- 更新日 : 2025年8月5日
二次健康診断は自己負担?受診方法や二次健康診断等給付についても解説
健康診断の結果、「要精密検査」や「要再検査」の判定が出て不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。会社で行われる健康診断は費用がかからないのに、二次健康診断は自己負担になるのか、どうやって受診すれば良いのかなど、わからないことも多いです。
この記事では、二次健康診断の費用負担の有無や受診方法について詳しく解説します。また、特定の条件を満たせば国から給付金が受けられる「二次健康診断等給付」についてもご紹介します。
目次
二次健康診断とは?
一次健康診断の結果、より詳しい検査が必要と判断された場合に受けるのが二次健康診断です。ここでは、その基本的な位置づけと目的を簡潔に見ていきましょう。
一次健康診断との違いと二次健康診断の目的
定期健康診断などの一次健康診断は、広範な健康状態をチェックし、潜在的なリスクを早期に発見することを目的としています。一方、二次健康診断は、一次で「異常の所見」が見つかった特定の項目について、より詳細な検査を行い、状態を正確に把握するために実施されます。主な目的は、疑われる病気の原因特定や正確な診断、あるいは病気の可能性の否定です。二次健康診断の指示は、必ずしも重篤な病気を意味するわけではなく、健康状態を明確にするためのステップと捉えましょう。
「再検査」や「精密検査」との関連性
「再検査」は、一次健康診断での異常値が一時的か継続的かを確認するため、同じ検査を再度行うことを指します。「精密検査」は、異常の原因や程度をより詳しく調べるための専門的な検査です。労災保険の「二次健康診断等給付」で対象となるのは、脳血管疾患や心臓疾患に関連する詳細な検査であり、この「精密検査」に該当します。
二次健康診断の費用負担は?
二次健康診断の費用は、原則として自己負担となる場合があります。一般的な費用負担と企業の役割について確認しましょう。
原則としての費用負担
企業が実施義務を負う一次健康診断の費用は企業負担ですが、二次健康診断の費用は原則として従業員本人の負担です。多くの場合、二次健康診断は健康保険が適用され、自己負担は医療費の3割程度(年齢や所得により変動)となります。ただし、保険適用外の項目や全額自己負担となるケースもあります。
一般的な二次検査の費用目安(3割負担時)は以下の通りですが、あくまで目安です。
血液検査:2,500円~3,000円程度
尿検査:1,000円~1,500円程度
MRI検査:5,000円~20,000円程度
CT検査:6,000円~13,000円程度
超音波検査:1,000円~3,000円程度
胃カメラ検査:4,000円程度
大腸カメラ検査:5,000円~10,000円程度
会社に費用負担の義務はある?
二次健康診断の費用について、企業に法的な負担義務はありません。ただし、福利厚生として費用補助制度を設けている企業もあります。有害業務従事者の特殊健康診断後の二次健康診断は企業負担となります。
交通費の取り扱いについて
二次健康診断の医療機関への交通費は、原則自己負担です。労災保険の「二次健康診断等給付」を利用する場合も同様です。
労災保険の「二次健康診断等給付」とは?
費用負担なく詳細な検査と専門的なアドバイスを受けられる「二次健康診断等給付」について解説します。
制度の目的と概要
「二次健康診断等給付」は労災保険法に基づく制度で、過労などが原因でリスクが高まる脳血管疾患や心臓疾患(いわゆる「過労死」関連疾患)を未然に防ぐことを目的としています。職場の一次健康診断で脳・心臓疾患関連項目に異常所見があった労働者が、二次健康診断と特定保健指導を自己負担なし(無料)で受けられます。費用立て替え不要の「現物給付」です。
給付の対象となる条件
この給付を受けるには、以下の全条件を満たす必要があります。
一次健康診断の結果、特定の4項目すべてに異常所見があること:直近の一次健康診断で、血圧検査、血中脂質検査、血糖検査、腹囲またはBMI測定の全てで「異常の所見」が必要です。具体的な基準値例は以下の通りです。
二次健康診断等給付の対象となる一次健康診断の検査項目と「異常あり」とされる基準値の例
検査項目 | 「異常あり」とされる基準値の例(一次健康診断) |
---|---|
血圧検査 | 最高血圧:130mmHg以上または最低血圧:85mmHg以上 |
血中脂質検査 | HDLコレステロール:40mg/dl未満またはLDLコレステロール:120mg/dl以上または中性脂肪:150mg/dl以上(空腹時) |
