- 更新日 : 2026年9月15日
不渡手形とは?不渡りを起こすとどうなる?発生した時の仕訳まで解説
不渡手形とは、支払期日に決済されなかった手形のことです。
- 6か月以内に2回の不渡りで銀行取引停止処分
- 不渡りの種類は0号・1号・2号の3種類
- 紙の手形交換は2027年3月末に廃止
Q. 不渡りを起こすとどうなる?
A. 取引先や金融機関からの信用が大きく低下し、2回目で銀行取引が停止されます。
「会社の資金繰りが悪くなって不渡りを出してしまうかも」という話を聞くことがあります。しかし、「不渡り」とは具体的にどのような状態なのかを知らない方も多いのではないでしょうか。
今回は、会社が不渡りを起こすとどうなるかについて解説します。さらに、不渡手形の種類や仕訳、不渡りの回避方法、「手形・小切手廃止」の影響についても解説しますので、ぜひご覧ください。
不渡手形とは?
不渡手形とは、支払期日に金融機関へ呈示されたものの、資金不足や記載不備などを理由に決済されなかった手形です。不渡りになると受取人が代金を回収できないだけでなく、振出人の信用や銀行取引にも重大な影響が及びます。
不渡手形は支払期日に決済されなかった手形
約束手形は、振出人が受取人に対して、将来の一定期日に所定の金額を支払うことを約束する有価証券です。受取人は通常、支払期日前に取引銀行へ取立を依頼し、銀行が支払期日またはこれに続く2取引日以内に支払呈示します。
しかし、振出人の当座預金に必要な資金がない場合や、手形の記載内容に不備がある場合などは決済できません。このように支払いを拒絶された状態を「不渡り」といい、決済されなかった手形を不渡手形と呼びます。
なお、約束手形は支払期日前でも、金融機関による手形割引を利用すれば現金化できる場合があります。
不渡りは原因によって取扱いが異なる
不渡りの代表的な原因は、振出人の資金不足や取引なしです。このほか、契約不履行、偽造・変造、呈示期間の経過、形式上の不備などによって支払われない場合もあります。
特に資金不足などによる不渡りは、振出人の信用を大きく損ないます。電子交換所では、6か月以内に2回の不渡りを起こすと、その後2年間、参加金融機関との当座預金取引や貸出取引が原則として停止される取引停止処分の対象になります。会社の資金調達や事業継続に深刻な影響が生じるため、振出人は支払期日までに十分な資金を準備する必要があります。
不渡りを起こすとどうなる?
取引先への影響
不渡りが出ると、取引先は本来受け取れるはずの代金を受け取れません。資金繰りにそれほど余裕がない取引先の場合、会社経営に影響が出ることもあるでしょう。
取引先からの信用を失い、取引が打ち切られるおそれもあります。新規の取引先獲得も難しくなると考えておきましょう。結果的に、事業を続けられなくなることもあります。
不渡りの種類は?
不渡りには「0号不渡り」「1号不渡り」「2号不渡り」があります。それぞれどのようなものか紹介します。
0号不渡り
0号不渡りは、以下のような手形の記載ミスで生じる不渡りです。
- 振出人の署名や押印がない
- 裏書に不備がある
- 支払地の記載がない など
0号不渡りは資金繰りが苦しくなって出た不渡りではないため、会社の信用には影響しません。また、不渡届の作成も行われないため、不渡りとして扱われません。
1号不渡り
一般的に不渡りと呼ばれているものが1号不渡りです。当座預金に残高がなく決済ができない、すでに銀行口座を解約してしまっていた、などの原因で発生します。不渡届が作成されるため、取引先や金融機関からの信用を失うでしょう。
なお、半年以内に2回不渡りを出すと銀行取引が停止されます。
2号不渡り
0号不渡りや1号不渡りに該当しないのが2号不渡りです。2号不渡りは、以下のような理由で発生します。
- 手形の偽造・変造
- 手形の盗難
- 契約不履行(手形を振り出したが商品が納入されないなど)
- 詐欺に遭って振り出した手形 など
2号不渡りでは不渡り届が作成されますが、振出側は異議申し立てができ、振出人の信用に影響はありません。ただし、異議申し立てをしない場合、1号不渡りと同じ扱いになるため注意が必要です。
不渡手形の仕訳は?
