• 作成日 : 2025年4月25日

一人親方は請負業者賠償責任保険に入るべき?補償や費用の目安を解説

一人親方が仕事をするうえで、現場での事故やトラブルは避けられません。特に、他人の財産を壊したり、第三者にけがをさせたりすると、高額な損害賠償が発生することがあります。こうしたリスクに備えるために、請負業者賠償責任保険に加入しておくことが大切です。この記事では、請負業者賠償責任保険の概要や補償内容、労災保険との違い、費用の考え方や選び方のポイント、経費処理について詳しく解説します。

一人親方は請負業者賠償責任保険に入るべき?

請負業者賠償責任保険は、業務中に発生した対人・対物事故に対して請負業者が負う損害賠償を補償する保険です。例えば、作業中に足場が崩れて通行人にけがを負わせたり、誤って工具を落として車を破損させたりするケースが考えられます。

例えば、工事現場での作業中に脚立を倒してしまい、近くの車に傷をつけた場合、車の修理代を請求されることになります。また、高所作業中に誤って工具を落とし、通行人にけがをさせた場合、治療費や慰謝料の支払いが必要になることもあります。こうしたトラブルが発生したとき、請負業者賠償責任保険があれば、保険金で対応することができます。

建設業で発生する高額な賠償事故の実例

建設業では、一度の事故で数百万円から数千万円の損害賠償が発生することもあります。例えば、以下のようなケースが実際に報告されています。

①道路を掘削する土木工事中に、通行人が掘削された穴に転落したケース

事故により通行人が後遺障害1級相当の重篤な障害を負ったことにより訴訟となり、最終的に通行人に対して3,300万円の賠償金を支払いをすることにより示談が成立した。

②造成地で借りていた建設用工作車が土砂に埋まったケース

造成工事の現場で借りていた建設用工作車を使った作業中に、建設用工作車が土砂に埋まり全損したことにより、約890万円の損害賠償の支払いが必要となった。

③住宅建物の水道栓工事後に漏水が発生したケース

工事が完了した後に水道栓の接続不良により漏水が発生して水濡れ損害が生じたため、約2,500万円の損害賠償金を支払うこととなった。

  • 足場崩壊による第三者の負傷事故
    作業中に足場が崩れ、通行人が下敷きになった。治療費や慰謝料などで合計1,000万円以上の賠償責任が発生した。
  • 工具の落下による物損事故
    高所作業中に工具を落とし、駐車中の高級車を破損。修理費として約300万円の支払いが必要になった。
  • 施工ミスによる損害
    水道工事のミスにより、新築住宅の床下が水浸しに。修復費用として500万円以上の負担が発生した。

請負業者賠償責任保険と工事保険、労災保険の違い

請負業者賠償責任保険、工事保険、労災保険はそれぞれ補償対象や目的が異なります。

  • 請負業者賠償責任保険:請負業者が業務中に第三者に与えた対人・対物の損害を補償。
  • 工事保険:施工中の建築物や資材が損害を受けた場合の損害を補償。
  • 労災保険:一人親方自身が業務または通勤中に傷病を負った際の治療費や休業などを補償。

例えば、作業中に工具を落として第三者の車に傷をつけた場合は、請負業者賠償責任保険の対象になります。一方、工事中の建物が台風で壊れた場合は、工事保険が適用されます。また、作業中に自身が転落し、治療が必要になった場合は労災保険で補償されます。

それぞれの保険は補償範囲が異なるため、一人親方として適切な保険を組み合わせることが大切です。

一人親方の請負業者賠償責任保険の補償内容

請負業者賠償責任保険の補償内容は、主に「対人賠償」と「対物賠償」の2つに分かれます。

  • 対人賠償:工事や作業中に第三者にけがを負わせた場合の治療費や慰謝料を補償。
  • 対物賠償:工事や作業中に他人の財産を破損させた場合の修理費や再調達費用を補償。

補償期間は契約時に決められ、その多くが1年間の包括契約か、特定の工事期間中を期間とするスポット契約のいずれかとなっています。

一人親方が受けられる請負業者賠償責任保険の費用の目安

請負業者賠償責任保険の保険料は、保険の対象となる工事や仕事の内容・規模、支払限度額や免責金額の設定等によって異なります。

具体的な保険料は、以下の要素によって変動します。

  • 業種:リスクの高い業種ほど保険料が高くなる傾向があります。
  • 補償範囲:補償内容や特約を追加することで保険料が増加します。
  • 保険金額:設定する保険金額が高いほど保険料も高くなります。

