- 更新日 : 2024年8月8日
雑収入とは?雑所得や事業所得との違い、仕訳例をわかりやすく解説
個人でも法人でも、よく使う勘定科目に「雑収入」があります。この雑収入とはどのようなときに使う勘定科目なのでしょうか。また、個人の場合は似たようなものに「雑所得」があり、混同されることもあります。
そこで、ここでは雑収入の概要や他の所得との違い、仕訳や会計処理について詳しく解説します。
目次
雑収入とは?
会社の経営状態を把握するためなど、さまざまな理由で、個人でも法人でも本業の収入とそれ以外の収入は分けて管理します。簡単にいうと、本業以外の収入を管理する科目が「雑収入」です。
具体的にいうと雑収入は、営業外の収益に属し、収入の中で他のどの勘定科目にも分けることができない場合や、独立科目として管理するほど金額的に重要でない収入を計上する勘定科目のことです。
雑収入は雑役とも呼ばれており、営業外収益のうち 「その他の収入 」に該当します。
雑収入として処理する内容は、業種や会社によって大きく異なります。
法人の場合は、会社が行なう収入の管理として、法人税申告書の勘定科目内訳明細書の中に、雑収入の内訳を記入することが必要です。
雑収入の仕訳においては、補助科目、摘要などを活用することで、内容を分かりやすくしておくことが望ましいです。
雑所得との違い
個人では、1年間に得た収入を、その内容から10の区分に分けて所得金額や税金の計算を行います。個人における所得区分は、次の通りです。
| 所得区分 | 収入の内容 |
|---|---|
| 利子所得 | 預貯金や公社債などの利子(利息) |
| 配当所得 | 株式、投資信託などの配当 |
| 不動産所得 | 土地・建物などの貸付けによる収入 |
| 事業所得 | 農業や小売業、製造業などの収入 |
| 給与所得 | 勤務先からの給料や賞与 |
| 退職所得 | 勤務先からの退職金など |
| 山林所得 | 山林を伐採し売却した際の収入 |
| 譲渡所得 | 土地・建物、株式などの売却した時など |
| 一時所得 | 懸賞や福引の賞金、競馬の馬券の払戻金など一時的な収入 |
| 雑所得 | 上記のいずれにも該当しない収入 |
雑収入も雑所得も、本業以外の収入ということでは同じです。しかし、雑所得は他の所得に該当しない収入のみが該当します。例えば、国民年金などの公的年金、国税や地方税の還付加算金などが雑所得になります。
一方、雑収入は本業の収入ではないが、本業に付随する収入を処理する科目です。
例えば、製品を製造する際に出た作業くずの売却収入や、持続化給付金の収入などが雑収入になります。
雑所得については以下の記事で詳しく解説しています。
事業所得との違い
実は、雑収入は事業所得の収入のひとつになります。事業に関係する収入の中で、本業の収入が「売上高」であり、本業に付随する収入が「雑収入」です。
製造業でいうと、製造した製品そのものの売却収入が「売上高」、製品を製造する際に出た作業くずの売却収入が「雑収入」になります。青色申告決算書の損益計算書では、売上高と雑収入はまとめて「売上(収入)金額」として表示されます。
事業所得については以下の記事で詳しく解説しています。
雑収入の例
雑収入に含まれるのは、本業の売上や営業外収益以外の勘定科目に該当する、重要度の低い収益です。例えば以下の収入が雑収入に計上される可能性があります。
| 雑収入の例 |
|---|
|
注意しなければならないのは、雑収入の説明でも先述したように、会社によって雑収入に含めるべき項目が異なることです。
上記の雑収入の例として取り上げた収入であっても、本業の収入に含まれるものは雑収入ではなく、売上高に区分します(例えば、不動産の運用を主な事業とする場合の家賃収入は本業であるため売上高に該当します)。
また、本業以外の収入であっても、総収入に占める割合が大きいなどの重要性の高い項目は、独立した勘定科目で表示しなければなりません。
雑収入の仕訳・会計処理
法人はもちろんのこと、個人の場合も雑収入は事業所得に該当するため、帳簿付けが必要です。そのため、雑収入の仕訳をする必要があります。具体例を見ていきましょう。
(例)製造過程で出た作業くずを、10万円で売却し現金で受け取った。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 100,000円 | 雑収入 | 100,000円 |
(例)事業用の普通預金に、持続化給付金100万円が振り込まれた。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 100,000円 | 雑収入 | 100,000円 |
雑収入の税法上の取扱い
次に、雑収入の税法上の取り扱いを見ていきましょう。
基本的に雑収入は消費税課税対象
消費税の課税事業者である場合は、雑収入が消費税の課税対象がどうかを判断する必要があります。雑収入が消費税の課税対象かどうかを判断するには、その取引に対価があるかどうかを見極める必要があります。対価とは、自分の所有している財産や労力を他人に提供した際に受ける報酬などの利益のことです。
例えば、上記の作業くずの場合は、作業くずを取引先に提供し、代金という対価を得ています。そのため消費税の課税対象です。このように、基本的に雑収入は消費税の課税対象となります。
課税対象外となる雑収入も
雑収入であったとしても、対価のないものは消費税の課税対象外です。例えば、上記の持続化給付金の場合は、国から給付金を受け取っていますが、国に財産や労力を提供していません。そのため、消費税の課税対象外の取引になります。
雑収入には消費税の課税対象の取引と課税対象外の取引があるため、注意が必要です。
【個人事業主・確定申告】雑収入と雑所得を間違えるとどうなる?
雑収入と雑所得は別のものです。そこで、ここでは雑収入と雑所得を間違えるとどうなるのか見ていきましょう。
雑所得は青色申告の対象外
実は雑収入(事業所得)も雑所得も、所得金額は「収入-必要経費」で求めます。これだけ見ると、雑収入と雑所得を間違えても問題ないように見えますが、そうではありません。なぜなら、雑所得は青色申告を受けられないからです。雑所得は青色申告の対象外であるため、さまざまな特典を受けることができず、損をすることもあります。
青色申告特別控除が受けられない
青色申告の特典の中で最も大きいのが、青色申告特別控除です。青色申告特別控除は、青色申告をしているだけで受けられる控除のことです。さまざまな要件はありますが、最大65万円の控除を受けることができます。
雑収入では65万円の控除を受けることができますが、雑所得では65万円の控除を受けることができないため、損をすることがあります。
雑所得だと雑収入より所得税が上がる場合も…
雑所得では青色申告特別控除を受けることができないため、雑収入を雑所得で処理すると、所得税が上がるケースもあります。具体例で見ていきましょう。
(例)本業の収入50万円 本業に付随する収入15万円 青色申告特別控除65万円の場合
- 本業に付随する収入を雑収入で処理した場合
事業所得金額=本業の収入50万円+雑収入15万円-青色申告特別控除65万円=0円
- 本業に付随する収入を雑所得で処理した場合
事業所得金額=本業の収入50万円-青色申告特別控除65万円=0円※
雑所得金額=15万円
合計所得金額15万円
※青色申告控除は事業所得金額までしか控除できないため、事業所得金額は0円になります。
この例を見ると、雑収入で処理した場合は、所得金額が0円なので所得税はかかりませんが、雑所得で処理した場合は所得金額が15万円残るため、所得税がかかります。
雑収入をきちんと理解して所得金額や税金を正しく計算しよう
雑収入とは、本業に付随する収入のことです。個人の場合は事業所得に該当するため、帳簿付けも必要です。また、雑所得と間違えて処理すると、所得金額や税額が違ってくるケースも多くあります。雑収入の内容や処理方法をきちんと理解し、正しく所得金額や税額を計算することが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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