以下のケースにおける不渡手形の仕訳を紹介します。
- 不渡りが発生した時
- 不渡手形を回収した時
- 不渡手形を回収できなかった時
不渡りが発生した時
不渡りが発生した場合の仕訳は、以下のとおりです。
例)A社が振り出し、自社が保有する約束手形10万円が不渡りとなった。その際、A社に対し償還請求を行い、請求費用として1,000円を支払った。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 不渡手形 | 101,000 | 受取手形 | 100,000 |
| 現金 | 1,000 | ||
仕訳の際は、償還請求にかかった費用も不渡手形の費用に含めます。
不渡手形を回収した時
不渡手形を回収した場合の仕訳は、以下のとおりです。
例)A社が振り出した約束手形10万円が不渡りとなっていたが、後日回収できた。その際、延滞利息として100円を現金で受け取った。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 100,100 | 不渡手形 | 100,000 |
| 受取利息 | 100 | ||
遅延分の利息を受け取った場合は、不渡手形+受取利息分の金額が現金として増加したことがわかるように仕訳をします。
不渡手形を回収できなかった時
不渡手形を回収できなかった場合は、以下のように仕訳をします。
例)A社が振り出した約束手形10万円が不渡りとなり、自社は債権を放棄した。なお、貸倒引当金として1万円計上していた。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 貸倒損失 | 90,000 | 不渡手形 | 100,000 |
| 貸倒引当金 | 10,000 | ||
貸倒引当金は、手形を回収できない「貸倒」に備えて設定される勘定科目です。資本金1億円以下の中小企業や青色申告の個人事業主であれば、損金算入ができます。
不渡りを回避する方法は?
不渡りを出すと、会社の信用が大きく損なわれます。手形を振り出された側も、資金が手に入らないと資金繰りに窮する可能性があります。そのため、不渡りを出さないことが非常に重要です。不渡りの回避方法を3つ紹介しますので、把握しておきましょう。
売掛金の資金化(ファクタリング)
ファクタリングとは、売掛債権を売却して現金化することです。手形を受け取った側にとっては、本来の期日よりも前に資金が手に入るというメリットがあります。ファクタリングは借入や融資ではないため、会社の負債が増えることもありません。手形を受け取った側が、自社の資金繰りの不安を解消したいという場合に利用を検討するとよいでしょう。
ただし、ファクタリングを利用する際は、売掛債権の金額のすべてが手に入るわけではなく、割り引いて支払われます。また、ファクタリング会社に手数料を支払う必要もあります。なお、取引先との契約で「債権の譲渡は不可」などの取り決めがある場合はファクタリングを利用できない場合があるので注意しましょう。
手形のジャンプ
手形のジャンプとは、手形の振出側が受取側に対して、支払期日を延長してもらうことです。
交渉が成立したら、以下のいずれか方法で手形の修正を行います。
- 渡した手形の支払期日を書き直す
- 新しい期日を記載した新しい手形を振り出す
受取側にとっては入金が遅れることになるため、振出側は受取側が納得できる理由を説明する必要があります。また、必ず承諾してもらえるとは限りません。
過振り
過振りとは、当座預金の残高を超える金額の手形を振り出している場合、担保を預け、銀行に一時的に立て替えてもらうことです。
一時的とはいえ、不足分を銀行に支払ってもらうことになるため、非常に信用度が高い会社でないと利用できません。また、過振りを依頼する時点で残高不足であることが銀行に伝わるため、信用度が低下する可能性もあります。
不渡手形を受け取った場合の回収方法は?