保険会社やプランによっても保険料は異なるため、複数の保険会社から見積もりを取り、比較検討することをおすすめします。

一人親方が請負業者賠償責任保険に付加できる特約

請負業者賠償責任保険は、業務中に第三者や他人の財産に与えた損害を補償する保険ですが、保険会社やプランによって補償範囲が異なります。また、特約を付加することで、補償範囲を広げることが可能です。例えば、以下のような特約があります。

  • 管理財物損壊補償特約:保険加入者が管理している財物を損壊して損害が発生した場合の補償
  • 借用財物損壊補償特約:借りている物品を損壊して損害が発生した場合の補償
  • 支給財物損壊補償特約:業務の遂行のために支給された資材や機械を損壊して損害が発生し場合の補償
  • 工事遅延損害特約:保険金が発生する事故が起こったことにより工事が6日以上遅延し、損害が発生した場合の補償
  • 地盤崩壊危険補償特約:地下で行われる工事や建物と地面のつなぎ目となる土台を作る基礎工事や、土を掘る掘削工事にともなう損害が発生した場合の補償

これらの特約を必要に応じて付加することで、より安心して業務に取り組むことができます。ただし、特約を追加することで保険料が増加する場合があるため、必要性を検討した上で選択しましょう。

一人親方が請負業者賠償責任保険を選ぶポイント

請負業者賠償責任保険を選ぶ際には、以下のポイントに注意すると良いでしょう。

保険料と補償額のバランス

保険料は、補償内容や特約の有無、業種や年間売上高などによって変動します。保険料を抑えたい場合は、必要最低限の補償に絞ることも検討できますが、万が一の際に十分な補償が受けられない可能性もあるため、補償額とのバランスを考慮して選ぶことが重要です。

保険会社の信頼性とサポート体制

保険会社の信頼性や事故発生時のサポート体制も重要なポイントです。事故が起きた際に迅速かつ適切な対応をしてもらえるか、また、問い合わせや手続きがスムーズに行えるかなどを確認しておくと安心です。口コミや評判、実績などを参考に、信頼できる保険会社を選ぶようにしましょう。

契約期間と更新手続き

保険の契約期間も検討をすべきポイントです。一般的に、契約は1年間の包括契約か、特定の工事に関するスポット契約です。。継続して同じ保険会社と契約をすることも可能ですが、業務内容の変更や売上高の増減などにより補償内容や保険料が変わることもあるため、定期的に見直しを行い、自分の状況に合った保険を継続することが大切です。

一人親方の請負業者賠償責任保険は経費になる?

請負業者賠償責任保険に支払った保険料は、経費として計上することが可能です。経費として損金計上することで、課税対象となる所得金額を減らすことができるため、その分の税負担を軽減することができます。

例えば、年間で5万円の請負業者損害責任保険料を支払った場合、その全額を経費として損金計上できます。

一方で、労災保険の特別加入に関する支払保険料は経費ではなく、確定申告の際の「社会保険料控除」として扱われる点に注意が必要です。

また、保険料の支払い方法や時期によっては、経費計上のタイミングが異なる場合があるため、税理士などの専門家に相談するのもおすすめです。

一人親方が検討したい請負業者賠償責任保険以外の保険

労災保険(特別加入)

一人親方は通常の労災保険の対象外ですが、特別加入制度を利用することで、業務中の事故や災害に対する補償を受けることができます。高所作業中の転落事故や重機操作中の事故などに対応でき、医療費や休業の補償を受けられるため、安心して仕事を続けられます。

工事保険

工事保険は、施工中の建物や使用する資材、機械などが損害を受けた場合に補償する保険です。火災、自然災害、盗難などによる損害が発生した際に、修理費用や再調達費用をカバーします。

就業不能保険

就業不能保険は、病気やけがで一定期間働けなくなった場合に、所得の減少を補填するための保険です。一人親方は業務中の事故だけでなく、プライベートでのけがや病気によっても収入が途絶えるリスクがあります。長期入院が必要な場合でも、保険金を受け取ることで、生活費や治療費の負担を軽減できます。

万が一のために請負業者賠償責任保険の加入も検討しよう

一人親方として安定した事業を続けるためには、請負業者賠償責任保険だけでなく、労災保険、工事保険、就業不能保険など、必要な保険を組み合わせることが大切です。万が一の事故や災害に備え、自分に合った保険を選ぶことで、安心して仕事に取り組めます。

また、保険料の相場や補償内容を比較し、コストを抑えながら必要な補償を確保することが重要です。複数の保険会社のプランを検討し、自分の事業に最適な保険を選びましょう。

適切な保険に加入することで、事故が起きた際の経済的負担を軽減し、事業の継続をスムーズに進めることができます。リスクをしっかり管理し、長く安定した仕事を続けるためにも、自分に合った保険を見直し、最適な選択をしましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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