• 更新日 : 2025年10月22日

一人親方の平均年収は?職種ごとの違いや手取りを増やす方法を解説

個人事業主である一人親方としての業務は自由がききやすいかもしれませんが、その年収には大きなばらつきがあります。

この記事では、一人親方の平均年収から、収入を増やす具体的な方法、さらには年収1,000万円を実現するヒントまで、幅広く解説します。また、一人親方と会社員の収入の違いにも触れます。

そもそも一人親方とは?

一人親方とは、主に建設業界で、労働者を雇用せず自分自身と家族などだけで事業を行う個人事業主を指します。会社に所属せず、自身の技術で仕事を請け負う働き方です。

一人親方の年収は何で決まる?

一人親方の年収は、以下の要素によって大きく変動します。

  • 職種: 専門性や需要の高さによって単価が異なります。
  • 地域: 都市部と地方では、案件の数や単価に差があります。
  • 経験とスキル: 実績が豊富で高い技術力があれば、高単価の案件を受注しやすくなります。
  • 保有資格: 施工管理技士や建築士など、関連資格を保有していると信頼性が増し、収入アップに繋がります。

【職種別】一人親方の平均年収

複数の調査から、一人親方の年収は平均して約400万円から600万円ほどであると推測されます。しかし、これはあくまでも一般的な平均値であり、実際には1000万円を超えるような高収入を得ている一人親方もいます。

高収入を得ている個人は特定の専門技術を持っていたり、施工管理技士や建築士などの資格を有しており、その専門性を生かした案件に従事しているケースが多いです。

また、一人親方の年収を考える際には、以下の点に注意が必要です。

  • 開業資金がかかる:開業資金として最低でも50~100万円は必要になると考えておいた方がよいです。
  • 経費がかかる:一人親方の場合は、作業道具や消耗品も自分持ちです。
  • 収入の増減がある:一人親方の収入は受注次第です。
職種平均年収(目安)
塗装工500万~800万円程度
鉄筋工約560万円
とび職人約550万円
足場屋約550万円
配管工約539万円
内装工約529万円
防水工約520万円
大工約517万円
電気工事士約506万円
左官約500万円
解体工約480万円
造園業約418万円
溶接工約376万円

塗装工

建物の内外装の美観と保護を担う専門職です。仕事内容は、壁や屋根などに塗料を塗るだけでなく、塗装前の下地処理から丁寧な仕上げ作業まで多岐にわたります。建物の寿命を延ばす重要な役割も持ち、仕上がりの美しさが直接評価に繋がります。

平均年収の目安は500万~800万円と幅があります。これは、使用する塗料の種類や技術の専門性、請け負う案件の規模(戸建て住宅、アパート、商業施設など)によって単価が大きく変動するためです。丁寧な仕事で顧客の信頼を得られれば、直接依頼が増え高収入に繋がりやすい職種です。

鉄筋工

コンクリート建造物の「骨格」となる鉄筋を組み立てる、極めて重要な仕事です。設計図を正確に読み解き、鉄筋を切断・加工し、現場で結束していきます。建物の強度や耐久性を根幹から支えるため、高い精度と体力が求められます。

平均年収の目安は約560万円です。建設プロジェクトに不可欠で常に需要がある一方、体力的に厳しく担い手が不足しがちなため、経験を積んだ職人の単価は高くなる傾向にあります。

とび職人

建設現場の花形とも呼ばれる職種で、主に高所での作業を担当します。主な仕事は、他の職人が安全に作業するための足場の組立・解体ですが、鉄骨の組み立てなども行います。常に危険と隣り合わせのため、高い集中力と体力が不可欠です。

平均年収の目安は約550万円です。建設現場ではなくてはならない存在であり、仕事がなくなる心配は少ないでしょう。経験を積み「親方」としてチームを率いるようになると、さらに高い収入が期待できます。

足場屋

建設現場で作業するための足場を専門に組み立て・解体する職人です。とび職の一分野ですが、足場作業に特化しています。現場の規模や形状に合わせて、安全かつ効率的な作業動線を確保する足場を迅速に組み上げる技術が求められます。まさに、現場の安全性と作業効率の土台を作る重要な役割です。

平均年収の目安は約550万円です。どのような建設・解体現場でも必ず必要とされるため、需要が非常に安定しています。高所での危険な作業であり、専門的な技術と体力が求められるため、熟練した職人の単価は高くなる傾向にあります。「足場の組立て等作業主任者」の資格を取得するなど、スキルと経験を積むことで、安定して高収入を目指せる職種です。

配管工

建物内の水やガス、空気の流れを支えるライフラインを整備する仕事です。キッチンやトイレなどの給排水設備、ガス管、空調設備の配管などを設置・接続・修理します。人々の快適な生活に直結する、専門性の高い技術が求められます。