不渡手形を受け取った場合は、振出人へ連絡するだけでなく、不渡りの原因や請求先、手形上の権利を確認する必要があります。時間がたつと回収が難しくなる可能性があるため、手形や不渡りに関する書類を保管し、早めに対応しましょう。
1.不渡りの原因と手形の内容を確認する
まず、取引銀行から返却された手形や不渡届などを確認し、不渡りの原因を把握します。資金不足によるものか、記載不備や契約上の争いによるものかによって、対応方法が異なるためです。
あわせて、手形金額、支払期日、振出人、裏書人などを確認し、請求できる相手を整理します。不渡手形の原本や契約書、請求書、納品書、銀行から受け取った書類は、回収手続きの証拠となるため保管しておきます。
2.振出人や裏書人へ支払いを請求する
振出人へ連絡し、手形金額や取立費用などの支払いを求めます。口頭での請求だけでなく、請求日や支払期限を記載した書面を送付して記録を残すことが重要です。
手形が裏書譲渡されたものである場合は、一定の要件を満たせば、振出人だけでなく裏書人などへ遡及請求できる可能性があります。手形法では、満期に支払いがなかった場合、所持人が振出人や裏書人などへ遡求権を行使できると定められています。
3.分割払いなどの回収条件を協議する
振出人に一括で支払う資金がない場合は、分割払い、担保の提供、保証人の設定などを協議します。合意した内容は、支払金額、期限、支払方法、遅延時の取扱いを記載した書面にします。
ただし、相手の経営状況が悪化している場合、支払猶予を続けるほど回収可能性が低下するおそれがあります。財産の処分や倒産が懸念される場合は、安易に長期間の分割払いへ応じず、専門家へ相談します。
4.支払督促や訴訟などの法的手続きを検討する
任意の請求で支払われない場合は、支払督促や訴訟を検討します。支払督促は、金銭債務について債権者の申立てに基づき、簡易裁判所が支払いを命じる手続きです。相手が異議を申し立てなければ、強制執行へ進める場合があります。
相手が財産を処分するおそれがある場合は、仮差押えが必要になることもあります。手形上の請求権には行使期限があるため、不渡り発生後は弁護士などへ早めに相談することが重要です。
手形や小切手は廃止される?不渡手形への影響は?
紙の手形・小切手は「法律上、廃止される」わけではありません。正確には、電子交換所での交換が廃止されるものです。
紙の手形・小切手は2027年3月末に交換が廃止される
全国銀行協会は、電子交換所における紙の手形・小切手の交換を2027年3月31日で廃止します。2027年4月以降も手形法や小切手法が直ちに廃止されるわけではなく、紙の手形・小切手が法律上無効になるものでもありません。
ただし、電子交換所を介した決済ができなくなるため、金融機関によっては取扱いを終了します。最終振出期限を公表している金融機関の多くは、2026年9月30日を期限としており、以降に振り出された手形・小切手は原則として当座預金から支払われない場合があります。
交換廃止までは不渡情報制度が引き続き適用される
電子交換所で手形・小切手が交換されている間は、資金不足などによって決済できなかった手形は不渡手形として扱われます。電子交換所では、不渡情報の登録や共同利用、取引停止処分制度が運営されています。
そのため、交換廃止前に振り出された手形が不渡りとなれば、振出人の信用低下や銀行取引への影響が生じる点は従来と変わりません。既に発行された手形については、支払期日や取引銀行の最終取立受付日を確認し、期日までに決済資金を準備する必要があります。
電子化後も支払不能のリスク自体はなくならない
紙の手形が減少すれば、「不渡手形」と呼ばれる事例も減ると考えられます。しかし、代替手段である「でんさい」などの電子記録債権でも、支払期日に資金を用意できなければ支払不能になります。
でんさいには、紙の手形における取引停止処分と同等の支払不能処分制度が設けられています。電子化によって紙の紛失や取立の負担は軽減されますが、支払遅延や信用低下のリスクまでなくなるわけではありません。
手形廃止に向けて企業が行うべきことは?
