を指します。
また、総資産は負債と純資産の合計です。
貸借対照表の右側には「負債の部」と「純資産の部」が表示されています。総資産は負債と純資産を合計したものを指すため、右側全体を合計したものに一致します。
総資産は会社が保有する資産総額を示すため、会社の規模を示す指標として使われます。財務諸表の重要な項目として認識されているだけでなく、企業ランキングなどにおいても重要な指標として使われることがあります。
総資産の種類
総資産は、次の3つの資産に分けられます。
- 流動資産
- 固定資産
- 繰延資産
上記の3つの資産を合計したものが「総資産」です。それぞれの資産の特徴について解説します。
流動資産
流動資産とは、1年以内に現金化できる資産、もしくは正常営業循環基準を満たす資産のことです。
なお、正常営業循環基準とは、以下のような一連の営業活動を通して得た資産を指します。
- 現金で商品を仕入れる
- 仕入れた商品を販売し、現金を得る
- 販売によって得た現金を使って、再び商品を仕入れる
現金や預金、売掛金、前払金、未収入金などはいずれも流動資産に分類されます。
固定資産
固定資産とは、1年を超えて保有する資産のことです。さらに次の3つの種類に分けられます。
「有形固定資産」とは土地や建物、機械装置、車両運搬具などのことです。一方、「無形固定資産」とは営業権や特許権、借地権などの権利や、ソフトウェアなどのように目に見える実体として存在しない資産を指します。
「投資その他の資産」とは、出資金や長期貸付金、投資有価証券などのことです。いずれも1年を超えて保有することが前提となる資産です。
繰延資産
繰延資産とは、一時的な支出であるもののその支出の効果が将来にわたって及ぶものです。資産として計上された後、数年かけて償却して費用化します。なお、繰延資産に含まれる資産は、会社法と税法では異なります。
繰延資産の種類 | 繰延資産の例 |
---|---|
会社法における繰延資産 | |
税法における繰延資産 |
|
総資産は決算書のどこに記載されるか
総資産の額は、財務三表の1つである貸借対照表で確認できます。
総資産は貸借対照表で確認できる
総資産とは、会社に投下されているすべての資産の価額のことです。貸借対照表には、資産、負債、純資産に区分される項目とその価額が記載されることから、総資産の価額は貸借対照表で確認できます。
貸借対照表「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の合計が総資産になる
上の図のように、総資産の額は、貸借対照表に記載される、流動資産、固定資産、繰延資産を合計した金額です。貸借対照表の借方(左側)の最後に、資産の部の合計額として総資産の金額が表示されます。
総資産からわかること・分析方法
総資産の大きさを見れば、会社のおおよその規模が把握できます。また、総資産を用いて計算することで、売上効率を分析することも可能です。主な指標と分析方法を紹介します。
総資産回転率
総資産回転率とは、総資産によって効率よく売上を上げているか調べる指標です。以下の計算式で求めます。
1年間で総資産と同額の売上を得られた場合は、総資産回転率は1(回転、回)となります。業種にもよりますが、1を超えていると効率よく総資産を活用していると判断することが一般的です。業種による目安は以下をご覧ください。
業種 | 総資産回転率 |
---|---|
卸売業、小売業 | 1.7程度 |
建設業 | 1.3程度 |
サービス業、運輸業 | 1.2程度 |
製造業、情報通信業、飲食・宿泊業 | 1.0程度 |
不動産業 | 0.3程度 |
自己資本比率
自己資本比率とは、総資産における純資産の割合です。以下の計算式で求めます。
自己資本の割合が多いと負債が少ないと考えられるため、自己資本比率が高ければ倒産の可能性が低いと判断されることが一般的です。業種や企業規模にもよりますが、自己資本比率が30%以上あることが望ましいとされています。
総資本利益率
総資本利益率とは、経営効率を評価する指標です。ROA(Return On Assets)とも呼びます。以下の計算式で求めます。
なお、総資本利益率は単独では評価できません。数年間の数値の変化や、同業他社と比較することで、経営効率を判断します。
総資産と純資産の違い
純資産は、貸借対照表の右下部分に表記される返済義務のない資産です。資本金や資本剰余金、自己株式、新株予約権、評価・換算差額などを含みます。
一方、総資産は純資産と負債の合計したものと一致します。貸借対照表の左側全体に表記され、返済義務のある負債が含まれる点が純資産とは異なります。
日々の帳簿付けを正確に行おう
総資産は決算日時点での資産を指します。総資産を正確に記載するには、日々の帳簿付けを正確に行うことが大切です。項目ごとに正確に分け、丁寧に記載するようにしましょう。
また、総資産は会社の規模を示す指標としても使えます。総資本利益率や自己資本比率なども求め、会社の状態を正確に把握してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
限界利益とは?計算方法や他の利益との違い
限界利益とは、売上から売上を増やすためにかけた費用である変動費を差し引いたものです。売上高に対する限界利益の割合を示す限界利益率とともに、事業の状態を把握する指標となります。 本記事では限界利益や限界利益率からわかること、営業利益や粗利、貢…
詳しくみるキャッシュフロー計算書の作り方!直接法と間接法どちらが良い?
キャッシュフロー計算書(C/F)を作成するには、財務諸表の収集・営業活動によるキャッシュフローの計算・ 投資活動によるキャッシュフローの計算・財務活動によるキャッシュフローの計算などが必要であり、会計ソフトやエクセルなどを使用することが一般…
詳しくみる試算表とは?作り方・無料エクセルテンプレート
試算表(T/B :trial balance)は、月次・年次など会計期間の区切りで、総勘定元帳(General Ledger)に記載されている全ての勘定科目の残高を一覧表にまとめたものです。 試算表は、仕訳や転記などの間違いを見つけるのに役…
詳しくみる決算書と別表の関係は?作成する際のポイントや添付書類を解説
法人が確定申告を行う場合、別表と呼ばれる書類を提出します。しかし、書き方がいまいち分からない、添付すべき書類が分からないという方もいるのではないでしょうか。 そこで、今回は決算書の別表について詳しくご紹介します。決算書との関係、作成のポイン…
詳しくみる財務諸表と決算書の違いは?決算報告書の種類や特徴を比較表つきで解説
決算書(決算報告書)と財務諸表には違いはなく、同じ書類のことです。決算書は通称で、正式には財務諸表や計算書類と呼ばれます。財務諸表とはどのような役割を果たす書類か、どのような種類があるのかまとめました。また、決算書の作成を効率化する方法につ…
詳しくみる決算期とは?会社の決算時期は3・9・12月が多い?決め方から変更方法まで解説!
法人には個人と違って「事業年度」があり、自社の定款に事業年度を記載するのが一般的です。事業年度の最終日が決算日となり、決算日の次の日から新たな事業年度が始まります。 3月決算の法人が多いようですが実際はどうなのでしょうか? この記事では事業…
詳しくみる