平均年収の目安は約539万円です。生活に必須のインフラを扱うため仕事の需要が安定しており、修理やメンテナンスといった継続的な案件も見込めるのが強みです。

内装工

建物の内部空間を快適で美しく仕上げる仕事の総称です。壁紙(クロス)貼り、フローリングなどの床材施工、ドアや窓の取り付けなど、作業内容は多岐にわたります。人々の目に最も触れる部分を担当するため、丁寧さとデザイン感覚が重要です。

平均年収の目安は約529万円です。リフォームやリノベーションの需要が安定しており、個人の技術力が単価に反映されやすい職種です。複数の内装スキルを身につけることで、対応できる仕事の幅が広がり収入アップに繋がります。

防水工

建物を雨水や湿気から守り、漏水を防ぐ専門職です。屋上やバルコニー、外壁などに、防水シートやシーリング材を用いて防水層を形成します。建物の劣化を防ぎ、寿命を延ばす上で欠かせない重要な役割を担います。

平均年収の目安は約520万円です。専門性が高く、建物の維持に不可欠なため安定した需要があります。特に大規模修繕工事などでは高い技術が求められ、高単価の案件を受注できる可能性があります。

大工

主に木材を加工し、建物の骨組みから内装までを手がける建築の専門家です。設計図を読み解き、木材を刻み、組み立てる技術はもちろん、建築基準法などの知識も必要とされます。新築工事からリフォームまで、活躍の場は非常に広いです。

平均年収の目安は約517万円ですが、実力次第で大きく収入が変わる職種です。腕の良い大工は常に引く手あまたであり、元請けとして直接仕事を受注できるようになれば、年収1,000万円以上を目指すことも可能です。

電気工事士

建物内外の電気設備の配線や設置、修理、保守を行う専門職です。コンセントや照明器具の取り付けから、複雑な電気回路の構築まで担当します。安全規則の遵守が絶対であり、国家資格である「電気工事士」の資格が必須です。

平均年収の目安は約506万円です。資格が必須であるため専門性が高く、AIなどに代替されにくい安定した職種と言えます。オール電化やスマートホームの普及により、今後も需要の拡大が見込まれます。

左官

コテを巧みに使い、壁や床などにモルタルや漆喰、珪藻土などを塗り上げて仕上げる職人です。その技術は芸術の域に達することもあり、仕上がりの美しさが直接評価されます。

平均年収の目安は約500万円です。近年、自然素材への関心の高まりから需要が再評価されています。技術の習得には時間がかかりますが、熟練した職人になれば高単価の指名案件も期待できます。

解体工

古くなった建造物を安全かつ効率的に解体する仕事です。重機を操作するだけでなく、内装材の手作業での撤去や、廃材の分別作業も含まれます。街の再開発や建て替えに不可欠な職種です。

平均年収の目安は約480万円です。建て替えや空き家問題などで仕事の需要は安定していますが、体力的な負担も大きい仕事です。

造園家

個人宅の庭園から公園、商業施設の緑地まで、屋外空間を設計・施工し、美しく維持管理する仕事です。樹木の剪定や植栽、石組みなど、植物の知識とデザインセンス、そして体力を要します。

一人親方としての平均年収は約418万円ですが、個人の顧客を掴み、年間管理契約などを結ぶことで安定した高収入を得ている職人も多くいます。センスと技術力が収入に直結しやすい世界です。

溶接工

金属の部材同士を熱で溶かして接合する「溶接」を専門に行う技術者です。建設現場の鉄骨や、機械の部品、配管など、様々な場面で活躍します。強度と精度を両立させる高度なスキルが求められます。

平均年収の目安は約376万円とされていますが、これはあくまで平均値です。特殊な素材の溶接や水中溶接など、高度な技術や資格を持つ溶接工は非常に単価が高く、個人のスキル次第で年収を大きく伸ばせる可能性があります。

一人親方が手取りを増やす方法

効率的な働き方を導入する

一人親方として手取りを増やすためには、まず仕事の効率を上げることが大切です。タスク管理ツールを活用することで、仕事の優先順位を明確にし、時間を有効に使うことができます。

また、仕事の自動化にも注目しましょう。例えば、見積もり作成や請求書の発行などの定型作業は、適切なソフトウェアを使うことで時間を大幅に短縮できます。

スキルアップ

自身のスキルを向上させることも、収入を増やす重要な方法の一つです。新しい技術や方法を学ぶことで、より高価な案件を獲得できる可能性が高まります。

現場での効率化だけでなく、オンラインコースや資格取得で知識を深めることも有効です。さらに、スキルアップは仕事の幅を広げ、多様な依頼を受けられるようにすることで収入源を増やすことにも繋がります。

費用を削減する

利益を最大化するためには、不必要な出費を減らすことが肝心です。例えば、材料の購入費を抑えるために、複数の供給業者から見積もりを取り、最もコストパフォーマンスの高い選択をすることが重要です。

また、工具や機器のメンテナンスを定期的に行い、長期的な視点でコストを考えることも大切です。無駄な支出を見直し、効率的な経営を目指すことが収入アップに繋がります。

ネットワークの拡大

仕事の依頼は、人との繋がりから得られることが多いです。そのため、業界内外でのネットワークを積極的に拡大することが大切です。SNSを活用することで、仕事の見つけ方も多様化します。

また、同業者との情報交換は、新しい技術やトレンドを知る良い機会になり、それが新たな収入源を見つけるきっかけにもなります。信頼できるパートナーを見つけられれば、大きなプロジェクトにも対応できるようになるでしょう。

一人親方で年収1,000万円は達成可能?