電子交換所における紙の手形・小切手の交換は、2027年3月31日に廃止されます。現在も手形を利用している企業は、決済資金を確保するだけでなく、取引先との支払条件、社内システム、既発行手形の管理を見直す必要があります。
銀行振込やでんさいへ決済方法を切り替える
まず、紙の手形に代わる決済方法を決めます。現金を直接受け渡すのではなく、インターネットバンキングによる銀行振込や、でんさいなどの電子記録債権へ切り替える方法が一般的です。全国銀行協会と金融庁も、これらの電子的決済手段への早期移行を案内しています。
でんさいを利用する場合は、支払側と受取側の双方が利用契約を結ぶ必要があります。取引先へ切替時期や支払サイトを案内し、数社で試験運用してから対象を広げると、混乱を抑えやすくなります。
支払条件と資金繰り計画を見直す
手形から銀行振込へ変更すると、従来より支払時期が早まり、手元資金が減少する可能性があります。そのため、取引先と支払日や支払サイトを協議し、月ごとの入出金予定を見直す必要があります。
資金不足が見込まれる場合は、手形を単純に借入金で早期決済するのではなく、運転資金の借入枠や当座貸越、入金条件の変更などを金融機関と相談します。既発行の手形を期日前に決済する場合は、受取人の合意や手形原本の回収などが必要になるため、一方的に処理しないことが重要です。
既発行手形と社内業務を整理する
発行済み・受領済みの手形について、振出日、支払期日、取立受付期限、取引銀行を一覧化します。金融機関の多くは2026年9月30日を最終振出期限としており、2026年10月1日以降に振り出した手形は、原則として当座勘定から支払えない場合があります。
あわせて、請求書や契約書の支払方法、会計システムの勘定科目、承認フローを変更します。でんさいへ移行する場合は「受取手形・支払手形」ではなく、「電子記録債権・電子記録債務」を使用するため、経理担当者への周知も必要です。
手形・小切手の代替になるものとは?
紙の手形・小切手の利用縮小に伴い、企業は銀行振込や電子記録債権などへ決済方法を切り替える必要があります。代替手段によって支払時期、手数料、資金繰りへの影響が異なるため、取引先と条件を調整したうえで導入しましょう。
【銀行振込】導入しやすい代替手段
銀行振込は、取引先の預金口座へ代金を送金する方法です。多くの企業がすでに利用しており、インターネットバンキングを使えば、窓口へ出向かずに支払手続きを行えます。小切手の代替としては、特に導入しやすい方法です。
移行する際は、「月末締め翌月末払い」などの締日と支払日、振込手数料の負担者を取引先と取り決めます。手形から振込へ変更すると支払時期が早まる場合があるため、支払側は資金繰りへの影響を確認する必要があります。また、振込先の誤りや二重送金を防ぐため、口座情報の確認や承認手続きも整備しましょう。
【電子記録債権】手形に近い機能を電子化した仕組み
電子記録債権とは、電子債権記録機関の記録原簿へ発生や譲渡を記録することで成立する金銭債権です。代表的なサービスとして「でんさい」があり、支払期日を設定できるため、約束手形に近い形で後払いに利用できます。
紙の証書を発行しないため、紛失・盗難・偽造のリスクや、印紙税、保管・郵送の負担を減らせます。支払期日になると、原則として支払企業の口座から受取企業の口座へ自動的に送金されます。また、債権を分割して譲渡したり、金融機関で期日前に資金化したりすることも可能です。
ただし、利用には金融機関を通じた契約が必要であり、取引先側も対応していなければ利用できません。導入前に対象取引先、利用手数料、社内の承認・会計処理を確認する必要があります。
不渡手形を出さない経営を!
手形を利用することには、現時点で当座預金に残高がなくても他の会社と取引ができるというメリットがあります。しかし、支払期日までに当座預金を準備できない場合は不渡りとなり、取引先や金融機関からの信用を失うため注意が必要です。不渡りを出さない経営を心がけなければなりません。
また、電子交換所における紙の手形・小切手の交換は2027年3月31日で廃止が予定されており、以降は現金振込や電子記録債権等で決済することになります。今のうちに、手形以外の決済方法について理解を深めておきましょう。
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