血糖検査 | 空腹時血糖:100mg/dl以上またはヘモグロビンA1c:5.6%以上 |
腹囲・BMI | 男性85cm以上/女性90cm以上またはBMI値:25以上 |
産業医が勤務状況等を考慮し「異常所見あり」と認めた場合は、その意見が優先されることがあります。
脳・心臓疾患の症状を有していないこと:既に脳・心臓疾患で治療中の場合は対象外です。労災保険の特別加入者でないこと:事業主や一人親方などの特別加入者は対象外です。
給付される検査内容
二次健康診断では、脳血管と心臓の状態を詳しく調べる以下の検査が行われます。
二次健康診断等給付に含まれる検査内容
空腹時血中脂質検査 | 空腹時において血液を採取し、血中脂質を測定する検査。 |
---|---|
空腹時血糖値検査 | 食事の影響を排した状態での血糖値を測定。 |
ヘモグロビンA1c検査 | 過去1~2ヶ月の平均血糖状態を反映(一次未実施時)。 |
負荷心電図検査または胸部超音波検査(心エコー検査) | いずれか一方を選択。運動負荷時の心電図変化や心臓の動きを観察。 |
|頸部超音波検査(頸部エコー検査) | 頸動脈の動脈硬化の進行度を評価。 |
微量アルブミン尿検査 | 腎臓の初期障害や血管機能異常を検出(一次で尿蛋白疑陽性・弱陽性時) |
特定保健指導とは?具体的な内容と時間
二次健康診断の結果に基づき、医師または保健師による個別の健康指導(特定保健指導)も給付に含まれます。内容は栄養指導、運動指導、生活指導が中心で、面談時間は1人20分以上が目安です。二次健康診断の結果、脳・心臓疾患の症状が認められた場合は実施されません。
二次健康診断等給付の受け方
この制度を利用するための手続きと注意点を押さえましょう。
申請手続きの流れ
申請は以下の手順で行います。
- 請求書の入手
「二次健康診断等給付請求書」を入手します(厚生労働省HPなど)。 - 請求書の記入
必要事項を記入します(事業主証明が必要な箇所あり)。 - 添付書類の準備
一次健康診断結果票のコピーなど、4項目全ての異常所見を証明する書類を添付します。 - 医療機関への提出
請求書と添付書類を「健診給付病院等」(労災病院または都道府県労働局長指定の医療機関)に提出します。 - 医療機関経由での申請
健診給付病院等が管轄の都道府県労働局長宛に請求書を送付します。
申請期限と受診回数
一次健康診断を受診した日から3ヶ月以内に請求する必要があります。ただし、やむを得ない事情がある場合は例外的に認められることもあります。
この助成金を受給できるのは、1年度内(4月1日から翌年3月31日まで)に1回のみです。
受診可能な医療機関の探し方
受診は、労災病院または都道府県労働局長が指定した「健診給付病院等」に限られます。これらのリストは厚生労働省や各都道府県労働局のウェブサイトで確認できます。
申請・受診時の注意点
- 受給資格基準を再確認してください。
- 書類は正確に、漏れなく準備しましょう。
- 申請期限を厳守してください。
- 給付対象外の検査や治療は別途費用が発生する可能性があります。
- 交通費は原則自己負担です。
- 受診時間は必ずしも労働時間扱いとは限りません。事前に企業に確認しましょう。
事業者の役割と労働者の権利
二次健康診断における事業者と労働者の関わりについて解説します。
事業者による受診勧奨
企業に二次健康診断の費用負担義務はありませんが、労働安全衛生法では、健康診断結果に基づき健康保持に努める必要がある労働者に対し、医師等による保健指導を行うよう努めるべきとされています(努力義務)。これには、二次健康診断等給付の対象となり得る労働者への受診勧奨や制度の情報提供も含まれます。
もし受診を拒否したら?
企業は従業員に一次健康診断を受けさせる義務がありますが、一般的な二次健康診断の受診を強制はできません。従業員にも受診義務はありません。受診拒否を理由に不利益な取り扱いをすることもできません。しかし、健康上のリスクを考えると、専門医の診断を受けることが望ましいです。
二次健康診断は一部を除き自己負担となります
二次健康診断、特に労災保険の「二次健康診断等給付」は、自己負担なく脳血管疾患や心臓疾患のリスクを早期に発見・予防できる重要な制度です。一次健康診断で関連項目に異常が見られた方は、対象条件を確認し、申請期限内に手続きを進めることをお勧めします。不明点は勤務先の担当者や都道府県労働局に相談しましょう。ご自身の健康管理のために、利用できる制度を賢く活用してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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