一人親方として年収1,000万円を達成することは、決して不可能なことではありません。しかし、この金額を実現するには、様々な努力と戦略が必要です。

継続的なスキルアップ、効率的なビジネス運営、幅広い顧客基盤の構築、そして収入源の多角化により、高収入の実現が見込めるでしょう。

それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

成功のための戦略

年収1,000万円を目指すには、ただ単に働くだけでは不十分です。質の高いサービスかつ効率良く仕事を行うことが求められます。これには、最新の業界トレンドの追跡、技術力の継続的な向上、そして優れた顧客サービスが欠かせません。

また、自身のビジネスを拡大するための投資も重要になってきます。新たな設備投資や、広告・宣伝による可視性の向上などが考えられます。

顧客基盤の拡大

一人親方が年収を増やすためには、安定した顧客基盤を構築することが不可欠です。これには、高品質な仕事を継続的に提供することで、口コミやリピートによる新規顧客の獲得が可能となります。

さらに、SNSや自身のWebサイトを活用することで、より広くサービスを宣伝し、顧客層を広げる努力も重要です。

収入の多角化

年収を増やすためには、収入源を多角化することも一つの方法です。例えば、本業の収入に加えて、セミナーやオンラインコースの提供、関連する商品やツールの販売など、さまざまな方法で収入を得ることが考えられます。

この場合、自身の知識やスキルを生かしたサービスや商品を提供し、さらなる収益を目指すことが重要です。

年収から見た一人親方と会社員の違い

一人親方として働くことの最大の魅力の一つは、業務の自由度にあります。一方で、会社員として働く場合、安定した収入と福利厚生が魅力です。

一般的に、一人親方はプロジェクトベースで仕事を受注します。そのため、仕事の量によって収入が大きく変動する可能性があります。一方、会社員は固定給で毎月安定した収入を得ることができ、年収も比較的予測しやすい傾向にあります。また、健康保険や雇用保険、年金などの社会保険にも会社を通じて加入するため、福利厚生の面で有利です。

しかし、一人親方は自己管理のもと、高度なスキルや専門知識を活かして収入を上げることが可能です。特に高い技術力を持つ一人親方は、会社員よりも遥かに多くの年収を得られることがあります。ただし、これには個人のビジネス運営能力や市場での需要が大きく影響します。

一人親方と会社員の年収の違いを具体的に見るために、以下に比較表を示します。

項目一人親方会社員
平均年収変動あり(業界やスキルによる)一定(役職や勤続年数による増加あり)
収入の安定性低い(仕事の量に依存)高い(固定給)
福利厚生自己負担が大きい企業が提供(健康保険・雇用保険・年金など)
リスク高い(収入不安定、自己管理)低い(安定収入、社会保障)

この表からもわかるように、一人親方が会社員に比べて収入の面で大きなリスクを負うこともありますが、その反面、自身の技術や努力によって高収入を得るチャンスも秘めています。

一方、会社員は比較的安定した生活を送ることができる代わりに、所得の増加幅が会社によって定められている場合が多いです。

一人親方になるための3つのステップ

会社を辞めて一人親方として活動を始めるには、いくつかの手続きが必要です。

ステップ1:税務署への届出

管轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出します。節税効果の高い「青色申告承認申請書(該当年の翌年3月15日までに要申告)」も同時に提出するのがおすすめです。

ステップ2:年金・健康保険の切り替え

会社を退職したら、市区町村の役所で厚生年金から「国民年金」へ、会社の健康保険から「国民健康保険」への切り替え手続きを行います。

ステップ3:労災保険への特別加入

一人親方は労働者ではないため、通常は労災保険の対象外です。しかし、建設業はケガのリスクが高いため、必ず「一人親方労災保険組合」を通じて労災保険に特別加入しましょう。現場によっては加入が必須条件の場合もあります。

スキルと信頼が、一人親方の年収を決める

一人親方の年収は、職種ごとの専門性や需要によって大きく異なりますが、平均的には400万円から600万円が一つの目安となります。しかし、これはあくまで平均値であり、一人親方の収入に上限はありません。

今回解説したように、塗装工や鉄筋工のように高い専門性が求められる職種では年収が上がりやすく、一方で大工や内装工のように、個人の技術力と信頼が直接高単価の仕事に結びつく職種もあります。

どの職種を選ぶにせよ、収入を安定させ、さらに向上させていくためには、自身の技術を磨き続ける向上心と、顧客との信頼関係を築くコミュニケーション能力が不可欠です。働き方の自由度が高い反面、全てが自己責任となる厳しい世界ですが、自分の腕一本で道を切り拓いていける、大きなやりがいのある仕事と言えるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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